カグラ・ミカヅチという女性は『最強』という言葉が一番似合う。何度か僕も彼女と一緒にクエストを行ったことがあった。初めて彼女のクエストに同行した時は驚いたものだ。どんなクエストであったとしても最短で終わらせる。それほどまでに実力があったのだ。実力がなければ…最短でクエストを完遂するなんて出来るものじゃない。
僕をギルドに誘ってくれたのはミカヅチなのだ。妖精の尻尾を抜けた僕は色々なギルドを転々としながら…適当に暮らしている。金銭的な面では残り十年近くは仕事をしなくても食っていけるほどにあった。だけどさすがに何も仕事をしないと…体が鈍っちゃうから一か月に一度ぐらいの一回ぐらいのペースで適当に仕事をしていた。
ミカヅチさんがどこから聞きつけて来たのか分からないけど僕が止まっていた宿に僕を訪ねてきた。何の用だか尋ねたりしているとどうやら彼女は僕をギルドにスカウトしに来たようだった。
最初は人魚の踵というギルド自体を知らなかった。だから最初は彼女の誘いを断った。
もうどこのギルドにも入る気はなかったし、入ったとしてもそのギルドに迷惑を掛けてしまう可能性が大いにあるしね。だけどミカヅチは何度断られても諦める事を知らずに何度も何度も僕を誘ってきた。本当に根気のある人なんだなと思った半面、何でこの人はこんなにしてまでボクという人間が欲しいのだろうかと考えるようになっていった。個人的に彼女がそこまでするほどの価値はボクにはないと思っている。
では何故?
それを彼女に問うと彼女は少し笑みを浮かべながらこう答えた。
「……あなたに私のパートナーになって欲しいから」
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そして時は流れて現在。少しずつ大魔道演武の開催も近づいてきている。人魚の踵でも選手決めも行われており、かなり盛り上がっている。僕はそんなギルドメンバーを横目で見ながら適当に椅子に腰を下ろしている。そんな僕の隣に腰を下ろしている…ミカヅチさんも騒いでいるギルドメンバーを見ている。
「ミカヅチさんは大魔道演武に参加しますよね?」
「まあな。半場強制という形だけどな。お前も参加するんだろ?」
「僕は遠慮したいと考えていますね。人魚の踵のメンバーと言えば女性だしね。それにさすがに男子一人だけというのは個人的に嫌だしね」
それに僕より相応しい人がこのギルドには揃っているしね。
「なんだと!お前が参加しないのか!?」
さっきまで静かにお酒を飲んでいたのに急に勢いよく立ち上がった。
「はい」
「お前が参加しないなら私も参加しなくて良いよな」
何でそんなことになるのか分からない。僕が参加しないとミカヅチさんも参加しないなんて。
「それはダメでしょ!あなたと言えば人魚の踵の看板なんですから。あなたが大魔道演武に参加しないなんてあり得ないですよ」
「ならクレアも参加しろ!実力で全てを図るならお前は私よりも強い。それは数回しかなかったがお前と一緒にパーティを組んだ私が一番よく分かっている。それに他の者もお前が大魔道演武で活躍する姿をみたいに決まっている。お前はもう私たちギルドの一員なんだからな」
「ギルドの一員……それを言われると弱いんですよね。僕は」
前のギルドでもそうだったがボクは『ギルドの一員』という言葉に弱いんだよな。まあ、ミカヅチが言う通りに他のギルドのメンバーがボクが大魔道演武に出る事を許してくれるんだとしたら……参加しても良いのかもしれない。
「私とお前が手を組めば人魚の踵をフィオーレ最強のギルドにすることも出来るさ」
そう言い切ったミカヅチさんはとても笑顔だった。