能力者と一般人の違いを、ここでも表現してみました。
校庭の南西端。
体育と運動会の用具が詰め込まれた、桜ヶ島小第一体育倉庫。
学校で武器探しといったら、ここしかないだろう。
「各自一つ、自分の身を守れるものを探せ。あ、そこにいる二人は必要なさそうだな」
(能力者は万能だと思っているのね)
(実際は、できる事とできない事があるんだがな)
荒木先生が指示すると、男子達は倉庫の中を探し始めた。
今回の作戦では、女子達は別行動だ。
能力者は男女の差が小さいので除外する。
改めて見てみると、体育倉庫の中は、色んなものがあるものだ。
サッカーボール、バスケットボール、バレーボール……各種ボールの詰まった箱。
バドミントンとテニスのラケット、走り高跳び用のマット、白墨を引くラインカー、角コーン。
この辺りは、普段の体育の授業でも見覚えがある。
さらに、今は運動会の用具でごった返している。
綱引きの綱、長縄の縄、長い竹の棒は棒倒し用。
大玉転がしの声もあった。
「これで鬼を引いちゃうか?」
誰かが言って、みんな笑った。
スコップ、土を均すトンボ、ブルーシート、フラフープにピコピコハンマー。
「オレの武器、ピコピコハンマーっ」
「アホか。そんなもので鬼と戦えっかよ。俺はこの長縄の縄で、鬼を跳ばしまくる」
「くらえっ、必殺・フラフープ光線っ」
「――こらっ! お前ら、真面目にやれっ!」
ふざける皆に、先生が怒鳴る。
まだまだあった。
メガホン、マイク、スピーカー。
棚には、今日使う予感だったゼッケンが、綺麗に畳まれて重ねられていた。
みんなでやる予定だった、騎馬戦のハチマキ。
クラスリレーのバトン。
探っていくうちに、ふざけていた声は徐々に静まっていった。
みんな黙りこくって、用具を漁る音だけが響いた。
「……オレ、許せねえよ」
ぽつりと、誰かが言った。
「運動会、今年で最後だったんだぞ。もう、みんなとはできないんだぞ。滅茶苦茶にしやがって」
みんな、それぞれに体育倉庫の中を見回した。
大翔も見回した。
「……鬼なんて、ぜってぇ、ぶっ倒してやるんだ」
武器になりそうなものは、それほど多くなかった。
手頃な長さのスコップが数本。
棒倒し用の竹棒が数本。
これは長すぎるので半分に折る事にした。
テニスラケットが数本。
野球のバットが2本。
全員、それぞれ武器を分け合った。
一番威力がありそうなバットは、荒木先生と章吾が持った。
大翔はスコップを手に取った。
悠は竹棒を手にしたまま、まだ青ざめた顔をしている。
「なんで暗いのよ。ボス鬼はアタシ達が倒すのに」
「……」
「ま、アナタが黙ってるなら、深く追求しないけど」
「オレ達は鬼と戦うためにここに来た。だから、不安になるんじゃない」
狼王は悠の肩に手を置いた。
悠はようやく立ち直ったのか、顔を上げる。
「確かに、鬼は単独では強いかもしれない。でも、皆で戦えば、必ず鬼を倒す事ができる」
「そのために、能力者がいるのよ」
「……ありがとう」
二人のエージェントのおかげで、悠はようやく本来の表情に戻った。
「お前ら、これをつけろ」
武器が行き渡ったのを確認すると、先生はみんなに1枚ずつゼッケンを配った。
能力者は、あえて断った。
数字がいい、これがいいとちょっと揉めたが、先生が一喝して黙らせた。
ゼッケンをつけると、何を言われたわけでもないのに、
みんな、互いの顔を見合って、頷き合った。
「お前達はチームだ」
皆を見降ろし、腕組みすると、荒木先生が言った。
体育の授業や部活で指示を飛ばす時と同じ、生徒達を励ますような、叱咤するような口調だ。
「これから運動会競技、鬼退治を行う。昼休憩前に行われる悪い鬼をみんなでやっつける競技だ。
勝利したチームには、大ボーナス、500点が与えられる」
「他の競技、意味ねーじゃん、その点数」
和也が茶々を入れる。
「俺からの指示は二つだけだ。一つ、周りの仲間に気を配れ。
危ない奴がいたら、声を掛け合って助けろ。
一つ、自分の頭で状況を判断しろ。自分に自信を持て」
皆、頷いた。
荒木先生は続けた。
「……そして、これが一大事だ。一つ、誰一人、欠けるな。みんなで帰るんだ」
「先生、指示、三つになってます」
「気のせいだ。検討を祈る」
一同は体育倉庫を出ると、円陣になった。
誰からともなく、手を重ねていった。
みんな、頷き合った。
声を張り上げた。
「行くぞっ! みんなっ!」
「おうっ!」
超能力は確かに強いけど、それだけで鬼ごっこを乗り切れるわけではない。
それを、私は伝えたかったのです(ぶっちゃけて言うとチート無双嫌いアンチ)。