忘却少女と異界の獣   作:k25

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参、悪者

キキョウシティに到着した翌日、少しゆっくり目覚めたフィラン。

 

「…さて、行きますか。」

 

少々予定より遅れてしまったが、何はともあれジムを目指すことにした。

 

 

 

 

 

 

「俺はキキョウジム、ジムリーダーのハヤト!」

「フィランです。」

「大空を華麗に舞う鳥ポケモンの本当の凄さ、思い知らせてやる!」

「…望む所です。」

 

キキョウシティのジムリーダー、ハヤトはなかなかに勢いのある人物のようだ。

だが、フィランもそれなりの経験は積んできており、そのハヤトの勢いに負けずに立ち向かう。

 

「ポッポ!」

「ロトム!」

 

お互い最初のポケモンを繰り出し、戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ジムを突破した証としてポケモンリーグ公認のジムバッジを持って行けよ!

俺から君に送るのはこのウイングバッジだ!」

「ありがとうございます。」

 

フィランはハヤトからウイングバッジを受け取る。

ジム戦はフィランの圧勝だった。

修行の旅をしにきているフィランに驕りは無い。

故に常に全力勝負なのだが…。

さすがに、シロナをギリギリまで追い詰めたトレーナーに最初のジムは少し簡単過ぎた様だ。

 

 

 

「さて、意外と早く済んじゃったし次の町目指しちゃうか。」

ジムの入り口を背に向け、少し伸びをしながらそんなことを考える。

 

「おーい、フィランさーん。」

 

すると、どこからか自分を呼ぶ声がする。

 

声の方向、その人物を探してみると、

 

「あっ、ウツギ博士の所の!」

 

その人物はウツギ博士の研究所にいた助手の一人だった。

 

「どうも!どうしたんですか?こんなところで。」

フィランは声をかけてきた人物に最もな疑問を投げかける。

 

「それが、ヒビキ君に渡すものが有って、博士の頼みでここに来ていたんです。

用事を済ませてこれから帰るって所で貴女を見かけまして…」

 

「そうだったんですね。お疲れ様です。所でそのヒビキ君は?」

 

「ああ、ヒビキ君ならもう次のジムに向かいましたよ?」

 

「えっ?」

 

「ええ、ですから。キキョウジムはもう午前中に済ませて次の町に向かったんです。」

 

 

どうやら、フィランが寝坊している間にヒビキはここにたどり着き、ジムへの挑戦も終え、先に進んでいたらしい。

 

「…そうですか。多分私の方が先にここについていたのに…先越されちゃったかぁ。」

 

ワカバタウンでも先に行っていると宣言した手前、少々悔しさを覚える。

 

「じゃあ、私も先に行かないとなんで!研究頑張ってください!それでは!」

 

「ええ、フィランさんも頑張ってくださいね。」

 

そんなこともあり少々駆け足で助手の男性に別れを告げ、先を急ぐことにした。

 

 

 

 

 

「ようし!着いた!」

だいぶ駆け足でキキョウシティ、ヒワダタウン間を進んだフィラン達。

道中で勝負を挑んできたトレーナー達は軒並み速攻で蹴散らしてきた。

 

 

「あれ…ヒビキくーん!」

 

ヒワダタウン入り口で見覚えのある帽子とパーカーの組み合わせを見かける。

 

「フィラン!まさか後ろから来るとは思わなかったよ。」

 

「ぐっ!…今朝少し寝坊してね…その間にヒビキ君に先越されてたらしい…」

 

「なんだよそれ。」

 

フィランが実力のあるトレーナーなんだろうということは最初のバトルと、あのガブリアスを見て察していただけに、意外と間抜けなその話に思わず肩の力が抜ける。

 

「ところでこんなところで何してんの?」

 

「あ!そうだった!フィランも手伝ってよ!」

 

 

 

 

 

 

「ロケット団、ねぇ…」

ロケット団。

かつてカントー地方を中心に活動していた、ポケモンマフィアとも言われる犯罪組織。

その活動は多岐に渡り、金稼ぎのためにポケモンを利用したり傷つけたりすることもしばしばあったという。

3年前にあるトレーナーの手によって壊滅されたそうだが…

 

「僕も人から聞いた話だから詳しくは知らないんだけど…

そのロケット団がこの井戸の中でヤドンのシッポを切って売りさばいてるらしいんだ!」

 

ヒビキにその話をした人物、ガンテツという老人がロケット団に憤り、単身で井戸の中に突入してしまったそうだ。

 

「もし本当に危険な連中だとしたらガンテツさんも危ないかもしれない。だから僕も助けに行く。」

「わかった。私も手伝うよ。」

 

