忘却少女と異界の獣   作:k25

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四天王後半戦です。


13,四天王-後編

「おっし!来たな。待ってたぜ、チャレンジャー。」

 

3つ目の部屋に入るなり、いきなり声をかけられる。

赤いアフロヘアーが特徴的な人物が手を振りながらこちらを見据えていた。

 

「自己紹介が遅れたな。俺はオーバ。ま、見ての通り3人目の四天王だ。」

 

「フィランです…よろしくお願いします…。」

 

オーバのノリの若干気圧されつつもフィランも自己紹介をする。

 

「ああ、聞いてるぜ。デンジのやつからな。久々に熱いトレーナーが現れたってな。

あいつがそこまで言うのなら、必ずここまで来るだろうと思っていた。だから楽しみに待ってたんだ。」

 

どうやら二人は知り合いだったようだ。

 

「…そういうことでしたか。」

 

「早速だ!始めようぜ!」

 

「はい…!」

 

 

オーバは待ちきれないといった様子でボールを構え、フィランもそれに応える。

 

 

「行くぜ!ギャロップ!」

 

「フェローチェ!」

 

 

3人目の四天王との戦闘が幕を開けた。

 

 

「ギャロップ!にほんばれ!」

 

「フェローチェ、とんぼがえり。」

 

ギャロップにとびかかったフェローチェがそのままの勢いでフィランの手元に戻る。

ほのおタイプ相手にフェローチェで突っ張る理由もないので一度交代しようという訳だ。

 

だが、とんぼがえりではほのおタイプのギャロップには大きなダメージを与えられず、にほんばれも成功してしまう。

 

ギャロップが炎を球体にし、フィールド上方に疑似太陽として放つ。

 

「眩し…」

フィランは思わず目を細める。

 

上空から小さな熱球が光を降り注がせているフィールドにフェローチェと交代するポケモンを繰り出した。

 

「ガブリアス!」

 

「なるほど!ギャロップ!一度引くぞ!」

 

だが不利な組み合わせで戦わないのは相手も同じか。

 

「ガブリアス!じしん」

 

大きな揺れが起こり、次に出てくるポケモンを迎え撃つ。

 

「フワライド!」

 

はずだった。

だが、オーバが繰り出したのはひこうタイプのフワライド。

ガブリアスのじしんは空を切る。この場合は地面だが。

 

「ガブリアス。続けてストーンエッジ。」

 

休まず次の一撃を、素早く切り替えて放つ。

 

だが、こちらもフワライドには命中しなかった。

勢いよく放たれた岩に対して、フワライドはふわふわと宙を浮き回避してしまう。

むしろ岩が空気を切る事を利用して、風に乗っているかの様だった。

 

「フワライド、かげぶんしん!」

 

攻撃を避けたフワライドはふわふわと自身の幻影を増やしていく。

 

リョウとの戦いではほうでんで一斉にかき消すことでかげぶんしんを対策したが、じしんは当たらずガブリアスで同じ戦法を取ることはできない。

 

「…とりあえず一つずつ潰すか…?ガブリアス、ほのおのキバ。」

 

ガブリアスがフワライドの分身を一つほのおのキバで消し去る。

 

だが、分身はまだ複数存在しており、これを全部ガブリアスに対応してもらうのは無理がありそうだ。

 

 

「よし!引こう!ガブリアス!」

 

「そう来ると思ったぜ。フワライド、バトンタッチ!」

 

 

ガブリアスを戻すと同時に、複数のフワライドもオーバの手元に戻っていく。

 

「あっ!」

 

フィランは何かに気付き慌てる仕草を見せる。

だが、既に交代は済ませている。次のポケモンを出しかけてしまっている。

 

フィランはロトムを、オーバはハガネールを繰り出した。

 

お互いにポケモンを交代した両者だが、その間にはある一つの差異があった。

 

「これは不味い…」

 

ハガネールはフワライドのかげぶんしんをバトンタッチで引き継いだまま出てきたのだ。

 

「どうだ!突破できるか⁉」

 

複数のハガネールがロトムを囲うように並んでいる。

 

(ハガネールにはでんきわざもひこうわざも有効ではない…ほんとどうしようか…)

 

「ロトム!そこの一つにエアスラッシュ!」

 

フィランが指示したのは自分に最も近い、ロトムから見て背面にいる分身。

そこに向かってロトムがエアスラッシュを放つ。

 

