忘却少女と異界の獣   作:k25

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週2回くらいのペースで更新するつもりでいたが話を思いついたので初投稿です。
前回に引き続き日常回です。


3,進む日々と変わらぬもの

-わずかに日の光が差し込む薄暗い洞穴、その苔むした道を少女とポケモンが駆ける。

 

「こっちに…隠れよう…っ!」

 

息も絶え絶えにかすかな声を、お互いに聞こえる程度に。

 

岩の影に身を寄せ合い、開けた通りからは死角となったその場所で鼓動を整えながら当たりの気配をうかがう。

 

落ち着いたのも束の間。

何かを追うような足音が心臓の鼓動と重なり、心拍数が上がるかのような錯覚に陥る。

 

「…俺はこっちを探す!」

「了解!私はあちらを。後ほど合流しよう。」

 

二人の男のやり取りが洞穴の外から聞こえる。

(まずい…ここも見つかっちゃうかも…)

 

男の足跡が洞穴にこだまする。

「おい!出てきなさい!君にもそのポケモンにも危害は加えない!そいつさえ渡せば君はちゃんと両親のところに送り届けてやるから!」

あたかもこちらに降伏を促すような、決して安心はできない声色だった。

 

(絶対にウソ。それに私は…)

 

男の言葉には怒気がこもっている。

その言葉を信用することはできなかったし、ここで姿を現すという選択肢はありえない。

 

だが、男の足音は徐々に近づいており一刻の猶予もならない。

そんな状況を打破するだけの手札を彼女は持ち得なかった。

 

ザッ…

 

「おい!そこか!」

 

緊張に身をよじる少女の、靴が地面に擦れる音を男は聞き逃さなかったのだろう。

 

(まずい!こっちに来る!)

 

刹那

白い影が空気を切るかの如く舞う。

 

「おい!…うわっ!」

男は一瞬で倒れ伏した。

 

 

次の瞬間には少女の下に舞い戻り、手を引き、駆けだした…

 

-----------

 

「ん…ふぁ…」

朝の陽ざしが差し込みフィランを覚醒へと導く。

 

「何か…」

 

夢を見た気がしなくもない。が内容も思い出せずそもそも見たのかどうかすらはっきりしない。

 

「いつも思い出せないことだらけだな…」

そんな風に自嘲するが実際のところ全く問題に感じていないのだ。

それで、いつまでもここで世話になり続けるのには少し申し訳なさを感じるが。

 

ベッドから起き上がり、何よりもまず初めにやることがある。

「おはよう。フェローチェ。」

 

大切な相棒をボールから出し、挨拶を交わした。

 

 

・・・

・・

 

 今日はシロナの研究の手伝いをしている。

とはいっても一緒に屋外で調査をしているわけではなく、シロナの研究室の片付けである。

 

(このファイルはこっち。これはこっちか…。このメモいるのかな、後で聞いてみようか。)

 

しばらく見ないうちに研究室は地獄の釜のごとき様相となっており、物を仕分するだけでも一苦労だ。

研究に熱中するあまり段々と惨憺たる様になっていく部屋の片付けにも、すっかり慣れたもので淡々と仕分けと整頓を進めていく。

 

…まあ、シロナが片付けができないのは研究云々ではなく彼女の生来の性質なのだが。

 

 

グイッ…

あらかた片付けが完了し、そろそろ昼食でも用意しようか、なんてことを考えているフィランのシャツの裾を引っ張る何かの力を感じる。

 

フェローチェはボールから出しておらず、当然シロナは不在。

と、なるとこの力の主は…一体…!!

なんてホラーな展開にはならない。正体は分かりきっているのだ

 

 

「ぎゅーい!」

 

「や。フカマル。どうしたの?」

 

正体はこのポケモン、フカマルである。

 

数週間前にシロナの持っていたタマゴから孵ったばかりのフカマル。

このフカマルもお留守番時のレギュラーメンバーであった。

 

フカマルと向き合い声をかけると甘噛みでじゃれついてくる。どうやら遊んでほしいのか。

「うーん。でもまだお片付けも終わってないし、これからご飯も用意しないといけないしなあ…」

 

実を言うと解決案はあるのだ。自分のやるべきことを遂行しつつ、フカマルの退屈もしのぐ、そんな方法が。

 

…あまり気は進まないが。

 

 

というわけで現在キッチンにて昼食の用意をしている。

 

自分と昼頃には戻る予定のシロナ、それからポケモンたちの分。

フェローチェは特にフィランが用意したものしか口にしないので尚更だ。

 

調理をしながら横目でリビングに目をやる。

 

 

 

「ぎゅーん!ぎゅーい!」

「………」

 

 

フカマルがゴロゴロと床を転がってはしゃいでいる。

部屋の端まで転がると歩いて一定のところまで戻っている。

 

結構な勢いで転がりまた戻る。

部屋に滑り台のような坂があったり、当然部屋が傾いているわけではない。

 

 

ひとりでに転がっているわけではない。

フェローチェが足で蹴って転がしているのだ。

 

 

 

