【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
コントロールルームに表示された映像は、白銀の鎧コクピットのサブモニターにも転送されてきた。
夜の闇を映したような漆黒の髪。白い象牙の肌。何の光も返さない切れ長の黒い瞳。
間違いない、アギト国第六王子ユラ・アギトだ。
モニターの先で、ユラは楽しそうに笑っている。
「以前に何度かそちらの国に潜入していたことがあるから、この顔を覚えているかもしれないね? 改めて自己紹介するね。僕はアギト国第六王子ユラだ。アギト国軍の総指揮官でもある」
おお、とコントロールルームからざわつく声が伝わってくる。
「この映像は、つい先日鹵獲した空飛ぶ使い魔……ドローンだっけ? をハックして送信させてもらってる」
すう、とカメラ位置が移動する。ドローンらしいなめらかな動作だ。
アギト国に攻め込む前準備として、偵察用ドローンを何台もあちらに送り込んでいた。そのうちの何台かは途中で消息を絶っている。そのどれかを再利用しているのだろう。
「邪神の脅威を祓うためとはいえ、随分な戦力を集めたねえ」
にい、と口の端を吊り上げてユラが笑う。
「騎士だけならともかく、白銀の鎧相手じゃ勝負にならないや」
「……勝ち目無しなら、降伏していただいて結構ですよ」
セシリアの冷たい言葉に、ユラが噴き出す。
「まさか! 勝負にならないのは、人の軍隊。化け物の軍隊だったらどうだろうね?」
正面からユラを捕らえていたカメラが、すうっと上昇した。彼の背後に広がる風景を映し出す。
そこにあったのは魔物の群れだった。
ワイバーン、スキュラ、吸血鬼、リヴァイアサンなど、今までハーティアを苦しめていたモンスターが勢ぞろいしている。それも一体や二体じゃない。数えきれないほどの魔物が山を覆い尽くしているのだ。
「どこからこんな魔物の群れを……いくらあなたの魔力が膨大といっても、限度があるはずでしょうに」
「もちろん、この手品には種があるよ! 魔物一体につき最低でもひとり、大型種召喚には複数の人間を生贄に捧げてるんだ」
「……っ!」
セシリアが真っ青な顔で息をのむ。
私たちの顔もひきつった。
人の命と引き換えに魔物を召喚した? この山にひしめいている魔物全てが人の命?
いったい、どれほどの命を消費したらこんなことになるんだ。
「どうせ負けるのなら、アギト国を道連れに……そう……そういうことなんですね」
セシリアが呆然とつぶやく。
あはは、とユラが笑った。
「さあおいでよ! ここから先はアギト国あげての総力戦、消耗戦だ! 僕の首を取るまでに、君たちはどれだけの命を消費するだろうね? 楽しみだよ!」
「……あなたは、そうするんですね」
「セシリア陛下、出陣のご命令を。奴らは止めるべき厄災です」
マリィお姉さまの声が割って入る。これ以上セシリアをあの悪魔と対話させてはならないと判断したのだろう。
「私は……」
セシリアは大きく息を吸い込んで。
「出陣を許可しません」
あり得ない判断を下した。
「陛下!?」
「みなさん、動かないで」
ひゅうぅん、と奇妙な音をたてて、白銀の鎧のメインエンジンが停止した。すぐに予備電源に切り替わったものの、モニターとスピーカー以外の機能が停止している。
「おい、どういうことだ!?」
「動かないぞ!」
他の白銀の鎧からも、困惑の声が伝わってくる。コントロールルームからも、悲鳴のような声があがっていた。
「私がユラのもとへ赴きます」
「陛下、何をお考え……きゃあっ!」
コントロールルームにマリィお姉さまの悲鳴が響く。
「姉上!」
「だ、大丈夫よ。でも、突然強い光が放たれたかと思うと、陛下のお姿が消えて……!」
「なに!?」
「おい、サブモニターを見ろ!」
ヴァンの叫び声が響いた。私達はあわててサブモニターに目を向ける。
そこに映し出されていたのは、ユラの前に立つセシリアの姿だった。
今の一瞬でユラのところまでテレポートしたらしい。
最悪のツーショットである。
「やあ、直接会えるとは思わなかったな」
「最後に、あなたに伝えたいことがあって」
セシリアはふんわりとほほ笑んだ。
「君の言葉なら、なんでも聞くよ」
そらぞらしい言葉を並べるユラを、セシリアはまっすぐ見つめる。
「好きよ、ユラ」
「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
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