「ハガネール、がんせきふうじだ!ロトムの動きを止めろ!」

 

エアスラッシュが分身を一つ消し、包囲網に穴が開く。

 

「ロトム!戻ってきて!」

 

その穴からフィランのもとに戻ろうとするロトムに岩がぶつけられる。

その衝撃に耐えかねてスピードを落とすロトムと、その隙に再び包囲網を形成しようとするハガネール。

 

「間に合え…!」

 

既に閉じかけていた道筋、ハガネールの分身たちの隙間、そのわずかな間隔をロトムは潜り抜けフィランのもとへ。

 

「よし。」

 

ロトムが戻ってきてくれたことに一先ず安堵する。

がんせきふうじのダメージもあり、かなり傷ついてはいるが、ここでロトムを失う訳にはいかない。

 

「反撃だ!エンペルト!」

 

ロトムからエンペルトに交代し巻き返しを狙う。

 

「なみのり!」

 

呼び起された水流がハガネールを分身もろとも流し去ろうと地表を覆う。

だが、ギャロップが作り出した小さな太陽の影響か、いつもより威力は控えめに見える。

 

「ハガネール、ほのおのキバ!」

 

オーバの指示に1匹のハガネールが動き出し、エンペルトに向かってくる。

以外にも本体は近くにいたらしく、水の威力の不十分なことがあいまって接近を許してしまう。

 

「エンペルト!アクアジェット!」

 

とっさにフィランがエンペルトに言う。

水流に乗ったままアクアジェットで更に加速、一気にフィールドの反対側へ。

ハガネールのほのおのキバは届かず、距離を開ける形となった。

 

「もう一回、なみのりだ!」

 

「ビュウウ!!」

 

 

今来たほうに向かって再び水流を放つ。

2回分の波が激しくぶつかり合い、その衝撃ですべての分身は消滅。

ハガネールもそのままダウンとなった。

 

 

「何とかなったかな…?」

 

「…さすがだ。それでこそだ!俺ももっと熱くなってきたぜ!!」

 

1匹目が敗れてなお、その闘志が熱く滾るオーバ。

その手から次なるポケモンが投下される。

 

「ミミロップ!」

 

「エンペルト!ラスターカノン!」

 

エンペルトが自身の翼を前に向け光を集める。

光は次第に収束していき、球体となり放たれる。

その直前。

 

「ミミロップ!とびひざげり!」

 

ミミロップが素早く跳躍し、その勢いのまま蹴りを繰り出す。

 

ラスターカノンを構えていたエンペルトでは回避は間に合わず、ミミロップの膝が直撃してしまう。

 

 

「エンペルト!」

 

 

はがねタイプのエンペルトに対してかくとう技は効果抜群だ。

その一撃でエンペルトは倒れてしまった。

 

「…お疲れ様。フェローチェ!」

 

高速でかくとう技を打つ事には誰にも負けはしない。

そんな相棒の出番だ。

 

「インファイト!」

 

「ほのおのパンチ!」

 

フェローチェが急接近し、ミミロップが迎え撃たんとする。

 

ミミロップの拳が横から殴りつけるようにフェローチェの顔に迫る。

瞬時に上体を下げたフェローチェは、その攻撃を躱しながらミミロップの懐に潜り込む。

そのままミミロップの胴体に至近距離から蹴りを叩き込んだ。

 

「……」

 

勢いよく吹っ飛んだミミロップを、心なしかドヤ顔のフェローチェが見下ろしている。

ミミロップはどうやらそのまま伸びているらしい。

 

「なるほど。確かにデンジの野郎がいうだけのことはありそうだぜ。

おもしろい!」

 

そういってオーバは再びフワライドを繰り出した。

 

「フェローチェ、とんぼがえり。」

 

再び不利な状況から脱するためにフェローチェをとんぼ返りで交代させる。

 

「フワライド、かげぶんしんだ。」

 

オーバは再び先ほどと同じ戦術で立ち回ろうとする。

だが、一度見た戦術にそのままやられるフィランではない。

 

かげぶんしんが発生する前にフェローチェはフワライドに攻撃と交代まで済ませている。

今度は迷うまでもなく、ノータイムでロトムを繰り出す。

 

「ロトム!」

 

「さすがに同じ手は通用しないか、っと。フワライド!あやしいかぜ!」

 

「ほうでん!!」

 

かげぶんしん対ロトムの対面なら1戦目に済ませている。

ロトムもわかりきっているようで電気を一か所ではなく一面に放出させる。

 

