忘却少女と異界の獣   作:k25

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チャンピオン戦です。
あのBGM聞きながら書きました。


14,戦闘!チャンピオンシロナ

ポケモンリーグの最奥へ至る廊下、最後の扉を目の前にして、フィランは大きく深呼吸をした。

 

「……ふう。よし!行こうか!行けるよね!?」

 

自分の気持ちを整えて、仲間たちに声を掛ける。

 

ガブリアス、

エンペルト、

ロトム、

 

そして、フェローチェ。

 

ここまで無事に進んでこれたのもみんながいたから、そんな感謝と、最強に挑む覚悟をこめて。

 

扉をくぐった。

 

 

 

 

 

 

「……ついに来たのね。」

 

「お待たせしました。」

 

しばらくぶりにあったシロナと言葉を交わす。

 

「ええ。確かに待ったわ。でも、ちっとも苦痛じゃ無かった。

…初めて出会ってから、最初はただ一つの事しか知らない、興味が無かったような、言ってしまえば自分の事すら興味が無かったようなアナタが、一緒に暮らす中で段々と表情豊かになっていくのは嬉しかった。

それ故に、アナタが旅立つって決めた日は私も少し寂しさを感じたわ。

でも、色々なことを知って、色々な人やポケモンと出会って、どんな表情で私のもとにまた現れるのか、それが楽しみで仕方なかった。

そう、この時を待っていたから、だから、全然退屈じゃなかったわ。」

 

「今思うと、本当にあの日に私を見つけてくれたのがシロナさんでよかったです。

それで、今の私はどんな表情をしてますか?」

 

「いい顔してるわ。…それじゃ、始めましょうか!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

向かい合ってボールを構える二人。

銀と水色、二つの眼差しがお互いを捉えて離さない。

一呼吸の後、二つのボールが宙を舞う。

 

ポケモンリーグ、最後の戦いが幕を開けた。

 

「ロズレイド!」

「フェローチェ!」

 

お互い、最初のポケモンを見るや否や一手目の技を決めた。

 

「じんつうりき!」

「とんぼがえり!」

 

ロズレイドはフェローチェに対して有効打となる攻撃を放とうとするが、ハイスピードでとんぼがえりするフェローチェには当たらない。

 

「ロトム!」

 

ロトムがじんつうりきを受け止めながらフェローチェと交代する。

くさタイプのロズレイドのじんつうりきでは大きなダメージにはならず、ロトムはまだまだ平気なようだ。

 

フェローチェがロトムと入れ替わり盤面が変化しようと、シロナの攻撃の手は止まらない。

 

「ロズレイド、ヘドロばくだん。」

 

ロズレイドが毒液を球状に纏め、ロトムに向かって放つ。

 

「エアスラッシュ!」

フィランとロトムも負け時と対抗する。

空気の刃が毒液を切り裂き、ロトムにあたることもなく四方に散らばる。

 

「シャドーボール!」

 

シロナは次々とロズレイドに指示を出し、ロズレイドもそれに応えて次々と技を繰り出す。

 

ロトムはシャドーボールを回避し、再びエアスラッシュをロズレイド自身を狙って放つ。

今度はロズレイド本体に命中したその攻撃は、ロズレイドを倒しきるまでは行かなかったものの、大きなダメージを与えた。

 

「ロズレイド!ヘドロばくだん!」

 

大きく後ずさりながらも再びヘドロばくだんを構えるロズレイド。

 

「もう一度エアスラッシュで迎え撃とう!」

 

先ほどと同じようにエアスラッシュでヘドロばくだんを切り裂き、対処しようとするフィラン。

 

 

地上から放たれたヘドロばくだんと空中から打ち下ろされたエアスラッシュが交差する。

ヘドロばくだんは先ほどと同じようにエアスラッシュに切り裂かれ、ロトムに届く前に地に落ちる。

 

「…!?」

 

だが、撃ち落としたはずのヘドロばくだんは再び姿を現した。

そのことに動揺してしまいフィランは一瞬固まる。

 

「…!ロトム、急いでもう一度!」

 

慌ててロトムに指示を出すが間に合わず、ヘドロばくだんはロトムに命中。

ロトムはダメージを負い、少しよろめく。

 

(1つ目の後ろに2つ目を隠していたのか…!)

