辻風 結様へのファン小説 作:小説ネキ
ムスビトも、そうでない方も楽しんでいもらえれば幸いです。
「ん……」
ふと目が覚めた。
こうして意識がはっきりしたのはいつぶりだろう。
ぐっと体を伸ばし、周りを見渡し、社の状態を確認する。
埃が溜まり、屋根は崩れてしまっている。壁なんかは植物に侵食され、屋内なのに外にいるような光景だ。
「……また随分寝てたみたいだなあ」
数百年といったところだろうか。
前に目を覚ました時は黒船とやらが来ていたようだし、今回はどんな変化が起こっているやら。
よっこいせ、と体を起こすと体に違和感。
妙に体が重い。特に胸の部分と頭の部分。
すっと視線を下げるとあるはずのないものが目に入った。
「おお……」
手で触れてみるとぽよんぽよんと心地いい感触。
間違いなく女性の乳房だ。
ついでに頭に手をやってみる。固い感触。
鬼のような角が生えていた。
はぁ~、と長い溜息をつく。
「どうしてこうなった」
♢
とりあえず自分の肉体の変化を
それなりに大きかった境内は木や雑草にのまれ、影も形もない。
前に起きたときは神主も巫女もいたはずだが、人っ子一人いないあたり、滅んだのか見捨てたのか。
生え放題の木の枝に角をぶつけてのけ反りながらも境内を出る。
「なんだこりゃあ」
この神社は山の上にある。
だから眼下には城下町が広がる…はずだったのだが。
灰色の城くらい大きな建物。馬よりも早く走っているように見える鉄の箱。
見慣れないどころか理解不能なものが城下町の代わりに取って代わっていた。
「どれだけ寝てたんだ私は……?」
ぽりぽり、と頭を搔く。
それで気が付いたが、髪も随分伸びている。
境内に残っていた手水鉢を覗き込むと目の鋭い鬼の角を持った美女が見つめ返していた。
しかも男だった頃の私よりも背が高い。それがまた妙に腹が立つ。
「どうして……」
手をついて落ち込む。
これでも縁結びの神としてそれなりに神格を持つ身だ。
神に対する信仰が薄れたからと言って姿形がこうも変わるとは思っていなかった。
というかなんで私は鬼になっているんだ。神ぞ?我神ぞ?
武神とか怨霊が奉られた神みたいな荒神ならまだしも、私は縁結びの神だ。鬼になる要素はなかったと思うんだが。
「そうだ、そういえば」
友である神が城下町に神社を構えていたはずだ。
彼ならば事情を知っているかもしれない。
人形や像など、依り代を司る神である彼ならば信仰が薄れて消え去っているということもあるまい。
よし、と気合を入れなおすと私は未知の町へと歩みを進め始めたのだった。