中年指揮官と零細基地の日常   作:へなころ

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22話のアストラとスカウトの潜入の続きです。
スカウトさん、立ち絵は左利きっぽいですよね。
けどSDは右撃ち。
本小説では右利きとします。

時間が無く肉付けが甘々かも。
せっかくの見せ場なんですけどね。
読者様の脳内肉付けをお願いします(笑)


24.デュオ

基地の勝手口からアストラとスカウトが飛び出してすぐに塀に取り付く。

後ろを見ると仲間によって「ガシャン」と防御扉が閉じられ封印される。もう戻る事はできないがそれは望んだ事。後ろを見るのはこれが最後だ。

 

(スカウトさんとはずっと訓練してきた。失敗もあったけど大丈夫。やり遂げてみせるよ!)

(必ず敵ボスのハイエンドを倒して帰任してみせるわ)

互いに目を合わせてうなずくポジティブなアイコンタクトを交わす。

 

中庭のこの辺りに敵がいない事を確認して、塀を一足飛びに駆け上がる。

二人での遊撃を見据えてずっと訓練してきた。狙撃や情報収集の基本の高台や高所を確保する訓練として崖登りや木登り、フリークライミングなどをやってきたから、高さ5m程度の塀なんて無いも同じだ。

 

・・・

情報の通り、基地のこちら側の塀の外は敵がいなかった。

すぐに塀から降りて基地から離れる。二人ともカモフラージュマントを羽織り敵から視認される確率を下げる。

可能な限り敵との戦闘を避ける必要がある。

敵の本体は12時の方向から来ているので距離をおきながらその流れを遡上していく。

時折、逸れ部隊なのか警邏なのか散発的に敵が現れるが、地形の窪みやブッシュなどのストラクチャーに隠れカモフラージュマントでやり過ごす。

 

稀に隠れている数メートル先を敵兵集団が通り過ぎる事もある。

カシャン、カシャン、カシャンと規則正しい足音が通り過ぎる脇でマントを被り息を殺す。

見つかったら即射殺されてミッションは失敗。息を潜める二人を緊張が支配する。

 

・・・・

足音が消えてしばらくしてアストラがマントから顔を出す。周囲に敵兵は見えない。

(ふー助かった・・・)

『スカウトさん、敵はいません。進みましょう!』

 

「了解。行きましょうか」

 

二人は素早く立ち上がりマントを羽織り直して、潜入を進める。

立ち去った後には何事もなかった様に虫の鳴き声が残っているだけだった。

 

・・

・・・

・・・・

 

さらに何度か敵との接触を躱して進んだところ、鉄血の臨時基地らしき物を発見していた。

アストラとスカウトは離れたブッシュから、双眼鏡で確認している。

 

『スカウトさん、敵の基地でしょうか?ボスもここに?』

 

隣で双眼鏡を覗いているスカウトも答えは分からないようだ。

「どうだろうね。それらしき人形は見当たらないわね・・・」

 

『奇襲をかけますか?』

ここにボスがいるなら早い話ではある

 

「かけるにしても、ボスが視認出来なければ攻撃は出来ないわ」

「見える限りで守備兵は5体、少なく見積もっても10体は居るでしょうね」

今のままでは攻撃など不可能だ。ボスを探さないといけないが、建物などの遮蔽物がありこの拠点を調べるのは簡単ではない。

 

互いのやり取りでアストラが疑問を口にする。

『10体・・・今までの敵の数からは少なすぎません?』

 

「確かに・・・じゃあここは本拠地では無いのではないか?本拠地でないならここは何かしら??」

 

『何でしょうか・・・ん?、スカウトさん右奥のコンテナの向こう、そうそう』

 

「あれは・・・大出力のアンテナ・・・と言う事はここはジャミング基地かしら!」

 

『ですね・・・此処にはボスは居ないと仮定して先に進みましょう。位置はマッピング済みなのですぐに戻れます』

 

「よし、この基地を迂回して進みましょう」

 

隠れながらの侵攻は精神疲労が激しい。ここなら楽なのにと思うが気力を奮い立たせて歩みを進める二人

 

・・

・・・

・・・・

ジャミング基地を越えてからは、敵との接触がほとんど無くなった。

恐らく、ここまで見つからずに潜入して来る者はいないと推定しているのだろう。二人の移動速度も早くなる。

 

・・・・

敵の行軍を遡上してきたその先に敵の本拠地があった。

鉄血の本拠地はただの原っぱであり、とても本拠地と呼べるものではなかったが。

空中にフヨフヨ浮き浮遊式の自走砲台を従えている。明らかにまともではない出立ちの黒を基調とした女性。

その前に100体弱の鉄血の下級兵士が整列している異様な風景。

 

『アストラ、あの人形・・・』

 

「ええ、まともじゃ無いですね。外観の色調やロースペック人形を使役していることからボスと見て間違いないですね」

鉄血のハイエンドモデルがモノトーンを基調とした外観なのは有名である。

鉄血工造が会社として機能していた頃から変わらないデザインである。デザイナーの趣味はなかなか良い。

 

ボスを視認した二人はブッシュに隠れる形でカモフラージュマントを羽織り伏せながら狙撃準備を進める。

いつもと同じ、狙撃担当のスカウトはスポッターのアストラへ解析を依頼する。

『アストラ、隙を見て狙撃します。情報をお願いします』

 

