【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

625 / 625
負うべき責任

「……リリィ様には、隠せませんね」

 

 しばらくの沈黙のあと、セシリアはため息をついた。

 

「ええ……私はあの方に恋をしている。きっとそうなんでしょう」

「だったら」

「でも、相手の名前は言えません」

 

 セシリアは唇の前に指を立てた。はっきりとした拒絶だ。

 予想はしていたけれど。

 

「……リリィ様がうらやましい」

 

 ややあって、セシリアがぽつりとつぶやいた。

 

「同じ女神に運命を変えられた存在だというのに、心のままに恋をして、素敵な方に愛された」

「……それは」

「ええ、何も悪くありません。リリィ様が運命に抗い必死に戦った結果です」

 

 そう言いながら、セシリアは暗くうつむく。

 

「私はあなたのようには生きられない……」

 

 そんなことはない、とは言えなかった。

 セシリアが運命に翻弄される姿を、すぐ側で見てきたから。

 

「私はこの世界のヒロインです。私の決断次第で世界が動き、恋が世界を変える。私が誰を選ぶかによって、国の形が決まってしまうんですよ? そんな大きなものを背負いながら、まともな恋ができると思いますか」

「……気持ちは、わかるつもりよ」

 

 恋が世界を救う。

 乙女ゲームでは時々キャッチコピーになってるくらいのフレーズだけど、その設定をドラマチックと受け止められるのは、所詮お話の世界だから。消費エンタメと割り切っているからだ。

 現実に自分の気持ちひとつで世界の生き死にが決まると言われたら、重すぎてプレッシャーに耐えられないだろう。

 そして、セシリアは実際に女王に即位させられ、聖女として祀り上げられている。

 これは邪神を倒す正義の戦いだから。

 人を救うのに都合がいいから。

 そう言い訳して、誰もセシリアの恋心を顧みてこなかった。

 私も含めて。

 

「安心してください」

 

 セシリアは顔をほほえみの形に整える。

 

「恋する気持ちを明かすことはできませんが、女王の立場は放棄しません。この戦いにおいての、聖女の役割は真っ当するつもりです」

「そんな義務みたいな……」

「私にとって聖女は義務そのものですよ」

 

 否定できない自分がやるせない。

 

「リリィ様も、私が戦うことをお望みでしょう?」

「それは……」

 

 私はすでに次期侯爵として多くの命と生活に責任を持っている。だから、セシリアには邪神に戦ってもらわなければならない。ハーティア高位貴族のほとんどが、同様の立場だ。

 でも、しかし。

 

「……嫌なら、やめちゃう?」

 

 思わず言葉が口からこぼれ出た。

 

「え?」

 

 一度口にしたからには止まらない。私は抱えていた気持ちをそのまま言葉にする。

 

「ずっと考えてたんだけどね……セシリアが好きな人を素直に言えないのって、絶対今の立場のせいでしょ?」

「……それは、まあ、そうですけど」

「恋する乙女心が世界を救う世界なのに、聖女ヒロインの気持ちが犠牲にされるって、なんかおかしくない?」

「いえでも私の場合は相手が相手ですし」

「相手が誰でも関係ないわ」

 

 言ってみて、確信した。

 やっぱりこの状況は変だ。

 恋する乙女が次々に幸せになっていく中で、ただひとりセシリアだけが世界のために想いを我慢するなんて、間違ってる。

 これは侯爵令嬢としての考えじゃない。

 自由な現代日本の価値観を持つ小夜子の考えであり、セシリアの友達としての考えだ。

 

「あなただって恋する乙女のひとりなんだから、幸せになる権利があるはずよ」

「……でも、そんなことになったら、世界は」

「どうにかなるわよ」

「ええ……」

 

 困惑するセシリアに、私は胸を張ってみせる。

 やっぱりセシリアひとりに背負わせるなんておかしい。この世界に生きてるのは彼女ひとりじゃないんだから。

 

