BIOHAZARD【V+α】   作:”蒼龍”

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ストックが溜まってる為連日投稿致しました、第2話目更新です。
今回からイーサン・ウィンターズと葵達が本格的に絡みますがそれがどうなるか、どんな差異を生むかお楽しみ下さいませ。
では、本編へどうぞ。

追記:投稿時間ガバりました、申し訳ありませんでした。


EP II『現状把握と『村』とライカン』

『Pillllllli!』

 

夕刻にて、ローズを寝かしつける妻のミアと共に居たイーサンは側に置いていたタブレット端末から電話が鳴り始めた為それを手に取ると、其処にはローズの検査をしてくれた医師から電話と画面に表示されたので受信をスライドして電話に出る。

 

「先生」

 

『ウィンターズさん、娘さんの診察結果について、お伝えしたい事があるので木曜の午後4時で、如何です?』

 

「分かりました、伺います」

 

如何やらローズの『検査』の結果が出たらしく木曜午後4時に伺う予定になった様であった。

何故検査が必要かと言えば自身やミアはベイカー邸事件にてE型特異菌に感染し、その後治療を受けてからローズが生まれた為BSAAからも念の為検査を勧められ、東ヨーロッパに引っ越してから生まれた我が子の専属医師を紹介されたのである。

 

「先生からだ、来週来いって」

 

ローズを寝かし付けた後ミアはイーサンの近場に座り、電話の内容を聞いていた……が、何処か浮かない顔をしておりイーサンは少しそれが気になり声を掛ける。

 

「なあミア、悪く考えるなよ、もう話し合っただろ?」

 

「そうね、此処のとこその話ばっかり」

 

イーサンはローズは心配無いと思いながらミアに話しかけていた。

が、彼女の口からは自身の考えとは全く違う答えが返って来る。

 

「何度も言ってるわよね?

心配なのはローズじゃないって」

 

「じゃあ何が心配なんだ?

ミア…ローズならあの通り元気だろ?

何が問題だ?」

 

イーサンはミアが何を心配し浮かないのか分からず、ややヒステリック気味になっている彼女を気に掛けローズは心配要らないとした上で何が問題なのかと部屋から出ようとする彼女を呼び止める。

 

「私達の事よイーサン!

貴方は…分かってない!

分かってないの…!」

 

「ミア、何の話だ?

何かあるなら話せよ、なあ言ってくれよ」

 

だがミアはイーサンに対して問題なのは自分達で、イーサン自身が理解していないと叫び出してしまう。

それをイーサンは困惑しながら話を聞こうとしたが、懐に仕舞ったタブレットから再び電話が鳴り始めてしまう。

 

「クソ、こんな時に…」

 

電話を取り出して相手を確認した後ミアはそのまま部屋を出て行ってしまう。

そして部屋に残されたイーサンはこんなタイミングで電話を掛けて来た相手にウンザリしながら一旦溜め息を吐いていた。

 

「……そう、此れが貴方の記憶なのね。

イーサン・ウィンターズさん」

 

「っ⁉︎」

 

すると背後から聞いた事の無い少女の声がした為イーサンは驚いて振り返ってしまう。

と言うのもイーサンは、声は違うが『雰囲気』が似通った物があった為またあの悪夢の存在が再来したのかと思ったからだ。

そう、ベイカー邸事件の原因たる生物兵器エヴリンが。

 

「……エヴリン、じゃ無い……?」

 

しかし其処に居たのは黒髪が特徴だったエヴリンでは無く、金髪で赤目が特徴の迷彩服と小さな体格に合う様にオーダーされたのだろう一般サイズでは無い防護ジャケットを着た少女が立っていたのだ。

 

「…お前は、一体誰なんだ?」

 

「……私の事は起きてから分かるから、早く起きよう、イーサン・ウィンターズさん?」

 