「距離は400m、気温18℃、無風で時折左から右へ2mーーーーー」狙撃情報を伝えていく。

 

・・・・アストラが情報を伝えてからもしばらく狙撃が行われない。

 

スコープから視線を外さずにスカウトが狙撃しない状況を報告する。

『ダメね・・・隙が無い。敵兵が邪魔で射線を確保できないわ』

『継続してチャンスを待ちましょう・・・』

 

「了解」

 

・・

・・・

・・・・

 

狙撃準備を始めてからどれくらい経っただろうか、鉄血の本拠地に動きがあった。

徐々に出発していたロースペック人形が、突然一気に全員行軍を開始したのだ。

ちょうど、前線基地で乱入者が大暴れして鉄血側の想定が狂ったタイミングだったが、二人には当然そんなことは分からない。

 

『アストラ、狙撃のチャンスです。情報をお願いします』

 

「分かりました。ーーーーー」情報を伝えていく

 

情報を伝えてさあ狙撃というときに、アストラはまた思わずつぶやいてしまった。

「私たちの基地に・・・何かあったのでしょうか?」

狙撃を失敗してエルに反省させられたあのときと同じ。それにそんなこと言われたら基地が心配にもなる。

 

スカウトに一瞬動揺が走るが、あのときと違って動作は止めず呟き返す。

『トレフォイル、またかしら』

今日のトレフォイルはスカウトの肩にオブジェクトの様に止まったままである。潜入のため飛び回る事は自重している。

 

しかし、この一瞬が明暗を分けた。

 

さあ狙撃。引き金に指をかけたときにスコープの中の相手の人形、スケアクロウと目が合った気がした。

(気のせい?・・・・な訳ない)

スカウトの目が大きく見開き、

『アストラ!回避!!』スカウトが叫ぶ

 

両名は素早く後退をかけて身を隠し移動を開始する。同時に隠れ蓑にしていたブッシュが爆ぜる。

ボスによるカウンター攻撃を意味していた。

 

スカウトはカウンター攻撃の結果を見て相手の攻撃を評価する

(精度は低い。遠距離は不得手。ならば距離のある今決着をつけるしかない!)

考えた直後にアストラから情報がもたらされる。

 

「周囲に敵性反応。囲まれています。接敵まで1分・・・いや30秒」

 

『・・・分かったわ。十分よ』

状況の悪化に対してスカウトは冷静に判断する。

 

『アストラは周囲の敵を警戒して足止めをお願い。無理はしないで』

スカウトは要件を伝えて移動する。

 

(エル隊長に負けたカウンタースナイプ。今度は負けない)

自身のロングに編み上げたツインテールのリボンを触る。

今日はエル隊長から頂いたターコイズカラーのリボンを結んでいた。

負けてロストなんて出来ない。

 

身を晒すフェイントをかけると、自走砲の弾丸が通り過ぎる。

狙撃ポイントを素早く変えながらスカウトは考える

(やはり精度が低い、方向は変わらない)

(勝てる)

 

『よし』気を吐くスカウト。そして意を決して飛び出す。

 

・・・・

飛び出し左右にフェイントのステップを刻む。相手の遠距離射撃精度を勘案してだ。

敵の方角も距離もバッチリ予測通り。

フェイントに掛かる形で相手の砲弾が逸れる。

 

スカウトは右足を踏ん張りステップにストッピングをかける。

集音センサが捉えた足が砂を噛む「ジャリ」っと言う音、電脳に伝えられる右足の負荷。ジャイロが表示する速度。

全てが速度ゼロを意味する瞬間に変わると同時に膝打ち姿勢に移行する。それとともに半身のライフルの肩付け、頬付け、サイディングを済ます。

 

サイトのクロスヘアは正しくボスの胸のコアに合致していた。

スカウトは躊躇なく引き金を引く。

 

「カシュッ」というサイレンサー付きのライフルから射撃音と衝撃が肩と頬に伝わる。

それと同時に相手の浮遊砲台が光ったのが確認できた。

次の瞬間、頭部に衝撃を受けて後方に吹き飛ばされていた。

 

吹き飛ばされながらスカウトは呟く。

『トレフォイル・・・今度は勝ったのかしら?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹き飛ばされたスカウトは空を見つめていた。

 

(どんより曇った嫌な空ね)

ふと考えるが、考えられる事から死んではいない様だ。

素早く立ち上がり、半身の銃のボルトを操作してリロードし鉄血のボスを確認する。

(ハイエンドは・・・倒れている?)

 

いつでも射撃可能なように警戒しながら接近するが動く気配は無い。

真横まで近づきスケアクロウを見下ろすと、胸部のコアを完全に撃ち抜かれていた。

完全な機能停止を確認すると念のため動作できぬ様拘束措置を施す。これで欺瞞も防げる。

 

処置を施し一息ついたとき初めて勝利の気持ちが込み上げてきた。

(勝った・・・指揮官!作戦成功です)

 

戦闘と勝利の興奮が支配する義体。左頬をハイエンドの砲弾に抉られていた事にはアストラに指摘されるまで気づかなかった。

 




アストラとスカウトはデュオで見事にビクトリーロイヤル達成ですね。
アストラはまたやらかしましたが。(笑)

後始末は次回かな。
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