1組のクラス代表決定戦の次の日。IS学園の談話室にある小部屋で電話する昴の姿があった。
「ああ…わかったよ。それと母さんにも伝えておいてくれ。元気でやっているからさぁ…うん…うん。夏休みになったら帰って来るから。それじゃあまたね」ピッ
父親との電話が終えて自室に戻る途中に学園で一夏や昴を除いて用務員として働く轡木十蔵と出会った。
「おやおや。皆川君ではありませんか」
「貴方は?」
「申し遅れました。IS学園で用務員をしております、轡木十蔵と申します」
「そうでしたか。自分は皆川昴と言います。どうかよろしくお願いします」
「ええ、君の事はご存知でしたよ。織斑君と同じ『ISを操縦出来る男性操縦者』ですものね」
「そんな事はないですよ。たまたま動かせただけですから」
「たまたまですか…」
「ええ、それでは、僕は授業があるのでこれで失礼します」
「ああ、引き留めて申し訳ない」
「いえいえ。それでは」
そう言って、十蔵とすれ違った。しかし、昴は彼が言った一言で背筋が凍るのを感じた。
「ジーク・ジオン」
「!」
「?どうしましたか」
「い、いえ…」
「…この言葉の意味を知りたければ昼休みに理事長室に来るのだな。スバル・ミナガワ少佐」
「!」
そう言って、十蔵は来た道を戻って行くのであった。その背中を昴はただ見守るしかなかった。なぜ、U.Cの頃の名前を知っているのか。なぜ、その名前で言ってきたのか。そして、なぜ、昴がジオン兵であるのを知っているのか…昴は考えたがわからず、その場に立ち尽くしていた。
キーンコーンカーンコーン!
気付いた時は予鈴がなり授業まであと少しのところだった。なお、授業には遅れ千冬から出席簿アタックを受けたが、やった本人もここまで上の空だとは思っていなかった。
朝のSHRを終えて少したった後に様子がおかしい一夏は昴に話しかけてみるのであった。
「大丈夫ですか昴さん」
「ああ、大丈夫だよ一夏君」
そんな風に話していると、他の女子生徒達がある噂をしてくるのであった。
「ねぇねぇ、2組に転校生が来るんだって!」
「しかも中国の代表候補生らしいよ」
「じゃあ、その子が2組の代表になるのかな?」
「けど、今専用機を持っているのって1組と4組らしいよ」
「あれ?4組の子はまだ完成してないって話し聞いたけど…」
どうやら2組に転校生が来るらしい。そんな風に考えていると突然ドアが開いた。そこには、長い髪をツインテールにし小柄な体格に八重歯。そして、肩だし改造IS学園の制服を着ている女の子がいた。
「その情報古いわよ!2組も専用機持ちになったからね!そうそう勝たせてあげないんだから」
「鈴、お前鈴か!」
「そうよ。凰 鈴音!1組に宣戦布告しにきたってわけよ!」
「何格好つけてるんだ?すげえ似合わないぞ」
「んなっ…!何てこと言うのよ、アンタは!」
この2人のやり取りを見ているクラスメイト達は思った。(あたしたち空気?)と…そんな鈴が昴を見ると一転してジロジロと見てくるのであった。
「アンタが2人目の男性操縦者?」
「ああ、皆川昴って言うよ。凰さん」
「よろしくね。見たところ…強そうに見えないわね」
「アハハ…」
「そんなことないぜ!昴さんはな「お話の途中で悪いが、凰さんはそろそろ自分の教室に戻った方がいいと思うよ」え?」
昴が指をさした方向を見ると、今にも怒り出しそうな織斑先生が立っていた。
「ち、千冬さん…!」
バシン!
