GIRL AND COMBAT ZERO ~THE TEENAGER WAR~   作:アルファデッド

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ちゃんとした日常回です。

リアルが忙しいせいで中々執筆できていないけど、頑張って書いていきますので、よろしくお願いいたします。


番外編1「風邪」 後編

長門SIDE

 

なんだろうか、この安心感は。

 

暗闇の中で藻搔いた先に脆いはずの希望がすぐにそこにあって簡単には崩れないと思える絶対的なものを感じられる。

 

そして、それが手の先から流れるかのように・・・

 

 

 

 

私は目を覚ますと眼前には寝ている雄二がいて、抱き着かれているという事実が分かった。

 

どうしてこうなった?!

 

手を解こうと頑張って力を入れると抜けたが指先から血が付いており、私は少し混乱したが、身体がさらに覚めてきたのか頭や胸から引っ搔いた後の痛みに近しいものが伝わり、状況を理解することが出来た。

 

どうやら、寝ている間に私が錯乱を起こしてそれを止めようとした結果がこれということなのだろう。

 

そして、疲れて寝てしまった。

 

たぶん、彼に怪我を負わせてしまったな。

 

申し訳ないとも思いつつ、この状態から脱しようという考えが出てこないことに気が付いた。

 

このままでも良いとさえ思い始めている始末である。

 

胸というのあたりがポカポカしたような感覚になるのはなんでだ。

 

これが分からないけど、私の心を浄化しているのかもしれない。

 

にしても雄二の汗の匂いが私の気持ちを高ぶらせてくるけど、これはなんか危ない感じになってないか。

 

脳が危険信号を出しているけれど、本能が未知の欲望に従おうとしていて悪魔の囁きが聞こえた気がするが、とりあえず自分の顔を殴って冷静になろう。

 

顔が痛みに見舞われている間に臭覚がお米を炊けた匂いと鶏肉の煮込んだような匂いがキッチンの方から来ていた。

 

私はなにかを直近で作った覚えはないぞと自分の行動を思い返しながら鍋の蓋を開けるといくらか前に炊けたご飯と鶏のもも肉からとったであろう出汁、それにまな板の上に刻まれたネギがあった。

 

雑炊というかおじやを私のために作ろうとしていたのか。

 

そして、私が途中で錯乱を起こしたから急ぎで傷が増えないように拘束をしていたのか、、、

 

今日は彼に甘えるとしよう。

 

ベッドに戻る、、、前に指先についている血を洗い落としてベッドの下に置いている救急箱を引っ張り出して消毒液、ガーゼと医療用紙テープを手に取った。

 

ぐっすりと眠っている雄二の顔はなにか安心しているかのように見える。

 

なぜか、気持ちが再び高ぶってしまうが()()して彼をうつ伏せにして飛行服の上半身部分を脱がしてシャツを捲ると血痕と私の指の食い込んだあとがあり、傷口に直接入らないように消毒液を塗布しつつ血痕をなるべく取り除いた。

 

そして、軽く消毒液を染み込ませたガーゼを傷口の上に置いて紙テープで落ちないように貼る。

 

そして捲ったシャツを戻した際に方にも内出血している左肩にあったことに気が付いて、処置を施して使ったものを元に戻した。

 

雄二は疲れて寝たというより、痛みによる気絶じゃなかろうかと思ったが、考えるのはやめた。

 

だって、傷つけたという事実は変わらないのだから。

 

っと、さてもう少し寝るとするか。

 

こんな機会はなかなかないだろうしな。

 

なんか安心するなぁ、この匂いを嗅いでいると・・・zzzzzz

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小原SIDE

 

zzzz・・・はっ!!

 

今何時だと思って腕時計を見ると夕方の5時だったようで窓の外は真っ暗になりつつあった。

 

とっいつつ、長門の食い込んだ指のあとが痛いなと思って手をやるとなにらガーゼが貼られているようで、治療したあとだったようだ。

 

これは彼女が一回起きて指先についてしまった血を見て原因を探求し、治療したのだろうな。

 

どうりで消毒液の匂いがほのかにあったわけだ。

 

ご飯の用意でもするかと思って起き上がろうとしたが、起き上がれずにいる。

 

彼女に抱き着かれていているからかと思いながら、なんか彼女の鼻息が寝ているし安心しているはずないのに荒いと感じるのは気のせいだろうか。

 

ふーー、とりあえず脱出する。

 

ふん、はっ!せいやッ!くっ!!あーちょー!えっさっほっさ!!!

