琉球エージェントの死遊戯紀行   作:アヤ・ノア

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死神は敵か味方か? そんなお話です。
オリキャラの出番が多いのでご注意ください。


70 死神との戦い

「……何だよ、葵。難しい事ばっか言って。じゃあ、どうしろっていうんだよ」

 図書館からの帰り道。

 葵はそのまま塾へ行くというので別れ、大翔とは自宅のあるマンションへの道を歩いた。

 ここのところ、陽が暮れるのが早くなってきた。

 地面に四人の影が伸びている。

 四人は影を淡々と踏みながら歩く。

「そういえば、章吾は結局来なかったわね」

「仕方ねえさ。章吾は病院にいたいっていうから。こっちはこっちで作戦を考えようぜ」

「関本くんや伊藤くんは、誘わなくていいのかな?」

「絶対言うなって、章吾に言われた。

 和也や孝司にまで家族の心配なんてされたら、もう学校いけねえって」

「姉としては、やっぱり弟が心配だわ。絶対、誰かに目をつけられるのに」

 冷たい風が吹き抜け、散った葉っぱの上を踏みしめる。

 大翔と有栖は何だか、気分が晴れなかった。

 腕の中で、小さな不安が疼いている。

 章吾が姉を頼ってくれて超能力者と相談をすれば、上手くいくはずなのに。

(何、弱気になってるのよ、私)

 死神は、超能力を使えば、簡単に倒せるのに。

 

「……有栖」

「何よ、お兄さん」

 と、隣で阿藍が口を開いた。

 短いが、はっきりとした声。

 有栖は瞬時に気を引き締めた。

 依頼した人の声に、緊張を感じ取ったのだ。

「そのまま、聞け」

「何?」

「……俺達は、尾けられてるようだ」

 思わず後ろを振り向こうとして、有栖は慌ててやめた。

 いくら超能力を使えるといえど、力は弱いからだ。

 前を向き、変わらない調子で歩いたまま、訊く。

「この前のお返しで章吾がイタズラ……じゃないわよね?」

「いや、あの黒いローブ姿の奴だ。……死神だ」

 阿藍も歩調を変えずに歩きながら言う。

「後ろの方……電信柱の陰から俺達を見てる。様子を伺ってるみたいだ」

「なんで、あいつが……」

「待て!」

 阿藍が、先制攻撃を仕掛けた死神に、光を放って牽制した。

「やるしかない。死神を払うしかない」

 強力な超能力を使えるのは、阿藍だけだ。

「俺が死神を倒す! お前達はここで待っていろ!」

 阿藍は大翔、悠、有栖を守るように立つ。

 戦いには絶対の自信があるため、阿藍は真剣に死神を見据えた。

 

 しかし、死神との戦いは苛烈を極めた。

 というより、阿藍の攻撃は、全く効かなかった。

 暖簾に腕押し、糠に釘、いくら攻撃しても手応えが感じられない。

 

(光の力を使ってる俺が死神に負けるだと……!?)

 阿藍は焦りを感じていた。

 超能力者なら死神を倒せるはずなのに、何故か死神を倒す事ができなかった。

 どういう事だ、と阿藍が思うと、死神が阿藍が頭の中に語り掛けた。

 

(……これ以上近づくな、だと? まさか、鬼が関わっているのか?)

 だとしたら、自分のやり方は間違っているのだろうか。

 しかし……自分はエージェントだ、死神を見逃すわけにはいかない。

 阿藍が首を振って死神の言葉を否定すると、死神の言葉は阿藍には聞こえなくなった。

 

(章吾を狙っているのは死神ではなく、鬼? だとしたら、俺が倒そうとした奴は……)

 もしかしたら、自分の敵ではないかもしれない。

 阿藍がそう思うと、死神の姿は彼の前から消えた。

 そんな阿藍に、有栖がやってくる。

「どうしたの、お兄さん? 何かあった?」

「……何でもない」

「何でもない、じゃないわ。私に何か言って」

 やはり力が弱くても超能力者は超能力者、有栖には阿藍の考えがお見通しのようだ。

 阿藍は仕方なく有栖にだけ聞こえるように話した。

 

「……死神は、敵ではないのね」

「ああ……だが、それを大翔が気づいたら……」

「黙っておきましょう」

 有栖と阿藍は、自分だけの秘密を守るのだった。




次回はいよいよ、大翔達が章吾に接触します。
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