「ところで、結局犯人はどこに行ったんだろうね?」
ヒビキの疑いがめでたく晴れたことで一つの疑問が浮上した。
ウツギの研究所からポケモンを盗んでいった犯人のことだ。
「あ、僕、フィランと会う前に赤い髪の、別の同い年くらいの子と会ったんだ。
そういえばワニノコを連れていた…」
ヒビキが思い出したかのように言う。
本当は忘れていたわけでは無かったが、フィランとのバトル、そして強制連行と言うタイミングを逃していた。
「きっとその子だ!なんせ僕の研究所から持ち去られたポケモンもワニノコだからね。」
「そうじゃないかしら。私も研究所の窓をのぞき込んでいる赤髪の男の子を見たから。」
研究所の入り口から新たな声が聞こえる。
「コトネ!」
彼女はコトネ。ヒビキと同じくワカバタウンに住む彼の幼馴染だ。
「やあ、コトネちゃん。」
「おはようございます。ウツギ博士。」
「で、いきなり出てきてどうしたんだよ。」
ウツギに軽く会釈をしたコトネにヒビキが問いかける。
「…強そうなポケモンとそのトレーナーに連行されるヒビキが見えたから、何事かなって思って話を聞いてたの。」
「なんだよ!見てたなら助けてよ!」
「まあまあ、疑いは晴れたんだからよかったじゃない。」
「うーん…」
コトネの返答にヒビキはいまいち納得が言っていない様子だ。
「ま、まあその話はいいんじゃないかな?」
そんなやり取りにヒビキを誤認逮捕した張本人が誤魔化すかのよう水を差した。
「コトネちゃんだっけ?私はフィランって言います。よろしくね。」
「コトネです。よろしく。」
二人は軽く自己紹介をして、話をあやふやにさせるフィランの作戦は見事成功したのであった。
「そうだ!ところでヒビキ君。あのおじいさん、何だって?」
泥棒騒ぎですっかり忘れていた本来の要件を思い出したウツギ。
おじいさんの要件は一体何だったのだろうか。
「ああ、そのことなんですけど、これ…」
ヒビキはそういって一つのポケモンのタマゴをウツギに手渡した。
「なるほどね。やっぱりタマゴだったか。確かにあまり見ない種類の物だけど、今時タマゴ一つで大騒ぎするなんて相変わらずだなぁ。」
ヒビキはウツギのあのおじいさんへの評価に苦笑いする。
「まあでも、もしかしたら何かあるのかも知れないし、僕の方で調べてみるよ!」
「わかりました。それと、オーキド博士という人にも会ったんです。で、これを貰ったんですけど…」
「本当かい!オーキド博士はポケモン研究の権威的人物でね、その人から直接図鑑を貰うなんてなかなかあることじゃないよ!」
「そんなすごい人なんですか。」
「そんなすごい人なんだよ!確かにヒビキ君はいいトレーナーになる素質はある気がしてたけど…オーキド博士にも一目置かれたとなると本物かもしれないね!
どうだろう、このまま旅に出てジムに挑戦、ゆくゆくはリーグ、チャンピオンなんてね!」
「いや、そんな…」
一人ハイテンション気味に語るウツギに若干引き気味に謙遜をするヒビキ。
「ん?ヒビキ君もリーグ目指すの?じゃあライバルかな?」
その話を聞いていたフィランも横から会話に参加してくる。
「そうだね。フィランちゃんは強力なライバルになりそうだ。
ま、なんにせよリーグを目指すなら長い旅路になる。一先ずはお母さんに話してくるのがいいんじゃないかな。」
「そうですね…」
「…ヒビキ君と戦うのはしばらく先になりそうかな。じゃあ、先行ってるね。」
その後、帰宅したヒビキ、コトネを見送るフィランとウツギ。
「さて、騒がしくなっちゃってすまなかったね。さ、図鑑のアップデートをしよう。」
「はい。よろしくお願いします。」
泥棒騒動、ヒビキのおつかいの結果と、当初の目的がずいぶんと先延ばしになってしまったがようやくこれで図鑑をアップデートしてもらえる。
「フィランちゃんは一先ずキキョウシティに向かうのかな?」
「そうですね、ジムの順番的にもそれがいいみたいですし。」
「そうだね、それがいいと思うよ。
キキョウシティはジムもあるけど、マダツボミの塔っていう塔があってね、そこを見てみるのも面白いかもしれないね。」
世間話をしながら図鑑のアップデートを待つ。
「そうなんですね。行ってみます。」
「っと、アップデート終わったみたいだ。はい、これ。」
アップデートが完了した図鑑を受け取る。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。じゃあ、フィランちゃんも気を付けてね。何かあったら遠慮なく相談してほしい。」
「何から何までありがとうございます。それでは、行きますね。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
ウツギの研究所を後にし、キキョウシティを目指す。
これからようやく本格的なジョウトでの旅が始まるのだ。
・・・
・・
・
「オタチ、ポッポ、どれもシンオウではみないポケモンばっかりだな。」
