鬼ごっこなのに鬼ごっこしないのがエージェントです。
だって超能力者ですから。
14時35分。
牢屋の前に姿を現したのは、織美亜、狼王、阿藍、麻麻らエージェント。
麻麻がテレパシーを送ったところが判明したので、テレポートでやって来たというわけだ。
「火炙りって、僕の時代と同じくらいじゃないか」
「ああ、そうだ。災厄を力なき人間に押し付け、排除する行為……それが火炙りだ!」
西洋では、全ての災厄は「人間」の仕業とされ、迫害や差別を受け、挙句の果てに処刑される。
エージェントは西洋風の名前に違わない、そんな考えを持っている。
悠、葵、章吾は、援軍を見て顔が明るくなる。
「待ってろ、お前らを助けるのはこいつを倒してからだ」
そう言って狼王は子供達の前に立つ。
織美亜、阿藍、麻麻も、杉下先生を睨みつけた。
「鬼よ! 今すぐ消えなさい!」
エージェントは鬼に激しい殺意を向けている。
彼らに見えるのは、杉下先生ただ一つ。
「ドロボウは、あり得ない力を使っても構わない。その力を持っているのは、君達も……か」
杉下先生はエージェントが超能力者である事を見抜いたが、
それくらいで動じないのがエージェント。
ただ真っ直ぐに、杉下先生を睨んでいる。
「じゃあ、これはどうかな!」
杉下先生の周囲から、黒いオーラが放たれる。
それを感じ取った四人は、思わず膝をついた。
「何なの、これ……」
「気分が悪くなりそうだわ……」
「どす黒いぜ……!」
織美亜、狼王、麻麻の顔が青ざめる中、阿藍は光の力で身を守っていた。
杉下先生の闇の力を拒絶しているのだ。
「阿藍、大丈夫?」
「何とかな……しかし、口だけだと思ったお前が、こんな力を使うとはな……」
「褒めてくれてありがとう。でも、君達は子供を守る事はできない」
杉下先生の傍には、二体のピエロがいた。
狼王は斧を生成し、ピエロ目掛けて突っ込み、スペードピエロに斧を叩きつける。
「ぐぅっ!」
スペードピエロは狼王の頬を殴りつける。
その隙に杉下先生は再び闇の波動を放とうとするが章吾がタックルして発動を防いだ。
「ありがとう」
「当然だ」
「ピエロよ、倒れなさい! 電撃投射!」
「ヒーリング」
麻麻が放った電撃がピエロに直撃し、ピエロは伸びて「ばたんきゅ~」した。
織美亜はヒーリングで自分と狼王を癒していく。
続いて狼王がピエロに斧を振り、吹っ飛ばす。
ピエロは縄を麻麻に投げたが、阿藍が庇い、光の力を使って打ち消した。
「しぶといね。とっとと死んでもらおうかな? まずは男どもからだよ」
「ぐっ……!」
「苦しい……!」
杉下先生は狼王と阿藍に近付き、闇を放つ。
狼王と阿藍の身体が、中からボロボロになる。
「そんなに苦しいなら、抵抗するのはやめなよ」
「誰がそんな事をするか! オレ達はお前の道具じゃない!」
「……ま、道具扱いする奴はいるけどな」
狼王と阿藍は杉下先生の闇の攻撃を何とか耐える。
杉下先生は一瞬驚くがすぐにいつもの笑顔に戻る。
「まぁ、その余裕もすぐに終わ……」
「残念でした、もうピエロはいないわよ」
「何!?」
麻麻の言う通り、もう一体のピエロも既に倒れていた。
エージェントの迅速さは人間とは思えないようだ。
「……もう、アタシの負担もかけないでよね」
織美亜は愚痴を吐きながらも、優しく狼王と阿藍にヒーリングをかける。
青くなっていた狼王と阿藍の顔色が戻る。
「くそ、何回攻撃しても、回復されるなら……作戦変更、君から仕留めなくちゃね!」
「そうはいかないわ!」
「俺はお前を拒む!」
織美亜と阿藍は、杉下先生に仁王立ちし、チカラを使って杉下先生を抑え込む。
「隙あり!」
「ぐああぁぁぁっ!」
その隙に狼王は斧を一閃、杉下先生に大ダメージを与えた。
「死んでもらうよ、電撃使い」
「麻麻!」
阿藍は麻麻の前に立ち、光の力で攻撃を防ぐ。
「ありがとう……許さないわよ、杉下××!」
麻麻は上に向かって電撃を放つ。
杉下先生は「どこに飛ばしている」と笑ったが、次の瞬間、電撃が杉下先生の背中に直撃した。
「油断大敵よ」
力の強いものほど、手を抜く傾向にある。
司令官からそう言われた麻麻は、誰が相手でも決して手を抜かなかった。
「鬼め、死ね!」
「ぐあぁっ!」
阿藍の光が杉下先生を刺し穿つ。
「こうなったら、こいつらだけでも!」
「そうはいかないわ!」
杉下先生は逃げて子供を「処刑」しようとしたが、織美亜が杉下先生に組み付く。
「鬼め……この世から消え失せろ!!」
狼王は織美亜を巻き込まないように、杉下先生に斧を一閃する。
その凄まじい腕力によって杉下先生は地に伏せ、戦闘不能になる。
エージェントの任務は、完了した。
「悠!!」
「葵!!」
「章吾!!」
大翔、有栖、和也、浩司が駆けつけてきた時には、杉下先生とピエロは地に伏していた。
章吾はとっくに縄を解いていて、悠と葵もぐったりしているが無事のようだ。
「まさか、お前らがやったのか?」
大翔が狼王に問うと、狼王はうむ、と頷いた。
「凄いじゃないの、流石ね!」
「まあな」
ただ鬼から逃げる事しかできない子供達と違い、エージェントは超能力で鬼と戦える。
それがエージェントの最大の特徴なのだ。
子供達は次々とエージェントを称賛し、あの章吾も、彼らを「強い」と認めた。
エージェントにできない事はない、と子供達はこの時、思ったのだ。
「ともかく、これで鬼ごっこは終わりだな」
「任務完了……」
そのまま脱出しようとしたエージェントだったが、何故か沖縄県に戻る事ができなかった。
「何故だ……奴は、倒したはずなのに……」
「もしかしたら、まだ鬼の力が残っているかもしれないわ」
杉下先生は倒れたが、まだ沖縄県には戻れない。
この島での任務は、まだまだ続くようだ。
原作者は「鬼は現代では直接戦闘はなるべくしない」と言いました。
これは現代の某カードゲームを彷彿とさせますね。
次回は5巻、鬼の本性を出した杉下先生は……?