イーサンは少女を何者かと問うと『起きたら分かる』と返され、更に起きる様に促された瞬間、此れは自分の夢なのだと自覚し始め意識が夢から遠退いて行く。

しかし自分の夢ならあの知らない少女は誰かと疑問が残りながら、イーサンは意識を浮上させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ……如何なってる……?」

 

「イーサンとオメガ18の意識回復を確認しました。

此れより状況説明しながら行動します。

……イーサン・ウィンターズさん、意識はハッキリしてますか?」

 

イーサンは見知らぬ簡易テント内で目覚めると青髪と赤目が特徴の女が電話を切り、自身に話し掛けて来る。

その周りを見れば右隣には目の前の女と金髪の女が、更に左隣には先程の夢に出た少女と瓜二つ…と言うよりそのままの少女が自分と同じタイミングで起き上がっていた。

そしてイーサンは気付く、この女達は最愛の妻ミアを殺し、更に愛しき娘ローズを攫ったクリスの仲間だと。

 

「お前達は……ああ、ミアを殺して、ローズを攫ったクソ野郎達の仲間だ‼︎

おいお前等、よくもミアを殺したな‼︎

それにローズは、俺の娘は何処にやった‼︎」

 

イーサンはミアを殺され、更にローズを攫われた怒りから初めに話し掛けて来た女の首根っこを掴み掛かり、ローズの居場所を吐かせようと剣幕を張った。

 

「ちょっと待ちなってウィンターズさん、私達の話を」

 

「黙れ、誰が妻を殺した連中の話を聞くか‼︎

さっさとローズの居場所を吐け‼︎」

 

金髪の女がイーサンと青髪の女の仲裁に入るが、怒りのままに掴み掛かるイーサンには全くの無意味であり更にローズの居場所を吐く様に叫び出す。

すると青髪の女がイーサンの手を包み込みながら冷静に口を開き始めた(なお少女はテント内に合った武器の手入れをこの状況で行っていた)。

 

「…イーサンさん、その事についてお伝えしたい事が幾つもありますので落ち着いて下さい。

私を殴るならその後で」

 

「伝えたい事だと?

一体どんな言い訳がしたいんだクソ女共‼︎」

 

青髪の女はイーサンに伝える事が幾つもあると口にしたが、イーサン自身はそれを言い訳と捉え片手を離し、下らない事を言おう物ならその場で殴ってしまおうと周りの全員を含めクソ女と認定して拳を作り出す。

だが、その青髪の女から自身が全く予想だにしなかった事が真剣な表情で、その口から飛び出して来る。

 

「先ず状況が切迫詰まってしまっていますので端的に言います。

貴方の娘のローズちゃんは……『敵』に攫われました」

 

「……何……⁉︎」

 

青髪の女はローズが彼女達が『敵』と呼ぶ者に誘拐されたと口にし、イーサンは状況が掴めず思わず疑問の声を上げてしまう。

そうして此れがイーサン・ウィンターズにとってクリス達の仲間である女3人……琴葉葵、弦巻マキ、イヴとのファーストコンタクトとなった。

 

 

 

 

 

 

葵は武器の手入れを即時終了させ、懐炉をイーサンに渡してからテントの外に連れ出し横転した車、更に葵が並べた武装兵の遺体を見せ始めていた。

 

「此れは……一体、何なんだよ…!」

 

「イーサンさん、私達は『敵』の殺害後、貴方やローズちゃんが特異菌に感染させられてないか検査をする為にサイトCと言う場所に移送途中でした。

しかし、始末したと思っていた『敵』は収容してた護送車内で蘇生、そのままローズちゃんを攫って行ったんです」

 

イーサンはこの状況に困惑する中、葵は側に落ちていた作戦概要書をイーサンに見せながら状況を説明し、更にローズが攫われた方向を指差し、確かに其方に足跡等が付いていた。

だがイーサンの中で葵の語る始末した筈の『敵』が=ミアの為、そんな事が出来る訳が無いとして嘘を吐いていると思い作戦概要書を破り捨てながら再び怒りを向け始める。

 

「ミアにそんな事出来る訳が無いだろ!