ヨシノシティを通過して30道路を行くフィラン。
道中で出会った野生のポケモンを早速新しい図鑑でチェックする。
このジョウトでの旅は2つある。
1つは自分や既存のメンバーの強化。
もう1つはシロナも言っていた敗因の1つ、手持ちが4匹しかいないことを解消すること。
つまり手持ちの5匹目、6匹目を埋めることだ。
「でもよさそうな子いないなあ。」
シンオウでなぜフィランは4匹で旅をしたのか。
その理由が”よさそうなポケモンがいない”である。
最愛のフェローチェは当然として、タマゴから孵ったフカマル、ナナカマドの研究所で出会ったポッチャマ、そして森の洋館で出会ったロトム。
全員何かしらの運命的な物をフィランは感じて仲間にした。
それはフィランにしかわからない直感的な物ではあるが。
たとえばあの日、ナナカマドの研究所で出会ったポッチャマが別の個体であったら。
もしかするとフィランはヒコザルやナエトルを選んでいたかもしれない。
いや、そもそも誰も選ばずに2匹の手持ちで旅に出ていたかもしれない。
ともかく、フィランは自身の直感にしたがって仲間を探している。
これは彼女の中で大きな基準であるようだ。
「まあいつか見つかるかもしれないし、気長にやろうか。」
フィランはいつも通りそういった。見つからないものは焦ってもしょうがない。
基本はマイペースに、勝負は真剣に、ジョウトでも変わらずに進んでいくのだろう。
「そうこうしてる内に着いたな。」
相変わらず、野生のポケモンやらその場のトレーナーやらと勝負している内に目的地に着いたらしい。
「改めまして、キキョウシティだね。ま、昨日はゆっくり見ている暇もなかったからアレだけど…」
ここはアサギシティからワカバタウンに行く途中に昨日通り過ぎたばかりだ。
「もう日も暮れてきてはいるし、ジムは明日にするか…」
やはり午前中の騒動で少しタイムロスがあったか、日もだいぶ傾いていた。
そんな日暮れを眺めながら、周囲を見渡すと、
「あ、アレか。マダツボミの塔。」
町の北側に立派な三重塔が見えた。
「へえ、中はこんな感じなんだねえ。」
木造の塔の内部は同じ格好に剃髪の人物が何人もいた。修行僧だろうか。
「みんなも見てごらんよ。」
シンオウでは見ないつくりの建物を見せてあげようと、ボールからポケモンたちを出す。
すると、近くにいた僧が数人駆け寄ってくる。
「そこなお嬢さん!ポケモントレーナーですな!拙僧と手合わせ願いたい!」
「いや、拙僧が!」
「いやいや!」
「ええ…」
なんでもここはポケモントレーナーの修行の場らしく、積極的にバトルを仕掛けることはよくあることだそう。
今フィランを囲んでいる4人の僧も当然修行のためにここにいおり、バトルを仕掛けるのは必然だったのだろう。
「そういうことなら、”4人まとめて”でいいですよ。」
大胆不敵に笑うフィラン。
シロナに負けはしたがそれでも自分の実力にはそれなりに自信があった。
それにゆっくり観光したいのでとっとと終わらせたい。
「なんと!我々も見くびられた物ですな。」
「ええ。それでは遠慮なく行かせてもらいましょう!」
4人の僧侶がボールを構え一斉に投げる。
こちらは既に4匹とも出ているのでその必要はない。
「みんな、行けるね?」
「「ーーーー!」」
フィランの声にそれぞれ声をあげるポケモンたち。
そのポケモンたちが4方向に飛び出した。
「いや、恐れ入った。随分と強くてらっしゃる。」
僧侶の一人がフィランにお辞儀をする。
結果はいうまでもなく圧勝だった。
僧侶たちが繰り出したのはマダツボミ。
それらをフェローチェの脚が、ガブリアスの牙が、ロトムの風がいともたやすく撃破していった。
水タイプのエンペルトもれいとうビームがあるので全く問題なしだ。
「こちらこそ、マダツボミは初めて見たので、勉強になりました。」
相手のお辞儀にフィランも軽く会釈をし、その場を後にした。
「わ、見てごらんよこれ。この柱ちょっと揺れてない?面白いね。」
「フュウ!」
塔の真ん中に一直線にそびえたつ大きな柱。
よく見ると少し揺れているのがわかる。
その揺れに会わせてロトムもなんだかゆらゆらし始めて、その光景に笑みが漏れる。
「ふふ。あ、次が最上階みたいだね。」
楽しく観光している内に最上階に手前まで来ていた様だ。
「さて、と。」
一度ポケモン達を戻して梯子を上る。
「最上階っと、ん?」
たどり着いた最上階。そこでは一人の老いた僧侶と赤髪の少年が何やら話をしていた。
「そなたの実力、確かに偽り無し。約束した通り、この技マシンを渡そう。」
老人は技マシンを差し出す。だが、赤髪の少年がそれを受け取る前に、付け足すように言葉を続ける。
「だが…もうちっと、ポケモンをいたわるべきですぞ。そなたの戦い方はあまりにも厳しすぎる…
ポケモンは戦いの道具などではないのです…」
老人がそういうと赤髪の少年はひったくるように技マシンを受け取った。
「ふん!長老なんて偉そうに名乗ってるくせに全然歯ごたえ無いじゃないか!