「恋愛フラグが必要だったのは、空中母艦と白銀の鎧のロックだけでしょ? 今はもう全部復活して稼働してるし、覚醒した準聖女だって何人もいる。あなたひとりが駆け落ちしたって、どうにかなるわよ」

「えええ……」

「まあちょっと……後始末に大人が苦労するかもしれないけど、いいんじゃない? 今まであなた個人の気持ちを、置いてきぼりにしてきたツケが回ってきただけなんだから」

 

 あえて問題は無視して、にかっと笑ってやる。

 もともと女子ひとりに解決させようとしていたようなことだ。国中の全員で力を合わせたら、なんとかなるんじゃないかな。

 奇跡を起こすのと同じくらい大変かもしれないけど。

 

「リリィ様って、やっぱりお優しいですね」

 

 セシリアはこくんとうなずいた。

 

「……もう少しだけ、がんばってみます」

 

 がんばって笑顔を作っているけど、その目じりには涙が浮かんでいる。やせ我慢してるのがバレバレだ。

 

「無理のしすぎはよくないわよ」

「わかってます。でも……」

 

 セシリアはこてんと首をかしげて私を見上げてきた。

 

「本当にダメだって思った時には、頼っていいですか?」

「もちろんよ!」

 

 友達のお願いに、私はとびきりの笑顔を返した。

 




「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
7月31日より発売中!!!!


コミックも小説もめちゃくちゃ面白いので、購入応援よろしくお願いします!
詳細は活動報告に!



皆さまの応援が作品の寿命を延ばします!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

もう一人の勇者(作者:Katarina T)(原作:ブルーアーカイブ)

ある廃墟で一人の少女が目を覚ます。▼それは一つの物語が始まることを指していた。▼………これは少女が自身の意味を見つける物語である。▼ちょっと宣伝!番外編の RTA風味 実績『予定外のハッピーエンド』獲得まで を連載化して投稿しております。▼良ければ明道トウハちゃんとAL-2Bちゃんの活躍をみてあげてください!▼https://syosetu.org/nove…


総合評価:4797/評価:8.44/連載:134話/更新日時:2026年06月01日(月) 17:05 小説情報

水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?(作者:mono-zo)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

気がつくとそこは別世界、魔法がある▼もう少しなにかあるでしょ?普通……王族貴族とは言わないでも平民ぐらいはさぁ。▼あるのは痛みと魔法と現代知識。▼しかしここは常識が違う。顔を殴られたとわかる少女がいても誰も助けてくれないし、人権なんてものは存在しない。▼せめて、せめて屋根ぐらいは欲しかったなぁ……。▼カドカワBOOKS様より小説1~5巻の情報!▼https:…


総合評価:8742/評価:8.36/連載:407話/更新日時:2026年08月05日(水) 11:00 小説情報

魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~(作者:行雲流水)(オリジナルファンタジー/日常)

 お知らせ:2024.09.05 第三巻発売! タイトルを小説家になろうさまと統一致しました。元題:セレブリティームーブが止まらない~王立学院は本日も平和です~▼ 第三回集英社web小説大賞・金賞を頂きました! 書籍化です!!┏○))ペコ ▼ 転生した。孤児だった。崖っぷちギリギリライフを営んでいたら聖女に選ばれた――なんで?▼ でもまあ、暖かい寝床とご飯が…


総合評価:5449/評価:7.51/連載:740話/更新日時:2025年10月09日(木) 21:58 小説情報

TS美少女観察日記(作者:スーパー爽)(オリジナル現代/恋愛)

拗らせコミュ障少女がとある美少女を観察していく話▼なお、観察対象は環境激悪異世界からTS転生してきたメンタルボロボロの美少女であるとする


総合評価:197/評価:8/連載:11話/更新日時:2026年07月07日(火) 00:56 小説情報

青資秘密学園奮闘ログ(作者:どくいも)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカの世界に転生した俺達が、キヴォトスごと滅びないように頑張りながらも、原作キャラペロを狙いたいと願うお話▼※なお、転生者の99%は女生徒です


総合評価:13400/評価:8.79/連載:12話/更新日時:2024年08月05日(月) 23:13 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>