 

あの時、放たれた攻撃は二つあった。

それを縦に2つ並べることで1つ目の攻撃をおとりにしたのだ。

 

もちろんそんな事、シロナが指示したところは見ていない。

自発的に攻撃を当てる作戦をとったロズレイド、それを信じて任せたシロナ。

さすがはチャンピオンとそのポケモンといったところか。

 

予想外の攻撃に面食らってしまいはしたが、ここで止まるわけにも行かない。

「ロトム!エアスラッシュ!」

 

ロズレイドもさすがに短いスパンで2連続のヘドロばくだんを放って少し疲労したようだ。そこを狙ってフィラン達も反撃にでる。

 

2度目のエアスラッシュはさすがに耐えきれなかった様でロズレイドは倒れる。

だが、ロトムも最初のじんつうりきにヘドロばくだんでかなりのダメージを負ってしまった。

(次のポケモン次第では交代も考えないとな。)

シロナの次のポケモンは何か、ロトムがこれ以上厳しそうだったら交代も視野に入れながら今後の展開を考える。

 

 

 

「…お疲れ様。ミロカロス!」

 

ロズレイドに代わるポケモンはミロカロス。

相性上はロトムのほうが有利に見える。

 

「ロトム、もうちょっとだけ頑張って!」

 

フィランもロトムの戦闘継続を決めた。

 

 

ミロカロスは優雅に佇み、戦闘の気配など感じさせない様子でいる。

だが、ここは戦いの場だ。フィランは速攻で仕掛けに行く。

 

「ロトム!ほうでん!」

 

ロトムの体から電気が放たれてミロカロスに向かっていく。

 

「…ミロカロス、ミラーコート。」

 

電撃を浴びたミロカロスは少なくないダメージを負うが、何とか堪えている。

直後、ミロカロスから電撃が放たれロトムを襲う。

 

「ミラーコートか…!」

 

ミラーコートは直後に受けた特殊技を倍の威力にして返す技だ。

ロトムから放たれた電撃の倍の威力の攻撃をくらいロトムは倒れる。

 

「迂闊だったか…ロトム、お疲れ様。」

ミロカロスのミラーコートを警戒せずにでんき技を撃ってしまったことを悔みつつ、切り替えて次のポケモンを出す。

 

「フェローチェ!インファイト!」

 

一度フェローチェを繰り出し、ロトムが削ったミロカロスを確実に倒しにいく。

実際、ミロカロスもかなり消耗していた様ですんなりと倒されてくれる。

 

「さすが、ここまで進んできただけあるわね。」

そうは言うがシロナはまだまだ余裕そうだ。

そのまま、シロナは3匹目を繰り出す。

 

「トリトドン!」

 

「フェローチェ!とんぼがえり!」

 

「だくりゅう!」

 

トリトドンがだくりゅうでフェローチェを範囲攻撃で流し去ろうとするが、その前にフェローチェはフィランの手元に戻ってしまう。

 

「エンペルト!」

代わりに出てきたのはエンペルトだ。

 

みずタイプのエンペルトにだくりゅうは効果が薄く、すんなりと着地に成功する。

 

 

「エンペルト!くさむすび!」

 

「トリトドン!交代!」

 

トリトドンの唯一の弱点であるくさ技で攻撃しようと試みるがシロナもそこは警戒していたようだ。

 

「ミカルゲ!」

「おんみょ~ん」

 

くさむすびはミカルゲに当たったが大きなダメージにはなっていないようだ。

 

「ラスターカノン!」

「あくのはどう!」

 

