真実を知ったエージェントは、それでも任務を続行します。
75 狙われた狩人
射的ゲームのルール
①射手は、鬼一匹と人一人。
②それぞれ二射して、マトを撃ち抜いた数の多い方が勝ち。
③マトとの距離は、鬼と人の話し合いで決める。
④「マトとなるもの」と「マトの置き場所」は、鬼と人が片方ずつ決める。
⑤不正を行った場合は、即負けとする。
⑥この「不正」に、能力は含まれない。
桃鬼と和解した四人は、沖縄県の島に戻ってきた。
織美亜は司令官の一に、今回の出来事を報告した。
「……まさか我らの力の源が、鬼だったとは」
司令官は淡々とした様子で言った。
鬼が由来であっても動じないのが司令官である。
「そうです。桃鬼は私達を拉致し、力を与えました」
「しかも、鬼でありながら、子供は守る対象だ」
子供の肉を嫌い、それどころか守ろうとしており、
しかも同族を倒すために織美亜達に力を与えた。
鬼の特徴に「当てはまらない」彼女は、まさしくイレギュラーそのものだ。
そして、エージェントがルールを破れるのも、桃鬼がイレギュラーだからなのだ。
少し難しい顔をする一だったが、しばらくして、うむと頷いた。
どんな真実も受け止めろと言ったのは彼だからだ。
「たとえ、力が鬼に由来しても、我ら琉球エージェントは鬼を倒すのが使命じゃ」
毒を以て毒を制す。
琉球エージェントの使命は、ただそれだけなのだ。
「では、次の任務だ」
車椅子に乗りながら、一は四人のエージェントに任務を言い渡す。
「叉鬼を止めろ」
「その鬼は、どこにいるのですか?」
「ここにおる」
そう言って、一は四人に地図を見せる。
どうやら、叉鬼は桜ヶ島の森の中にいるようで、そこには四人の子供も向かっているらしい。
「子供がいるならば、直ちに救援に向かえ。鬼がいるならば、直ちに討伐せよ。
よいか、時に情を捨てる事も必要じゃ」
「優しさを捨てる事……」
子供にはそれができないかもしれないが、自分達はとっくに子供を卒業している。
だから、敵への情は捨てなければならない、と司令官は忠告しているのだ。
「我らは子供を蔑む事はせぬが、敵には一瞬だけでも情を捨てよ。
それこそが……強さというものじゃからな」
「……はい」
エージェントの代表、織美亜は小さく頷いた。
果たして、子供は一の考えを理解できるだろうか。
「では、ゆけ。叉鬼を必ず止めるのじゃ」
「かしこまりました」
そうして、エージェントはテレポートで、目的地の森に向かっていった。
エージェントを見送った車椅子の少年は一人呟く。
「儂の考えは正しかったと信じておる。
何故なら、あの子供は、情を捨てられるほど成長していないからな……」
桜ヶ島の子供より年下の少年は、能力により知能指数が常人を遥かに上回る。
だが、冷徹になる事は、果たして成長したと言えるだろうか。
冷徹な少年は、まだ、そこに気づいていなかった。
これを読んだ時、子供特有の甘さを見て少し複雑な気分になりました。
そうでなければ今の世の中は生きられない、と思いましたから。