蒼き鋼のアルペジオ 光速の駆逐艦が征く   作:ニャモししゃもじ

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初戦闘

千早群像やイオナに合わせて出航したあの日から島に寄りまくったりとグダグダ過ごしながら操艦の練習をしていたら何時の間に一ヶ月が経っていた今日、俺達は日本近海の太平洋上を航行していた。

 

「それで、今回はどこに行くつもりなんだ?」

 

「……最終目的地はある、けど今は経験を積むことが重要だ」

 

とりあえず率直に思ったことを口にした俺に、当真は真面目な表情で応えた。けど、一つ言いたいことがある。

 

「経験を積むって言っても、どうするつもりなんだ?いきなり重巡やらとぶつかったら普通に沈むぞ?」

 

確かに経験を積むのはこの先のために必要だ。だがそうなると相手が重要になってくる。大戦艦、重巡洋艦は論外として、現状勝てる見込みがあるのは……

 

「わかってる。だから俺達は駆逐艦を狙う」

 

やはり駆逐艦、か。まぁ大体そうだろうとは思っていたが……

 

「駆逐艦を狙うと言っても、途中で大戦艦とかに会ってしまったらどうするんだよ?まぁそんなこと有り得ないと思うけど

 

「その場合はリミッター解除からの最大戦速で逃げる。シマカゼの最高速度なら余裕だろ?」

 

「…………」

 

……もう遅いかもしれないが、俺はコイツにシマカゼのスペック見せたことを後悔している。

確かに各武装に回す演算領域やエネルギーを全て回して初めて発動可能になるリミッターを解除した最大戦速なら余裕で振り切ることが出来るのだが、振り切った後が問題になってくる。何故なら、

 

「逃げた後はどうするんだ?リミッター解除後は重力子機関(グラビトンエンジン)の稼働率が2割まで下がるんだぞ?」

 

リミッターを解除した最大戦速航行をした後は強大な負荷がかかった重力子機関を休ませる必要があり、完全再稼働までの待機時間で霧に襲われでもすれば一発アウトだからだ。一体どうするつもりなのか……

 

「潜航して再稼働まで待機する。まだ401も大体的に動いていない以上、現在そこまでの警戒はされていない筈だからな」

 

「なるほどな……」

 

言われてみればそうだ。まだ千早群像達は“蒼き鋼”として動き出しておらず、当分のところもクルーを集めたり拠点を構えたりなどの準備期間になるだろう。そう考えるならば、今動くのもアリか――ってうん?いや待てよ?でもそれだと……

 

「それだと群像達苦しくなるんじゃないか?」

 

「わかってる。だから戦うのは一隻、その一隻で出来るだけ多くのデータを集めてシミュレーターに活かさせる」

 

さっきからひたすら真面目に言っているが、シミュレーターってコイツに作れるのか?というかそれ以前に拠点どうするつもりなんだ?

 

「戦闘後は八丈島に向かい、地下に拠点を構える」

 

八丈島……伊豆諸島にあるランクCの火山島。一応は東京扱いだから距離もそこまで離れていない。なるほど、確かに乗艦が駆逐艦である俺達からすれば随分と魅力的な島だな。

 

「わかった。なら俺は駆逐艦のとこまで向かい、沈めればいいんだな?」

 

「八丈島に着いてからは拠点作成も手伝ってもらうがな」

 

「言われなくともわかってるわ」

 

忘れんなよ?的に言ってきたが、お前に何年も振り回されてるんで非常に不本意だが、言いたいことは理解出来る。だからその顔ヤメロ。

 

まぁ、そんなこと言ってても仕方ないんだよな……よし、メンタルモデルを構成するやつ以外の演算領域を全て戦術ネットワークからのデータ収集とレーダーに回して……おっいたいた、にしても割と距離近かったな。

 

「敵艦発見」

 

「早いな、でどいつだ?」

 

「少し待て……コイツは、マツカゼだな」

 

「マツカゼ……神風型四番艦の松風か」

 

よく知ってるな、まぁコイツも一応は軍艦マニアだったし当たり前か。

 

「なんだよその顔」

 

「別にこれだけでわかるとは当真にしては凄いなーって思っただけだ」

 

「…………なんか、凄い貶された気がする……」

 

貶してるから安心しろ、とは口が裂けても言えんな。こんなでも俺の艦長だし。

なんて思いながら目の前に出現させたモニターに赤いバイナルパターンを光らせる駆逐艦の映像を表示する。

 

「敵艦には気付かれてないんだよな?」

 

「勿論、ただこれ以上近付かれれば向こうにもバレるがな」

 

というか、もう気付かれてる説は……無いか。

 

「なるほどな……先制攻撃だ。魚雷用意」

 

「数は?」

 

「一つ、まだ様子見だ」

 

「了解」

 

俺は当真に言われた通りに魚雷を装填し、照準を前方を進んでいるマツカゼに固定した。

 

「放て!」

 