彼女は唯の人間だ‼︎

お前達、やっぱり嘘を吐いているんじゃないだろうな⁉︎」

 

「うん、ミア・ウィンターズさんには不可能だよ。

だってこれやった奴、ミアさんに化けた『敵』がやったんだから」

 

「……何だって?」

 

だがその怒りの言葉にマキは自身達の不手際を口酸っぱくする様にしながら此れをやった者はミアでは無くミアに化けた別人がやったと話し、それを聞いたイーサンは乾いた返事が出てしまいながらマキ達を見る。

 

「……アオイ、マキ、このまま此処で棒立ちしながら説明してたらローズが危ない。

移動しながら話そう」

 

「そうだねイヴ。

……イーサンさん、この先は危険ですので我々が用意した武器の中にある予備を渡します。

それで奥へ進みながら、事情を話します」

 

葵達が話す中、サジタリウスやデュランダルを装備したイヴが悠長にしてればローズが危ないと話し、それを聞いた葵達は自身等も武装しながらイーサンにデュランダルの予備を渡す。

対してイーサンは余りにゴツく基銃が分からなくなったそれのマガジンを1度抜き、弾は.45ACP弾を使ってると知りながらマガジンを入れてスライドを引き、葵達への警戒心を解かないまま進み始めた。

 

「……ああ、そう言えば自己紹介が未だでしたね。

私はA.B.F.オメガ小隊所属、オメガ16の琴葉葵です。

此方は同じくオメガ18のイヴ。

そして此方はデルタチーム所属のデルタ2、弦巻マキです。

改めてよろしくお願いします、イーサンさん」

 

「…さん付けは要らない」

 

すると葵は未だ自己紹介が済んでいなかった為自分達の所属、名を口にしながら夜明け前の凍える森を白い息を吐きながら話し掛けていた。

対してイーサンは名前の後にさん付けされるのは語呂が悪く、更に警戒心を解かずフレンドリーな形を取りたく無い為にさん付けを葵達に止めさせた。

そして雪道を歩く中で、葵は事情を話し始めた。

 

「先ず貴方と我々の認識の違いを解消します。

イーサン、私達は特異菌を操る『敵』を殺す為に追っていました。

その『敵』の目的が貴方の娘さんの拉致が目的で、生体兵器としての肉体に宿る擬態能力で奥さんに化けたソイツはウィンターズ家にまんまと侵入したんです」

 

「何?

さっきから特異菌ってルイジアナと同じ……それにミアに化けたって、じゃあ本物のミアは何処に居るんだよ!」

 

葵は認識違いの解消の為、自身等の目的が特異菌を操る『敵』の存在の抹消と話し、更にソレがミアに擬態してウィンターズ家に侵入したとイーサンに話した。

するとイーサンは先程から特異菌と話してる葵にあのベイカー邸事件の記憶を呼び起こされた上に、その話が事実なら本物のミアは何処に居るかを問いた。

 

「分からない、私等も奴を追ってる中でミアさんに化けたのを見て直ぐに対処に追われたから……それに奴の事だからミアさんが生存してる確率はかなり低いと思う……ごめんなさい……」

 

「そんな、ミア……だったら、だったらそのミアに化けたクソ野朗は誰なんだよ⁉︎

何で俺に説明しなかったんだよ‼︎」

 

その問い掛けにマキは『敵』がミアに化けたのを確認して対処に追われた為本人の行方が分からず、更に『敵』が態々本人を生かす理由が無い、生存は絶望的と言う事実を口にしながら謝罪する。

イーサンはそれを聞き絶望に包まれながら憤り、『敵』の正体と事情説明無しについてを叫んでいた。

 

