忘却少女と異界の獣   作:k25

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お待たせしました。


肆、黄金

ヒワダタウンのヤドンの井戸からロケット団を追い払ったフィランとヒビキ。

ガンテツとともに井戸から上がり、2人はガンテツの家に招かれていた。

 

「しかし、見事な働きやった!」

ガンテツとその孫と4人で机を囲みお茶をごちそうになりながら、今回の事件について話していた。

 

「でもフィランが来てくれて良かったよ。僕1人で4人に囲まれてたらやばかったかも。」

「どうだろ?あいつら大して強くも無かったし、1人でも楽勝だったかもよ?」

「なんや、嬢ちゃんはえらい大物やな!」

 

フィランの発言にガンテツが笑い飛ばす。

フィランとしてはもちろんそんなつもりは無く、ヒビキを正当に評価しての発言のつもりだった。

 

「それにしても、あのロケット団とかいう連中、なんのためにこんなことを…」

「あのランスとかいう男は”ビジネス”って言ってたけどね。」

「…さっきも言ったがロケット団はかつてレッドという少年に壊滅させられたはずなんやが、それがまた活動しているっていうのは..なんとなーく悪い予感がするのう…」

「私たちも行く先で気を配っておきます。」

 

ガンテツの悪い予感。ただの予感ではあるがフィランも似たような物を肌で感じていた。

ポケモンに悪事を働く組織など、看過するわけにはいかない。

何よりも自分と仲間たちの安全のため、ロケット団を放って置くことはできないとフィランは心に決めた。

 

その後、ヒビキはガンテツに特製のボールを作って貰うために少し滞在することにした。

ガンテツの作るボールに全く興味がなかった訳では無いが、順番的にヒビキの後になるため時間がかかるのとフィラン自身あまりボールを消費しないため、ボールを作って貰うのはまたの機会にした。

 

 

 

ガンテツの家を後にしたフィラン。

外に出るとすっかり日も落ちていた。

 

「…調子よく今日バッジ2つゲット出来たら良かったのにな…」

 

思えば今日はなかなかのハードスケジュールだった。

キキョウジムに挑戦した後に、ヒワダタウンまで移動。

そこからロケット団とのひと悶着があった訳だ。

 

「そういえば、キキョウシティから急いで移動してきたからお昼食べてないや…」

 

思い出したかのように空腹を感じ始めたフィランは今日はここで休むことにした。

 

 

 

 

 

「どれ…こんな感じだったかな…」

 

火にかけた鍋をかき混ぜるフィラン。

シンオウで旅をしたときに得た知識を思い出し、久々のポフィンつくりに励んでいた。

きのみは買うことが出来たが、専用の鍋が無かったため似たような物で代替している。

 

自分が昼食を食べていないという事はポケモン達も同じこと。

そのままの状態でロケット団との戦闘もあったし、少し無理をさせてしまった。

せめてものお詫びに夕食後のデザートに、とポフィンを作ることにしたのだった。

 

 

「…よし、と。こんな感じかな!」

焼きあがったポフィンを皿によそってテーブルへ。

そしてポケモンたちに呼び掛ける。

 

「出来たよー。」

 

夕食の後に室内で各々過ごしていたポケモン達がテーブルの近くに集合する。

 

「どう?おいしい?」

 

勢いよくポフィンをほおばるガブリアス。

なかなかの食いつきで出来栄えは問題なさそうなことが伺える。

 

エンペルトもロトムも喜んでくれている様で何よりだ。

 

「フェローチェはどう?」

 

「…………………」

 

「それは良かった!」

 

フェローチェにも喜んでもらえている様で胸をなでおろす。

 

自分用に淹れたお茶を飲みながら、ポケモン達との時間を楽しむことにした。

 

「あ、ロトム!食べながら飛び回らないで!危ないよ。

ガブリアスもゆっくり食べなー。」

 

遅い時間ではあったが楽しいお茶会となった。

たまにはこういうのもいいな、と定期的に開催したいと思うフィランであった。

 

 

-

「なかなかの道のりだった…」

 

