琉球エージェントの死遊戯紀行   作:アヤ・ノア

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6巻編スタートです。
このお話に登場するエージェントは、中学生編のあるキャラの関係者となります。


6章 誰もいない地獄島
58 行先は地獄島


「ママ、パパ……」

 そこは、小さな無人島だった。

 寄せては返す波の音が響く、どこまでも広がった砂浜。

 背の部い木々が鬱蒼と生い茂り陽の光を遮る密林。

 人の手の及ばない自然の中で、鳥や、魚や、昆虫や……無数の生き物達が動き回っている。

 

「ママぁ、パパぁ……。会いたいよぉ……」

 その島に、たった一人、女の子がいた。

 小学校の高学年くらいだろう。

 地面にへたり込み、しゃくり上げている。

 もうどれくらい泣き続けているのか、顔に涙が跡になっていた。

 女の子の脇の地面には、古びた立て看板があった。

 もう随分昔に立てられたものらしく、書かれた文字はあちこち剥げて、掠れている。

 

『鬼ごっこのルール

 ルール1:子供は、鬼から逃げなければならない。

 ルール2:鬼は、子供を捕まえなければならない。

 ルール3:超能力は使用しても構わない。

 ルール4:子供は、島を脱出すれば勝ち。

 ルール5:鬼に捕まった子供は、地獄行き』

 

「誰か、助けてぇ……。ママ、パパ、誰かぁ……」

 女の子はもうずっと、独りぼっちだった。

 気が遠くなるほどの時間を、たった一人で、鬼から逃げ回っている。

 捕まってしまったら、『地獄』行き。

 お父さんとお母さんと、二度と会えなくなってしまう。

 必死で逃げたが、もう限界だ。

 

「ひろくん……」

 血のように真っ赤に染まった空を見上げて、女の子は呟いた。

 

「助けて……。ひろくん……」

 女の子はまた、ぽろぽろと泣き始めた。

 泣きながら、その名を呼んだ。

 

「ひろくん……。ひろくーん……っ!

 叫ぶ声は空に吸い込まれ、風に乗って流れていって……ある男の子の耳に届いた。

 

 その頃、沖縄県のとある島。

 ある建物の中には、車椅子の少年と、五人のエージェントがいた。

 

「No.5も他のエージェントも、ご苦労だった」

「御意」

 司令官、糸村一が島に戻って来た五人を労う。

 結城梵がやって来たのは緊急だったらしく、特に彼に対しては惜しみなく報酬を与えた。

「僕の弟は……無事だろうか」

 梵には光哉という義理の弟がいる。

 今は離れ離れになってしまっているが、いずれ会いに行きたい、と思っているのだ。

「弟の事よりも、今は任務を成功した事を喜べ」

「……御意」

 一は天才的な頭脳と、個より全を重視する考えを持っている。

 そのため、一は梵の義弟の心配を蹴ってしまった。

「今回の任務は、現世と冥界の狭間の島に行く事だ」

「ちょっと待ってください! それではアタシ達、死んでしまいますよ!?」

 織美亜が任務の行き先を心配するが、一は首を横に振った。

「その島は、生者でも来られるらしい。とはいえ、そこには鬼がいる、油断大敵だ」

「……」

「そして、任務の内容は……一人の霊を導く事」

 現世と冥界の狭間の島には、霊がいる事は珍しい事ではない。

 だが、導くというのは、どういう事だろうか。

 狼王の頭にはたくさんの?マークが浮かんでいた。

「よく分からないぜ、何をすりゃいいんだ?」

「その霊を鬼から守って、成仏させるという認識でいいのだな?」

「うむ」

 阿藍の言う通り、エージェントの目的は、霊を守りながら正しい道に向かわせるのだ。

 

「余談だが、その島は霊感がなくても霊が見えるぞ。現世と冥界の狭間だからな……」

 司令官の言葉を聞いた四人は頷いて、テレポートで目的地の島に向かった。

 梵はこの任務に向かないので、本部で休んだ。

「頼んだぞ、エージェントよ。必ず、鬼から世界を守るのだ……」

 

 誰もいない地獄島。

 エージェントは、そこに住む霊を導けるだろうか。




次回は南の島でバカンスです。
日常回となりますので、ご安心ください。
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