「……敵の名前は『マザー・ミランダ』、この先にある『村』を治める教祖で、私達E型被験体やE型特異菌事件の裏には犯罪組織コネクションと共にその名があった。

そしてイーサン、貴方に事情説明をしなかった理由はクリス的には巻き込みたく無い、自分達だけで決着をつけたかったからと、侵入を許してからは迂闊に裏打ちして強行策を取られたり貴方が感染させられたかも知れないから」

 

その憤りに有刺鉄線をカビのスコップで上げてイーサン達を潜らせたイヴが敵の名はミランダ、事情説明無しだった理由を一通り話すとイーサンは自身をE型被験体と話すイヴを見ながらエヴリンを幻視してしまう。

 

「お前、エヴリンと同じ……」

 

「……うん、エヴリンは第1号、私は第2号。

だけど優しくて強い人達が私に人の心とかを教えてくれたり、人間として生きて良いって救ってくれたの。

だけど……今は私の事より何故貴方達ウィンターズ家、ひいてはローズが狙われたか話さないとならない」

 

イーサンはイヴに怯えた様子を見せるが、イヴは自身が人の心を持ち、更に人として生きて良いと救った者達が居た事を簡潔に話す。

だがイヴ自身が何故ローズが狙われたかを話すと口にし、葵やイーサン達は何故か散乱する動物の死骸を無視しながら話を進め始める。

 

「イーサン、ローズちゃんが狙われた理由はあの子が特別な『力』を持っていて、それをミランダに知られた所為なんです」

 

「ローズが、特別?

如何言う事だよ、BSAAや紹介された先生は何も異常は無いってーー」

 

「そのBSAAが隠してたんだよ、検査の結果で力を持っている事を。

私達やクリスさんはそれを機密情報にアクセスして知ったんだけど、何故かミランダもそれを知ってしまって今があるんだよ」

 

葵はローズが狙われた理由を『周りに敵が居る』事を察知しながら話し、対するイーサンは検査で異常はなかったと口にするが、元BSAAのマキが機密情報にアクセスしてそれを知った上でミランダにまで何故か知られたと話しながら一件の民家に辿り着き、葵達は『敵』を撒く目的で中に入りイーサンも続く。

 

「何でローズがそんな…」

 

「……多分イーサン、貴方とE型菌に感染したミアの子だからだと思う。

イーサン、多分2人の中に未だE型菌が残留してたんだと思う。

実際私と精神感応出来たし……そんな2人の子供だから特別だと思う。

ただ、私達もローズの力の実態全てを把握して無いけど」

 

イーサンはローズが何故そんな力を持つのかを呟くと、イヴはイーサンやミアの体内に未だE型菌が残留していた可能性を指摘し、先程の夢の中で精神感応が起きた為その可能性が否定出来ない物であり、故にローズが力を得たと憶測を話す。

但しその実態全てを把握していない事を添えながら話しつつ、葵達は物音がして血の跡が続く家の地下に向かっていた。

 

「……なあ、所で何でこんな場所に来るんだ?

ローズを急いで見つけなきゃならないんだろ?」

 

「それは…さっきから黙ってましたが、私達敵に囲まれてるっぽいです。

なのでそれを撒く為に…静かに!」

 

『ドガシャァン、ガラガラドガァァッ‼︎』

 

イーサンを地下に招いた後葵達は地下のタンスを開け鼠を出すと、『敵』からの追跡を撒く為にこの場に入ったと言おうとした瞬間、葵はイーサンの口を押さえると次に上の階から『何か』が暴れる音が鳴り渡り、地下の屋根=家の床が軋み思わず床抜けするかも知れない程の暴れ振りを『何か』がしていた。

 

「……音が止んだし、上には『何も居ない』、行きましょう」

 

その音が一通り鳴り渡り、一旦止むと葵はイーサンの口から手を離し3人は武器を構えながら歩き出そうとする。

 

「なあ、今上で暴れた何かが俺達を囲んだ敵か?」

 

