琉球エージェントの死遊戯紀行   作:アヤ・ノア

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ツノウサギと子供、そしてエージェントの問答です。
エージェントは子供より強く鬼と互角、を目指してみました。


26 働くツノウサギ

『ただいまをもちまして、タイムセールは終了とさせていただきます。

 引き続き、地獄ショッピングモールでの素敵なひと時をお楽しみくださいませ』

 餓鬼達が去っていくのは早かった。

 食べかけの食料品を放り捨てると、もう用はないとばかりに、

 階段やエスカレーターを上って引き上げていく。

 大量の食べカスが散乱して、滅茶苦茶になったフロアが残った。

 

「……いや、お前ら、いきなり何すんのよ……」

 餓鬼達が全員いなくなったのを確認すると、狼王は斧をしまった。

 解放されたツノウサギは、はあっと深い溜息をついた。

 パタパタと翼を揺らして、迷惑そうに六人を見上げた。

「勝手に納豆食わすわ、服で縛るわ、斧で脅すわ。酷過ぎるだろ。

 親や学校は、どういう教育してんの? まったく……」

「……鬼に教育について言われたくないけど……」

「あーもう……口が納豆臭い……」

 長い舌をちろちろと動かし、牙の間に挟まった食べカスを取る。

 パンパンとエプロンの皺を伸ばして、名札の位置を直した。

 身構えたままの六人を見上げ、面倒くさそうに首を振る。

「警戒しなくても、ショッピングモールの品物に手を出すほど、オレは命知らずじゃない」

 散らかったフロアを見回した。

「ていうか、仕事って忙しい。くそ、餓鬼ども、散らかしやがって。

 ――ほら、どいたどいた、ジャマジャマ」

 大翔達を押しのけると、よいしょと毛の中から箒と塵取りを取り出す。

 食べカスの散らばった床をせっせと掃除し始めた。

「……なあ。訊きたいんだけど。結衣がどこにいるか、知らないか?」

 大翔が言うと、ツノウサギは面倒くさそうに、不機嫌そうに、振り返った。

「オレの言った事、聞いてた?」

「え?」

「仕事で忙しい。サボってると、怒られんの。

 鬼づかい荒いんだ、地獄ショッピングモールは……」

『ぴんぽんぱんぽん。業務連絡、業務連絡。

 地下1階食品売り場担当は、すみやかに掃除を完了してください。ぴんぽんぱんぽーん』

「ほらぁ!」

 ツノウサギは、めんどくせえなぁと言いつつ、せっせと箒を動かしている。

「俺の妹なんだ。探してるんだ」

「へー」

「まだ小さいんだ。今朝はアニメキャラのシャツを着てた。5歳。見かけなかったか?」

「ふーん」

 完全に生返事だ。

 悠と葵が顔を見合わせ、肩を竦め、織美亜は苛立った。

 大翔は仕方なく、背中を向けた。

「なんで探してんの?」

 ツノウサギが訊いた。

「助けに行かなきゃ」

「なんで?」

「だって、まだ小さいんだ」

「だから?」

「俺が守ってやんないと……」

「なんで?」

「なんでって……だって、きょうだいなんだ」

 ツノウサギは、あー、もう、と首を振って箒をしまうと、

 今度は掃除機を取り出し、床にかけながら言った。

「自分以外は全部他人。それが地獄の常識だ。きょうだい? それウマい?

 そいつ助けると、おまえにどんな得があるの?」

「……」

「お前になんかしてくれんの? 食い物か金でもくれんの? 優しくしてくれんの?

 ジャマじゃないの? いない方がお菓子もおもちゃも増えたりしない?

 親が構ってくれるようになったりしないの? そこんとこどうよ?」

 ツノウサギは掃除機をかけながら、フンフンと鼻歌を歌っている。

「ふざけないで。彼女が、怒るわよ」

「なっ!?」

 織美亜がツノウサギの頭を掴んで言う。

 「彼女」とは、同じエージェントの一人であり、電撃を操る能力者だ。

 三きょうだいの一番下だが、超能力はきょうだいの中で最強である。

 そんな仲間を馬鹿にしたのだから、織美亜は怒りを隠せなかったのだ。

 

「少しは大人しくするんだな」

「電撃を浴びたくなければね」

 狼王はツノウサギを気絶させて、大翔達と共に地下1階を後にした。




鬼はきょうだいを邪魔者だと思っているようですが、後半では……ですよね。
やっぱり鬼は嘘つきです。あっちとは違って。
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