琉球エージェントの死遊戯紀行   作:アヤ・ノア

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ザコキャラ・餓鬼が再び登場します。
こういうのほど群れるのはお約束ですよね。


24 暴食の餓鬼

「はい、これで少しは痛みが和らいだでしょ。

 ……といっても、アタシが治せるのは傷だけ。痛みは苦手なのよね」

 織美亜は大翔の左足首を能力で治した。

 治癒の超能力を持っている織美亜だが、痛みを和らげる事は不得意なのだ。

 

「それにしても……ここって、食べ物がいっぱいあるんでしょ?」

 地下1階、食品売り場。

 だだっぴろいフロアの中に、たくさんの食材が詰め込まれている。

 肉、魚のパックに、冷凍食品の袋。

 コロッケやフライのお惣菜。

 ずらりと並んだジュースの、ペットボトル、酒瓶。

 ポテトチップスにチョコレート。

 焼きたてのパン。

 試食コーナーでボイルされたウインナー……。

「なのに、ここも、誰もいないわね……」

 何百人分もの食材を抱え込んだまま、フロアは眠っているように静まり返っている。

「結衣! いないか? 結衣ーっ! どこにいるんだーっ!」

 大翔は叫んだが、返事はない。

 

『ぴんぽんぱんぽん。ご来店のお客様にお知らせいたします』

 アナウンスが流れてきて、六人は身構えた。

 このショッピングモールの放送は、碌な事を伝えないのだ。

『ただいまより、日頃のご愛顧に感謝して、10分間のタイムセールを実施いたします。

 地下1階、食品売り場にお集まりください』

「地下1階食品売り場……ここじゃないか」

「今度はなんなの……」

 悠は、おろおろ周りを見回した。

『タイムセールの10分間は、品物を全品無料にてご提供いたします。

 現在、食品売り場にある食品、そして、いる食品を、無料にてお召し上がりいただけます。

 どなたさまも心ゆくまでお楽しみくださいませ』

「た、食べていいってよ。これ全部、無料で……」

 フロアにずらりと並んだ商品を示して、悠が言う。

「凄いサービスだね……。ぼ、僕、このショッピングモールのファンになっちゃいそう……」

「……食品売り場にある食品」

「そして、いる、食品といえば?」

 葵と織美亜が言った。

「うう……そこ、聞かなかった事にしようよ……。きっとそんな事、言わなかったんだ……」

「食品売り場にある食品」

 葵は並んだ食材を指差した。

「そして……いる、食品」

「あー、あー、聞かないよー」

 悠は耳を塞いで目を瞑っている。

 嫌な事は見ない、聞かない、が悠の信条だ。

 

 天井が揺れた。

 床を振動が響き渡ってくる。

「何、この音……。いや、聞かなかった……っ」

「隠れるぞっ」

「えっ」

 大翔は素早く周囲を見回した。

 このままここにいるのはまずいと、本能が告げている。

「あそこにっ!」

 売り場の隅の、テーブルコーナーが目に入った。

 並んだ長机の下に、ちょうど隠れられそうなスペースがある。

 あそこなら目立たないし、テーブルクロスを被せれば、完全に身を隠せそうだ。

「駄目だっ」

 駆け出そうとした大翔の腕を引っ張って、悠がストップをかけた。

 大翔は、え? と振り返った。

「あそこは駄目だ、ヒロト。別の場所の方がいいよ」

「……なんでだよ。よさそうなのに」

 大翔は首を捻った。

 大きなゲーム機や家具のあるフロアと違って、食品売り場で隠れられそうな場所は少ない。

 あそこの他は、レジカウンターの衝立の陰とか、商品台に山と積まれたオレンジの下とか。

 衝立の陰は、すぐに見つかってしまいそうだし、鬼達はきっと食材に押し寄せてくる。

 なるべく離れていた方がいいと思う。

「テーブルコーナーが、一番じゃないか?」

「何だか、嫌な予感がするんだ……。あそこに隠れたくないよ」

 大翔はごくりと唾を呑んだ。

 悠は怖がりだが、その分、直感が鋭いところがあるのだ。

 牙も爪も持たない小動物が、敏感に危機を察知するように。

 ……もっとも、そんなものすらも能力で対抗できるエージェントの前では形無しだが。

 

「でも……じゃあ、どこへ?」

「……あそこはどう?」

 悠が指したのは、生鮮食品コーナーの一角だった。

 棚には、納豆のパックや豆腐、こんにゃくなどが並んでいる。

 棚の前に台があって、その下のスペースを悠は指差している。

(正直、ないだろ)

 隠れ場所は狭いし、身動きが取れない。

 食材が並んだど真ん中だし、何より棚の前まで近づいてこられたら、丸見えになるのだ。

 

「足音が近づいてくるわ。迷ってる時間はない」

「ヒロト……」

「よし、そこに隠れようぜ」

 大翔は頷いた。

 別に何の確信もないけど、親友がそうしようと言っている。

 

(エージェントは堂々と出るほど、アホじゃない)

 大翔達は台の下に身を隠した。

 体を小さくまるめて、体育座りになる。

 エージェント達は大きかったが、それでも、不思議な力によってみんな隠れられた。

 

 六人が隠れ終えた直後、フロアに鬼達が降りた。

 階段から、エスカレーターから。

 次々、フロアに降り立った。

 餓鬼の群れだ。

「……また、か」

「生前に贅沢をしすぎた人間が、鬼になったものよ。

 常に飢えて湧いていて、決して満たされる事がないと言われてるわ」

 背丈は人間の大人くらい。

 悠は、おろおろまわりを見回した。

 数は、10、15、20……30、40、50……100……駄目だ、数え切れない。

 一体どこから湧いてきたんだ。

 

 餓鬼達は並んだ食品を見渡して、歓喜の雄たけびを上げている。

 獣のものとも人間のものともつかない気持ち悪い遠吠えが、フロア中に響き渡る。

 フロアはあっという間に、鬼で溢れ返った。




といっても、まだ大翔達に戦う力はないので、逃げるのみですが、
エージェント達は戦う事ができるのです。
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