 

ヒワダタウンからウバメの森を抜け、34番道路を通ってコガネシティへ。

フィランはコガネシティの入り口にてぐったりとした様子で息を吐いた。

 

ヒワダタウンからコガネシティまでは、直線距離的には大した距離ではない。

だが、フィランをここまで疲弊させた原因が一つあった。

ヒワダタウンの西に位置するウバメの森だ。

 

ウバメの森は細い林道が入りくんだつくりをしており、近隣の町で暮らす住人でも迷うことがある。

フィランはその坩堝に見事はまってしまったといったところだ。

最終的にはポケモンたちの手も借りて無事に森を抜けることが出来た。

 

 

 

 

「それにしても大きい町だな。」

コガネシティはジョウト地方の中でも大きな町だ。

ラジオ塔やデパートなど様々な建物が軒を連ね、そこに訪れる人々の往来もかなりの数となる。

まさしくこの地方における経済の中心となる都市といった様相か。

 

 

「さて、まずはどこから行こうか。」

 

この町ではいくつか行きたい場所もある。

どこから行ったものかとマップを開いた。

 

 

 

 

 

「ありがとうございました。」

そう言い一礼する店員から買い物袋を受け取ったフィラン。

 

まず訪れたのはコガネ百貨店だ。

回復アイテムをはじめとするバトルで使うものやフィラン自身が使う生活必需品など、いくつかのアイテムをまとめて買いこんだ。

 

だが、ここにはこれ以上長居はできない。

うっかり家電のコーナーなど通った日には大変なことになる。

 

フィランの脳裏に思い起こされるトバリデパートでのひと騒動。

(デジャヴ…ロトムに気付かれる前にここから出ないと…)

 

エスカレーターに乗り、1階を目指す。

無事、何事も無くコガネ百貨店を出たフィランはほっと胸をなでおろす。

 

「またイタズラされちゃたまらないからね…」

 

ただでさえここにたどり着くまでに体力を消費しているのだ。

買い物くらい気兼ねなくさせて欲しい物だ。

 

何はともあれ目的の一つは達成した。

ここで疲れている暇はなく、次の目的地に向かう。

次こそが大本命。

 

「ここがジムか…」

 

そう。ジムへの挑戦である。

ジョウト地方で3つ目となるジム。

この町に来た一番の目的を果たすためにフィランは建物に足を踏み入れた。

 

 

 

コガネジムの内部はピンクの床と水色の壁がポップに映えた内装をしている。

そんな中で全くポップでない戦いが繰り広げられていた。

 

「フェローチェ!インファイト!」

 

幸いなことに(敵から見れば不幸なことだが)、コガネシティはノーマルタイプのトレーナーが集まるジム。

つまりフェローチェのかくとう技が非常に有効なのである。

 

 

並み居るトレーナー達をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、迷路のような壁の間をくぐり、時には通路となっている壁の上を渡り、とうとうジムリーダーのもとにたどり着いた。

 

 

「はーい!うちがアカネちゃーん!

なんや、あんたすごい勢いで進んできたみたいやけど。

うちに挑戦するん?言うとくけどうち、めっちゃ強いでー!」

 

「もちろん!挑戦しますとも。」

 

ジムリーダーの名はアカネ。

先ほど元気な自己紹介で自ら宣言した通りの強さをもち、その可愛らしいルックスと明るい性格とは裏腹に何人もの挑戦者をはねのけてきた実力者だ。

 

だが、今日は相手が悪かった。

その明るさが最後まで保たれることを祈るばかりである。

 

 

 

 

 

 

「フェローチェ!決めて!」

 

フェローチェの脚技が華麗に、かつ苛烈にミルタンクを襲う。

 

「ミルタンク!」

 

「……」

技を決めたフェローチェはまたしても華麗に翻り、フィランの横に立って一息つくような仕草を見せる。

 

「お疲れ様。」

 

技を受けたアカネのミルタンクはすっかり伸び切っており、アカネの言葉を待つまでも無くこちらの勝利を確信した。

フィランはフェローチェに労いの言葉を掛けてアカネの反応待つ。

 

