琉球エージェントの死遊戯紀行   作:アヤ・ノア

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大翔の家族が、ここで登場します。
「鬼ごっこ」の犠牲者って、こうなっちゃうんですよね。
絶対に出したくありませんね。


17 迷子のお知らせ

『初めまして、みんな。突然だけど、地獄って一体なんなのか知ってる?』

 天井スピーカーから流れてきたのは、先程の放送の音声とは異なる声だった。

 子供の……男の子の声だ。

 恐らく、大翔達とそう変わらない年齢だ。

 唖然とした三人をよそに、喋り続ける。

『地獄っていうのはね、罪を持った人間が死後に送られて、

 ムゴイムゴイ罰を受ける世界の事なんだ。色んな鬼やゴーモン方法で、堕ちた人間を苦しめる。

 例えば、鋭い刃で殺し合いをさせられる等活地獄。焼けたノコギリで体を切られる黒縄地獄。

 鉄串に刺されて炎で焼かれる焦熱地獄。

 いわば、人間を苦しめるっていう、ただそのためだけに作られた空間、それが地獄なんだ』

 声は何だか楽しげだ。

 お気に入りのオモチャでも紹介するような口調だった。

 三人は顔を見合わせ、エージェント達はごくりと唾をのむ。

 なんなんだ、こいつ……。

『でもさでもさ、そんな地獄、もう古くさいよね。だって大昔と変わらないんだよ。

 何千年も同じ事やってちゃ、鬼も人間も飽き飽きさ。

 ……それで作ったのが、このショッピングモール地獄というわけなんだ』

 声は得意そうに続けた。

『この地獄に、きみ達を招待したくてたまらなかったんだ。大場大翔。桜井悠。宮原葵』

 三人はびくっとして、周囲を見回した。

 エージェントの名は、呼ばれない。

『だってボク、感動したんだ。きみらの持ってる、友情と勇気に。

 まさかあの小学校地獄から逃げられてしまうとは思わなかった。自信作だったのに。

 せっかく地獄を作ってもね。

 大抵みんな、ぼろぼろ泣いたまま、鬼に食われちゃうだけなんだよね。つまんないよ』

 声は不満そうに続けた。

『そんな子達と遊んでもつまらないじゃない?

 地獄クリエーターとしての、ボクの腕が鳴らない。

 そこへ行くと、きみ達には見どころがあるよ。

 ホントなら、ギロチンで一人くらい死んじゃうと思ってたんだけどなー。カンいいなー』

 悔し気な声を出した。

『そうそう、きみらの前に遊んでた子が、チケットカウンターの陰に隠れているよ。

 一人で寂しいと思うから、よければ挨拶してあげてね。

 それじゃあ、ボクの作った地獄を、是非楽しんでいって。

 少し難しくしたから、きみらが逃げ切れるか分かんないけど。

 ま、死んじゃったらまた地獄で会おうね。じゃあね、大翔、悠、葵。バイバーイ』

 そこで、ブツッと放送は切れた。

 

「やるしかない。お前はここで待ってろ」

「……狼王?」

 狼王はすくっ、と立ち上がった。

 チケットカウンターを睨みつけ、中へ入って屈み込み、奥を覗き込んだ。

 そこには、白骨化した骨があった。

 大きさからいって大翔達と同じくらいの歳だろう。

 落ち窪んだ目の穴。

 必死に助けを求めるように、左腕を伸ばした姿勢のまま死んでいる。

 脇にはカビの生えたランドセルと、縦笛が転がっていた。

 

「どうやら、あの映像は幻ではなかったようだな」

 こんな恐ろしい光景を見たにも関わらず、狼王は平然としていた。

 彼の後ろには、織美亜、阿藍、大翔、悠、葵が立っている。

 大翔、悠、葵は青い顔をして泣きかけている。

 大翔は涙を流しかけており、悠はくしゃっと顔を歪めて、葵は表情をなくして。

 悠と葵は、大翔の服の裾を、ぎゅっと握り締める。

「安心しろ。お前達が小学校に閉じ込められた時も、オレ達が助けた。絶望するにはまだ早い」

 狼王がそう言うと、二人ははっとして泣くのをやめた。

 気持ちが伝わったように、頷いた。

(地獄ショッピングモールだかなんだか知らないが、負けるもんか。みんなで生きて帰るんだ)

「そうよ、アタシ達はエージェントなんだから」

 織美亜、狼王、阿藍も決意した。

 この三人を守るのが、エージェントの任務だから。

 

『ぴんぽんぱんぽん。ご来店中のお客様に、迷子のお知らせをいたします』

 また館内放送が流れてきた。

「迷子のお知らせ……?」

 重ねた手を放すと、三人は顔を見あわせた。

 織美亜、狼王、阿藍は真剣な表情をしている。

『大場結衣ちゃんのお連れ様。大場結衣ちゃんのお連れ様。

 結衣ちゃんが、お連れ様を探してお待ちでございます。至急、お迎えにお越しください。

 お連れ様がお迎えにいらっしゃらない場合、結衣ちゃんは鬼達一同で、美味しくいただきます。

 ぴんぽんぱんぽーん』

―おにーちゃああんっ

 泣き声が響いて、放送は途切れた。

 

「みんな、覚悟はいいかしら?」

「ああ……必ず、鬼を倒すぞ」

「俺達はエージェントだからな」




次回は新たな鬼が登場します。
だけど、エージェントだって、負けてはいませんよ。
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