忘却少女と異界の獣   作:k25

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陸、幽霊

コガネシティを後にし、エンジュシティに到着したフィラン。

とりあえずポケモンセンターでポケモンたちの回復をしてもらい、ジムに挑戦するかなどと考えていた時、ある建物がふと目に付く。

 

「エンジュおどりば…歌舞練場…?」

 

何やら聞きなれない呼び名の施設がポケモンセンターの近くにあるのを発見した。

 

「なるほどね。おどりばってそういうこと。」

 

少し調べた所、中ではまいこはんと呼ばれる踊り子達が踊りの稽古をしているらしく、それを見物することもできるらしい。

踊り場というのは階段の途中にある他の段よりも面が広い場所の事では無かったのだ。

 

「せっかくだし少し見てみよっか。」

 

なるべくこの土地にしかない物はその目で見て行きたい。

そう思いフィランはジム戦の前に寄り道をすることにしたのだが…

 

 

 

中に入ってみると、黒地に大きく【R】と書かれた服を来た男が舞台に上がり着物の女性に難癖をつけている。

 

「あれがまいこはん。じゃないよね…絶対。」

 

あの黒服には見覚えがある。

ヒワダタウンでヤドン達のシッポを切って金儲けをしようとしていた所をフィランとヒビキが退治した連中。

ロケット団である。

 

恐らくここでも何か悪だくみをして周りの人々を困らせているのだろう。

何をしているのかはわからないが、ガンテツとの約束もあるし、何より放っておけばこの場にいる人たちにも迷惑になる。

 

あまりでしゃばるのは良くないが、周りにこれを対処しようとしている人間もいなさそうに見える。

仕方ないのでまずはあいつを壇上から引きずり下ろすことにした。

 

「そこの人、ロケット団ですよね。何を企んでるのか知らないけど、迷惑ですよ。」

 

舞台に近づき壇上のロケット団員に声を掛ける。

もしもこれがそういう演目だとしたらとんでもない事だが、恐らくそうでないことは観客の反応からも伺える。

 

「あ、なんだてめーは?俺に何か指図しようってならここで俺をポケモンバトルで倒してから言うんだな!!」

 

なぜそうなるのかは全くわからないが、どうせそんな展開にはなるだろうと思っていたフィランはため息を付きながら壇上に上がる。

 

本来ここは踊りを修練、披露する人達のための舞台に自分なんかが上がるのは場違いも甚だしい事だがやむを得ない。

 

「すいません、お邪魔しちゃって。いま追い出しますので少し避難していてください。」

 

壇上の端っこに追いやられてしまったまいこはんに小声で声をかけて下がっているように促す。

 

「お、まさか本当に上がってくるとはな!良いぜ、沢山の見物客の前でボコボコにしてやるよ!」

 

「何なんですか、あなた。それにボコボコになるのはあなたのほうです。」

 

「言ってろ!出てこい、ドガース!」

 

ロケット団員のポケモンはドガース。対するフィランは、

 

(ここはあまり広いわけじゃないし周りに人もいる。コンパクトに片付けないと。)

「ロトム、頼んだ。」

 

ガブリアスやエンペルトでは周りの施設や人に被害が出てしまうかもしれないとロトムを繰り出す。

 

「ロトム、良ーく狙って、でんじは。」

「ドガース!スモッグだ!」

 

ロケット団員がドガースに指示を出す。

だが、ロトムのほうが動きが早く、ドガースが動く前にでんじはを放ち、命中させていた。

 

「おい、ドガース!どうした!スモッグだ!」

麻痺して動けないドガースに激しく言葉を飛ばすロケット団員。

 

「ロトム、エアスラッシュ。周りの人とか物には当てないようにね。」

万が一エアスラッシュが外れて周りの人にでも当たったら大問題だ。

故にでんじはで麻痺させ、確実に命中させる。

 

「フュウ!」

 

もちろん、と声をあげたロトム。

しっかりと狙いを定めてドガースにエアスラッシュを放った。

 

その一撃でドガースは戦闘不能に、ロケット団員は悔しそうに拳を握りしめながらドガースをボールに戻した。

 

「くそっ!」

「私の勝ちですけど、さっきの自分の言葉覚えます?」

 

「畜生!覚えてやがれ!」

これでおとなしく出て行ってくれるだろうと言葉を掛けるフィランに、典型的な悪党のような捨て台詞を吐いてロケット団員は逃げて行った。

 

「はあ。…ロトム、お疲れさま。ありがとうね。」

 

ロトムをボールに戻す。

 

「すみません、騒がしくしてしまって。お怪我とか無いですか?」

 

舞台の端っこに避難していたまいこはんに声を掛ける。

 

「おおきに。うちは大丈夫どす。あんさんは…」

 

「良かった。私はフィランって言います。

たまたま通りがかったんですけど、あのロケット団って連中、前にも他の所で悪さしててそれで放っておけなかったので。」

 

軽く状況を説明し他のところでも悪さをしているかもしれないから見かけたら気を付けてもらうようにお願いをした。

 

その後周りにいた人たちからもお礼やバトルのことについて声を掛けられ、少し恥ずかしくなってしまい足早に歌舞練場を後にした。

 

 

 

「…別に私が悪い事したわけじゃないのに少し居辛くなっちゃったよ。

本当に迷惑だなあの連中…」

 

周りの人も悪気があったわけではなく、まだまだ子供の女の子が得体のしれない男にバトルで勝ったことに興味があっただけなのだろう。

だからこれは全部あのロケット団のせいなのだ、と自分に言い聞かせてジムに挑みに行くことにした。

 

 

 

 

 

