オリキャラの出番が多いのでご注意ください。
「……何だよ、葵。難しい事ばっか言って。じゃあ、どうしろっていうんだよ」
図書館からの帰り道。
葵はそのまま塾へ行くというので別れ、大翔とは自宅のあるマンションへの道を歩いた。
ここのところ、陽が暮れるのが早くなってきた。
地面に四人の影が伸びている。
四人は影を淡々と踏みながら歩く。
「そういえば、章吾は結局来なかったわね」
「仕方ねえさ。章吾は病院にいたいっていうから。こっちはこっちで作戦を考えようぜ」
「関本くんや伊藤くんは、誘わなくていいのかな?」
「絶対言うなって、章吾に言われた。
和也や孝司にまで家族の心配なんてされたら、もう学校いけねえって」
「姉としては、やっぱり弟が心配だわ。絶対、誰かに目をつけられるのに」
冷たい風が吹き抜け、散った葉っぱの上を踏みしめる。
大翔と有栖は何だか、気分が晴れなかった。
腕の中で、小さな不安が疼いている。
章吾が姉を頼ってくれて超能力者と相談をすれば、上手くいくはずなのに。
(何、弱気になってるのよ、私)
死神は、超能力を使えば、簡単に倒せるのに。
「……有栖」
「何よ、お兄さん」
と、隣で阿藍が口を開いた。
短いが、はっきりとした声。
有栖は瞬時に気を引き締めた。
依頼した人の声に、緊張を感じ取ったのだ。
「そのまま、聞け」
「何?」
「……俺達は、尾けられてるようだ」
思わず後ろを振り向こうとして、有栖は慌ててやめた。
いくら超能力を使えるといえど、力は弱いからだ。
前を向き、変わらない調子で歩いたまま、訊く。
「この前のお返しで章吾がイタズラ……じゃないわよね?」
「いや、あの黒いローブ姿の奴だ。……死神だ」
阿藍も歩調を変えずに歩きながら言う。
「後ろの方……電信柱の陰から俺達を見てる。様子を伺ってるみたいだ」
「なんで、あいつが……」
「待て!」
阿藍が、先制攻撃を仕掛けた死神に、光を放って牽制した。
「やるしかない。死神を払うしかない」
強力な超能力を使えるのは、阿藍だけだ。
「俺が死神を倒す! お前達はここで待っていろ!」
阿藍は大翔、悠、有栖を守るように立つ。
戦いには絶対の自信があるため、阿藍は真剣に死神を見据えた。
しかし、死神との戦いは苛烈を極めた。
というより、阿藍の攻撃は、全く効かなかった。
暖簾に腕押し、糠に釘、いくら攻撃しても手応えが感じられない。
(光の力を使ってる俺が死神に負けるだと……!?)
阿藍は焦りを感じていた。
超能力者なら死神を倒せるはずなのに、何故か死神を倒す事ができなかった。
どういう事だ、と阿藍が思うと、死神が阿藍が頭の中に語り掛けた。
(……これ以上近づくな、だと? まさか、鬼が関わっているのか?)
だとしたら、自分のやり方は間違っているのだろうか。
しかし……自分はエージェントだ、死神を見逃すわけにはいかない。
阿藍が首を振って死神の言葉を否定すると、死神の言葉は阿藍には聞こえなくなった。
(章吾を狙っているのは死神ではなく、鬼? だとしたら、俺が倒そうとした奴は……)
もしかしたら、自分の敵ではないかもしれない。
阿藍がそう思うと、死神の姿は彼の前から消えた。
そんな阿藍に、有栖がやってくる。
「どうしたの、お兄さん? 何かあった?」
「……何でもない」
「何でもない、じゃないわ。私に何か言って」
やはり力が弱くても超能力者は超能力者、有栖には阿藍の考えがお見通しのようだ。
阿藍は仕方なく有栖にだけ聞こえるように話した。
「……死神は、敵ではないのね」
「ああ……だが、それを大翔が気づいたら……」
「黙っておきましょう」
有栖と阿藍は、自分だけの秘密を守るのだった。
次回はいよいよ、大翔達が章吾に接触します。