次々とフワライドの分身は消えていき、最後に本体を残すのみとなった。

そのまま周りに放出していた電撃を本体に集中させる。

 

フワライドもただでやられる訳もなく、分身が消えていく間にあやしいかぜを放とうとしている。

 

 

ほうでんとあやしいかぜ、お互いの遠距離での攻撃が交差する。

 

電撃と風が止み、一瞬、お互いが視線を交わす。

次の瞬間、フワライドもロトムも力なく地に落ちた。

 

弱点であるでんき技を正面から受けたフワライドはもちろん、ハガネールとの戦闘でかなりのダメージを追っていたロトムも戦闘不能となった。

 

「ありがとうね。ロトム。」

 

フィランはロトムをボールに戻しながら感謝の言葉を口にした。

ハガネールとの戦闘で、多少無理やりにでもロトムを温存させたかったのはこのためだった。

相打ちにはなってしまったが、フワライドを倒してもらうという重要な仕事をロトムは遂行した。

 

 

「まだまだ!」

 

お互い次のポケモンを繰り出す。

オーバはギャロップを、フィランは再びガブリアスを。

 

「ギャロップ!とびはねる!」

 

「ガブリアス。次の一撃、確実に当てるよ。準備して。」

 

高々と飛び上がってしまったギャロップにガブリアスは攻撃手段を持たない。

故にギャロップが降下してくるタイミング、その瞬間を狙う。

 

 

そして、上空より猛スピードでギャロップが迫りくる。

 

「グァアアオ!!」

 

それをガブリアスは正面から受け止めた。

 

「なんだと!」

 

「行けええ!!」

 

そのままギャロップを両手でしっかりと掴み、勢いよく地面に投げつけた。

そしてギャロップが立ち上がる前に大きく地面を踏み鳴らす。

 

そうして発生したじしんが全身を地面に設置させた状態のギャロップを激しく揺さぶる。

 

まさしく全身でじしんを受けてしまったギャロップはそのまま戦闘不能となった。

 

「感じるぜ!君の熱いビート!これが俺の全力だ!」

 

オーバは最後のポケモン、ゴウカザルを繰り出した。

 

「ゴウカザル!フレアドライブ!」

 

「ガブリアス!じしん!」

 

激しい揺れのなか、ゴウカザルは全身に炎をまといありったけの力で突進する。

こうしてる最中にもじしんで体力は削れているだろうが、そこはトレーナーに似ているのか、まさしく燃え上がる炎のような気合でガブリアスに迫る。

 

 

ゴウカザルの拳は、ガブリアスに届いた。

だが、ガブリアスも全力で受け止める。

 

そうして幾ばくかの拮抗の後、ガブリアスが片膝を地面につく。

まさにギリギリといった状態。

 

 

対するゴウカザルは、というと。

既に全身から燃え盛っていた炎は消えている。

ガブリアスに対して突き出した拳をそのままに、一つも動かない。

 

まさに全力を出し切った攻撃だったのだろう。

じしんのダメージとフレアドライブの反動を受け、そのまま戦闘不能となっていた。

 

その後、糸が切れたかのようにゴウカザルの体がうつぶせに倒れる。

 

 

「………………………………」

 

「…?ガブリアス。一先ず戻っておいで。」

 

オーバはゴウカザルをボールに戻しはしたが、それ以降何も言わず、動きもしない。

その様子を不思議に思いながら、フィランは一先ずガブリアスをボールに戻した。

 

 

「………ゴウカザルも、他のポケモン達も、そして何より俺も、燃え尽きちまったぜ。

先に進みな、チャレンジャー。期待してるぜ。」

 

 

「…はい!」

 

 

 

 

まさしく燃え尽きた男の静かな激励を受け、フィランは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

これまでの2戦と同じようにポケモンたちのキズを治療して行く。

 

「ふう…あっついな…」

 

フィランもタオルで汗をぬぐいながら、勢いよく水を飲んだ。

オーバとのバトルはまさしく熱闘だった。

気付かぬうちに喉も乾いていたようだ。

 

だが、のんびり休んではいられない。

次が最後の四天王だ。

一層気を引き締めて、フィランは足を踏み出した。

 

 

 

 

「これは、いいタイミングでお越しになりました。」

部屋に入るなり目の前の人物が本を閉じながら言った。

ここにいるということは当然四天王なのだろうが。

 

