【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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閑話:悪役令嬢はお風呂に入りたい・中編(リリアーナ視点)

「確か、浴室にも水道の配管は通っていたな?」

 

 フランが言うと、兄様がこくりと頷いた。

 

「はい。上層階の貯水槽から各フロアのトイレと洗面所、風呂場などに水を供給しています」

 

 へー。

 各フロアに水洗トイレがあって清潔だなあ、って思ってたけど、そんな近代的な設備があったんだ。

 

「それを、二股に分けて……片方の水を供給直前に高火力で温めて注いだらどうだ」

「熱湯と水を浴槽で混ぜるの?」

「水の配管を合流させて、適温の温水を注いでもいい」

 

 フランは紙に一本の線が二股になり、また合流する様子を描いた。別れた片方に、『加熱設備』と書き加える。

 

「問題は加熱方法よね」

 

 当然、竃などは使えない。

 私は魔法使い師弟を見た。

 

「魔法でどうにかならないの、ディッツ、ジェイド」

「コンパクトで高火力っつーと火魔法が一番ラクだな。書いてみろ、ジェイド」

「えええ……っと……」

 

 ジェイドは懐から虹色に光るチョークのようなものを取り出すと、テーブルの上に魔法陣を描き始めた。

 

「単純に考えると……こう……かな?」

 

 描かれた図形を兄様がまじまじと見つめる。

 

「うーん、悪くないけど1点で加熱してしまうと、高熱でパイプが痛みそうだね」

「加熱する箇所を長くするか?」

 

 兄様の意見を聞いて、フランが図を修正する。左右対称だった配管が、加熱設備のある方だけ長くのびた。

 

「そうすると、今度は全体の魔力の消費効率が悪くなりませんか」

「これを使うのは、魔力量の少ないメイドさんたち、ですからね……」

「なら、パイプを折りたたむのはどうだ?」

 

 フランはうねうねとパイプを蛇行させる。それを見て兄様が目を輝かせた。

 

「さすが先輩ですね。折りたたんでしまえば、一か所に魔力を込めるだけで、パイプ全体の水を温められる……すごく効率がいいと思います。曲がったパイプは職人に作らせるとして……ジェイド、この形に合った術式は組める?」

 

 ジェイドは首をかしげながら、テーブルの上の魔法陣を修正した。

 

「えっと……検証が必要、だけど……これを配管に仕込めば、使用者が魔力を通すだけでお湯ができる……と、思います」

「すごい、ジェイド!」

「あ、で、でも! 魔法陣用の塗料は、魔力を通しやすい代わりに落ちやすくて……使うたびに書かないと、うまく動かない、かも」

「それなら、これを使ってみるか」

 

 兄様は急に立ち上がると、自分の荷物から小瓶を取り出した。中にはとろりとした透明な液体が入っている。

 

「最近王都で開発された、定着液だ。魔力を通しやすいのが特性で、利用方法を考えていたところだったんだが……今書いた魔法陣の上に塗れば、崩れなくなるんじゃないか?」

 

 木工工作に使うニスみたいなものかな?

 ぺたぺたとチョークの上から定着液を塗ってみる。文字はにじむこともかすれることもなく、そこに固定された。

 

「少し魔力が消費されるが、蛇口から湯が出るのなら、風呂を入れる手間は大幅に減るだろうな」

「そうね……」

 

 あれ?

 なんか、瞬間湯沸かし器給湯システム的なものができてる……?

 使ってるのは、ガスじゃなくて魔力だけど。

 

 魔法陣を見ながら、私はおずおずと口を開いた。

 

「あのさ……これ、台所と洗濯室にも設置したら、めちゃくちゃ便利になるんじゃ……ないかな?」

「ああ、そういえばそっちも湯を使うな」

 

 フランは配管の図の隣に、台所、洗濯室、と追記する。

 

「……というか、このシステム自体を売りに出したら商売になるんじゃないか?」

 

 兄様は魔法陣をじっと見つめる。それを聞いて、フィーアが肩をすくめた。

 

「それはどうでしょうか、若様」

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