「……まあ、フカマルが楽しいならそれでいいか!」

その光景に思うところがないというのは嘘になるが。

そもそもいうならば生まれて間もない赤ん坊のようなフカマルの世話をフェローチェにお願いした自分の責任でもある。

 

~~~~~~~

「ごめん!少しでいいからこの子の相手してあげて!」

「………」

 

腕に抱きかかえたフカマルは高くなった視線にはしゃいでいる。

その様子を普通に嫌そうな表情で見ている自身の相棒。

 

「お願い!…じゃ、じゃあ後で逆に何かお願い聞くから…ダメ?」

「………。。。」

 

仕方ないわね。なんて声まで聞こえそうな仕草とため息。

どうやら了承してくれるようだ。

 

お願いを聞くなんて安請け合いをした感も否めないがそんな大それた要求はないだろう。

なんて高を括りながらフェローチェにフカマルを託す。

 

「フカマル。フェローチェに少しの間遊んでもらってね。

フェローチェもフカマルもケガだけは気を付けてね。」

 

乗り気でなさすぎるベビーシッター(フェローチェ)赤子(フカマル)を預け、自身は次の仕事にとりかかった。

 

 

・・・

・・

 

(あれで楽しいんだろうか?でもフカマル割と生まれたばっかだしな。人間の赤ちゃんが高い高いとかで喜ぶようなものかな。

てか酔わないのかなアレ。)

 

できた料理を皿に盛りながらそんなことを考えていると扉を開く音がした。

 

「ただいま。」

「おかえりなさい。シロナさん。

昼食の準備、できてますよ。」

「助かるわ。さ、食事にしま…アレ、なにしてるの…?」

 

当然の感想だ。

自分が逆の立場でも同じことを言うだろう。

 

「…うーん、子守り、ですかね?」

馬鹿を言うな。どこの世界に赤子を足蹴にして転がすシッターがいるか。いてたまるか。

 

「虐待の間違いじゃなくて?」

 

「それを言われると頭が痛いですね…」

 

冗談交じりにそんな話をしながら昼食の準備を進めていく。

 

-----------

(それにしてもいい傾向だわ。初めて会ったときはどうなることかと思ったけど。)

食事の後、コーヒーで一息つきながらシロナはそんなことを考えていた。

 

(ここにはフィランを傷つけるものはないことが分かってかなり落ち着いてきてるのかしら。)

思い返すのは先ほどのフカマルの相手をしていたフェローチェのことだ。

フィランがここで目覚めたときからははるかにフェローチェの態度は軟化してきていた。

 

(それにフィラン自身がほかのポケモンと積極的にかかわろうとしてきているのも要因としてあるのかも。

自分の主が直接触れ合っても傷つけられないなら警戒する必要もそんなにないってことね。

…フェローチェとは対照的にあの子について進展がないのが困りものだけど。)

 

相も変わらずフィランの素性、記憶については何もわかっていない。

 

フィラン自身は気にしておらず、ここでの生活もなれて気に入ってきている。

今も上機嫌で皿洗いをしているくらいだ。

…因みにシロナも片付けは手伝う、と名乗り出たがフィランに無理やり椅子に座らせられ食後のコーヒーまで提供されてしまった。

 

 

(まああの子が何か隠しごとや嘘をついているとは思えないし、気長にやっていくしかないのかしらね。)

 

ひょっとしたらフェローチェはすべてを知っているのかもしれない。

だが、言葉を話せないポケモンに詳細を聞き取りするのは不可能だし、

何よりフェローチェはフィラン以外とは積極的にコミュニケーションをとろうとはしない。

 

フカマルの相手だってフィランの頼みでなかったらしていなかっただろう。

警戒心は薄れてきているが完全に心を開いているわけではない様子だ。

 

考え事を流し込むかのようにコーヒーを一口含み、

午前中の調査について資料をまとめることにしたのだった。

 

・・・

・・

 

 フィランはその後少し残した片付けをやり遂げ、シロナにポケモンについての様々なことを教わったり、フカマルと遊んだり家事をしたりして過ごした。

因みに研究の手伝いだけでは住まわせてもらっている対価と不十分だと思い、自主的に家事をこなしている。特に掃除。

 

夕食後の団欒も過ぎ去り、シャワーを浴びて自室に戻る。

今日も一日を終えようとベットに潜ろうとしたその時、机に置いたボールからフェローチェが飛び出した。

 

「ん?どうしたの?」

問いかけるフィランの声にやや不満そうな様子を浮かべるフェローチェ。

 

「あぁ、お願い。聞くって約束だったね。決まったの?」

すると、フィランの手を取ったフェローチェがベッドに横になる。

 

「一緒に寝るなんて、そんなことでいいの?」

うなずき、肯定するフェローチェに手を引かれ、フィランも横になる。

 

(でも、ずっと一緒だったのに、目覚めたときからこうしたことなんて無かったな。

これもいいかも…)

 

「おやすみ。フェローチェ。」

 

少女とポケモンは手をつなぎあったまま眠りについた。

 

 

 




というわけで3話でした。

日常回ってどの程度の濃度で描写するか迷いますね。
あまりにも書きすぎても説明過多かなと思いますが書かな過ぎても内容薄くてなんかな…と

とりあえず明るい話を書きたかったのでこんな感じになりました。

シロナの汚部屋設定は公式っぽいです。
なので家事を他人に任せる描写はしっくりきていい感じですね。

フカマルの鳴き声も耳コピ文字起こし感なのですが、DPtの図鑑だとなんかぴゅーいみたいな感じだったんですよね(感じ方には個人差があります。)
さすがに可愛らしすぎるというか未来の600族の風格?がないなあと思いアレになりました。

ところでDPリメイクとlegends アルセウスの発売日が決まりましたね。
この物語をシンオウ地方から始めたのは狙ったわけではなく全く偶然なのですが。
私はリメイクもですがアルセウスが特に楽しみですね。
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