忘却少女と異界の獣   作:k25

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HGSS編は序盤のジム戦などかなりあっさり目に終えるつもりでいます。
なので短編を3つほど載せてお茶を濁そうと思います。


EX2,断章-Day of wine and Roses

~Maiden Voyage~

 

シンオウ地方、ミオシティから船に乗り込みジョウト地方を目指すフィラン達。

初の船旅ということもあり、未知の経験に期待を膨らませていた。

 

「おぉ…凄いよ…あんなに港が遠くに…!」

 

デッキに上がり、既に小さくなってしまったミオシティを眺める。

他にデッキに上がっている乗客は少なく、迷惑にもならないだろうと思いポケモン達をボールから出す。

 

「ロトム、イタズラしちゃだめだよ。エンペルトも海には飛び込まないでね。」

 

一応心配なメンバーにはあらかじめ注意をしておく。

こんな海の上でイタズラされては何があるかわからないし、エンペルトもみずタイプとはいえ広い海ではぐれてしまってはとんでもない。

 

「夕日が綺麗だね。」

 

のんびりと水平線に沈む太陽を眺めながら横に立つフェローチェに語りかける。

 

「……」

 

「本当にいいんだって。みんなと一緒ならどこにいても同じことだよ。」

 

「………」

 

「まあシロナさんには少し悪い事しちゃったなって思うけど、ちゃんと書置きもしてきたし、シロナさんならわかってくれると思うんだ。」

 

「……」

 

「そ。だから次のことを考えよ。」

 

 

フェローチェは本当こんなにすぐ出発してしまって良かったのかと言うことを言っている。

だが、フィランは少しでも早く次に向かって動き出したい気分だったのだ。

最終的にフィランがそう決めたのであればフェローチェもそれ以上反対することは無い。

それもう船にまで乗ってしまっているのだからこれ以上どうこう言ってもしょうがないということもある。

 

 

 

甲板でぼーっとするうちに時間は過ぎて、一面の海は黒く染まり、空には星と月が昇っていた。

 

「こんな風景も、今日船に乗らなかったら見れなかったかもしれないしね。」

 

上を見上げれば、街灯などのある地上とはまた違った空が見える。

今日はこの海の上が晴れていても、明日がそうとは限らない。

だからその日できることをしたい。

 

「ね?」

 

「……」

 

2人で顔を見合わせて、お互いに微笑んだ。

 

「さて、そろそろ冷えてくるだろうし戻ろうか!」

 

 

 

 

 

 

客室に戻ったフィラン達。

さすがに部屋に人1人とポケモン4匹が入るスペースは無く、今はフィランとフェローチェの2人きりだ。

 

 

 

「今日はごめんね…私が不甲斐ないばっかりに…皆にも悔しい思いさせちゃったし…」

 

「……」

 

「それにフェローチェには最後まで戦って貰たのに…」

 

 

一度は振り切ったかのように思われた今日の敗戦。

だが、人間嫌なことや、悔しい思い出に限ってそう簡単には忘れられないのだ。

 

これまでは人前だったり、他のポケモン達がいたりで気丈にふるまっていただけなのだ。

それがいま二人きりになったことで少し気が緩んで表に出てきたといった所だろうか。

 

「……」

 

「で、でも…!」

 

フェローチェの言葉にフィランが何かを言いかける。

 

「……」

 

それをフェローチェが抱き寄せて無理やり遮る。

 

「………」

 

「うん…」

 

フェローチェの胸の中でフィランの瞳から涙がこぼれる。

 

「……」

 

「うん…ありがとうね…一緒に強くなろうね…」

 

 

 

 

 

 

 

フィランも落ち着いて、二人並んでベッドに腰かけている。

窓の外では黒い海に白波が流れて行っている。

 

フェローチェの肩にもたれかかって頭を預けているフィランは泣いたことで少し体力を消費したのか、少しウトウトし始めている。

 

「……」

 

そんな様子のフィランを見かねてか、フェローチェはもうベッドで横になるように促す。

 

「うん…でも…今はもう少し…こうさせて…」

 

そう応答するフィランはもう電池切れ寸前。返す言葉もかなり途切れ途切れだ。

 

「…でも…なんだか…夜の海って……」

 

「……」

 

フェローチェはその続きを待つがいつまでたってもフィランの声は聞こえてこない。

気になって横を向けば、穏やかな寝息を立てて眠っているフィランの顔が見える。

 

「…」

 

その様子に穏やかな笑みを浮かべたフェローチェは、フィランを横にすると自分もその隣に横になった。

そっと毛布を掛けて優しくフィランの頭を撫でる。

 

今日の負けはこの子にとって成長の糧になるだろう。

この涙は決してネガティブな物では無い。

 

だがこの先、本当の意味でフィランを傷つける物が現れないとも限らない。

もしそうなった時、私は何が何でもこの子を守りたい。

私ももっと強くならないといけない。

 

フェローチェにとっても、この旅は重要な意味を持っていた。

そうして決意を胸に秘め、フェローチェも眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~Days of Wine and Roses~

 

「あちい…」

キキョウシティ、マダツボミの塔を訪れた後の事。

 

泊まった宿でシャワーを浴びたフィラン。

温まり過ぎてしまって体がかなり熱を帯びている。

こういう時はいつもフレンドリィショップや自販機で買った水等を飲むことが多いが、今回はたまたま飲み切ってしまっていた。

 

「なんかあるかな…」

 

部屋の備え付けの冷蔵庫の中身を確認する。

飲んだものはチェックアウト時に精算すれば良い。

 

入っていたのはペットボトルの水、お茶、それとその半分くらいのサイズの缶の飲み物。

間にはレモンが描かれている。炭酸ジュースのようだ。

 

