【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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足掻いてから死ね

「もしかしたら、私はもう何もしないほうがいいかもしれない……」

 

 家族を救おうと両親をダイエットさせたら、別れて暮らすことになった。

 父様が活動的になったら、宰相が救われた代わりにフランが命を狙われる。

 手がかりに気づかず、暗殺者を隠れ家に引き込む。

 

 運命の女神に後押しされて運命に介入してきたけど、私の行動はいいことばかり起こしてきたわけじゃない。

 私の行動が新たな悲劇を生み出すことになるかもしれない。

 そう思うと、もう何をするのも怖くて仕方がなかった。

 

「だからといって、悪意に流されるまま死ぬ気か?」

「……っ」

「お前が言った言葉だろう」

「フランは……知らないから……! 私に何ができるのかわかってないから、言えるんだよ!」

「それは、お前も同じだろう。俺が何を知っていて、何ができるか知らない」

「私のは……そういうのとは……違うっ」

「違わない」

 

 フランが私の腕を引っ張った。顎を掴み、青い瞳が無理やり私の瞳を覗き込んでくる。

 

「足掻け」

 

 それも私が言った言葉だった。

 

「どうせこのままただ逃げていても、暗殺者に殺されるだけだ。足掻け、奴らに最大限の迷惑をかけてから死ね」

「……っ」

「お前が願うなら、どんな手段であっても、俺が手助けしてやる」

 

 じわりと視界が歪む。

 こんな最低な状況でそんなこと言うの?

 泣くしかないじゃん、こんなの。

 

「げ、言質とったからね……どんなことでも手を貸しなさいよ?」

「ああ、なんでもしてやる」

 

 ふと口を緩めて、フランは私から手を離した。私は大きく深呼吸を繰り返す。

 

 そうだ、落ち着け。

 ただ待っていても運命は良くならない。

 放っておいても世界が滅びるだけ。

 

 私の行動で悲劇が起きるなら、その悲劇の運命さえ捻じ曲げる方法を考えろ。

 大事なものを守るために、最後まで足掻くんだ。

 

 考えろ。この状況を改善するための方法を。

 私にはまだ何かできることがあるはずだ。

 

「……追手を撒くにしても、獣人をどうにかしなくちゃいけないわね」

 

 彼女の感覚の鋭さと、猫に変化するスキルは強力だ。どんなに逃げ隠れしても、相手が彼女を連れている限り、見つけ出されてしまうだろう。

 

「えっと……何か手がかりはなかったけ……」

 

 私はバッグの中から『攻略本』を取り出した。獣人ツヴァイに関する情報の中に、有効なものがあるかもしれない。

 

「いきなり日記を取り出して、何をするつもりだ?」

「ちょっと黙ってて。あと、日記を覗いたら殺すから」

 

 他人には、ポエムな黒歴史ノートに見えてるんだよね。

 そんなもの読みながら対策を考えるなんて、めちゃくちゃ痛い行動に見えるだろうけど、今はそんなことを気にしていられない。

 

 考えろ。

 どこかに、何かあるはずだ。

 聖女だって呪いを何とか躱して、ツヴァイと逢瀬を重ねていたのだから。

 

「一番いいのは、『停止の言葉』を唱えることよね」

「なんだそれは」

「獣人を操ってる呪いを逆手にとって、あの子を無理やり止めるの。でも、呪文には獣人の名前が必要なのよ」

 

 攻略の重要キーワードだから、停止の呪文自体は攻略本に書いてある。ゲーム中に何度も見たフレーズだから、余裕で暗唱できる。

 しかし、問題がひとつある。

 停止の言葉は最後に対象者の名前を呼ばなければ効果がないのだ。

 あの女の子は、死ぬ運命にある『ツヴァイの末の妹』の可能性が高いけど、その名前までは攻略本に書かれていない。

 

「……名前なら、わかるかもしれない」

「マジで?」

 

 フランの言葉に、私は素で叫びそうになってしまった。

 

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