フィランにとってもポケモンに悪事を働く連中は見過ごしては置けない。

もしも自分のポケモンに魔の手が伸びないとは限らない。

その時は全力で守るのは間違いないが、そうならないように先に潰しておくのも手だろう。

 

「この下か…結構高さあるね…」

「ヒビキ君、あれ。」

 

そういってフィランが指さしたのは一人の老人。

 

「ガンテツさんだ!とりあえず無事っぽい!」

「ここにはしごがある。それで一先ず降りよう。」

 

フィランの提案により井戸の中へと降りた二人。

 

「おう、ヒビキか。」

「ガンテツさん。無事だったんですね。」

「おう。上で見張っとった奴は大声で叱り飛ばしたら逃げていきよった…

じゃが、ワシも降りるときに腰を打ってしもてな。動けんのじゃ…」

 

ヒビキはガンテツの現状を確認し、とりあえず大事は無いことを確認する。

 

「だったら大丈夫です!僕たちが奥を見てきます。」

「そうか、助かるわ。ところでそっちは?」

 

ガンテツがフィランの方を見て尋ねる。

 

「私はフィランといいます。シンオウからきたポケモントレーナーで、ヒビキ君とはワカバタウンで知り合いました。」

「そうか、じゃあ悪いが頼んだわ。」

「はい。任せてください。」

 

 

一先ずガンテツとは別れ、井戸の奥、洞窟のようになっている場所に入った二人。

中は薄暗く、はっきりとはわからないが複数のロケット団員がいる様だ。

 

「あっ!オイ!なんだお前ら!」

 

その中、見回りをしていたであろう一人に早速見つかってしまう。

 

「お前がちゃんと見張りしてないからだろ!」

「仕方ないだろ!変な爺さんに怒鳴られてビックリして落っこちちゃったんだから!」

「嫌だぜ?お前のせいで俺達まで怒られるの。」

 

見張りの声につられておくから更にロケット団員が集まってくる。

 

 

「さて、お子様が何の用かな?大人のお仕事の邪魔しちゃ行けないって親御さんに教わらなかったのか?」

 

あっという間に4人のロケット団員に囲まれてしまう。

 

「何が仕事だ!ヤドンを傷つけて、迷惑かけてるだけだろ!」

ヒビキが吠える。

 

「生意気なガキだ。これはちょっと痛い目にあって勉強してもらおうか…!」

 

1人がそう言うと、4人のロケット団員はそれぞれにボールを投げた。

 

「ヒビキ君。君はあっちの奴お願い。こっちの3人は私が引き受けた。」

「えっ?」

 

そう勝手に言い放ったフィランはボールを既に3つ同時に投げていた。

 

「じゃ、じゃあ任せた!」

 

フィランの一方的な宣言に少し戸惑いながらも、フィランの出したポケモン達をみて任せても大丈夫そうだと判断したヒビキ。

彼も自分の相手に向き合った。

 

 

3人のロケット団員と対峙したフィラン。

繰り出したポケモンはフェローチェ以外の3匹。

対するロケット団のポケモン達はコラッタ、ズバット、アーボ。

 

「珍しいポケモン持ってるじゃねえか!お前をぶっ倒してそいつらもいただくとするか!」

「よーし、やっちまえ!」

 

ズバットが上から、アーボは地を這い、コラッタは駆け足で飛び掛かって来る。

 

「みんな、迎え撃って。」

 

その言葉にフィランのポケモン達も戦闘態勢を取る。

ズバットのにはロトムの10まんボルトが、アーボにはガブリアスのドラゴンクローが、コラッタにはエンペルトのラスターカノンがそれぞれを返り討ちにする。

 

「どうしたの?私を倒すんじゃなかった?」

 

先ほどのセリフのお返しとばかりにロケット団員を煽り返す。

 

「こいつめちゃくちゃつえーじゃねえか!?」

「く、くそ!」

「構わねえ!次だ!」

 

慌てたロケット団員が次のポケモンを繰り出すが、

 

「次はこっちから行くよ!」

 

出てきたポケモンを、フィランのポケモン達が先手を取ってまとめて戦闘不能にした。

 

「チッ!逃げるぞ!」

 

一番フィランから遠い位置にいた一人が逃げ出そうとする。

 

「ロトム!」

 

だがそんなことは許さない。

奴らはこちらのポケモンを奪うとまで宣言してきたのだ。

到底許しては置けない。

 

「がっ!」

 

ロトムのでんじはがロケット団員に命中。

しばらくは痺れて動けないだろう。

 