フィランとシロナ、お互いに次の手を決める。

 

銀と黒の対照的な色の攻撃が交差し、互いのポケモンにぶつかる。

お互いに大きなダメージにはなっていないようだが、このまま同じだけダメージを交換し続けるとトリトドンの突破が難しくなり、フィラン的には厳しい状況となる。

 

「エンペルト!交代!」

 

 

今後の展開も考えてエンペルトは温存しておきたい。

そう考えてエンペルトに戻るように指示をする。

 

「ガブリアス!」

 

エンペルトと交代で出したのはガブリアス。

このガブリアス、実はシロナ戦前に技マシンで新たな技を習得させてある。

 

(ぶっつけ本番だけど…大丈夫でしょ!)

 

ガブリアスならきっと大丈夫だろう。と、無責任にも見えるがそれも信頼故だ。

 

「ガブリアス!つるぎのまい!」

 

場に出るや否やガブリアスは勇ましく舞い、自身の力を高める。

 

「ミカルゲ!あくのはどう!」

 

当然相手からしてみれば、そんな隙を見逃すはずもない。

ミカルゲから出た黒い波動がガブリアスを襲うが、ガブリアスのタフさでもって無理やりつるぎのまいを完了させる。

 

「ガブリアス!じしん!」

普段より大きな揺れに地面が悲鳴を上げる。

 

威力が上がったじしんでミカルゲに逆襲する。

「おんみょーん…」

 

「その子、あの時のフカマルね…

見違えるほどに立派になったわね。君も、フィランについて行って良かった?」

 

「グォ。」

 

シロナが幼かったフカマルを思い起こし言葉を掛け、ガブリアスもそれに応える。

あの日、フィランについていくように促した自分の判断は間違いでは無かった、と。

 

「なら、こっちも!ガブリアス!」

 

シロナもガブリアスを繰り出す。

 

2匹の竜が向かい合う。

 

「げきりん!」

「ドラゴンクロー!」

 

互いに弱点であるドラゴン技を繰り出す。

鋭い爪を構え、シロナのガブリアスに立ち向かっていく。

対するシロナのガブリアスは見境なく暴れまわっている。

 

フィランのガブリアスが僅かに相手に爪を突き立てたが、まさに竜の怒りとばかりに大暴れするシロナのガブリアスに反撃を食らい、大きく吹き飛んでしまう。

 

地面に爪を突き立て、吹き飛ばされた威力を減衰させる。

態勢を立て直し、立ち上がったガブリアスは再び果敢にシロナのガブリアスに向かっていく。

またしても僅かにダメージを与えはしたが今度こそ大きな一撃をお見舞いされてしまう。

 

「ガブリアス!」

 

ガブリアスが気を失い、地に伏す。

ボールにガブリアスを戻して、次のポケモンに交代する。

 

「お疲れ様…エンペルト!」

 

シロナのガブリアスは一先ず暴れつくし、混乱しているようだ。

ガブリアスは倒されてしまったがこれは大きなチャンスだ。

 

ガブリアスがもし混乱でエンペルトに攻撃出来なければ、れいとうビームでガブリアスを確実に倒すことができる。

 

故に、ここでフィランとエンペルトが取る行動は、

「ガブリアス!交代!」

「エンペルト!くさむすび!」

 

れいとうビームを受けに来たトリトドンを狙っての1点読みのくさむすび。

 

「ぽわ~」

 

フィランの読みは的中。トリトドンに草が絡み付き地面に縛り付ける。

 

唯一の弱点であるくさタイプの攻撃をまともに食らったトリトドンはそれ以上戦うことは出来ず、静かに気を失った。

 

トリトドンが倒れたことで、お互いの残りのポケモンは2匹ずつとなった。

 

シロナのラスト2匹、そのうちの1匹はガブリアス。

 

「ルカリオ!」

 

もう1匹をシロナは繰り出した。

 

