【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
「私の……恋、バナですか?」
セシリアはきょとんとした顔になった。
「でも、私には婚約者も恋人もいません。リリィ様にお話できることは何も」
「それは筋が通らないわ」
私は首を振った
「今のハーティアはすごくいい状態よ。伝説の『乙女の心臓』と『白銀の鎧』が復活して、王家と勇士七家が一致団結して戦っている。近いうちに、国内のモンスターはすべて駆逐されるでしょうし、こちらからアギト国に攻め込んでいくことも夢じゃない」
「それと私の恋に何の関係があるんです?」
「聖女の力の根源が、恋する乙女心だからよ」
「……!」
セシリアの顔が、はっきりとこわばる。
戦局が上向いたことで、ハーティアは活気づいていた。邪神の悪意を退けようと、国民ひとりひとりが持ちうる全ての力で戦っている。
明るい明日のため、安心できる今日のため、女王セシリアに勝利を願う。
セシリアは求められるまま『乙女の心臓』で各地を回り、『白銀の鎧』を派遣して、国中に女神の恩恵を与えた。それ自体はいいことだと思う。
けれど、その絶大な力が何から生まれているかについて、考えが及ぶ者はいなかった。
私をのぞいては。
「あの時は緊急事態だったから深くつっこんでなかったけど、本来『乙女の心臓』の復活も、『白銀の鎧』の起動も、すべて聖女の恋心が必要だったはずよ」
「そんなこと、誰も……」
「ごまかさないで。どちらも恋愛フラグが立ってないと復活しないのは、確認ずみだから」
私はポケットに入れていた攻略本を見せた。
セシリアが息をのむ。
他の誰が知らなくても、私だけは知っている。なぜなら、私は女神の作った乙女ゲームのプレイヤーだからだ。
小夜子は聖女としてこの世界を何度も疑似体験した。
その中で到達したバッドエンドのひとつが、『恋心がない!』だった。
数多ある死亡フラグをくぐりぬけ、やっとのことで『乙女の心臓』のコントロールルームに到達したというのに、誰とも恋愛フラグを立てていなかったせいで、空中母艦が起動しなかったのである。
空中母艦の復活には聖女の恋心が必要。
これはこの世界に定められた、絶対の仕様だ。
だから、セシリアは恋をしている。確実に。
しかし私はフィーアやライラを祝福したように、セシリアを祝福することはできなかった。
彼女の周りに男の影が一切なかったからだ。
男の知人がいないわけではない。
宰相閣下をはじめとした、女王としての彼女を支える側近、護衛騎士。学園の同級生だったヴァン、ケヴィン、オリヴァー。後見人のダリオ・カトラス。
家族という距離の近さを考えれば、ダリオが一番の恋人候補だったと思う。
でも結局ダリオが選んだのはライラで、セシリアは心から彼らを祝福していた。
では、誰が?
セシリアに恋心を抱かせた者はどこにいる?
疑問を持った日からずっと彼女の動向を観察していたけれど、そんな相手はついに見つからなかった。
セシリアは引っ込み思案でひどく臆病な子だ。注目されるのは苦手だし、大きな責任を持つことを避けたがる傾向にある。女王としての政務も、宰相閣下の手助けでやっとこなしている状態だ。
そんな彼女が誰かひとりに心を傾ける様子が、恋を指摘した今でも信じられない。
大きな矛盾にじわりと心に不安が広がる。
セシリアが恋をしている、そう思うだけで、なぜこんなにも心がザワつくんだろう。
「セシリアが好きなのは、誰?」
踏み込みすぎている。
そう思っても、問いかけずにはいられなかった。
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
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