琉球エージェントの死遊戯紀行   作:アヤ・ノア

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3巻編のボス戦です。
今の大翔達は鬼とまともにやり合えないので、エージェントの出番です。


40 妖鬼妃

「殺し、喰らい、奪う……そんな鬼には、お・し・お・き・よ!」

「妖鬼妃! お前は俺が、取り戻してやる!」

 織美亜、狼王、阿藍、麻麻は、妖鬼妃になった白井先生と戦う。

「うふふふふふ……」

 妖鬼妃は妖しい笑みを浮かべ、狼王に近付く。

 思わず戦意を失う狼王だが、阿藍が光を放って正気に戻した。

「おれは しょうきに もどった!」

「何をしている。……こいつは俺の恋人だ、だが、今は鬼なんだよな……」

 妖鬼妃と阿藍はかつて恋人同士だった。

 しかし、ある鬼の策略によって、恋人は亡くなり、地獄の鬼に変えられてしまった。

 任務なので、エージェントは彼女を討たなければならなかったが……。

「いい加減にしないと、こ・ろ・す・わ・よ」

「うぐぅっ!」

 織美亜は傷を癒す力を逆に使い妖鬼妃を傷つける。

 彼女の「治癒」は、細胞を活性化させて自然治癒力を高めるものなので、

 過剰に細胞が活性すれば傷つくのも当然だ。

 狼王は能力による怪力で斧を叩きつける。

 続けて、麻麻が電撃を放って痺れさせ、そこに阿藍が光速で突っ込んで殴った。

「乱暴なのね……乱暴なのね……」

「お前ほどではないがな」

 阿藍は妖鬼妃と距離を取る。

 彼としては、妖鬼妃を殺したくはなかったが、既に彼女は完全な鬼になっており、

 糸村から彼女を討つ任務を課せられた。

 なので、妖鬼妃を討たなければ、平和は訪れない。

 

「阿藍……アイツはもう、鬼なのよ。情を見せたら、ダメなのよ」

「それは分かっている。俺も、鬼祓いができたらいいのに」

 エージェント達は鬼を殺す事ができるが、鬼を祓う事はできない。

 阿藍はこの時、子供達に一瞬だけ憧れていた。

 だがその隙を、鬼が許すわけがなかった。

「死になさい……」

「そうはいかないわ!」

 妖鬼妃が阿藍に腕を振り下ろすが、麻麻が電撃の盾を張り、攻撃を防いだ。

「うぅ……人が鬼に力で対抗できるなんて……」

「油断大敵、だから悪は必ず負けるのよ」

 麻麻は妖鬼妃に事実を突きつける。

 慢心せずして何が王か、という言葉があるが、鬼はただの人間相手に全力を出さないのが基本。

 相手を対等に見るというのは、鬼にとって屈辱だからだ。

 エージェントも超能力者だが彼らはあくまで人間。

 鬼は彼ら相手でも、傲慢で、手を抜くのだ。

「悪いが、お前達が子供を食べる事はできない」

「どうして?」

「それを教えたら勝負にならないだろ!」

 そう言って狼王は、妖鬼妃に斧を振る。

 腕は真っ二つになるが、鬼の再生力は高く、すぐに腕は再生して元通りになった。

「くそ……どうやったら、こいつを倒せるんだ」

「今は彼女を戦闘不能にするしかないようね」

 

 妖鬼妃とエージェントの戦いは熾烈を極めていた。

 彼女はエージェントにも劣らない特殊な力によってエージェント達を圧倒していた。

「電撃投射!」

 一方、エージェントも決して引かなかった。

 そのために彼らは超能力を身に着け、鬼と戦っているのである。

 この戦いは子供達には認識されない。

 秘密裏に鬼を仕留めるのが、エージェントの役目なのだ。

 たとえそれが、かつて人間だったとしても……。

 

「ヒーリング!」

 織美亜は前線で戦っている狼王を優先的に癒す。

 前線は傷つきやすいので、必然的に織美亜の出番が多くなるわけだ。

 子供は鬼に攻撃されたらほぼ即死だが、エージェントの場合は必ずしもそうではない。

(この鬼は、アタシ達と同じ力を持ってるらしいんだけどね……)

 高位の鬼は、特殊能力も持っているという。

 幻想郷の鬼と違って約束を守るはずがないから、モラルもなしに平気で使ってくるだろう。

 だからこそ、エージェントが動くしかないのだ。

「おらぁ!」

「フフフフ……」

 妖鬼妃は木を生み出し、狼王の攻撃を防ぐ。

 阿藍は光の速さで妖鬼妃の後ろに回り込み、光で妖鬼妃を怯ませる。

 鬼に対し、光は非常に効果的なのだ。

「この、よくも私に光を……!」

「電撃投射!」

 妖鬼妃が攻撃しようとした瞬間、麻麻は両手から電撃を放射する。

「あばばばばばばばばば!」

「よし、今だっ! 一斉攻撃!」

 阿藍は光の力を解放し、仲間達の能力を高める。

「電撃投射・改!」

食らえーーーーーっ!!

 麻麻と狼王の攻撃が、妖鬼妃に命中する。

 電撃と斧、両方が命中した妖鬼妃は遠くに吹き飛ばされ、見えない壁にぶつかる。

「よし……! もう少しで、倒せる……!」

「……」

 ガッツポーズを取る狼王と、不安になる阿藍。

 すると、妖鬼妃の身体が黒い煙に包まれ、

 彼女の姿が身長十数mの毛むくじゃらの巨人に変化する。

 目は赤く虚ろで、その口からは絶えず絶叫を発している。

「く……これがお前の、本当の姿か……!」

アアアアアアアアアアアアアア!!

 真の姿を現した妖鬼妃が、絶叫と共に豪腕を振り下ろそうとする。

 もし怯んでしまえば、攻撃は避けられないだろう。

「恐れるなよ!」

「ああ!」

 狼王と阿藍は妖鬼妃の恐怖の咆哮に耐え、すぐに斧と光で反撃に移る。

 彼らが伊達にエージェントをやっていない事の証明でもあった。

 妖鬼妃は怯まずに狼王と阿藍に突っ込んでいくが、

 狼王と阿藍は攻撃をかわして妖鬼妃に突っ込む。

「せやぁっ!」

「たぁぁっ!」

 狼王が斧で妖鬼妃を切り裂き、阿藍は右手に光を溜め、妖鬼妃の胸に狙いを定める。

「すまない……お前を、苦しめたくないんだ。妖鬼妃……本当にすまない……!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」

 阿藍の放った光が、妖鬼妃に命中する。

 光に包まれた妖鬼妃の身体がボロボロになり、光と共に徐々に消滅していく。

 そして、光が完全に消えた時、妖鬼妃も消えた。

 

「任務完了……」

 四人のエージェントは妖鬼妃を倒し、桜ヶ島から脅威を一つ払った。

 だが、阿藍の顔に、喜びはなかった。




エージェントの活躍、いかがだったでしょうか。
どうしても女性の鬼を出したい、オリキャラと因縁を持たせたい、
そして何より、荒木先生を最後まで生存させたい、という思いから、
この3巻編は気合を入れて書いたのです。

次回は4巻編、新たな鬼ごっこが始まります。
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