「ちょうど本を読み終えたところでして。

さて、私はゴヨウ。使うのはエスパータイプ。それにしてもここまで来るとはかなりの実力をお持ちのようだ。

四天王最強と言われる私も全力でお相手させていただくとしましょう。」

 

「よろしくお願いします!」

 

 

四天王最後のトレーナー、ゴヨウはエスパータイプの使い手だと自ら明かしてくれた。

ならば、

 

「フェローチェ!」

 

高速、高火力でむし技をぶつけ早期決着を目指す。

 

「バリヤード!」

 

ゴヨウの出したポケモンはバリヤード、バリアを張って戦況を有利にするポケモンだ。

 

「リフレクター!」

 

「フェローチェ!とびかかる!」

 

バリヤードがひかりのかべを貼り終わる前にフェローチェが襲い掛かる。

バリアを形成しようとしていたところを襲われ大きく態勢を崩すバリヤード。

 

「フェローチェ、そのまま逃がさないで。」

一度飛び退いたフェローチェに対し追撃を指示する。

 

立ち上がろうとするバリヤードにフェローチェは容赦なく再び襲い掛かった。

 

「くっ!一瞬ですか!」

 

フェローチェはまさしく瞬時にバリヤードを屠りさった。

これには四天王最強を自負するゴヨウも動揺を隠せずにいた。

 

「次です!チャーレム!ほのおのパンチ!」

 

「フェローチェ。」

 

ゴヨウの次のポケモンはエスパータイプとかくとうタイプをあわせもつチャーレム。

炎をまとった拳で立ち向かって来るチャーレムに対して、フィランは短く、フェローチェに声をかける。

 

それだけですべてを理解したフェローチェは上空に飛び上がった。

 

勢いよくフェローチェのもとに飛び込んだチャーレムの攻撃は目標地点に対象がいなくなってしまったことにより空振りとなった。

 

「これは…チャーレム!上に注意です!」

 

ゴヨウは次の展開に気が付きチャーレムに声を指示を出すが時すでに遅しだ。

次の瞬間には上空からフェローチェが猛襲する。

 

 

「チャーレム!」

 

上空からの一撃にチャーレムはフェローチェのもとに倒れ伏した。

 

相手を2匹連続で倒し、勢いを増したフェローチェはもう止まらない。

 

「なんと…。キリンリキ!」

 

「…」

 

ゴヨウは次にキリンリキを繰り出す。

だが先ほど以上のスピードでフェローチェが動き出す。

もうキリンリキにも、ゴヨウにも追うことはできない。

 

フィランも目では追うことは出来ず、感覚でフェローチェの動きを察しているに過ぎない。

 

一瞬の間にキリンリキに接近し蹴りを突き刺す。

 

「なんということです…」

 

 

まさしく瞬きする間もないかのような戦い。

いや、戦いと呼ぶには圧倒的過ぎるかもしれない。

 

オーラをまとい更に能力を上昇させながらフェローチェはフィランの傍に立った。

「このまま貫くよ。行けるよね?」

フィランの声に当然、と言わんばかりの視線を向け、フェローチェは次の敵に向かっていく。

 

 

続くフーディン、ドータクンも一撃で倒していき、あっという間に勝負は付いた。

 

 

「フェローチェ、お疲れ様。…私の勝ちですね。」

鬼神のごとき活躍だった相棒を労い、ボールに戻す。

 

「まさか、この私のポケモン達が1匹で全滅させられてしまうとは…

凄まじい力をお持ちのようだ。その力があればチャンピオンにも届くやもしれません。

さあ、最後の扉をくぐりこのポケモンリーグの最奥へ挑むのです。」

 

ゴヨウに促され、部屋を後にする。

 

 

 

四天王は乗り越えた。後はただ一人、この地において最強の人物が待つ場所へ。

 

 

 

 




後半戦でした。
オーバ戦で結構尺とったのでゴヨウは短くなりました。
ごめんねゴヨウさん。

オーバはDPの時は手持ちにほのおタイプが2匹しかいないインチキほのお使いです。
そのせいでタイプがばらけてて一番強いという説もありますが。
いつかPt版オーバと再戦させたいですね。

ゴヨウはエスパーが並んでおり結果としてフェローチェ無双になってしまいました。
余談ですがぬしポケモンのオーラとウルトラビーストのビーストブーストは同じものだそうです。

そして次回、とうとうチャンピオン戦へ。
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