「ペットボトルは大きすぎるな…ま、風呂上がりだし炭酸もいいでしょ!」

 

缶を一つ取りプルタブを起こす。

プシュ、という音から爽やかさが伝わって来る。

 

「んっく。ふぅ…」

一口、二口と勢いよく流し込む。

 

「なんか…レモンっぽさ?ちょっと苦いな。」

独特の味わいに首をかしげながら缶をテーブルに置く。

 

「フェローチェ。」

「……」

 

風を取り込むための開けていた窓。

その窓の桟に腰かけていたフェローチェに声を掛ける。

 

「今日の赤髪の子、本当にポケモンを道具なんて思ってるのかな…」

切り出したのはさっきの話の続きだ。

 

「………」

 

フェローチェは一度立ち上がり、窓ではなく椅子に腰掛けてフィランと向かい合う。

 

「そうだとしたら悲しいよね。私は貴方やみんなといて毎日楽しいけど、彼はそうじゃないのかな。それにポケモン達にも良くないし…」

 

「……」

 

「ね、あの子もそのうちポケモンと仲良くなってくれるといいけどね…」

 

「……」

 

テーブルに置いたジュースを話の合間に飲む。

 

「ふう。ん、ほんとに。ね、フェローチェは私のこと好き?」

 

「……!」

 

2人でいるときに、フィランからそのようなことを言ってくるのは少し珍しい。

人前では無自覚惚気を炸裂させているが、2人きりの時にぐいぐい行くのはどちらかといえばフェローチェの方だ。

そのことに少しビックリしたフェローチェはあることに気付く。

 

フィランの顔が少し赤らんでいる。

風呂上がりだからでは無い。何ならさっきよりも赤くなっている。

そして缶に書かれている文字。

 

これは…

 

「ねえ。フェローチェ?」

 

そうこうしてる内にフィランは缶の中身をすべて飲み干してしまった様だ。

缶を捨てるために立ち上がったフィランは心なしか足取りが覚束ないでいる。

 

「ねえ~。」

 

缶を捨てたフィランはフェローチェに後ろから抱きつく。

 

「……」

 

「ん?なんとなく。」

 

「……」

フェローチェはフィランに今日は早めに寝るように促す。

 

「じゃあ一緒にお布団いこ。」

 

そのままフィランに手を取られ、敷かれた布団に連れていかれる。

 

部屋のライトを落として、そのまま布団に座りこむ二人。

 

「えいっ!」

 

またしてもフィランがフェローチェに抱きつく。

 

「……」

 

なんだかんだでフィランに抱きつかれてフェローチェも嬉しそうだ。

フィランの背中に手を回している。

 

フィランが状態を少し離してフェローチェの顔を見つめる。

 

「フェローチェって綺麗な顔してるよね。」

 

「……」

 

「そうかな…」

 

フェローチェがフィランの黒髪を撫でる。

背中まで流れる艶のある髪を手で梳いていく。

 

「……」

 

「ふふっ。一緒に来てくれて本当にありがとうね。

毎日さ、一緒にいられるだけでも凄い幸せだよ。私。」

 

「………」

 

「うん。ありがとう。」

 

 

そのまま、ドサッと二人で布団に倒れこむ。

ちょうどフィランがフェローチェに覆いかぶさる形だ。

所謂、押し倒した、形になる。

 

「ずーっとさ、一緒にいてね。」

 

「……」

 

「うん。好きだよ。えへへ。」

 

二人の影が重なる。

 

「ん……

いつかのお返し…!

って、あっ!」

 

今度はフェローチェがフィランの手を掴み、自分が上になる形に。

 

「……」

 

「ちょっと?フェローチェ?

あっ、ん…

違、そこは首だって…」

 

 

 

 

 

夜は更けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

~Black Perles~

 

 

静まり返った夜の浜辺。

岩礁には穏やかに波が寄せて返す。

 

一人の少女とポケモンが岩かげに身を寄せ合っていた。

 

「ねえ。キズは大丈夫?」

「……」

「そっか。よかった。

一応、今日もキズぐすりと、オボンの実だけは持ってきたんだ。

良かったらオボンのみだけでも食べて…ね?」

 

少女は木の実を差し出し、ポケモンが恐る恐る受け取った。

 

「……」

 

「ん。私は大丈夫…いつもの事だから…」

 

 

ポケモンが少女の腕を指さす。

少女の腕には痣が見える。

あたりが暗くなっているためよく見ないと気が付かなかったが、少女の全身にも複数の痣が見て取れる。

 

 

 

 

 

それから、夜の波音に隠れて二人はお互いのことを話していた。

 

「……」

 

「あなたも、一人なんだね…」

 

「……」

 

「私だってそうだよ…お父様もお母様も、私を見てる訳じゃない。私を愛してる訳じゃないの。」

 

「……」

 

「そ。だから私たち、似た者同士なのかも。お互い独りぼっちで、傷だらけ。なんだかおかしな話だけど。」

 

そういって少女は笑う。

 

 

「さ、そろそろ私はいかないと…お父様に見つかったら大変だから…」

 

「……」

 

「うん…ねえ、また会えるかな。私たち、似た者同士友達になれると思うんだ。」

 

「……」

 

 

「ほんと?約束ね!」

 

 

 

 

そうして少女は来た道を戻っていく。

 

ポケモンもその場から姿を消した。

 

 

 

残ったのは黒い海と白い波、砂浜と岩だけ。

 

 

 

 




フェローチェメインの短編でしたが、これは会話と呼べるのだろうか…

あと、一つだけ言い訳をさせてもらうとポケモン世界の法律はよくわからないので許してください。
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