【書籍⑧巻&コミック②巻、7月31日発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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後始末

 セシリアがユラと一緒に命を落としてから、一か月が経過した。

 聖女の化身と崇めていた女王が突然死亡し、神の力の象徴『乙女の心臓』と『白銀の鎧』も消失するという事態に、ハーティアは大混乱に陥った。

 しかし、同時に宿敵アギト国も国民ごと消失。

 脅威の去った地上で、ハーティア国民はどうにかこうにか日々をしのいでいる。

 私はというと、セシリアの事情を知る数少ない貴族として、後始末に奔走していた。

 どうにもならない時には頼れって、セシリアに言ったのは私だ。自分の発言の責任は自分でとるしかない。今まで培ってきたコネクションをフル活用して勇士七家の間を回り、連絡役を勤めることでこの国を支える手のひとつになっている。

 幸い、ダガー伯爵夫妻が呪いの後遺症で亡くなって、私のもとにジェイドとフィーアが戻ってきたおかげでかなり動きやすくなった。

 王都から離れることが多くなったせいで、フランと会う時間が減ったけど、これはもうしょうがない。

 国が安定するまでは我慢だ。

 ……いつになるかわからないけど。

 

「フラン」

 

 私は王宮内にある宰相家専用執務室に顔を出した。デスクに向かっていたフランが、書類の山から顔を出す。

 

「お前も会議に呼ばれていたのか」

「議題が議題だからね。他のメンバーはもう会議室?」

「ああ。ヴァンとクリスが登城してきたと連絡があったから、そちらに向かった」

「じゃあ一緒に行きましょ」

 

 フランのエスコートで、私達は会議室に向かう。

 

「お前を王都から送り出すたびに、寿命が縮まる気がする。……こういう時、スマホがないのは不便だな」

 

 むう、とフランの眉間に皺が寄った。

 

「一度、連絡がとれる便利さを知っちゃうと、不便さが際立つわよね」

「特にお前は行く先々でトラブルを引き寄せるからな」

「む、それはどういう」

「リリアーナ嬢、フランドール殿!」

 

 声をかけられて、私たちは足を止めた。振り向くと、王宮の長い廊下を白いヒゲを蓄えた老騎士が歩いてくる。私はすぐに彼に駆け寄った。

 

「お久しぶりです、クレイモア伯爵」

「クレイモア領でお別れして以来ですな。息災なようで安心しました」

「……お久しぶりです」

 

 フランもクレイモア伯にお辞儀する。

 

「どうでした、東は」

「ひどいもんだったよ」

 

 クレイモア伯は顔をしかめて首を振った。

 第六王子の死後、アギト国側は不気味なほど静かだった。普段なら、ハーティア側の様子をうかがおうと、日に何人かの斥候が姿をあらわすのだが、それがない。どころかアギト側で人が動く様子がない。

 不審に思ったクレイモア伯が調査団を編成して、アギト国側に入っていったと聞いていたんだけど。

 

「人っ子ひとり、みつからなかった」

 

 それは、会敵よりも悪い報告だった。

 

「どの街へいっても……どの村にいっても、人間が誰ひとり残っていなかった。がらんどうの街の隅で家畜だけが腹を減らして鳴いていてな」

「うわ……」

「アギト国民すべてを、魔物召喚の生贄にしたというのは、事実だったのですね」

「長く戦ってきた相手だが、まさか消えてしまうとは思わなんだよ」

 

 長年国境を守護してきた者として、思うところがあるのだろう。老騎士は複雑な顔で肩をすくめた。

 

「まさかといえば、女王陛下についてもですな。あの可憐な少女があれほどの激情を抱えていたとは」

「もともと、貯めこんじゃうタイプではあったんですけど」

 

 私も、友達が世界全部を敵に回したあげくに無理心中をはかるとは思わなかった。

 

「イセカイテンセイでしたか。生まれ変わることで幸せになれたんでしょうか、あの方は」

「きっと願いはかなったはずです。ここは恋する乙女が奇跡を起こす世界なんですから」

 

 あんないい笑顔で旅立っていった彼らが、幸せにならないわけがない。

 

「ならばもう、思い悩みますまい」

 

 クレイモア伯も、何かふっきった顔でうなずいた。別の場所で幸せになる、と決めて去ってしまった以上、私達の悩みは無意味だ。

 

「リリアーナ嬢、東の件をギュスターヴにも共有したいんだが」

「でしたら、ご案内します。私達もこれから宰相閣下と会議をする予定でしたから」

「儂が入ってもよいものなのか? その会議とやらは」

「……むしろ、クレイモア伯に加わっていただいたほうがよいかと」

 

 フランの眉間にうっすらと皺が寄る。

 

「なんだ、その顔は。よほど難しい会議と見えるが」

「この国において、もっとも重要な議題を扱いますからね」

 

 私達は足早に会議室へと向かう。その部屋には宰相閣下だけでなく、ヴァン、クリス、ケヴィンといったこの国の高位貴族が集まっている。ここで話し合われるのは。

 

「だから! クリスに女王は無理だっての!」

 

 誰を次の王にするか、である。





「クソゲー悪役令嬢コミカライズ②巻」
「クソゲー悪役令嬢書籍⑧巻」
7月31日より発売中!!!!


コミックも小説もめちゃくちゃ面白いので、購入応援よろしくお願いします!
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