【コミカライズ】クソゲー悪役令嬢~ 滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる! 作:タカば
「失礼します」
執務室に入ってきたのはジェイドだった。人が少ないせいで、ジェイドも城の中をあちこち飛び回っている。
「若様、医局管理者代理をしている師匠から、薬品の発注申請を預かってきました」
「ありがとう。……いやに多いな?」
「それがどうも、投獄中の前医局管理者が薬を着服していたようで……。棚卸してみたら、全然薬品が足りなくなっていたそうです」
「あいつら本当にろくなことしないわね!」
立て直しをする私たちの身にもなってほしい。
「わかった。発注は許可するから、至急薬を補充しておいてくれ」
「かしこまりました」
ジェイドが兄様から決裁済みの書類を受け取る。そこで再びドアがノックされた。
「失礼します。ランチをお持ちしました」
入って来たのは、小柄な女の子のメイドだった。黒髪に金色の瞳が印象的な女の子で、頭には猫のような三角形のふわふわな耳がついている。メイド服のスカートに隠れて見えないけど、おしりには長いしっぽも生えているはずだ。
「ありがとう、フィーア」
彼女はあの日、暗殺者たちから奪ったネコミミ獣人少女だ。
ディッツに呪いを解いてもらったおかげで、今では完全に自由の身だ。しかし、子供ひとりでは行く当てがない、というので以前言った通り、『うちの子』になってもらうことにした。
マナーや読み書きはまだまだだけど、良く働いてくれるから助かっている。
「食べながら仕事するから、適当にデスクに置いておいてくれるかな?」
「わかりました」
「あ、ボクも手伝うよ」
ジェイドは書類を一旦置くと、フィーアと一緒にお茶をいれ始めた。
くりくりの黒髪の美少年と、黒いネコミミ美少女メイドが並んで給仕……!
なんて絵になる、そしてなんてかわいい光景なの!
ブラボー! 誰かこのスチルスクショして! SSDに永久保存するから!!
「ご主人様……?」
私にお茶を運びながらフィーアが首をかしげる。
うーん、困った顔もかわいい。美少女とネコミミのコラボ最高か。
「リリィの奇行は今更だ」
「フランは黙ってて! あ、そうそう」
私はドレスのポケットを探った。フィーアに会ったら渡そうと思ってたものがあるのよね。
「何ですか?」
「約束のプレゼントだよ」
私が出したのは、赤いリボンだった。
「前に言ったでしょ、とっておきのリボンをあげるって」
「でも……あれは猫の姿の時の話ですし」
「約束は約束よ。黒髪に金の瞳だから赤い色が似あうと思うのよね。それに、私の専属メイド、っていう目印にもなるでしょ?」
「わ、私がご主人様の専属?」
フィーアの目がまん丸になった。
「おお、お嬢様、本気ですか?」
フィーア以上に驚いたらしいジェイドが声をあげた。
「そろそろ女の子の側近が欲しかったのよねー。ジェイドひとりじゃ、着替えの手伝いとか困るじゃない?」
「ううぅ……それはそうですけどぉ……」
使える人材はとにかく使う!
それが今のハルバード家のモットーです!
「フィーアもそれでいいわよね?」
「はいっ、精一杯ご主人様にお仕えします!」
こくこく、と頷くフィーアの首元にリボンをつけて、リボンタイ風にする。
うん、私の見立ては間違ってなかった。
赤いリボンのフィーア、めちゃくちゃかわいい。
「……元暗殺者なら護衛としても優秀になるかもしれないね。いい配置かもしれない」
「本人は単純に気に入ったメイドを側に置きたいだけのようだがな」
「兄様もフランも、余計なコメントはいりませんー」
むう、と頬を膨らませたところで、三度ドアがノックされた。
今度入ってきたのは、年かさのメイドのひとりだ。
「若様、お嬢様、お客様がいらっしゃいました」
「客?」
誰だろ?