「…っと……かげん……さいよ」
ん〜…誰かの声がするぞ?この声は女の子の声………ははっまさか昨日は先輩の家に泊まったはずだし、女の子の声なんて聞こえるわけが……
「まった……わね………して……かしら」
………幻聴じゃない!やっぱり女の子の声がする。
とりあえず俺は、まだ覚醒してない頭を働かせながら起き上がった。
「あ、やっと気づいたみたいね。」
そして目を開けてみると、そこには短髪の美少女が立っていた。ナニコレ……夢???
そう思って頬っぺたを抓って見たが、普通に痛かった。うん………間違いなくここは現実だ。
しかし、そういえばこの子どっかで…………。
「君の顔………何処かで…………」
「?…私はアンタの顔に覚えは無いわよ」
「…っ!?」
思い出した、こいつラノベに出てくるキャラクターそっくりじゃないか!なんだコスプレか??しっかし、こんな堂々コスプレしてるなんて…この辺でイベントでもあるのか?
そんな事を考えてると、目の前のコスプレ少女はまた俺に話しかけてきた。
「それにしても、アンタ何でこんな所に倒れてたのよ?」
「…へっ?倒れてた??」
「…その様子だと、自分でも気づかない内にってこと?もしかして、酔っ払い??」
失敬な、俺はまだ未成年だしタバコや酒には手を出すつもりは無い。けど、どういうことだ?そもそも辺りを見渡してみても、この景色にまったく見覚えが無い。
少なくとも、俺の住んでいた町の近くじゃなさそうだ。太陽の高さから見ると、今はまだ午前中か?
先輩の家で遊んでた記憶も、全員そろって就寝した記憶もあるから移動させられたとしたら俺が寝てる間ってことか。…ん?こんな状況どっかで聞いたことが…
「もしかして…これが世に言うアブダクトって奴か」
ちなみに「Abduct」(Abduction)は誘拐、拉致などの意味だが、ここでいうアブダクトとはUFOや宇宙人などの超常現象……所謂オカルト的な話で用いられる。
つまり俺は寝ている間に名も知らぬ何者か(エイリアン?)に連れ去られたということだ。そして何らかの目的で今の場にいるのだ。それが何の実験なのか、そもそも実験なのかも分からない。果ては臨死体験かもしれない。
更にはこれが何者かの実験だとしてだ、少なくともコスプレをしている少女が目の前にいる以上その目的や真意は測りかねる。
その結論にたどりつき、嬉しさから力いっぱい拳を握りしめていると頬が緩んだ。それも当然、俺は昔からこういった類の話が大好物なのである。まさか自分でこんな事態を体験することになるとは夢にも思ってなかったわけだが、この状況……興奮するなというほうが無理と言う話だ。
俺がそんなこんな思考を巡らせていると、隣から何やら冷ややかな視線が送られてきていた。その視線を送ってきている相手は、もちろん先ほどのコスプレ少女である。
「アンタ、本当に大丈夫?何か色々と」
そして視線と共に送られてきた言葉は、明らかな哀れみ。何だろう……とても心が痛いデス。
とりあえず、落ち着け…落ち着くんだ俺!そうだ、こういう時は素数を数えるんだ。素数は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……俺に勇気を与えてくれる。
それに俺は何を隠そうM○R熟読者! こんな不思議体験、あの世界じゃ日常茶飯事だぜ!