「はい、私の透視能力で姿を確認した上でイーサンの身の安全の為撒く選択をした次第です。

………取り敢えず上にはもう居ないみたいなので出ましょう」

 

イーサンはたった今『何か』が暴れた事を葵達が言った囲んでた者かと問い掛け、葵も素直に認められると何故地下に入ったか理由を教えながら地上に続く階段を登り始める。

すると家の中が荒らされ、タンスが倒れて床には更なる、今度は新鮮な血が付いており葵は家の中に入った時点で透視能力を使わなかったのを悔いた。

この家の家主を意図せず『デコイ』にしてしまったのだから。

 

「…葵、人は完璧じゃないんだ。

だから悔いるよりも…」

 

「…そうだねマキさん。

イーサン、少し下がって下さい。

ふんぬっ…!」

 

マキはこの家の状況から葵の考えを読み、完璧な人は居ないとフォローを入れると一呼吸置いてイーサンを下がらせ、倒れたタンスを持ち上げると音を立てない様に立て掛ける怪力を彼に見せた。

 

「お、おい。

さっきお前…アオイは透視とか言ったり今の怪力と言い、まさか普通の人間じゃないのか?」

 

「よっと、はい。

私はとあるウィルスに完全適応した者でして、今みたいな事の他にも1つ使える物があります。

それでもまぁ、B.O.W.とは違って人の倫理観を持ち合わせていますから…」

 

イーサンはたった今葵の見せた怪力や透視という単語から普通の人間じゃない、ベイカー家の様な存在かと思い聞くと、葵は簡潔にウィルス完全適応した存在だと説明し、しかし生物兵器と違い倫理観を持ち合わせていると話しながら葵達3人がイーサンより先に先程まで無かった空いた穴から外に出て周りを念の為警戒する。

 

「…何もいないみたいだな。

それで、そのミランダって奴が俺やローズを感染させた疑いがあるって話は如何したんだ?」

 

「……それだけど、私がE型菌を操れるからちょっと分かったんだけど、イーサンとローズの中にはこうやって間近に接触して、他の菌に感染してないって事が今分かったわ。

だからそっちは杞憂だったから、今はローズ奪還が優先」

 

イーサンも外に出てデュランダルを構えてクリスにさせられた戦闘訓練で周りを警戒すると、辺りには何も居ない事を確認した後葵達にミランダが特異菌に感染させた疑いの件を聞くと、イヴがE型被験体の力で他の菌には感染してない、杞憂だった事を説明した上でローズ奪還が最優先だと話して柵を登り、雪の丘道を進み出した。

そして、夜が明け始め4人は小さな丘に辿り着くと城から鐘の音が鳴り響く『村』が見えた。

 

「此処は一体……」

 

「…ようこそイーサン、此処がマザー・ミランダが治める、クリスさん達が監視していた『村』です。

この何処かにローズちゃんは必ず、そして低い確率ですがミアさんも居る筈です、行きましょう」

 

イーサンがこの村が何処なのかと口にすると、葵が此処こそがマザー・ミランダが治める『村』だと話し、更にこの村の何処かにローズやミアが居ると話すと、イーサンは未だ見ぬ敵であるミランダに敵意を、愛しき娘には取り戻すと言う決意を胸に葵を中心にした4人は丘を滑り落ち周りに家畜が死んでる異様な村内部に侵入を果たした。

 

「……がぁっ‼︎」

 

「っ、イヴ如何したの⁉︎」

 

「おい、お前大丈夫か⁉︎」

 

するとイヴが村に入った瞬間頭を押さえながら苦しみ悶えて地面に倒れ伏し、葵やイーサン達は何が起きたのか分からずイヴに駆け寄る。

するとイヴは息を荒くしながら立ち上がり、葵の手を掴みながら立ち上がる。

 