 

なんでなんで、こいつはバーサーカーかよ!

 

まったく抜けないぞ!

 

やべぇーよ!

 

これ、俺の心が折れそうだよ・・・

 

パイロットとしても男として鍛えているつもりだけど、ここまでうんともすんともしない彼女の腕という体力には驚いている。

 

はぁーーーーーーーーーーーー、まあ()()にもこういう女性と出会ったことがあるけどこれはなおさらヤバいとしか言えん。

 

とりあえず、持ってきたレジ袋の近くに置いたカバンの中から()()()()携帯を取り出してみると、団司令から電話とメールが来ていたようだ。

 

 

 

 

 

 

zerocommand@pear.com

宛先:slave01@pear.com

 

1時間前

 

 

長門の調子はどうだね。

 

明日に復帰できそうになかったら遠慮なく申し出てくれ。

 

そして、今回の看病を君にしたのは彼女が言い出したことだ。

 

理由は分からないが、彼女のことを頼んだぞ。

 

 

 

 

追伸

 

分かっているとは思うが手を出すなよ。

 

婚約しているなら話は別だがな。

 

 

 

 

 

 

 

団司令、俺はそんなことしませんよ。

 

仮に手を出すにしてもちゃんと同意と本人に意思を尊重しますよっと、俺は誰に言ってるんだろうな。

 

にしても()()が俺を指名してくるとは・・・いや、あり得るな。

 

だって、あの後席兵装システム士官(副機長)だと看病しつつ手を出すしそうだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

後席兵装システム士官(副機長)<<ヘッシュ!!>>

 

鮟鱇1<<おいおい、風邪か?>>

 

後席兵装システム士官(副機長)<<噂?>>

 

鮟鱇1<<それはない>>(断言)

 

後席兵装システム士官(副機長)<<ふん!>>ゲシゲシ

 

鮟鱇1<<ちょっ!蹴るな馬鹿!危ねぇよ!!>>

 

 

 

 

 

 

なんでか鮟鱇1の悲鳴が聞こえたのは気のせいだろう。

 

さて、なんだかんだで起きてから30分が経過しているというか、こんな長時間いるのになにも様子見に来ない寮長すごいな。

 

一応、彼女の泣き声があったとは思うんだけど。

 

もし、ここの防音性がすごいならいいんだけどなぁ。

 

だとしてここまでなんの音沙汰もないのは怖すぎるが、騒がれていない以上はセーフ判定ということででいいのかは分からない。

 

それにしても彼女があの長門一族とは思わなかったな。

 

酷く()()()された一枚の写真には彼女とその母の顔が見え、背景には長門本家の屋敷が写っていた。

 

昔、まだ移植用予備部品として扱ってもらえた頃に内蔵としての価値を拍付けするためだけに連れていかれたことがある。

 

もちろん、ボディーガード以下の扱いでな。

 

外に出ることが許されなかったから内心はかなり浮ついていたし、この機会にあの憎い実家とも呼びたくないところの警備状況を把握して逃げようと画策していた。

 

まさか、奴らが自らの手で放してくれるとは思わなかった。

 

あの時は彼女の実母が()()()()()の時であったせいか、俺よりはマシとはいえど歪な家族像がそこにあった。

 

俺のクソ実家は負けてないけどなって、張り合ってなんになるかという話だがな。

 

少し脱線してしまったが、まあ一応彼女とは接点はあるにはあるけど、直接話したことはない。

 

当然のことで彼女が俺を覚えているわけもなければ、俺もこの写真を見るまで思い出せないくらいだ。

 

世の中は広いようで本当に狭いなと実感させられたと思いながら、なにか動きを感じてその方向を見ると長門が目を覚ましたらしい。

 

長門<<うーーーん、よく寝れた。っと、雄二すまんな、ずっと拘束してしまったようだな>>

 

