【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
とすんと床に降ろされた。と、思ったらぎゅうっと抱きしめられた。
「フィーア……」
痛いくらいの抱擁なのに、抵抗できない。ジェイドの声が震えていたから。
敏感なネコミミにジェイドの吐息がかかる。
「愛してる」
「……っ」
囁かれた言葉はひどく甘く響いた。
なぜこんなに甘く感じるのか、どうしてこんなにも胸がいっぱいになるのか。
理由はわかっているのに、うまく応えられない。
ただ茫然としていると、男はさらに続けた。
「愛してる……愛してる、愛してる、愛してる、愛して……」
「もう、何回繰り返す気よ!」
耐えきれなくなって思わず怒鳴ると、ジェイドはやっと顔をあげた。
「だってこうでもしないと、君は聞かないだろ」
恨みがましい視線を向けられて、反論できなかった。
意固地にずっと耳を貸さないでいたのはアタシのほうだから。
「ちゃんと聞いてるし、わかってるわよ」
「どんな風に?」
しっかり腰を抱いたままたずねられた。逃げは許さない、と言外に告げられて私は慎重に言葉を選ぶ。
ジェイドの気持ちはさすがに理解している。ご主人様を思い続けているというのが、アタシの完全な思い込みだってことも。でも、きっと告げるべきはそれじゃない。
本当にジェイドが期待しているのは別の言葉だ。
アタシはごくりと喉を鳴らした。
こんなこと、一生言うつもりじゃなかった。
全部抱えて墓場まで持っていくつもりだった。
でも、言うべきは今だ。
アタシがどんなに拒絶しても、離れないでいてくれた彼の想いに応えるために。
「ジェイド」
アタシは背伸びをしてジェイドの首に手を回した。そのまま飛びつくようにして、唇を重ねる。
そしてなけなしの勇気を振り絞って、気持ちを言葉にした。
「好きよ」
「……!」
ジェイドは何度かぱちぱちと瞬きをしたあと、私を抱えたままがくっとその場に膝をついた。一緒に転びそうになって、私は慌ててバランスをとる。
「ちょっと、何するのよ!」
「だ……だって……今……君から……!」
呆然とした顔のまま、唇に指をそえる。
ああ、そういえば。
告白どころか、自分からジェイドに接触したことなんて、一度もなかったかもしれない。
よほど衝撃を受けたのかジェイドは顔を赤くして涙目になっている。
「そんなに驚くこと?」
「驚くっていうか……」
その先は言わなくてもわかる。きっと、うれしいのだ。
ジェイドの顔は喜びにあふれている。
どうして今まで気づかなかったんだろうか?
彼はこんなにもわかりやすく、好意をあらわしていたというのに。
「これくらいしてあげるわよ」
私はジェイドの頬にキスした。
どうせもう何もかも暴露してしまったのだ、ためらう理由なんてない。
ぐい、と腕を引かれた。ジェイドの期待に満ちた緑の瞳がこちらを見つめる。
「もう一回、唇に」
「……ん」
指示通りの箇所にキスしたら、また抱きしめられた。そのまま床に押し倒される。
重なった唇を、ぬるりと熱い舌がなぞった。
誘うように口をわずかに開くと、すぐに舌が潜り込んできた。
広い貴族用の部屋に下品な水音が響くのも構わず絡み合い、キスを繰り返す。
「……はっ」
息継ぎにあわせて、ジェイドが体を起こした。離れてしまった熱と重みに、思わず顔をしかめてしまう。もっと続けたかったのに。
「ごめん、フィーア……ちょっとまずい、かも」
爆発寸前のくせに、男はくだらないことを言い出した。
「ずっと我慢してたし、君の告白が嬉しすぎて……全然、歯止めが、ききそうにない。このままじゃ、抱きつぶす、と」
「なにをいまさら」
組み敷かれた体勢で真顔になってしまったのは、しょうがないと思う。
「でも、ボクが暴走したら君に負担が……」
「アタシを誰だと思ってるの」
ぐい、と今度はアタシがジェイドの服を引っ張る。バランスを崩されて、男はアタシの上に倒れこんできた。
「あんた程度でつぶれたりしないわよ。いいから、全部ブチまけなさい」
「……っ」
理性のタガのはずれた男に唇を奪われる。
そのままアタシたちは、主人に指示された通り、丸一日かけて婚約者同士じっ……くりと話し合いをした。
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
2026年7月31日に2冊同時発売されます!
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