「お、おい!」

その場で倒れた仲間に声を書けるロケット団員。

 

「ひっ。ゆ、許してくれ!」

こちらを向き許しを請うもう一人。

 

「ん、ダメ。」

 

再びロトムから電流が流れた。

 

 

 

 

 

「ヒビキ君、終わった?」

ロケット団員達を麻痺させて岩陰に捨てておいたフィランは、同じく戦闘を終えたヒビキに声を掛ける。

 

「ああ、こっちも大丈夫だったよ。」

「ん、よかった。」

 

どうやらヒビキと戦っていたロケット団員は逃げて行った様だ。

 

 

 

 

その後も何人かのロケット団員を撃退していき、行き止まりらしき所に到達する。

 

 

「アナタたちですか、私たちの邪魔をしているというのは。」

 

そこにいたには今までのメンバーと似たような黒服に、青髪の青年。

見てくれはここまでの相手と変わらないが、纏う雰囲気がただの下っ端では無いことを物語っている。

 

 

「ヤドンのシッポを切るのをやめろ!」

「そういわれましても…これも私たちのビジネスですから、やめるわけにはいかないのですよ。」

「なら、実力行使で行くまでです。」

「ほう、いいのですか?ロケット団でも最も冷酷と言われた男。このランスに挑むなど!」

 

目の前の男、ランスはボールを構えた。

 

「ああ、相手になってやる!」

 

ヒビキもマグマラシを出し、臨戦態勢を取る。

 

 

 

だが、横から何かがマグマラシに激突する。

 

「マグマラシ!」

「お前の相手は俺だ!ランスさん、加勢します!」

 

どうやら下っ端がまだ残っていたようだ。

不意打ちに驚いたマグマラシだが、態勢を整えてズバットに反撃をする。

 

 

「ふむ、ではあの少年は彼にお任せしますか。」

「じゃあ、私が相手ですね。」

 

一呼吸の後、2つのボールが宙を舞った。

 

「ズバット!あやしいひかり!」

「エンペルト!アクアジェット。」

 

エンペルトがアクアジェットでズバットに突撃する。

ズバットの放った光が届くころには、そこに誰もいなくなっていた。

 

「そのままラスターカノン。」

 

激突されふらふらと飛んでいたズバットに対し、エンペルトが狙いを定める。

 

「ズバット!避けろ!」

 

ランスがズバットに回避を指示する。

だが、激突の衝撃からいまだ立ち直れていないズバットはゆっくりと移動するだけで精一杯のようだ。

 

そして、銀の光弾がズバットに命中。

ズバットは大きく吹き飛び、そのまま地に落ちた。

 

「なかなかやるようですね。」

ランスはあくまでも余裕そうに言い放ち、次のポケモンを繰り出す。

出てきたのはドガース。

 

「それにしても、どうしてこうも我々の邪魔をする輩というのは…」

「??」

 

 

バトルの途中だというのにランスが何かを話しかけてくる。

聞いてやる必要も無いのだが、つい、気を抜いてしまう。

 

 

「ドガース!えんまく!」

 

 

その瞬間、ランスののドガースが煙幕を貼る。

 

「恐らくこのままでは負けてしまいますからね、今日は撤退と行きましょう!」

 

どうやら話しかけてきたのはこちらの油断を誘う作戦だった様だ。

 

「あ!逃げるな!オイ!」

 

フィランも追いかけようとするが煙幕で視界が遮られ身動きが取れない。

 

「ヒビキ君!無事?」

「うん!…でも相手には逃げられちゃったみたいだ!」

 

とりあえずヒビキの安否を確認する。

ヒビキの相手もこの煙幕に乗じて逃げて行った様だ。

 

 

その場で待機すること数分。

煙幕が晴れてヒビキとフィランは顔を見合わせる。

 

「逃げられちゃったね。」

「まあ、一先ずここから奴らを追い払うことは出来たから…」

 

逃がしたことに落胆を覚えつつもヤドン達を救うことが出来たことに安堵する。

 

 

「おーい!お前たち!」

 

すると入り口方面からフィラン達を呼ぶ声がする。

 

「ガンテツさん!腰はもう大丈夫なんですか?」

「おう。少しじっとしてたらだいぶ良くなったわ。

それにしても、上手くいった様じゃな。あいつらシッポを巻いて逃げて行きおったぞ。」

 

ガンテツはもう歩けるほどまで回復したようだ。

 

「これでここのヤドン達も一安心ですかね。」

 

敵を逃しはしたが、ヤドンも救って、ガンテツも大事には至らなかった。

それだけで今日はよしとすることにしたフィランであった。

 




ついにR団登場!

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