「ドアの前で騒ぐな。邪魔だ」
「は、はい!じゃあね一夏!逃げんじゃあないわよ!」
そう言って、鈴は2組に帰って行くのであった。その姿を見て一夏は「これから面白くなりそうだ」と思う反面、昴は朝の出来事があり、授業の内容は全く入って来なかった。そんな姿を箒とセシリアは心配そうに見ていた。
4時限目が終わり皆が昼食に行く中で箒は勇気を出して誘ってみるのであった。
「み、皆川さん!」
「…箒」
「あ、あの!こ、これからお昼ご飯なんですけど…よかった一緒に食べませんか!」
「ええ、わたくし達と一緒に食べて頂けませんでしょうか」
「…すみません。ちょっと用事があるのでまた今度でいいですか」
『え…』
「それじゃあ…」
そう言って、昴は大急ぎで教室を後にした。残された箒とセシリア、それに一夏はどうしていいのかわからなかった。セシリアは急いでグリ達に連絡したが、昼飯を一緒に食べる約束はしていないとの事だった。では、どんな約束があるのか…
大急ぎで皆と別れた昴は「理事長室」の前に来た。そして、ドアを3回ノックして入った。
コンコンコン
『…どうぞ』
「皆川昴です。失礼します」
そう言って、入ると年配女性が黒革の椅子に座っていた。その隣には今朝あった十蔵の姿もいた。
「初めまして。私はIS学園で理事長をしている轡木智子(くつわぎ ともこ)と申します」
「初めまして。1年1組皆川昴と申します」
「…ある程度の情報は夫の方から聞きましたよ。スバル・ミナガワ少佐」
「…どうしてその名前を知っているんですか」
「名前だけではありませんよ。第77宇宙攻撃軍所属、スバル・ミナガワ。最終階級は少佐。だが、二階級特進で大佐になっているようですね」
「…」
「驚いて声も出ないですか」
「ええ、ですがどうして理事長はその名前を…」
「…そうですね。それでは説明しましょう。私の名前は轡木智子。しかし、これは
「ミネバ・ラオ・ザビ…まさか!」
「ええ、そうです。私はあなた達ジオン公国宇宙要塞『ソロモン』で宇宙攻撃軍総司令官を務めていた、ドズル・ザビとゼナ・ミアの子です」
「は、ははー!」
そう言って、昴は片膝を付く最敬礼をするのであった。それを智子は直ぐにやめさせるのであった。
「やめてくださいスバル少佐。こんな姿になりましたが、今はザビ家の人間ではなくただのIS学園理事長です」
「し、しかし…私はただの一軍人にしかすぎません。その様なお姿になられても貴女様は正当なるザビ家の人間です」
「…困りましたね。では、この時だけでも普通に接してください。それならばいいでしょ?それにこれからの事について話さなければなりませんからね」
「ミネバ様がそうおっしゃるのであれば…」
そう言って、昴は最敬礼の姿勢を解いた。そして、隣にいた十蔵を見るのであった。
「それでは、十蔵様は?…もしかして!」
「如何にも、私の名前は轡木十蔵。だが、これは
「デラーズ閣下…閣下!」
昴は感極まって十蔵と固い握手をするのであった。あの時、ア・バオア・クーから脱出した際に残存兵力を集結させるのに手一杯だったデラーズはスバル達の回収までは間に合わなかった。そのことを今でも悔やんでいたという。
「すまなかった。貴殿の様な武人を迎え入れる事が出来ず…許してくれ」
「何をおっしゃいますか閣下。私は聞きました。閣下が残存兵を集め、ジオン公国再興を掲げていた事を…私も機体があれば、閣下の元へ馳せ参じるつもりでした」
愛機ゲルググはガンダムとの戦闘によってバラバラになってしまい。手の施しようがなかった。また既にシャーリーとの間に第一子を設けていたので思うように動けなかった。その為歯がゆい思いをしていた。
「感動の再開の途中で申し訳ないのだけれどいいかしら?」
「は、はい!」
「では、先日こんな情報がIS学園側のサーバーに上がって来たのよ」
そう言って、ミネバは一台のPCを昴に見せた。そこには動画が載っていたが、その内容に驚いた。
「これは…!」
そこに映っていたのは何処かの部屋に座っている人だった。但し、逆光によりシルエットしか見えない。
『IS学園生徒および地球に済む全ての者達に告ぐ
私は『ジオンの亡霊』の総帥である。
IS学園で行っているのは授業と名ばかりの戦闘訓練である。
そして、一部の男性操縦者が現れた事により、そのパワーバランスが変わりつつある!
だが、神聖なISに汚らわしい男が乗るわけには行けない!傲慢で野蛮な男性操縦者を砕き
真の女性地位を勝ち取るため、我ら『ジオンの亡霊』は織斑一夏及びスバル・ミナガワに対して宣戦を布告する」
「…」
「幸いにも動画は直ぐにこちらで削除したから、外部に漏れることはないでしょう。ですが、より一層警備を強化してく必要があります」
「この動画は一夏君には…」
「いえ、彼には余計な刺激を与えない為にも、まだ動画は見せていません」
「そうですか…」
「それで、今後の動きですが。織斑一夏君と皆川昴君に対して、護衛を付くように手配します」
「我々としても『ジオンの亡霊』がどの程度なのか検討は掴んでいない。なので、当面はそれで対応する」
「了解であります。閣下」
「おいおい、ここで閣下はやめてくれ。私はもう死んで「轡木十蔵」として生きているんだ。いつもの通りに接してくれると助かる」
「しかし…」
「私も死んでいるため、ミネバ・ザビではなく「轡木智子」として接してください」
「はッ!」
「では、この話しはここまでにしましょう。もう少しで昼休みも終わるわね。昴くん食べなくて大丈夫かしら?」
「ええ、これくらい大丈夫ですよ」
そう言って、昼休み終了のベルがなり昴は理事長室を後にしようとした際にミネバに止められた。
「昴さん、何かありましたら連絡くださいね。こちら対応は出来る限り行いますので」
「お気遣いいただきありがとうございます。それでは失礼します」
昴はそう言って理事長室を後にした。幸いお昼ご飯は食べ損ねたが授業中にお腹の音が鳴る事はなかった。
