【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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モーニングスター領スキュラ討伐戦

「偵察用ドローンが姿を捕らえました! 一時の方向です!」

 

 ユキヒョウ型管制AI、アルタイルの声がコントロールルームに響いた。私はモニターの映像を確認しながら、レーダーの表示にも目を配る。

 

「白銀の鎧『モーニングスター』の周囲に敵モンスターの反応多数! さらに正面にも巨大反応あり!」

「モンスターの種類はわかるか?」

 

 同じくコントロールルームにつめているフランが声をかけてきた。

 

「全体に女性の人型だけど、下半身は蛇、二対の腕、オオカミの面をつけた顔が六つ。……女神ダンジョンにも出現したスキュラと判断していいわ。大きな反応の周りのたくさんの反応はスキュラが召喚した亡霊オオカミね」

 

 王都近くで補給と人員整理を行った私達は、ついに北方の大侯爵、モーニングスター家の領地へと到着していた。厳しい冬を乗り越えるため、一族で団結することを得意とするモーニングスター家は、この魔物災害の中でもよく持ちこたえていた。

 しかし、ユラの召喚した強力な魔物たちの出現には際限がない。じわじわと戦力を削られ、手の回らなくなった村から魔物に襲われていく。

 ケヴィンがモーニングスター城の地下から白銀の鎧を発掘したことで、戦況は好転したけれど、多数の魔物に対して『モーニングスター』は一機。とてもすべての戦場をカバーしきれない。

 そして、『モーニングスター』にはもうひとつ問題があった。

 

「メイスによる物理攻撃メインの『モーニングスター』とスキュラは相性が悪いな」

「本体のスキュラはともかく、亡霊オオカミに物理攻撃はあまりきかないからね」

 

 女神ダンジョンで何度も苦しめられてきた、モンスターと操縦者との相性問題である。実態をもたない亡霊オオカミに対して、物理攻撃のトゲつきメイスは効果が薄い。モーニングスター侯爵騎士団にも魔法使いはいるけれど、巨大ロボと一緒に戦えるほどの使い手はなかなかいない。

 フランは軽くうなずくと、コントロールルームの中心、一段高い位置に据えられた司令官席を仰ぎ見た。

 

「セシリア陛下、白銀の鎧『ランス』と『ダガー』の出撃を提案します」

「許可します。二機は『モーニングスター』の救援を」

『かしこまりました!』

『……了解デス』

 

 スピーカーごしに、グラストンの声と、変装中のジェイドのしゃがれた声が響く。すぐに『乙女の心臓』のハッチが開いた。モーニングスター救援のためにあらかじめ待機していた彼らはすぐに発進していく。

 モニターに、ランスとダガーの所在を示すマーカーが新しく現れた。

 ドローンから送られてくる映像に目を向けると、ちょうどモーニングスターをかばうようにして、ランスとダガーが大地に降り立つところだった。

 

『助太刀する!』

 

 ぶん、とランスが槍を振るった。数に圧倒されて体勢を崩していたモーニングスターのもとから、巨大なスキュラを引き離す。

 

『ありがとうございます』

 

 モーニングスターのコクピットから、ケヴィンの声が送られてくる。緊張はしているけれど、その声にはしっかりとした張りがある。戦う気力はまだ十分残っているようだ。

 

「こちらフランドール。スキュラ本体を叩く前に、周囲の亡霊オオカミを一掃する。ダガーは広範囲浄化魔法を行使、モーニングスターとランスは援護を」

 

 フランの指示に従って、鎧たちはフォーメーションを変える。ランスとモーニングスターがダガーの前に立ち、武器を構える。オオカミたちはダガーに向かっていこうとするけれど、他の二機がその行く手を阻む。

 

『……イキマス』

 

 しゃがれた声が聞こえてきたと思ったら、ダガーの持つ巨大な杖が光を放った。真っ白な光をあびて、亡霊オオカミたちの輪郭が崩れる。この世のものではないオオカミは、光に照らされるまま、その姿をかき消されていった。

 

『アアアアアッ!』

 

 配下を消され、怒りに満ちた女の悲鳴が響く。

 スキュラは叫び声をあげながら、白銀の鎧たちに向かっていった。槍とトゲつきのメイスが、同時に突き出される。スキュラはダメージを受けながらも、身を翻した。長い尾が振り上げられる。振り回された尾の先は、ぶうんとムチのようにしなり、ランスとモーニングスターの間をぬうようにして、奥のダガーへと遅いかかっていった。

 

『遅イ』

 

 ジェイドとはまた別のしゃがれ声とともに、ダガーが跳んだ。超反応でスキュラの尾をかわしたかと思うと、転がりながら魔法で作り出した光弾を放つ。

 おそらく、今の回避行動はダガーに同乗しているフィーアの操縦だ。機体操作をフィーアが、魔法の行使をジェイドが受け持つ、という分担操縦はうまくいってるみたいだ。

 オオカミの面を正確に射抜かれて、スキュラの体がぐらりと傾いた。

 

『ギャアッ……』

 

 その隙を見逃すパイロットたちではない。

 あっという間にランスとモーニングスターがスキュラに肉薄し、同時に武器を振り下ろした。槍に胴体を貫かれ、頭にモーニングスターを振り下ろされ、スキュラの体がのけぞった。追い討ちとばかりにダガーの光弾が胸を撃ち抜く。

 致命傷を負わされたスキュラは、びくりと尾を一度震わせたかと思うと、体全体をだらりと弛緩させた。

 三機はしばらく様子を見ていたけれど、それ以上動く気配はない。

 モンスターの死を確信した白銀の鎧たちは、そこでやっと武器をおさめた。

 

「周囲のモンスター反応なし。スキュラの討伐を確認しました」

「白銀の鎧の勝利ですね」

 

 ボスクラスモンスターの殲滅に、戦場とコントロールルームの両方で、大きな歓声があがった。

 




「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」

2026年7月31日に2冊同時発売されます!


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