「うわ、くらっ…」

エンジュジムに入ったフィランはそのあまりの視界の悪さに思わず声をあげた。

ジム内は全体的に暗く、通路の先からうっすらと明かりがさしているのが見える。

 

とりあえずその明かり目指してみることにしたフィラン。

薄暗い通路を歩いているうちにあることを思い出した。

 

「そういえばロトムと初めてあった森の洋館も結構暗かったよね~。」

そう、ロトムと出会った日のことを思い出していた。

 

「あの時はまだエンペルトはポッタイシだったよね。

なんかあの時すごい慌ててたじゃん。あれなんだったの?」

 

フィランはエンペルトが森の洋館で体験した恐怖を知らない。

故に何のことかいまだにわかっていないのだがエンペルトからしたら言葉にするのも嫌な思い出らしくなかなか話してもくれない。

 

「ふーん。まあ言いたく無いなら無理にはとは言わないけどさ。っと。」

 

そんな雑談もつかの間、先ほどから見えていた薄明りのもとにたどり着いた。

そこでは何やら雰囲気ありげな老婆が待ち構えていた。

 

因みにその薄明かりの正体はその老婆が持つろうそくの明かりだったようだ。

 

「私たちのポケモンにダメージを与えられるか?」

 

そう言い放ちいきなり勝負を仕掛けてきた老婆にフィランも応戦する。

 

「ロトム。連戦で悪いね。今日は出番多めかも。」

 

先ほどの歌舞練場に続きここでもロトムの登板となった。

 

相手の繰り出したポケモンはゴース。

ロトムはフォルムチェンジしているがもともとゴーストタイプのポケモン、故にシャドーボール等のゴースト技を使うことができる。

 

「ロトム、シャドーボール。」

 

ゴーストタイプの時よりは威力が出ないが代わりにゴースト技で効果抜群を取られないというメリットもある。

そういった点からも今日はロトムの出番が多めになりそうだ。

 

 

 

 

その後もロトムを中心に、少し疲労が溜まりそうであればエンペルトやガブリアスに交代しながら進んでいった。

 

「…暗いな。」

 

道中のトレーナー達はなぜか勝負が終わると持っているろうそくを吹き消してしまい、後ろはもう真っ暗となってしまっている。

 

だが、それももう少しの辛抱だろう。

この先には一際強い明かりが見える。

 

暗闇の中を進み、とうとうその場所へ。

そこには紫のバンダナとマフラーをした金髪の青年が立っていた。

 

「よく来たね。

ここ、エンジュでは昔からポケモンを神様として祀っていた。

そして真の実力を備えたトレーナーの前に伝説のポケモンは舞い降りる。そう伝えられている…

僕はその言い伝えを信じ生まれたときからここで秘密の修行をしてきた。

そのおかげで僕は他の人には見えないも見えるようになった。

僕に見えるのはこの地に伝説のポケモンを呼び寄せる人物の影…

僕はそれが自分自身だと信じているよ!

そしてそのための修行、君にも強力してもらうよ!」

 

「はあ…そうですか…まあ私はバッジを貰わないといけないので負けませんけどね!」

 

まさしく唐突な自分語りである。

伝説のポケモンがどうとか、知ったことでは無いがバッジのためにも負ける訳には行かない。ただそれだけである。

 

「ゴース!」

 

「ロトム、あとちょっとだ。頑張って!」

 

そのためにもロトムにはもう少し頑張って貰わねば。

 

「ロトム、シャドーボール。」

 

「ゴース、あやしいひかりだ。」

 

ゴースがあやしいひかりの予備動作をする。

だが、ロトムは既にシャドーボールの形成を完了している。

 

それをそのままロトムが放つ。

あやしいひかりを準備していたゴースがそのことに気付いた時には既に遅く、目の前までシャドーボールが迫っていた。

 

「ゴース!」

 

シャドーボールは見事命中。

ゴースは一撃で戦闘不能となった。

 

「…次だ!ゴースト!」

 

マツバが次のポケモンを繰り出す。

 

「ロトム、まだまだ行けるよね?」

「フューウ!」

 

いつもはやんちゃなロトムもこういう時はその元気さがメリットになっている。

まあ、フィランの手持ちにこの程度で音を上げるやわなポケモンはいないが。

 

 

 

 

 

その後、ゴーストが2体続いたがロトムの快進撃が止まらず連続で撃破。

ゴーストタイプにゴースト技で勝ち、お株を奪ったような状況になった。

 

「いやまだだ!僕は信じているよ!ゲンガー!」

 

マツバはどうやら最後のポケモンのようだ。

繰り出したのはゲンガーだ。

 

「ゲンガー!さいみんじゅつだ!」

 

「うわ!ロトム!避けて!」

 

さいみんじゅつ。

食らってしまえば最後、しばらくは眠り続け大きな隙を晒すことになる凶悪な技だ。

ただし強力な効果を持つが故か、当てるのが少々難しく外すとその分自分の隙を作ってしまう。

 

とはいえ当ててしまえば大きくアドバンテージを作る事のできる技だ。

これを貰ってしまう訳にはいかないと慌ててロトムに指示を出す。

 

ロトムにもそれは伝わっていたのか、しっかりとさいみんじゅつを躱し、指示していないシャドーボールの準備までしている。

 

「全く、最高だね。シャドーボールだ!」

 

直後、ゲンガーにシャドーボールが命中。

ゲンガーは何とか踏みとどまろうとしたが、あえなく意識を手放した。

 

こうして、エンジュジムでもフィランは勝利を収めた。

 




バトル2本立てでした。
2本立てしたので両方あっさり目になってしまいました。

次回もエンジュシティでのお話が続く予定です。
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