放課後になり箒とセシリアから心配そうな事を言われたが、昴は「大したことない」と言って安心させようとした。その後グリ達やダリル達も同様な事を訪ねてきたが「大丈夫だと」伝えた。
夕食は流石に昼食の分も合わせて大盛りを頼むことにした。その後グリとヘルとの訓練を終えて、自室に戻るのだが頭の中ではあの言葉が気になった。
“私は『ジオンの亡霊』の総帥である。”
この言葉がもし、ミネバ様やデラーズ閣下の様に宇宙戦争時代の人が、この世界に転生しているのであれば、あのお方になるのだろうか…しかし、あのお方なら堂々と行う。それじゃあ誰なんだろうか…
そんな事を考えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。昴は急いで部屋着(Tシャツにハーフパンツと言うラフな格好)になるとドアに向かって声を出した。
「はい」
『あ~昴さん!俺です!一夏です』
「一夏君…ちょっと待ってくれ」
声の主が一夏だと知るとドアを開けるのであった。
「お待たせ。どうしたのかな?」
「あ、はい。紹介したい奴がいるので、ちょっと談話室に来てもらってもいいですか?」
「談話室だねいいよ。ちょっと待っててくれ」
そう言って、部屋に待機中のサザビーを首からかけて行く。そして、部屋に鍵をかけて一夏と一緒に談話室に向かうのであった。そこには、薄い青いネグリジェ姿のセシリアと浴衣姿の箒の他に、昴と同じくTシャツにハーフパンツの女の子がいた。
箒とセシリアは突然の昴登場に戸惑いを隠せていなかった。
「す、昴さん!どうしてここに!?」
「なに、一夏君から紹介したい人がいると聞いて来たんだが…迷惑だったかな?」
「い、いえ…大丈夫ですわ///」
「一夏!どういう事か説明してもらおうか!なんで昴さんがここに居るんだ!」
「あ~悪い。悪い。実はこいつの事を紹介したくてよ」
「アンタは朝の…」
「それじゃあ改めて紹介するぜ。皆川昴さんだ」
「どうも、皆川昴と言います」
「それじゃあ改めて…凰 鈴音と言うわ。中国の代表候補生よ」
「ああ、こちらこそよろしく。凰さん」
「アタシの事は鈴でいいわよ。みんなそう言って、いるし」
そう言って、昴は鈴握手をするのであった。その様子を一夏は自慢げに行ってくるのであった。
「昴さんは凄いんだぜ!俺らよりも年上なのにIS操縦もぴか一何だよ!」
「そうなの?」
「ああ、今年で18になるからね。けど、遠慮なく言ってくれ」
「ええ、わかったわ」
そう言って、鈴の紹介が終わり各々が部屋に戻って行くのであった。そして、部屋の前に行くと意外な人物が部屋の前にいた。その人は黒のフォーマルスーツではなく、IS授業で着ていた白いジャージ姿だった。
「織斑先生?」
「皆川…いや、この時間帯なら昴って言った方がいいか?」
「それじゃあ千冬さん…どうしたんですか。俺の部屋の前で?」
「なに、授業中上の空だった生徒に対して、色々と喝を入れに来てだな」
「ちょっと待ってくださいよ!」
「フッ冗談だ。だが、心配したのは本当だぞ」
「そうでしたか。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「なに、生徒の姿を察知出来なければ教師失格だ」
「そんなことないですよ。立ち話も何ですから良かったら入ってください。お茶ぐらい出しますよ」
「いいのか?仮にも生徒と教師だぞ」
「その前に男と女ですけどね」
「ば、馬鹿者!大人をからかうな!///」
「フフフ、そうでしたね。すみません」
全く…と言いつつも千冬は昴の部屋に入って行くのであった。そして、昴は2人分のマグカップを用意して、お茶の準備をするのであった。時間も遅いので昴はホットミルクを用意して千冬に手渡した。
「どうぞ」
「ありがとう。ホットミルクか…意外と可愛いな」
「そうですか?時間も遅いので、直ぐに寝られる物がいいと思って入れただけですよ」
「そうか…うん美味いな」
「それは良かった」
「…」
「…」
お互い無言になる。しかし、話さなくても分かる。我慢できなくなった千冬は思い切って聞いてみることにした。
「今日、理事長室に行ったそうだな?」
「…ええ、それがどうしました?」
「何かあったのか?」
昴は迷っていた。ここで全てをさらけ出して楽になるのか、素性を隠してこれまで通り嘘の生活を送るのか…
言ってしまえば楽になる…しかし、同時に千冬や一夏、果てはグリ達を巻き込んでしまう形になってしまうことを昴は恐れていた。そうならないように昴は嘘をついた。
「2人目の男性操縦者が珍しいのか、
「…」
千冬はジッと昴を見ていた。だが、千冬は悟ったかの様に話し始めた。
「…まぁいい。授業中の事は
「そのつもりですよ」
「それじゃあ、私はお暇するか」
「ええ、それじゃあ“また明日”」
「ああ、“また明日だ”」
そう言って、千冬は元来た道を戻って行くのであった。それを見送った昴は、2人分の食器を洗い、明日の授業の準備をするのであった。
次回からクラス対抗戦になります。
スバルの正体を明かす人
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箒
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セシリア
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ラウラ
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グリフィン・レッドラム
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ベルベット・ヘル
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織斑千冬
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山田真耶