「エンペルト!なみのり!」

「ルカリオ、インファイト!」

 

エンペルトが水を呼び出し、水流をルカリオにぶつけようとする。

だが、ルカリオの方が早い。

 

ルカリオはエンペルトに肉薄し、強力な打撃を叩き込む。

エンペルトは翼で打撃をガードしようと試みるが、鋼の拳が鋼の翼を砕く。

 

攻撃を受け止めながら後ずさるエンペルトに容赦なく追撃するルカリオ。

連続攻撃ですっかり疲弊したエンペルトに最後の止めの一撃を放ち大きく吹き飛ばす。

 

「エンペルト…!」

 

完全に戦闘不能となってしまったエンペルトをボールに戻す。

いよいよフィランの手持ちは最後の1匹になった。

 

「…フェローチェ!」

 

「インファイト!」

「しんそく!」

 

ルカリオが一瞬で姿を消し、フェローチェの目の前に現れる。

目にも止まらぬスピードで拳を繰り出し一発食らわせる。

 

だが、フェローチェもさすがのスピードといったところか、瞬時に反応し反撃に出る。

ルカリオに蹴りを食らわせ吹き飛ばす。

放り上げられたルカリオに素早く飛び掛かり追撃する。

 

2度目の蹴りにルカリオは地面に叩きつけられて転がる。

そのまま重力の助けも借りてルカリオに向かって膝蹴りをお見舞いする。

 

 

ルカリオを倒すことには成功したがフェローチェの耐久ではしんそく1発だけでも結構なダメージを貰ってしまった。

 

次の攻防でこの戦いの決着は付くだろう。

 

シロナは最後のポケモン、ガブリアスを繰り出した。

 

 

「フェローチェ!インファイト!」

「ガブリアス!げきりん!」

 

 

 

フェローチェがガブリアスに接近、首元に回し蹴りを入れる。

この一撃で決める、全力の一撃。

 

 

 

 

だが、

「…!グァアアオ!」

 

すんでのところでガブリアスは攻撃を耐え抜いた。

そして、竜の怒りがフェローチェに牙を向く。

 

ガブリアスの腕が振りぬかれ、まさしく暴力という言葉が似合う力でフェローチェを薙ぎ払う。

 

 

 

「フェローチェ!!」

 

 

 

倒れたフェローチェに、思わずフィランは駆け寄り抱きしめる。

フェローチェも残り僅かの力をふり絞ってフィランの頬に手を添える。

 

流れ落ちる水滴を拭うために。

 

 

「フェロっ、チェ。フェローチェ、ごめん、ね。無理させちゃったのに、私たち、っ!」

 

 

涙と一緒に嗚咽も増していき上手く喋れていない。

 

 

 

「ここまでの様ね。でも、たった4匹で私のポケモンを5匹も倒して、最後の1匹をここまで追い詰めたトレーナーはアナタが初めてよ。

…正直、後1匹いたら私は負けていた可能性が高いわ。」

 

 

「っ、シロナさん…」

 

 

フィランとフェローチェにシロナが声を掛ける。

 

「っでも、、わたし、勝てなかった……!」

 

「そうね。私がこんなこというのもアレかもしれないけど、誰だって負けることはあるわ。それでも、立ち上がってまた戦えるか、それが本当に強いってことだと思うの。」

 

「また、立ち上がる…」

 

「そう!だから、また私に挑んできなさい!アナタは才能のあるトレーナーよ。私が保障するわ!…ま、でも一休みも必要ね。今日は久しぶりに家に帰らない?」

 

「…ハイ!」

 

 

フィランは涙を拭って立ち上がった。

精神的にも、立ち上がってまた戦うためにも、今日はこの敗戦を受け止めることが必要だ。

 

 

 

 

 

 

 




シロナ戦の結末は最後の最後まで悩みました。
ですが別に主人公が無敗である必要もないよなと思いこうなりました。

次回、シンオウ編最終回です。
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