【コミカライズ】クソゲー悪役令嬢~ 滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

76 / 490
私の専属

「失礼します」

 

 執務室に入ってきたのはジェイドだった。人が少ないせいで、ジェイドも城の中をあちこち飛び回っている。

 

「若様、医局管理者代理をしている師匠から、薬品の発注申請を預かってきました」

「ありがとう。……いやに多いな?」

「それがどうも、投獄中の前医局管理者が薬を着服していたようで……。棚卸してみたら、全然薬品が足りなくなっていたそうです」

「あいつら本当にろくなことしないわね!」

 

 立て直しをする私たちの身にもなってほしい。

 

「わかった。発注は許可するから、至急薬を補充しておいてくれ」

「かしこまりました」

 

 ジェイドが兄様から決裁済みの書類を受け取る。そこで再びドアがノックされた。

 

「失礼します。ランチをお持ちしました」

 

 入って来たのは、小柄な女の子のメイドだった。黒髪に金色の瞳が印象的な女の子で、頭には猫のような三角形のふわふわな耳がついている。メイド服のスカートに隠れて見えないけど、おしりには長いしっぽも生えているはずだ。

 

「ありがとう、フィーア」

 

 彼女はあの日、暗殺者たちから奪ったネコミミ獣人少女だ。

 ディッツに呪いを解いてもらったおかげで、今では完全に自由の身だ。しかし、子供ひとりでは行く当てがない、というので以前言った通り、『うちの子』になってもらうことにした。

 マナーや読み書きはまだまだだけど、良く働いてくれるから助かっている。

 

「食べながら仕事するから、適当にデスクに置いておいてくれるかな?」

「わかりました」

「あ、ボクも手伝うよ」

 

 ジェイドは書類を一旦置くと、フィーアと一緒にお茶をいれ始めた。

 くりくりの黒髪の美少年と、黒いネコミミ美少女メイドが並んで給仕……!

 なんて絵になる、そしてなんてかわいい光景なの!

 ブラボー! 誰かこのスチルスクショして! SSDに永久保存するから!!

 

「ご主人様……?」

 

 私にお茶を運びながらフィーアが首をかしげる。

 うーん、困った顔もかわいい。美少女とネコミミのコラボ最高か。

 

「リリィの奇行は今更だ」

「フランは黙ってて! あ、そうそう」

 

 私はドレスのポケットを探った。フィーアに会ったら渡そうと思ってたものがあるのよね。

 

「何ですか?」

「約束のプレゼントだよ」

 

 私が出したのは、赤いリボンだった。

 

「前に言ったでしょ、とっておきのリボンをあげるって」

「でも……あれは猫の姿の時の話ですし」

「約束は約束よ。黒髪に金の瞳だから赤い色が似あうと思うのよね。それに、私の専属メイド、っていう目印にもなるでしょ?」

「わ、私がご主人様の専属?」

 

 フィーアの目がまん丸になった。

 

「おお、お嬢様、本気ですか?」

 

 フィーア以上に驚いたらしいジェイドが声をあげた。

 

「そろそろ女の子の側近が欲しかったのよねー。ジェイドひとりじゃ、着替えの手伝いとか困るじゃない?」

「ううぅ……それはそうですけどぉ……」

 

 使える人材はとにかく使う!

 それが今のハルバード家のモットーです!

 

「フィーアもそれでいいわよね?」

「はいっ、精一杯ご主人様にお仕えします!」

 

 こくこく、と頷くフィーアの首元にリボンをつけて、リボンタイ風にする。

 うん、私の見立ては間違ってなかった。

 赤いリボンのフィーア、めちゃくちゃかわいい。

 

「……元暗殺者なら護衛としても優秀になるかもしれないね。いい配置かもしれない」

「本人は単純に気に入ったメイドを側に置きたいだけのようだがな」

「兄様もフランも、余計なコメントはいりませんー」

 

 むう、と頬を膨らませたところで、三度ドアがノックされた。

 今度入ってきたのは、年かさのメイドのひとりだ。

 

「若様、お嬢様、お客様がいらっしゃいました」

「客?」

 

 誰だろ?

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。