「はあ、はぁ、大丈夫……ただ、この村に入った瞬間。

私の特異菌ネットワーク形成能力が反応して薄らだけど……私が居たダールトン城を遥かに上回る意識情報が流れ込んで来てそれに当てられた…けど、思考をカットして何とか元の状態に戻った。

だけどアオイ、マキ、イーサン、此処はクリス達の報告通り唯の村なんかじゃない…‼︎」

 

イヴは如何やら特異菌ネットワークの力が無意識に反応してしまい、この村にイヴが囚われたダールトン城を遥かに超える意識情報が1度に流れ込んだ為に苦しんだ事を伝える。

現在は思考カットを利用して普通に振る舞うが、この村は報告通り異常だと話して3人を警戒させる。

 

「…分かった。

だが、村なら人が居るはずだ…こんな変な光景だが、ローズを見た人が居るかもしれない。

アオイ、敵はミランダであって村人じゃないなら聞き込んでも良いか?」

 

「…はい、情報無しだとローズちゃんは探せない為村人に話を聞くのはアリです。

貴方の言う通り敵はミランダとその配下で村人では無いですから。

但し、ミランダへの敵意は隠して下さい。

この村の住人は特異菌の力によりミランダを崇拝する様に意識操作されてると報告にありますから、波風立てて変な事になりたく無いです」

 

「(最も、その村人が『生きていれば』、何ですけどね…)」

 

イヴの話から此処はこの光景の更に何倍も異常だと理解したイーサンは、敵はあくまでミランダだから聞き込みをするかを問うと、葵はミランダの敵意を隠しながらならOKと話して聞き込みを開始し始めようとした。

しかし葵やマキは長年バイオテロと戦い続けた勘からその村人が『生きていれば』と思いつつ、警戒しながら近場の家に入った。

 

「……誰も居ないのか?

スープも温めっぱなしで周りは荒らされて……まさか、さっき俺達を取り囲んでいた『何か』が村人を…?」

 

「…ちょっと待ってて下さい。

透視能力を使って半径700メートル以内に『人』が居ないか確かめます」

 

イーサンは家の中すら異様な光景が広がっている事に一抹の不安を覚え、先程の家で暴れた何かが村人を襲ったのではと嫌な考えが過ってしまう。

すると葵は透視能力を使い半径700メートル以内に誰か居ないかを探し始める。

するとその視界にショットガンを抱えて隠れる老人が映り……そして周りを先程の『敵』も居た。

 

「近場に生きてる人を見つけました、ショットガンを抱えてるお爺さんです。

早めに行きましょう…但し物音を余り立てない様に。

矢張り『敵』が村を徘徊しています、それもかなりの数が…」

 

「マジかよ……分かった、アオイ、その爺さんのとこに案内してくれよ」

 

葵はイーサン達に生きてる村人の存在と『敵』が徘徊している事を話すとマキ達は警戒心を最大限にし、イーサンは半信半疑で家の外に出てその場所を目指す。

すると目の前で何かが引き摺られる、ラジオが無造作に流れる、先程無視した様に山羊の頭が吊るされてたりする光景が広がっていた。

 

「何だよこれ…此れもお前が言う敵の仕業か?」

 

「恐らく。

さて、着きましたので皆さん口裏を合わせて下さい。

私達3人は軍事演習中に逸れた者、イーサンは居なくなった娘さんを探してたら遭難してる所を私達が見つけ、共に暖を取れる場所がないかを探した者と言って下さい。

人を信用させるには嘘の中にある程度真実を交えた方が警戒され辛いですから」

 

イーサンは周りの光景の異常さを葵達が警戒した『敵』がやっているのかと聞き、葵は恐らくと答えた後口裏合わせをしてイーサンを保護した遭難者、自身らを軍事演習中に逸れた3人と設定を話し全員が頷いてゆっくりと家の中に入る。

しかし3人は気付く、『血の臭い』がこの家からすると。

 

「(…ん?