<<大丈夫だ。長門、お腹が空いているならご飯をすぐに作れる。どうする?>>

 

長門<<まあ、丸一日は胃にものを入れていないし、大分回復したような気がするから頼めるか?>>

 

<<了解>>

 

さと、お嬢様におじやを作ると致すか。

 

起き上がってキッチンに向かうとすぐに出汁が入っている鍋の火を点けて、十二分に蒸れたご飯をしゃもじで軽くかき混ぜる。

 

出汁が温まってる間に冷蔵庫から卵を一個取って、頑張って探した小さめのボウルに割って殻をシンクの三角コーナーに入れてから菜箸で卵をかき混ぜたらとりあえずそのままにしておく。

 

そして、出汁が温まってことを確認してご飯を投入すると塊にならないように軽く混ぜる。

 

すぐにかなり細かく切った、小松菜、ニンジンと出汁に使った鶏肉も忘れずに入れて、ある程度煮立ってからニンジンが柔らかくなったことを確認すれば、火を消してすぐにかき混ぜた卵をまんべんなくかけてすぐに蓋をして、待つ。

 

まあ、数分だけのことだ。

 

換気扇を回しているのにいい匂いが広がっており、食欲を掻き立ててくる。

 

見なくても分かる美味しい奴やん!!

 

おっと、なぜか某祭り男になってしまったが、これが仕方がない。

 

待っている間に取り出してお椀、お箸とお盆を用意していつでも出せるようにしておいた。

 

いい感じの頃合いになったらお椀に入れて、その上に刻んだネギを忘れずに添えて完成である。

 

料理って手間は少しかかるけど、いいね。

 

空挺課程の時はヘビだったり、その辺を走り回っている鶏を捕まえて内臓と非可食部を適当に取り除いて焼くか煮るかの二択しかないからなぁ。

 

調味料はよくて塩胡椒くらいしか持ち合わせてないし、火を見られると困るから加熱時間不足による生焼け事件やそもそも食べられるという時に出発する事が多い。

 

あれは人間のやる事じゃないなぁ(白目)

 

実際、人間の香りをした獣になったと言われるし、目ギラギラしているというおまけ付き。

 

水道、ガス、電気は偉大だなと思いながらお盆におじやを入れたお椀を乗せてベッドのところまで向かった。

 

もちろん、スプーンも忘れずになッ!

 

長門<<申し訳ない、ありがとう>>

 

味見はしているから不味いことはないはずだが、味覚に関しては空挺課程とかで狂ったから自信はないし、保証もできない。

 

あと、食事は寮と基地の食堂でたべているから料理をする機会がほぼないに近いのでなおさら不安である。

 

使う材料の量を見誤って1~2人前のつもりだったのに3~4人前を作っている時点で料理の腕前はお察ししてください。

 

男の料理なら気にすることはなかった。

 

だが、今回は患者食で女の子に召し上がっていただくわけでこっちは冷や冷やしている。

 

食べた瞬間に気絶してしまうかもしれないというこの恐怖に怯えているのさ。

 

でも、大丈夫なようで安心した。

 

長門<<雄二、あんたも長らく食べてないだろうから食べていい。いや、食べろ。あの量は流石に消費しきれないからな>>

 

<<では、お言葉に甘えて食べることにする。食器とか借りるぞ>>

 

と言って同意を得ると立ち上がってお椀を棚から取り出しておじやを入れた。

 

あはは、作りすぎているのがバレてる。

 

バレなかったら流石に心配するけどなと言いながら、スプーンを拝借してベッドの近くにあるテーブルの椅子に座った。

 

軽く手を合わせてから一口食べるとほんのり塩辛いけど、気にならない程度で汗をかいていれば問題にないはず。

 

とりあえず食べられる味であることは安心したけど、量が多すぎたことは反省しないとな。

 

さて、これを食べたら帰ることにするか。

 

<<ご飯を食べられる元気があってなによりだ。食べ終えて食器を洗ったら帰る>>

 

そういうとなぜか彼女の顔が一瞬曇っていたことを見逃せなかった。

 

