【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
クレイモアを後にした空中母艦『乙女の心臓』はそこから北上し、王都東部に一旦停泊した。本格的に北部に向かう前に物資と人員の整理をするためである。
ハルバードやカトラスに停泊した時も、都度整理は行われてきたけど、それは行軍にあわせた場当たり的な対処、いわば応急処置だ。王宮のある都近くまで来たことで、計画的な入れ替えを実施することになった。
「セシリア陛下、御無沙汰しています!」
人の送り出しと受け入れで慌ただしいコントロールルームに元気な声が響いた。私とセシリアが振り向くと、そこにはブラウンの髪をきっちりまとめた貴婦人が立っていた。
フランの姉、マリィお姉さまだ。
お姉さまの様子を見て、セシリアが顔をほころばせる。
「マリアンヌ、おひさしぶりです。もう怪我はよいのですか?」
「はい! おかげさまで、もうすっかり良くなりました」
そう言ってほほえむマリィお姉さまの顔色はいい。
お姉さまが王妃に刺されて死にかけていたのを目の当たりにしていた私は、ほっと安堵のため息をつく。セシリアを見ると彼女も私同様安心の笑みをうかべていた。マリィお姉さまを直接治療したのは、セシリアも同じだからね。
とっとっと、と別の場所で作業をしていたユキヒョウAI、ディーもこちらにやってくる。
「乗船時に体温や脈拍など表層チェックを実施しました。マリアンヌ嬢の健康状態に問題はないと判断します」
ユキヒョウの姿を見て、マリィお姉さまが顔をほころばせた。
「あなたが噂のユキヒョウの従者ですね。私は宰相ギュスターヴ・ミセリコルデの娘、マリアンヌです。こちらの『乙女の心臓』では、管理職がまったく足りてないと伺いました。今日から私も、コントロールルームに詰めさせていただきます」
「宰相閣下のお手伝いはよろしいのですか?」
セシリアはこてんと首をかしげた。
マリィお姉さまはもともと、宰相閣下の跡取りとしてその補佐を務めていたはずだ。フランに続き、お姉さままで『乙女の心臓』に乗り込んでしまったら、今度は宰相閣下の手が回らなくなるのではないだろうか。
「大丈夫ですよ。あちらには、長年お父様に仕えている側近が何人もいますから。けれど、セシリア陛下が安心して頼れる臣下は、まだ少ないでしょう?」
「お気遣い、感謝します」
そうなのだ。
セシリアが即位してそろそろ一か月になろうというにも関わらず、彼女の側近少なすぎ問題はいまだに解決していなかったりする。
本来、王位継承者は生まれた時から側近候補が周りを固め、成長とともに一生ものの片腕や、信頼できる騎士を育てていくものだ。オリヴァー王子もいずれその位を継ぐ時に向けてヘルムートをはじめとした側近候補が育てられていた。
しかし、偽王排除をきっかけに突然王位につくことになったセシリアには、側近などいない。宰相閣下を間に入れながら側近候補を急ピッチで選定しているところだけど、本人の引っ込み思案な性格も災いして、人員は増えていない。相変わらず彼女の周りにいるのは、管理AIのディーと私と、ハルバードから連れてきたメイドくらいだ。
王立学園でかろうじて築いていた人間関係を頼ろうにも、クリスはクレイモアで国境守護にあたってるし、フィーアも別の仕事ができてしまった。
そんな状況なので、マリィお姉さまが側近に加わってくれるのは、正直助かる。
「乗員が増えるのに従って、コントロールルームの仕事がドカドカ増えていて、もう限界なんです。マリィお姉さま、助けてください……!」
思わず漏らしてしまった声は本音だ。
前世の記憶持ちのデジタルネイティブということで、コントロールルームのオペレーション手伝いを買って出たのが運の尽き。次から次へと仕事が持ち込まれ、私のデスクには案件が山のように積みあがっていた。
これらを処理するだけでも大変なのに、有事の際にはフランの相棒としてミセリコルデに乗って出撃もしなくてはならない。こんな生活、体がいくつあっても足りない。
「もともとミセリコルデは政治屋一家、人を調停する管理職がお家芸よ。艦内の調整ごとは私に任せて!」
「お姉さま最高ぉぉ……」
「では、マリアンヌ嬢も準聖女に覚醒していただいたほうがよさそうですね」
ディーがたし、と前脚をあげてよくわからないことを言い出した。
誰が何に覚醒って?
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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