白兎が冥人の夢を見るのは間違っているだろうか   作:モフィー

6 / 10
感想に書かれてありましたが、原作を読む限り、レフィーヤにエルフの潔癖性は見受けられなかったように思います。

男嫌いについても、少々わかりかねるところであります。
確かにアイズに憧れ、女性団員と一緒にいることが多いので、そう見えるかもしれません。

いずれも私の読み込み不足だとしたら、申し訳ありません。

ですが、タグに「キャラ改変」と入れておりますので、多少の違いはご容赦していただければと思います。


ちなみに、原作は本編が17巻と、ソード・オラトリアは4巻までしか読んでおりません。アニメや漫画はノータッチです。ダンメモはちょこっとだけやりました。

ソード・オラトリアに関しては、今後読み進めていく予定ではありますが、現在4巻までの知識しかありませんので、それを踏まえて本作を読んでいただければ幸いです。



第五話 白兎捕獲大作戦

 レフィーヤの告白に、アイズはすぐに部屋を飛び出そうとする。

 

「待つんだ、アイズ!」

 

 瞬間移動でもしたかのように、フィンが扉の前にいるレフィーヤとの間に立ちふさがった。

 

「……っ……っ!!」

「すぐにでも探しに行きたい君の気持ちはわかる。でもオラリオは広い。闇雲に探しても見つからない。まずは状況を整理しよう」

「……はい」

「まずはレフィーヤの話を聞こうか」

 

 フィンが頷き、皆に言い渡す。

 

「内容次第では、座学と訓練の量を増やさねばならんな」

 

 続くリヴェリアの言葉に、レフィーヤは「ひぃ!」と縮み上がる。

 

「まぁまぁ、そない脅かしたら可哀相やろ? ウチのようにもっと慈愛の精神を持ってやなぁ――」

「お前のどこに慈愛の精神があるのだ!」

「お目々開いてよく見てみぃ。頭の先からつま先まで、全身に満ちあふれとるやろ?」

「二人とも、漫才なら後でやってくれない?」

 

 ティオネが嘆息する。

 

 堅物のリヴェリアを一方的に茶化しているロキ。

 場を和まそうとした主神の努力は、残念ながら徒労に終わる。

 

「え、えっと、その――」

 

 視線が集中するレフィーヤは口を開いた。

 まるで教会の告解室で懺悔するような、沈痛な面持ちであり、司祭の代わりにでもなったつもりで皆は静かに聞く。

 

 事のあらましを順を追って説明するとこうだ。 

 回復薬で傷はすぐに癒えたが、目を覚まさないベルに対し、一応、監視という名目でレフィーヤが付くことになった。

 初対面でアイズに求婚した不届き者であるという話は、すでに聞き及んでいた。

 

 アイズはレフィーヤにとって憧れの人であり、その彼女が連れて来た入団希望者に対し、並々ならぬ嫌悪感を抱いていた。

 アイズに見出された。その事実が妬ましくて許せない。

 ゆえに、顔も見たくないし、口も聞きたくないというのが、レフィーヤの本音であるが、任命したのがエルフの頂点であるリヴェリアであったため、辞退することはできなかった。

 

 渋々、ベルの監視に付いたレフィーヤだが、事態が急変する。

 昨日食べたモノが体に合っていなかったのか、今朝からお腹の調子が悪く、もよおしてしまったのだ。

 我慢しようとしたが、生理現象には抗えず、トイレに行くことを決める。

 監視の代理を探す時間も惜しいほど、お腹の状態が切迫していたため、非常時――滅多にないが、賊や敵対者などを軟禁するときに使用する、外側からしか解除できない部屋の鍵を掛けて、トイレに向かった。

 

 そして、用を足し、部屋に戻ってくると、ベルがいなくなっていた、という次第である。

 

「ずみまぜんっ! ぼんどうに、ずみまぜぇえええんっ!!」

 

 アイズに対する自身の想いと、ベルに対する嫉妬は秘めたままで、状況だけを話し終えたレフィーヤは、罪の意識からか、泣き出してしまう。

 

 一同はなんともいえない表情になった。

 彼女の状況には同情を禁じ得ないし、うら若き乙女にとっては、とても話しづらかった内容であろう。

 

「話してくれて、ありがとう」

「うわぁあああああんっ!!」

 

 アイズはレフィーヤの隣まで行き、頭を優しく撫でると、彼女は堰を切ったように号泣し始めた。

 

(でも、これは良くないかも……)

 

 宥めるようになで続けるアイズはフィンと目を合わせる。

 彼も神妙な面持ちで小さく頷いた。

 

