唯一の男性魔導士   作:主義

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妖精の尻尾

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妖精の尻尾 ギルドハウス

 

 

 

 

 

「そう言えば……クレアはまだ戻って来ねぇのかな」

 

 

 

ナツが発したその言葉にギルドのほぼ全員が動きを止めた。いつもは騒がしい妖精の尻尾が今は物音一つでも響いてしまうほどに静か。何でこんな静かになったのか分からない、ルーシィやウェンディ、ガジルはこの空気の異様さに驚きを隠せずにいる。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ウェンディ。クレアっていう人誰か知ってる?」

 

 

 

ルーシィは隣にいるウェンディにだけ聞こえるような声で言った。ルーシィとしては早く状況を把握したいのだろう。

 

 

 

 

 

「いいえ、知りません。私はルーシィさんなら知っていると思ったんですが…分かりませんか?」

 

 

 

「うん。全然、聞いたこともないわ」

 

 

二人がそんな会話を繰り広げているが、ギルド内は未だに静か。このまま静けさが続くのがマズイと判断したミラジェーンは声をあげた。

 

 

 

 

「…ナツ」

 

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

 

「クレアは……もう十年以上も前に妖精の尻尾を止めたんだよ」

 

 

 

普段のミラジェーンを知っている者からしたら何かあったのかと思ってしまうほどに震えた声だった。彼女も何か『クレア』という人物に思い入れがあるのだろう。

 

 

 

 

 

「……なに言ってんだよ………クレアは妖精の尻尾の一員だろ!」

 

 

 

 

「いや、クレアは妖精の尻尾を抜けた。ナツ、お前は聞いていないかもしれないがこれは事実だ」

 

 

エルザが淡々とナツに向かって言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いたナツは魂が抜けたように立っている。こんなナツも普段では絶対に見れることはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからナツは一日中、立ち尽くしていた。それほどまでにナツにとってその事実は心を揺さぶるものであった。クレアという人物が一体どんな人物なのか分からないが…妖精の尻尾の多くの影響を与えたのは間違いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今、この場所には妖精女王(ティターニア)と呼ばれている者と現役の時は『魔人』と呼ばれ恐れられていた者だけがいる。他の者は自分の家に帰っていたり、任務に出ていたりでもぬけの殻の状態。普段は他のギルドメンバーも居るため、この二人だけで話すと言う機会はほとんどないと言ってしまっても良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「でも、天狼島の時間も考えるとクレアが抜けてから十年以上も経ったのだな」

 

 

 

 

「そうね……あの人が居たから今の私たちがあったと言っても過言じゃないぐらい影響を受けたわよね」

 

 

 

 

 

「そうだな、私がS級試験に合格できるようになったのはクレアのお陰だしな。あいつは私にとって師匠のような者だからな」

 

 

この二人にとって『クレア』という人物は大きな存在だというのは誰が聞いても分かる事だ。

 

 

 

 

 

「あの頃のエルザはクレアの後を付いて行っていたもんね。どこに行くにしてもクレアがいれば行くみたいな感じだったよね。今のエルザからは想像も出来ないよ。ルーシィとかに言ったら驚くんじゃないかな」

 

 

 

 

「それだけは止めてくれ……でも、それを言うのならミラだってクレアといる時はあの頃のミラでは考えられないほど甘えていた気がするがな」

 

 

 

 

「それもそうだね。私には弟のエルフマンや妹のリサーナはいるけど…兄さんはいない。クレアは私よりも少し年上だったし、あの頃の私にもクレアは優しく接してくれていたから次第に彼のことを兄として見るようになってから甘えるようになったからね」

 

 

 

 

 

「……まあ、クレアは兄的な存在だったかもな。皆があいつを頼っていたからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ、エルザ」

 

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

 

「…あの時、止めればクレアは妖精の尻尾を辞めないでくれたのかな?」

 

 

 

 

「それは分からない。ミラも私もクレアが妖精の尻尾を出ていく一日前に薄々、何か違うなというのは感じていたが…それを言葉に出す事はしなかった。だってその次の日にはギルドに居ないとは思いもしなかった」

 

 

 

 

「……うん。クレアがギルドを辞めたと知った時は珍しく涙を流したことを今でも覚えているわ」

 

 

 

 

「でも……クレアなりに色々と考えた末の結論だったのだろう。クレアは頭の回転が速くて何事をするにしても最初に頭で考えるようなタイプだったしな。突発的な行動を取ることは極めて少なかったな」

 

 

 

 

「また、会える日が来るかな」

 

 

 

 

「私たちが生きてさえいれば、いつか会えると私は思っている。それにもう一度ぐらい、手合わせをしたいし、あの声をもう一度聞きたいからな」

 

 

 

 

 

「…そうだね。それじゃ私も信じる事にするわ。いつか会えることを……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この場にいる二人以外は絶対に知らない会話。

 

 

 

 

この一か月後に大魔闘演武で再会することになろうとは誰もこの時は思わなかった。

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