このナイフ使えるな。

それに近場の木箱から……やっぱり、『回復薬』が入ってたぜ)」

 

するとイーサンは家の中でナイフを確認すると近場の木箱に何かを感じたのかそれを破壊すると『回復薬』…E型特異菌感染者や被験体が回復目的に使う薬液が出て来てイーサンはしたり顔になっていた。

それを見てたイヴは矢張りイーサンの体内にE型菌が残留してると思い、BSAAは何をしてたのかと内心憤りを覚えていた。

 

「さて……すみません、私達は軍事演習中に逸れた軍人3名と遭難者1名です、中に居る事は分かってますのでどうか武器を下ろして話を聞いて下さい」

 

その間に葵、マキが家内のカーテン越しに設定した体の話を掛けると、中から本当にショットガンを抱えた老人が現れ、イーサンは葵の透視能力が本物だと分からされ内心マジかよと思いながらそれを見ていた。

 

「ほ、本当にアンタら、他所者だが軍人なのか?」

 

「はい、それで私達は遭難者を保護後に暖を取れる場所を探してましたが…この場所で何があったんですか?」

 

「(…この人、やっぱり報告通り私のとは『何か違う』けど特異菌に……)」

 

老人は葵達に警戒していたが、其処にマキが葵の設定で話を進め始める。

…実際は何が起きてるかは少しは把握しており、はらわたが煮えくり返っているがそれを隠しながら話していた。

そしてイヴは自身のE型菌とは違うが別の特異菌に老人が感染している事を察知し、報告通りならばこの『末路』も知っていた。

 

「わ、分からん、ワシ等は普通に暮らしてたのに奴等が…あっ‼︎」

 

『ガシャン‼︎』

 

『グォォォォ、グォォォォォォォォ‼︎』

 

老人は安心仕切り何があったかを言い始め、奴等=葵達が現在警戒している『敵』に襲われた事を口にしながらテーブルに向かい始める。

だが人間は気が緩むと警戒心が薄れる。

老人は足をテーブルにぶつけてしまい瓶を床に落とし割ってしまう。

そして物音を立ててしまった結果、『敵』に勘付かれてしまう。

 

「しまった……奴等だ…‼︎」

 

「(奴等、つまりは…)」

 

「お爺さん、何が来るかは分からないですが援護します‼︎」

 

葵達は老人の焦り様から自分達の敵、この村を襲う『B.O.W.』が来た事を察知し、何が来るか分からないと嘘を吐きつつデュランダルやカスタムショットガンを構えて室内戦の陣形を取り狭い室内に展開する。

 

「お、おい、今のは一体」

 

『ズドォン、ズダンッズダンッズドォン‼︎』

 

イーサンは敵の正体が分からず今のは何かと問うと老人は窓に向けてショットガンを放つが外し、しかし他3名はギリギリ敵に弾丸を当て殺していた。

イーサンはその窓からチラッと人型の何かが倒れる姿を目撃する。

 

「今のは何なんだよ、おい‼︎」

 

「……仕方ない、ふぅぅぅ‼︎」

 

イーサンは先程の物が何かを葵の近くに来て問うが、戦闘中の為それに応える暇がなかった。

そして葵は老人から化物認定されるのを承知で透視能力を使いつつサイコキネシスを発動、屋根の上に居た敵を全て倒して屋根の上から落とす。

 

「い、今のは……嬢ちゃん、アンタ一体…⁉︎」

 

そして今ので1度は信用を勝ち取った老人から警戒心を再び向けられ葵にショットガンが向けられてしまう。

イーサンは老人を射線に入りかけ後退りをしてしまう。

……だが葵の透視能力も万能では無い、あくまで視界内に捉えた範囲の者しか見れないのだ。

そして今回は屋根の上ばかりに気を取られていた、その為『床下』は気にする事が出来ずそれに気付けなかった。

 

『ズガァァァァァ‼×2︎』

 