まずは情報収集が先決かな……目の前の少女から、何とかここの場所だけでも聞き出したいところだが……あんまり不振がられるのもイヤだな。ここは俺が倒れてたと言う状況を踏まえて…ちょっとベタな手でも使ってみるかね。
俺はまず先ほどからずっと握り締めていた拳を解き、平静を整えてから少女に話しかけた。
「えっと…正直に言うとさ、俺昨日からの記憶が無いんだ。それでこの場所にもまったく見覚えが無いんだけど、良ければ教えてくれないかな?」
さて…どうだ!?これでこの子がお人よしなら、邪険に扱われることは無いだろう。
「はぁ…それはまた厄介ね。いいわ、教えてあげるからとりあえず場所を移動しましょ」
結論……この子マジいい子だわ。やってるこっちもアレだけど、将来この子が詐欺に遭わないか心配だわ。
「恩にきるよ…っとそういえば自己紹介がまだだったね、俺の名前は関口達也。君は?」
「私の名前は、御坂美琴よ」
マジかよ…あのキャラと名前まで一緒なんて。この子、相当役に入れ込んでるんだな。
そして俺達は、近くの喫茶店に入ることにした。ちなみに、あの場所を動く前に所持品を確認してみた所、特に盗られた物は無さそうだ。流石平和の国ニッポンだな。
席に着くと俺達は適当な飲み物を注文し、早速話を再開したんだが…………
「で、まずここは何処かって話だったわね。ここは童実野町よ」
「…え?」
初っ端から、とんでもない爆弾を投下された。
「だ〜か〜ら〜、ここは童実野町だって言ってるの!アンタもしかして、地理不得意なの?けど、ここはかなり有名でしょ」
ちょっと待ってくれ…そりゃ俺もその地名は知ってるさ。なんたって俺の大好きな遊戯王に出てくる地名だもんな。
だが待ってほしい、その地名が現実世界にあるわけ無いだろう。
「えっと…御坂ちゃんだっけ?君がアニメとかすごく好きなのは分かったからさ、そろそろ本当のことはなしてくんない?」
「はぁ?何言ってるのよ。私は最初から、本当のことしか話してないわよ」
「本当に?冗談だったら、もう笑いどころ過ぎてると思うぜ」
「アンタねぇ…」
途端に御坂ちゃんの身体から電気が迸り始める。えっ…これってまさか超能力!?じゃあこの子は本当に…
「全部本当だって、いってるでしょーがっ!!」
迸る雷鳴……嗚呼、俺オワタ。
「はぁはぁ……ちょっとやりすぎちゃったわね」
「ゴメン…俺が悪かった…だから許して」
幸い、御坂ちゃんから飛び出た電気は俺を軽く感電させるだけで止まってくれたみたいだ。なんだかんだで手加減してくれたらしい。更には、コレだけ騒いでも未だこの店から追い出されていないこの状況……奇跡としか言いようが無い。
しかし、最初はアブダクトだと思ってたけどちょっと毛色が変わってきたな…………ここまでの情報を鑑みて、ここは俺がいた世界でないことは明白である。
となるとここは何処だ??一番しっくりくるような呼び方だと、二次元の世界……とか?んで、童実野町があるってことは遊戯王の世界とか。でもそれだと、御坂美琴がここにいるわけないし………
うむ……まぁ考えても結論が出るような話でもないか。まぁ最悪、先輩達の大掛かりなイタズラって可能性もあるし、今はここが何処かと言う考えは保留にしておこう。
ならば話題を少し変えてみるかね…そうたとえば……
「そういえばさ、御坂ちゃんはデュエルとかするの?」
とかね?まぁやってることは無いだろうな……そもそも「デュエルって何??」的な話になること請け合いだっぜ!
「当然でしょ、言っとくけど私…結構強いわよ。て言うか、今日ここに来たのもカードを買うのが目当てだし」
へっ……マジで!?その切り替えしは予想外。
「へっ……へぇ~…そうなんだ。しかし、女の子のデュエリストなんて珍しいね」
「そう?最近じゃ結構普通じゃない?強ければ後々大人になっても有利にことが運ぶし、覚えておいて損なんて無いじゃない」
わ〜お……この世界じゃ、デュエルモンスターズはそんなレベルまで普及してんのか!?っとそういえば、遊戯の世界じゃ就職にもかなり影響するんだったか?
となると、やっぱここは遊戯王の世界のか?
「そういうアンタも、やってるみたいね」
「まぁね、そこいらの奴よりは強い自信はあるよ」
幸い、手持ちのデッキやら予備カードやらは大会用に全部持って来てたしね。リュックサックにボストンバック、この中に入ってるのは大半が遊戯王カードだ。
「へぇ…そうなんだ。ねえ、だったら今から私とデュエルしない?」
なんと…突然のお誘い、まぁ決闘者として退く理由は無いよな。
「いいよ、お手柔らかにね」
さぁ、この世界に来てから最初のデュエルだ。何のデッキを使うか、ちょっと迷うかな