大魔道演武に今まで予選というものは存在しなかった。だが今回に関しては予選が行われ、8チームにまで絞られた。運営が言うには内容が薄くなっているという指摘があり、改善した結果に予選を行う事になったらしい。別に予選を行う事に関してとやかく言う気はないけど…それなら事前に知らせてくれても良いのにと思ったりする。何か事情があるかもしれないけど。
まあ、結果的に予選第六位で
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予選突破のチームが決まり、それぞれのギルドが帰路に付いた。私たちは宿に戻って一休みをしながら予選のことを振り返っていた。
「それにしてもまさか大魔道演武があるとはな」
「マカオたちは予選なんて今まで行われていなかったと言っていたから今年から始まったのだろうな」
だが、予選をやるにしても前情報が何もなかった。0時に自分たちの宿で待てとしか。それにもう一つ気掛かりなのはギルドの数が異常に多い。フィオーレのギルドを全て集めたとしてもここまでギルドはないはずだ。
「でも私たちがまさか一番最後の突破者になるとは。他のギルドはそんなに早く来たのか」
「それに関しては分からないが少なくともそれなりの強敵と相対することになるのはほぼ確定だろう。こちらも用意できることはしておくべきだな」
私たちがいない間に様々なギルドが出来て有名になっている。私も少しは相手となるようなギルドについて調べたが情報が出ないようなギルドも多々あった。やはり直接、戦ってみないことには分からないということだろう。
「そうだな」
「あ、そういえば…………やっぱりいいか」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
気になる事があったのだが、私は話すのを止めた。ここでグレイに話しても混乱を生むかもしれない。それにグレイがナツにでも話したら本当に取り返しのつかないようなことになりかねない。それに私の空見に可能性も全然あるしな。
そして私とグレイはその後もこれからのことを話した。だが、夜は更けていてグレイも眠そうだったので話に付き合わせるのも悪いと思って話を終わりを切り出した。
今は外の空気を吸うために外に繰り出している。なぜか、今日は眠くなる感じが全然しない。
「それにしても本当にあの人がいるのだろうか」
私は予選を戦っている最中に一瞬だけど、クレアを見た気がする。クレアがこんなところにいる訳はないと思うんだが。クレアがギルドを出て、それなりに月日が流れたがまだクレアの顔や背格好などは覚えているつもりだ。
「いるのだとしたら…会いたい…」
もしかしたら、クレアの方は私たちのことなんて忘れているかもしれない。思い出したくない過去になってしまっているかも。それでも私はクレアに会いたい。だってあの日もクレアに別れの言葉だって言えていない。あの頃の私はクレアを中心に生活が回っていたと思う。
クレアが私のことをどう思っているかは分からない。鬱陶しいと思っていたかもしれない。それでもクレアに言わなければいけない言葉がある。
今の私があるのはクレアのお陰だから。クレアに剣術の全てを習って、クレアのような優しい人になりたくて必死に真似をして、クレアに構って欲しくて誰よりも強い人になりたいと思うようになった。私の剣術の根本には『クレア』がいるんだ。
私という人間の全てを作ってくれた。
だからせめて
「ありがとう」
と伝えたい。