琉球エージェントの死遊戯紀行   作:アヤ・ノア

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文字通りの回です。
能力者と一般人の違いを、ここでも表現してみました。


8 鬼退治の準備

 校庭の南西端。

 体育と運動会の用具が詰め込まれた、桜ヶ島小第一体育倉庫。

 学校で武器探しといったら、ここしかないだろう。

「各自一つ、自分の身を守れるものを探せ。あ、そこにいる二人は必要なさそうだな」

(能力者は万能だと思っているのね)

(実際は、できる事とできない事があるんだがな)

 荒木先生が指示すると、男子達は倉庫の中を探し始めた。

 今回の作戦では、女子達は別行動だ。

 能力者は男女の差が小さいので除外する。

 改めて見てみると、体育倉庫の中は、色んなものがあるものだ。

 サッカーボール、バスケットボール、バレーボール……各種ボールの詰まった箱。

 バドミントンとテニスのラケット、走り高跳び用のマット、白墨を引くラインカー、角コーン。

 この辺りは、普段の体育の授業でも見覚えがある。

 さらに、今は運動会の用具でごった返している。

 綱引きの綱、長縄の縄、長い竹の棒は棒倒し用。

 大玉転がしの声もあった。

「これで鬼を引いちゃうか?」

 誰かが言って、みんな笑った。

 スコップ、土を均すトンボ、ブルーシート、フラフープにピコピコハンマー。

「オレの武器、ピコピコハンマーっ」

「アホか。そんなもので鬼と戦えっかよ。俺はこの長縄の縄で、鬼を跳ばしまくる」

「くらえっ、必殺・フラフープ光線っ」

「――こらっ! お前ら、真面目にやれっ!」

 ふざける皆に、先生が怒鳴る。

 まだまだあった。

 メガホン、マイク、スピーカー。

 棚には、今日使う予感だったゼッケンが、綺麗に畳まれて重ねられていた。

 みんなでやる予定だった、騎馬戦のハチマキ。

 クラスリレーのバトン。

 探っていくうちに、ふざけていた声は徐々に静まっていった。

 みんな黙りこくって、用具を漁る音だけが響いた。

 

「……オレ、許せねえよ」

 ぽつりと、誰かが言った。

「運動会、今年で最後だったんだぞ。もう、みんなとはできないんだぞ。滅茶苦茶にしやがって」

 みんな、それぞれに体育倉庫の中を見回した。

 大翔も見回した。

「……鬼なんて、ぜってぇ、ぶっ倒してやるんだ」

 武器になりそうなものは、それほど多くなかった。

 手頃な長さのスコップが数本。

 棒倒し用の竹棒が数本。

 これは長すぎるので半分に折る事にした。

 テニスラケットが数本。

 野球のバットが2本。

 全員、それぞれ武器を分け合った。

 一番威力がありそうなバットは、荒木先生と章吾が持った。

 大翔はスコップを手に取った。

 悠は竹棒を手にしたまま、まだ青ざめた顔をしている。

「なんで暗いのよ。ボス鬼はアタシ達が倒すのに」

「……」

「ま、アナタが黙ってるなら、深く追求しないけど」

「オレ達は鬼と戦うためにここに来た。だから、不安になるんじゃない」

 狼王は悠の肩に手を置いた。

 悠はようやく立ち直ったのか、顔を上げる。

「確かに、鬼は単独では強いかもしれない。でも、皆で戦えば、必ず鬼を倒す事ができる」

「そのために、能力者がいるのよ」

「……ありがとう」

 二人のエージェントのおかげで、悠はようやく本来の表情に戻った。

 

「お前ら、これをつけろ」

 武器が行き渡ったのを確認すると、先生はみんなに1枚ずつゼッケンを配った。

 能力者は、あえて断った。

 数字がいい、これがいいとちょっと揉めたが、先生が一喝して黙らせた。

 ゼッケンをつけると、何を言われたわけでもないのに、

 みんな、互いの顔を見合って、頷き合った。

 

「お前達はチームだ」

 皆を見降ろし、腕組みすると、荒木先生が言った。

 体育の授業や部活で指示を飛ばす時と同じ、生徒達を励ますような、叱咤するような口調だ。

「これから運動会競技、鬼退治を行う。昼休憩前に行われる悪い鬼をみんなでやっつける競技だ。

 勝利したチームには、大ボーナス、500点が与えられる」

「他の競技、意味ねーじゃん、その点数」

 和也が茶々を入れる。

「俺からの指示は二つだけだ。一つ、周りの仲間に気を配れ。

 危ない奴がいたら、声を掛け合って助けろ。

 一つ、自分の頭で状況を判断しろ。自分に自信を持て」

 皆、頷いた。

 荒木先生は続けた。

「……そして、これが一大事だ。一つ、誰一人、欠けるな。みんなで帰るんだ」

「先生、指示、三つになってます」

「気のせいだ。検討を祈る」

 

 一同は体育倉庫を出ると、円陣になった。

 誰からともなく、手を重ねていった。

 みんな、頷き合った。

 声を張り上げた。

 

「行くぞっ! みんなっ!」

「おうっ!」




超能力は確かに強いけど、それだけで鬼ごっこを乗り切れるわけではない。
それを、私は伝えたかったのです(ぶっちゃけて言うとチート無双嫌いアンチ)。
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