「きゃあっ‼︎」

 

「うっ、クソ、うおっ‼︎」

 

「葵、イーサン‼︎」

 

葵とイーサンは床下に潜んでいた敵に引き摺り込まれてしまう。

それを見ていたマキ、イヴの手は間に合わず分断されてしまう。

そして葵、イーサンは手に持っていたペンライトを付けると、床下には死体が散乱していた。

 

「っ、死体だと⁉︎

あっちも…何なんだよ、此れは⁉︎」

 

「……」

 

イーサンは余りに多い死体に驚きを隠せず、葵はマキ達が気になり上を透視すると、マキ、イヴは老人を連れて外の小屋に立て籠った事を確認して今はイーサンの護衛に集中する事に専念する。

 

「ミランダって特異菌を操る奴が治める村なんだろ此処、ならこの死んだ村人は実験台か何なのかよ、おい‼︎」

 

「……はい、此処はイカれた特異菌の実験場です。

そして、村人を襲うモノは…」

 

『ドサッ』

 

イーサンは憤りを隠せず葵にこの村の事を改めて聞くと、矢張りと言う答えである特異菌の実験場だと話して再び悪夢が完全に甦ったと悟る。

すると奥から死体が転がり、その奥でモゾモゾと何かが動く物にイーサンは目を取られてしまう。

 

「っ、危ない‼︎」

 

『グシャァァァ‼︎』

 

葵は警戒が薄れたイーサンの横を警戒すると其処から『敵』がイーサンに襲い掛かろうとした為庇うと左腕を噛まれてしまう。

 

「ア、アオ」

 

『グシャァァァ‼︎』

 

「ぐあ⁉︎

は、離れろ…‼︎」

 

葵が襲われた事に気を取られたイーサンはもう1体敵が来ている事に気付かず、彼は左手を噛まれてしまう。

そして2人共家の外に力任せに壁を突き破られながら投げ出されイーサンは左手の小指のほぼ全てとその辺りの小指球部、更に薬指を半分を、葵は手首下の前腕を食い千切られてしまう。

 

「クソ、なんだあの化物は⁉︎」

 

「くっ、アレが報告にあったB.O.W.か…‼︎」

 

『グルァァァァ‼︎』

 

そして葵、イーサンがそれぞれの反応を示す中B.O.W.が2体家の中から出て来て狼の様な威嚇行動をし、再び襲い掛かろうとして来ていた。

 

「止めろ、下がれ…‼︎」

 

「く、敵性B.O.W.確認、排除開始‼︎」

 

葵、イーサンはデュランダルを構え頭に目掛けて1発撃ち込む。

するとイーサンは余りの反動に右腕が持ち上がるが、戦闘訓練のお陰で頭にヒットさせ1撃で屠るのだった。

葵も言わずもがなである。

 

「く、クソが…何なんだ一体…」

 

「……」

 

イーサンが悪態を吐き、葵が黙って絶命を確認してこの不意打ちを凌いだと2人は内心ホッとしていた。

……そして此れが、葵達が報告により聞いていたB.O.W.『ライカン』との初戦闘であった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
1つ目の差異としてイーサンがミランダの存在やその目的、ローズが何等かの力を持つ事を知る。
2つ目の差異として初めから銃を携帯する事に(但し一般人には扱い辛い奴)。
3つ目の差異にイーサンの体内にE型菌が残留してるかもと推察される。
4つ目に最初に銃を渡してくれるお爺ちゃんがまさかのこの時点で生存。
大きな差異はこの4種です。
後イヴがE型被験体としての力を持つ為村の特異菌ネットワークに薄らと反応したのは独自設定です(原作からゲノム編集箇所が少ない為これ生きた被験体が来たらこうなるんじゃと思い描写ました)。
因みに葵達はライカンの名前を調査から一応知っています。

此処までの閲覧ありがとうございました、よろしければ感想、指摘をお願い致します。

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