そして当真がそう言うと共に発射した魚雷は真っ直ぐにマツカゼに向かっていき、バリアのようなもので防がれた。

 

「あれがクラインフィールドか……現実で見ると綺麗だな」

 

隣のアホはなんか言ってるがどうでもいいことだろう。

それよりも今はマツカゼ――いや、敵駆逐艦に集中しないとな。ヤツも気付いたように旋回してるし。

 

「ミサイル用意!撃て!」

 

「せめて明確な数くらいは言えアホ!」

 

数指定はされなかったので、シマカゼに搭載された32基のVLSから全弾発射した。

 

「一番及び二番砲塔旋回、目標、敵駆逐艦」

 

「抜け目が無いな……まぁいい」

 

俺はそう呟きながら一番と二番砲塔を回転させ、砲身の向きを駆逐艦に向けた。

そして先程放ったミサイルが駆逐艦のクラインフィールドで防がれた瞬間に当真が叫んだ。

 

「撃て!!」

 

俺が砲撃を行えば、向こうもただでは受けてやらないとでも言うようにミサイルと魚雷を発射した。しかも魚雷の方にはタナトニウム反応もある。

 

「ミサイル及び魚雷接近、中にはタナトニウム反応あり」

 

「ッ!侵食魚雷か!回避!」

 

「イエッサー!」

 

重力子機関(グラビトンエンジン)の回転数を少し上昇させて直線に向けて高速航行を行い、侵食魚雷を含む魚雷群は躱せたが降り注いでいたミサイルは相変わらずこちらに向かって飛んで来ている。

 

「迎撃しろ」

 

なんか一々反応するの面倒くさくなって来た……

思っていたよりも大変な各武装制御の為の演算処理にウンザリしつつも2基のレーザーガンで迎撃を行う。

勿論だが、こんな素人に完璧な迎撃など出来る筈も無く、撃ち漏らしたミサイルは全て俺の張ったクラインフィールドに直撃する。

 

「稼働率は……9%か、あんだけ撃ち漏らした割には少なく済んだな」

 

などと呟きながら俺は主砲を放つ。

 

「ってオイ!あ”〜〜っ!!」

 

当真が少し荒れたけどすぐに元に戻ったから問題は無いだろう。

 

「侵食魚雷を二本用意しろ、奴のクラインフィールドを剥がす(飽和させる)ぞ!」

 

無言で侵食魚雷を装填し、照準を固定してすぐさま放つ。間違っても反撃の隙などは与えない。

駆逐艦の張ったクラインフィールドに直撃した俺の侵食魚雷はその場で炸裂し、まるで抉り取るかのように空間を喰らい尽くしてから消滅し、船体の一部を抉り取られた駆逐艦をその場に残した。

 

で、駆逐艦が爆発したのだが……武装とかに回しているナノマテリアルを穴に回してなんとか轟沈を避けようとしている姿が見える……

 

「敵駆逐艦、クラインフィールド飽和。けど、まだギリギリ生き残ってる」

 

「そうか……なら、抜錨!」

 

「は?」

 

コイツ、何言ってんの?

 

「いいから抜錨!アイツ(駆逐艦)にぶっ刺せ!」

 

「え、あ、うん」

 

……言われた通りに用意した錨を駆逐艦の甲板に突き刺したのはいいのだが、こっからどうすればいいんだ?

 

「駆逐艦の周りをグルグル回って振り回せ!なるべく早くな!」

 

「それただの無駄なんじゃないのかなぁ!?」

 

口ではそう叫けんでも拒否権なんか無いのでやるしかないんだけどね……それにコイツの無茶振りは今に始まったことではないから別に問題無い……うん、きっと。

 

うっぷ……

 

回転数が20回超えた辺りでとうとう限界を迎えたらしい当真が嫌な声を出したので回転を止めたら、目前の駆逐艦がグラグラと揺れながら転覆し、そのまま海中へと沈み始めた。

 

「えー」

 

そんなことある?と思いつつもダメ押しに主砲を放つと、命中したのか海中で爆発が起きた。

 

「…駆逐艦、どうなった……?」

 

うわー、顔色悪っ!

 

「何故か自分から沈んで行った」

 

「そうか…思った通りだな」

 

思った通りって……どういうことだ?これは素直に聞いた方が良さそうだ。

 

「どういうことだ?」

 

「さっきのアレみたいに、船体に重大なダメージが発生している時にああやって引き摺り回せば応急処置をしつつも転覆を阻止しようとするだろうからな。後は急に回転を止めたら演算が追い付かず自滅するって寸法だ」

 

なるほど、言いたいことはわかった。けど一つ思ったことがある。

 

「それって重巡から上には使えなくないか?」

 

「あぁ、でもそれで十分だ。今はな」

 

「………そうか」

 

俺は当真のその言葉を聞き、広くて青いこの海を眺め始めた。




これからも更新スピードは低下していくと思いますが、読んでいただければ幸いです。
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