【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
「卑しい獣人の女など捨てて、ハーティア王家の血を引く由緒正しいご令嬢を婚約者に迎えればいいんです。あなたは見目がよく優秀なダガー伯爵家の末裔です。すぐにお相手は見つかるでしょう」
「ボクは君以外と結婚するつもりはないよ」
ジェイドもまた硬い声でそれに答えた。
「馬鹿なことを。婚約者が聖女の資格を持たないのは、明らかな欠陥でしょう! いいかげん諦めなさい」
「嫌だ!」
「ちょっといいか」
ふたりの不毛な争いを止めたのは、今までじっと黙っていたツヴァイだった。気配を消していたから忘れていたけど、フィーアの兄である彼もまた護衛として同席していたんだった。
「フィーアに聖女の資格がないのが問題なんだな? だったら、本当に資格がないのかどうか、一度確かめてみたらどうだ」
「お兄?」
フィーアがぎょっと兄を振り返った。その耳は驚きにぴんと立っている。
「何を言い出すの! 私達は霊峰の奥で暮らしていた獣人よ。ハーティア王家の血が入っているわけ、ないじゃない」
「いや、可能性がないわけでもない」
「は……?」
兄のとんでもない台詞に、フィーアは呆然と立ち尽くした。
「お前が獣人集落から引き離されたのは、まだほんの小さい頃だったから、知らないんだな。うちの集落では二百年ほど前に、霊峰の中腹で立ち往生していた若いハーティア人の夫婦を助けたことがある」
「……二百年、前?」
なんとなく聞き覚えのある数字だ。
「不幸にも、夫のほうは妻をかばった傷がもとですぐに亡くなってしまったが、妻のほうは生き延びて娘をひとり産んだ。娘は成長し、集落の獣人と結婚して子を産んだそうだ。それがうちの一族のルーツのひとつだ」
「集落に……ハーティア人の血が……?」
ふら、とフィーアが一歩あとずさる。
「ツヴァイ、獣人集落って他国人の血をいれていいの?」
私の問いに、ツヴァイはこくりとうなずいた。
「小さな集落で固まっていると、血が濃くなりすぎるからな。むしろ外部からの血統は歓迎される傾向にある。もっとも、霊峰ではほとんどの子が耳としっぽを持って生まれるから、他から血が入っているようには見えないんだが」
「で、でも、それが王族とは限らないんじゃないの?」
フィーアが必死に否定しようとする。しかし、そうは問屋が卸さないんだなー。
「実はちょうど二百年前に、ハーティア王室で駆け落ち事件が起きてるのよ」
「え」
「ランス伯爵家没落のきっかけになったと言われる、『王女駆け落ち事件』のことよ。あなたも歴史の授業で少し習ったでしょう」
「でも、彼らは死亡したと伝えられているはずです」
「おそらく死亡、よ。北の霊峰、獣人集落くらいしかないところで足取りが消えたから、死んだとみなされたの。でも……裏を返せばそこには獣人たちが住んでいたのよね。助けられて、子を産んでいた可能性は十分あるわ」
聖女の遺伝子はミトコンドリアによって受け継がれる。遺伝子が完全なコピーとなる性質上、母親の血統にひとりでもハーティア王族がいれば、それだけで準聖女の第一条件を満たすことができる。
「試してみる価値はあるわね。セシリア、フィーアに聖女の覚醒を試してもらっていいかしら」
「構いませんけど……」
セシリアはおずおずとフィーアに近づいていった。フィーアはずざっとあとずさる。しかし、狭い砦の屋上ではさほど距離をかせぐことはできなかった。
「条件は聖女の遺伝子と、セシリア陛下からの信頼、そして恋心でしょう! 陛下からの信頼はともかく、私は恋なんてしてません!」
壁を背にしながらフィーアは必死に叫ぶ。
いやでも……ねえ?
その必死に叫ぶ様子が、もう語るに落ちてる気がするんだよ。
フィーアが頑なにジェイドを拒むのって、絶対理由があるよね? 恋愛的に。
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
2026年7月31日に2冊同時発売されます!
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