 天下の『ロキ・ファミリア』の本拠(ホーム)から、脱出した者がいるという事例を作ってしまった。これは大いに反省せねばならない。

 広まれば、敵対勢力にいらぬ隙を与えることになる。

 

「……謝るのはこちらのほうだな。そういった事態を想定せず、お前一人に任せてしまった私が悪い」

「じゃな。今後は複数人であたらせねばな」

 

 今回の問題点を正しく理解し、頭を下げようとするリヴェリアを、ガレスが改善策を補足することで制した。

 いずれは団内での後継になるとはいえ、王族が軽々しく頭を下げてはいけない。他種族であるも、長い付き合いとなる彼なりの配慮だった。

 

「状況はわかったけど、どうやって逃げ出したんだろうね?」

「それは私も気になるわ」

 

 ティオナの疑問に、ティオネも同調する。

 

「……ぐすん。それは、縄のようなものを中庭の木の枝に巻き付けて、振り子みたいにぶら下がって塀を跳び越えたみたいです」

 

 泣き止んだレフィーヤが、多数の目撃者に挨拶をしていたとも付け加える。

 

「野生児かっ!? 知能の高い猿にでも育てられたんか?」

 

 ロキが大げさに体を震わせると、ティオナが「うーん」と唸る。

 

「どっちかっていうと、えっと、なんだっけ、ほら、キョクトーの……」

「極東……ああ、ニンジャやな」

「そう、それ! ニンジャっぽくない?」

「あー、確かに格好はそれっぽいなー。最初は仮装(コスプレ)かとおもたけど」

「コスなんとかっていうのは、よくわかんないけど、シュリケンだっけ? 絶対、持ってると思うなー」

 

 英雄譚が好きなティオナと、意外にも読書好きであるロキが盛り上がり始める。

 

「さて」

 

 おしゃべりは終わりだ、とフィンが両手を打ち鳴らすが、不意にアイズに振り返る。

 

「……っと、そういえば、アイズ。君の考えを聞けてなかったね?」

 

 レフィーヤの登場でうやむやになっていた、ベルの入団の可否である。

 

「賛成、します」

「わかった。賛成多数で、僕たち『ロキ・ファミリア』は、ベル・クラネルを迎え入れることにする。ロキやティオネが言ったとおり、早速、この広いオラリオで探し出さなければならないという厄介事を持ち込んでくれたけどね」

 

 フィンの冗談に、皆がクスリと笑う。

 

「ンー、でも、そうだね……見事、彼を探し出した者には、常識の範囲内で、お願いを一つ聞いてあげよう」

 

 片目を瞑ってみせるフィンに、皆がざわついた。

 

「団長に……お願い……っ!?」

 

 一際反応を示したのはティオネである。

 ゾクゾクと身を震わせ、息が荒くなる。

 

「も、もう一度言っておくけど、常識の範囲内で頼むよ」

「はい!」

 

 猫なで声で返事したティオネが、怪しげに体をくねらせる。

 

 これは聞いてないな、と彼女を除く全員が思った。

 

「あ、あの、団長っ! 質問がっ!」

「なんだい、レフィーヤ?」

「そのお願いは、団長じゃないとダメなんですか? たとえば、他の誰かにお願いを聞いてもらうとか……」

「?」

 

 レフィーヤがちらりと見てくるので、アイズは小首を傾げる。

 

「クスっ、いや、第三者へのお願いでもいいよ。交渉が必要なときは、僕が口添えしよう」

「よっしゃっ!」

 

 レフィーヤが力強く拳を握る。

 

「フィンにしちゃ、珍しく遊び心が効いとる申し出やな?」

「僕だって、たまには羽目を外したくなるさ」

「そーやな! いっつも肩に力入れとったら疲れてまうもんな! よし、なら、ウチが見つけた暁には、アイズたんにあんなことやこんなことをしてもら――」

「変なことしたら斬ります」

「って、じょ、冗談や! 冗談! ウチのいつもの可愛いお茶目やーん!」

 

 スチャ、と愛剣『デスペレート』を抜きにかかると、ロキは飛び退いて、両手を前に出して宥めにかかってくる。

 

「では、すぐにみんなに伝えてくれ。あー、くれぐれもお願いは常識の範囲内だということを忘れないでくれよ?」

 

 今一度、確認するフィンに、皆の返事が揃った。

 

 こうして、後に神々が〝白兎捕獲大作戦(オペレーション・ホワイトラビット)〟と名付けた騒動の幕が上がるのであった。




ベルくんは一回お休みです。
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