【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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早熟なれど凡人

「あ~も~……うまくいかないったら……」

 

 私は城の裏手の植え込みで、いつかのように寝転がった。

 少し服と髪が汚れるけど気にしない。落ち込むときには、思う存分じたばたすべきなのだ。

 フランたちに、獣人のことを指摘したけど、正直どこまでちゃんと伝わってるか不安だ。

 

 今まで、運命を捻じ曲げるためにいろいろやってきたけど、今回が一番やばいかもしれない。

 だって、相手はプロの殺し屋だよ?

 女の子ひとりが相手にするにはハードすぎない?

 

 18歳の心が11歳の体の中にあるおかげで、同世代よりちょっとだけ精神年齢は上かもしれない。でも、それだけだ。

 鋭い洞察力があるわけでも、膨大な魔力があるわけでも、高い身体能力があるわけでもない。

 頭は早熟、才能は平凡。

 きっと、私は日本のことわざの通り、『二十歳過ぎればただの人』になると思う。

 そんな自分が人の命、まして世界の運命を握ってるなんて、そんなの手にあまるどころの話じゃない。

 

『まあなんとかなりますよ、小夜子さんならきっと』

 

 って、運命の女神ことメイねえちゃんに言われてその気になってたけど、やれることは限られている。

 だからといって放り出してしまったら、その先に待っているのは破滅だ。

 結局大切な人ごと全てが消えてしまうだけ。

 

「どうしたもんかなあ」

「にゃあ」

 

 つぶやいた声に、合いの手があった。体を起こすと黒い子猫がちょこんと座っている。

 

「今日も会えたね」

 

 私は体を起こして、子猫に向き合った。

 実は、フランと喧嘩したあの日に出会ってから、子猫とは裏庭で時々遊ぶ仲になっていた。今では、私が裏庭にやってくると、向こうから声をかけてくるくらいだ。

 

 つまり、私は子猫になつかれている!

 すごくない? 実は私って、テイマーの才能あったりしない?

 

「にぃー」

 

 期待にきらきら輝く金色の瞳が私を見上げる。

 まあ、子猫の一番の目的は、私自身じゃないんだけどね……。

 

「はいはい、わかってるよー。お肉だよね」

 

 私はドレスのポケットを探ると、中から携帯用のお肉を取り出した。子猫でも食べやすいよう、小さくちぎって置いてやる。水魔法で小皿にお水を注いであげると、子猫のランチ準備完了だ。

 

「にゃあ」

 

 子猫は嬉しそうに鳴くと、すぐにお肉を食べ始めた。

 

「ふふ、かわいい」

 

 小動物って不思議だ。ただこうやって生きて、食事をしているだけなのにめちゃくちゃかわいい。そして、見ているだけでこわばった心がほぐれていく。

 

「あなたには、いつも元気をもらってるね」

「にー」

「いっそのこと、うちの子にならない?」

 

 このまま裏庭だけで会う友達、っていうのもいいけど、この世界の野生動物は放っておくとどんな目にあうかわからない。駆除されたり、誰かに連れて行かれたりする前に、ちゃんとうちの子にして、お城で飼ったほうが安全だ。

 

「うちの子になるとね、毎日おいしいごはんを食べさせてあげられるわよ。なんてったって、私はこの城のお嬢様だから。それに、とっておきのかわいいリボンもつけてあげる」

 

 子猫の金色の瞳が私を見つめている。

 まんざらでもないのかもしれない。

 

「名前は……クロちゃんとかどうかな? でも、女の子だからもっとかわいい名前のほうがいいかな?」

 

 なでようと手をのばしたら、子猫は不意に体をひっこめた。

 そのまま体を翻して去っていってしまう。

 

「あー残念! でも、諦めないからね」

 

 猫ちゃんも、この世界も!

 

 

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