【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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聖女の望み

「えっ……」

 

 白銀の鎧のスピーカーから聞こえてきたのは、それぞれの戸惑いの声だった。

 まあ、そうなるよね……。

 私も信じられない。

 

「リリィ?」

 

 フランがこちらを振り向いてくる。

 お前何か知らないのかって顔だ。

 たずねたくなる気持ちもわかる。

 

「……いやあ、前からなんとなくそんな気がしなくもなかったんだけどさ……信じられないっていうか、信じたくないっていうか」

 

 女王様がよりにもよって、敵の総大将に惚れてるとかありえない。

 乙女ゲームの隠しキャラあるある展開だけどさぁ!

 まさか本当にヒロインがラスボスを選ぶとは思わないじゃん。

 

「でも、今思い返せば、思い当たるフシがあったりは……するんだよね」

 

 セシリアは引っ込み思案で臆病な子だ。だからなかなか人と深く関わらないし、誰かに強い感情を持つことも少ない。

 だけど、ユラだけは別だ。

 思えば初対面の時からユラに絡まれた時だけ、セシリアは本気で怒っていた。

 彼にだけ、感情むき出しで相対していたのだ。

 それはユラが極端に露悪的な人間だからだと、私は解釈していた。とびぬけて異常な行動をする者には、特に注意を払わなくてはならない。

 だから恋なんて名前がつく感情だとは思わなかった。

 

「……私は、ずっと怒ってたんです」

 

 セシリアはため息まじりに語る。

 

「女神様に使命を告げられてから、ずっと、ずっと……」

 

 それは、カトラス領でのことだろうか。セシリアは、ユラと出会ったことをきっかけに、運命の女神から私の乙女ゲーム実況動画を見せられたと語っていたけど。

 

「どうして私が聖女なの。どうして私が世界を救わなくてはいけないの。どうして、私ひとりに世界の命運を決めさせるの」

「きっと運命の女神はこう言うだろうね。君が聖女の運命を持って生まれてきたからだ、と」

 

 ユラは薄笑いを浮かべながら、セシリアの言葉を受けとめる。

 

「そんなこと、知らない!」

 

 セシリアは吐き捨てるように叫んだ。

 

「望んで聖女を目指したのなら、まだ納得もできるでしょう。でも私は、気が付いた時にはその席に座らされて、運命を目の前に並べられていた」

「……産まれる場所を選べないのは、全人類そう、と言えなくはないけど」

「それでも限度があるでしょう。そこに生まれたから世界ひとつ背負えなんて、理不尽にもほどがあるわ!」

「ああ……その気持ち、すごくよくわかるよ」

 

 うっとりと、ユラはほほ笑んだ。

 

「ただそこに生まれ落ちた。それだけで僕は繰り返す永劫の生を定められた。勝つことはできない、さりとて消えることもできない理不尽な人生を押し付けられた。ただ、神の都合のためだけに!」

 

 セシリアも嬉しそうに笑う。

 

「私の苦しみを、真に理解できるのはあなただけ」

「僕の苦しみを理解できるのも君だけ」

「愛してるわ、ユラ」

「セシリア、僕も君を愛している。何百年と生を繰り返して、初めて出会った魂の半身よ」

 

 ふたりはお互いの体を抱きしめあう。それは完璧な恋人同士の姿だった。

 私達はその様子をモニターごしにただただ見つめることしかできない。

 

「ねえユラ、お願いがあるの」

「なんでもどうぞ、愛しい人」

「私と一緒に死んで」

 

 それは、考えうる中で最悪のシナリオだった。

 

「……セシリア! それだけはダメ!」

 

 操縦席のシートから腰を浮かして私は叫ぶ。けれど、彼らの耳に私の声は届かない。

 ユラは笑った。心の底から嬉しそうに。

 

「いいよ! 一緒に死のう! 君の命を抱いて死ねるなら、次の生に送り出されるまで、安らかに眠れそうだ」

「何を言ってるんですか」

 

 フン、と鼻息も荒く、セシリアは顔をあげる。

 今まで見たことのない、決意の表情だ。

 

「世界を巻き込んでおいて、ただ死ぬだけなんてつまらないでしょう。私達は死んで、『異世界転生』するんです」




「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
7月31日より発売中!!!!


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