ポケモンに優しくなんて甘いこと言ってる奴に俺が負けるわけがない。
俺にとって大事なのは強くて勝てるポケモンだけだ!それ以外はどうだっていいのさ。」
「…あいつ!」
あまりにもあんまりなセリフを豪語する少年にフィランの何かがキレた。
「おい、君、待てよ。」
横を通り過ぎて梯子を降りようとする少年に言葉を投げかける。
「なんだよ。」
「君にとってポケモンってなんだよ。」
「はあ?さっきのジジイみたいな奴が他にもいるのかよ。
ポケモンなんて強さを証明するためのものだろ。」
「そう。じゃあ私と勝負してよ。因みに、私は自分のポケモンを家族だと思ってる。だから、ポケモンを道具だと思ってる君には負けない。」
「…何言ってんだよお前?まあいいや、お前もぶっ倒して、甘ったれた事行ってる奴がみんな間違ってるって証明してやるよ!」
「行け、ゴース!」
「ロトム!」
塔の最上階は下の階に比べてやや狭い。ガブリアスやエンペルトが暴れるには十分では無い
だろうから、ロトムから戦闘を開始する。
「ロトム!あくのはどう!」
「ゴース!避けろ、さいみんじゅつだ!」
少年は果敢に指示を出すが、そもそも力の差は歴然。
ゴースのさいみんじゅつが準備できる前にあくのはどうはゴースを呑み込んだ。
「くそっ!役立たずめ!」
「…この勝負、失敗だったか。」
「なんだと?」
少年の言葉にフィランはため息交じりに言った。
「だって、敗因はポケモンだけの物じゃないのに、それに自分のことを役立たずなんていう人間のために戦わなきゃならないポケモンを私は倒さないと行けないんだもん。
そんなの、誰も幸せにならないよ。君のポケモンも、私たちも。」
「っ!ふざけるな!」
少年は怒りをあらわにしながら次のボールを放った。
「ワニノコ!みずでっぽう!」
「タイプ相性もろくにわからずに、負けたのはポケモンのせいだなんて。ねえ。
ロトム、可哀そうだけど、10まんボルト。」
ロトムから放たれた電撃がワニノコに突き刺さる。
「さて、ポケモンを道具だという君と、家族だという私、強いのはどちらかはっきりしたけど…」
「ッぐ!くそっ!」
少年は自分のポケモンをボールに戻してさっさと走ってどこかに行ってしまった。
「あっ!おい!」
フィランも追いかけようとするが、下の階の人影にまぎれてあっという間に見失ってしまった。
それに、あの少年をとっ捕まえてどうこうしたい、という訳でも無かったのでほっておくことにした。
さて、気を取り直して、最上階。
先ほど長老、と呼ばれていた人物がこちらに近づいてくる。
「そなた。」
「はい?」
「先ほどの勝負、見事でした。」
「ど、どうもありがとうございます。」
「そこで、ワシとも手合わせ願いたい。勝てたら先ほどの少年にも渡した技マシンを差し上げましょう。」
「あ、じゃあよろしくお願いいたします。」
「フェローチェ、これ知ってる?畳っていうんだって。」
マダツボミの塔の長老にも勝利し、塔を降りてきたフィラン達。
その後は一先ず宿を取って明日に備えることにした。
今日の宿はシンオウでは見ることの無かった、所謂旅館というスタイル。
珍しい畳を前にフィランも少しテンションが上がり気味だ。
「……」
「なに?」
だが、そんなフィランをよそにフェローチェはあることが気になっていた。
「…………」
「え?さっきの男の子?赤髪…で、ワニノコ連れてた…?あっ…」
直後、フィランのやべっという顔にフェローチェはため息を漏らす。
「いや、ほら、あの時はちょっとイラっと来てたっていうか…ね?」
「…………」
「だって、私にはみんなが大事だし…フェローチェのことも、本当の家族、なんてどんな人か知らないけど…それ以上に大好きだから…あんな言い方許せなくて…」
そういって上目づかいでフェローチェを見あげるフィラン。
その表情にフェローチェもなんだかどうでもよくなってしまった。
「……」
「うん!次あった時はちゃんと確かめよ!」
彼とは、近いうちにまた会う、そんな気もしていた。
だからその件はその時でいいだろう。
今のところは考えるべきは明日のジム戦。
そのためにも今日はゆっくり休むことにしよう。
ところで、ヒビキ君のパートなんですけど、それなりに書いたほうがいいですかね。
その分シンプルに長くなるんですけど、hgss、金銀のシナリオ覚えてないよって人が多いなら書いたほうがいいかもしれないな、、、なんて考えていたりします。
その辺のご意見なんかも聞かせてもらえると助かります。