たぶん、あの時の奇行に至ったなにかに怯えているんだろう。

 

俺も空挺課程卒業してから数回目の任務でテロリストの掃討(虐殺)作戦でルーキーが見てしまった集団リンチ現場のトラウマで相談しようにも迷惑かけると思って打ち明けられないままあの世に旅立ってしまった。

 

まさしくその顔だった。

 

このままでは自殺に至らなくても自傷行為をするのは目に見えている。

 

あんた(美優)がそっち側に行くな。

 

行くのは()()()で十分だ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<はー、帰ろうと思ったけどどうやら俺は団司令に嵌められたようだ>>

 

大げさに言いながら携帯の画面を見るふりをして留まる理由をでっちあげることにした。

 

携帯にはそんな文面はないけど、団司令、男子寮と女子寮の寮長には一言をメールで連絡して一晩ここで過ごすことにした。

 

下心は決してないし、なにかするわけがないのでとりあえず寝るに良さそうな床を探す。

 

フローリングでもいいけど、やっぱりカーペットがあるところが有り難いなぁとは言えれど、勝手に居座ろうとしている身だから贅沢は言わん。

 

まあ、彼女の安堵した顔を見ることができたと思えば安い犠牲さ。

 

災害派遣、演習や大規模作戦ではコンクリートかアスファルトの上で寝ることはよくあったしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門SIDE

 

<<はー、帰ろうと思ったけどどうやら俺は団司令に嵌められたようだ>>

 

えっ?

 

そんな馬鹿なことあるわけないでしょ。

 

(そんなこと言って嬉しいくせに)

 

()()()は黙ってろ

 

(でも、あのまま怖い夜でも過ごすつまりかい)

 

っ、そ、それは

 

(当の本人は居座る気満々だし、そのまま甘えてしまえ)

 

ちょっと、待って!

 

こちとらには心の準備というものがあってだな。

 

(そこだけは無駄に乙女かいな。まったく、そのまま襲われてしまえばいいのに。いや、襲ってしまえ)

 

ば、馬鹿いうんじゃねぇぞ。

 

こいつは()()()同僚で部下だ。

 

それ以上でも以下でもない。

 

(ただの、ねぇ。まっ、今夜は大丈夫そうね)

 

もう二度来なくてもいいぞ

 

(あいにくとそれはできないね)

 

はー、これはたぶん私が壊れることを防ぐ防衛本能でできた産物だが、いかんせん邪魔だ。

 

まあ、そんなことはどうでもいい。

 

それより目の前の問題の方がヤバイのだよ。

 

男女が同じ屋根の下にいる。

 

これだけでアウトな要素しかないし、誤解されても何も言い返せない。

 

どうしてくれるんだよ、この馬鹿は・・・

 

まあ、怖いことは心の中で認めるよ。

 

だけど、一晩過ごす必要はなかっただろと声を大にして言いたいけど、それは叶わないな。

 

この状態を望んでいる自分がいるから。

 

<<床で寝かせるのは忍びないからベッドで寝てくれればいい>>

 

そういうとピシリと固まった彼がこっちを見てきた。

 

なにか可笑しなことを言ったか?

 

小原<<長門さん、あんたそれ言っている意味を分かってて言っているのか?>>

 

<<はーー、隊長命令にするぞ>>

 

一番ダメな命令の使い方をしてしまったが、このまま放置すれば普通に床で寝るから許可できない。

 

小原<<勘弁してくれ>>

 

そう言いながら素直に私のベッドに入ってきたが、背中を向けて寝てくれた。

 

本当に下心がないなと感心しながら抱き着いてそのまま寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

この日はかなりいい夢を見た。

 

内容はなんだったのかは分からない。

 

そして翌朝起きて出勤した時に寮内だけでなく、基地内も騒がしかった。

 

内容が小原と私が一晩過ごしたことのようで、小原は気まずそうな顔をしている。

 

私はすました顔をしたけど、内面はきっと赤面していることだろう。

 

熱でやられていたようで、なにかとんでもないことを言った気がするけど気にしない。

 

やはり、風邪を引くんは良くないな。




この番外編はさまざまな過去編をやるつもりです。

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