「う、うわーん!」

「え?」

 

すると、予想外の反応が帰ってきた。

アカネが声をあげて泣き出してしまったのだ。

 

「っぐすん…ひっぐ…ひどいわー!」

「えぇ…」

 

自分も勝負に負けて人前で泣いたことのある身なのでなんとも言えないが…

この状況には少し戸惑ってしまう。

 

「わーん!」

 

するとアカネがどこかに飛び出して行ってしまった。

 

「マジか…バッジは?」

 

 

 

「あーあ。アカネちゃん泣かしちゃったのね。」

 

呆然と立ち尽くしているフィランに、ジムトレーナーの一人が状況を察してか声を掛けてきた。

 

「な、泣かしたというか…」

 

「大丈夫大丈夫。いつもの事なのよ。アカネちゃん、勝負に負けると泣いちゃうの。

しばらくしたら泣き止んで戻って来ると思うから。ちょっと待ってる?」

 

(いつもの事なのか…)

 

内心、戸惑いが強くなった気がしなくもないが、そのことを聞いて一先ずは安心した。

 

「いえ、探してきます。いいですかね?」

「ええ!大丈夫だと思うわ。」

 

一応そっとしておいたほうがいいのかは確認して、探しに行ってもいいとのことなのでそうすることにした。

 

 

道行く人々にジムリーダーを見なかったか、ピンク髪の泣いてる女の子を見なかったか、聞き込みをして後を追う。

 

 

そうしてたどり着いたのがここ、ラジオ塔と呼ばれる建物だ。

 

「いるかな…」

 

 

ラジオ塔はある種この町の観光スポット的な面もあり、ジム戦の後に訪れる予定ではあったので少し都合は良かったりする。

 

内部を見渡して、カウンターの奥に見覚えのあるピンク髪が見えた。

 

「あ、いた!アカネさーん!」

「あ、さっきの挑戦者の子…どないしたん?」

「その、バッジを貰いに…」

「あ、そうやった!」

 

アカネはもう落ち着いている様子ではあったが、バッジのことはすっかり忘れていた様だ。

 

「ごめん、忘れてた。はい!これがレギュラーバッジや。」

「ありがとうございます。」

 

僅かなトラブルこそあったもののレギュラーバッジを手に入れることが出来たフィラン。

せっかくだしこのまま少しラジオ塔の中を見て行こうかなどと考えていると、カウンターから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「正解です。それではこのラジオカードを差し上げます!」

「ありがとうございます!」

 

 

そこにはカウンターでクイズに挑戦するヒビキの姿が。

 

 

「ヒビキ君じゃん。」

「あれ、フィラン。何してんの?」

「いや、そっちこそ」

 

素っ頓狂なヒビキのセリフに思わず吹き出してしまいながらも質問し返す。

 

「なんか、クイズに挑戦すると景品が貰えるっていうからやってみたんだ!

で、フィランはどうしたの?」

「いや、ちょっと色々あってね。まあ少し観光って感じかな。」

 

「なんや、知り合い?」

 

二人のやり取りを見ていたアカネも会話に参加してきた。

 

「そうなんです。こっちはヒビキ君。私と同じようにジムバッジを集めてるトレーナーです。」

「そうなんや!じゃあこれからうちのとこって感じ?」

 

「え、うちのって…?」

 

アカネの言葉の意味が一瞬わからずフィランに尋ねるヒビキ。

 

「あ、うちアカネちゃん!コガネジムのジムリーダーや!」

 

「えー!…ってことはフィランは…」

 

「もうバッジ貰ったよ。」

 

「やっぱり!僕も早くいかなきゃ!」

 

「そういう事ならうちも戻らな。じゃ、フィランちゃんやったっけ?またね!」

 

 

 

 

 

 

「なんだか、元気な人達だなぁ…」

 

慌ただしくジムに向かった二人を見送り、そんな感想を一人こぼしたフィランであった。

 

 




せやなー。

アカネちゃんの口調難しいです。
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