中年指揮官と零細基地の日常   作:へなころ

3 / 85
とりあえず、初期の部下が全部そろう3話です。


3.どうしてこうなった・・・

俺は今、美人上司と美しい女性人形に囲まれている。

しかし俺の姿勢は低い。なぜかって?

そりゃ、絶賛正座中だからだ。

 

目の前の美人上司はうつむき加減で、額に手を当て考え事をしているのか、肩を震わせている。

周りを取り囲む女子人形からは様々な視線を向けられている。

軽蔑、呆れ、興味、無関心・・・・。概ね、ネガティブな雰囲気である。

端っこのピンク髪の子なんて、まるで道端のゲ○でも見るような目である・・・

 

(どうしてこうなった・・・)

 

 

・・・・・

 

少し時を戻そう。

 

若い指揮官と揉めていた女の子を訳アリで引き取ってしまった。

女の子は黒を基調とした制服、ロングブーツに、臙脂色のベレー帽、グレーのロングヘアに大人びた年頃。

まあ、有体に言って美人。本当に美人だ。

しかし、メンタルモデルに相当ショックだったのか、ハンカチで顔を抑えて泣き続けている。

 

(参ったし、やべえだろ。これ)

子供のころ皿割ったとき、母にどう言い訳するか。そんな思い出が蘇ってくるが、はっきり言ってその状況は負け戦である。

何かできることもあるわけではなく、その時が訪れてしまう。

 

「待たせたな、ルース指揮官。貴官の部下の---」

言葉を発しながら、美人上司が部屋に入ってくるが、状況を一瞥し、動きが止まる。

上司の動きは止まったが、残念なことにそのあとからフル装備の女性人形が続々と入ってきてしまう。

 

いるはずのない女性人形、そして泣いている。目の前の男からは焦りの表情がにじみ出ている。

この状況に対する答えは多くはない。

 

「ルース指揮官・・・貴様、何をしている」

 

明らかに、疑いの目を向けられている。変な言い訳はまずい。

 

『はっ。先任の指揮官殿と親睦を含めた結果、人形を譲っていただけることとなりました』

嘘は言っていねえ。

 

「譲り受ける?・・トレードか。貴様は何を渡した」

 

『はっ。コアを30個と。非常にありがたい話でした』

よくわからんが、そう言うしかねえ・・・。

 

一瞬あっけにとられた後、美人上司の顔はみるみる怒りに形相に変わっていく。

「コア・・・30!貴様、PDAを出せ」

 

素直に渡すと手早くチェックを始める。

「これから研修で説明し、使うコアを勝手に・・・」

つぶやくように漏れた声を聞き逃さない。

 

「ルース指揮官?貴様、分かっているのか??」

美人上司の視線が自分に向くが、明らかに冗談で済ませられる雰囲気ではない。

 

(やべえ、やっぱりやべえ・・・でもクビは勘弁)

(昔、東洋の戦友に聞いた謝罪で済ますしかねえ。これが最強と言ってたことを今は信じる!)

 

俺は、静かにその場で正座し、頭を垂れるのだった・・・・

 

これが冒頭前の話である。

 

・・・・・

 

正座し、叱られた子犬のような顔を見せるおっさんを見て、美人上司が落ち着いたのか、ため息を一つ吐く。

「まあ、平等かは別にして手続きは正規であり、こちら側もコアの説明や振り込みの連絡をしなかった事実はある。しかし貴様の対応については検討が必要だ」

「相手のジャスティン指揮官にも事情を確認する。貴様は部下になる戦術人形との挨拶を済ませておけ」

そう伝えたヘリアントスは、会議室から出て行った。

 

(アイツジャスティンとか言うの?こっそり俺のいつかぶっ殺すリストに書きこんどくからな。)

(しかし、どうすんの?この空気?)

(まあ、しょうがねえ。始めるか。)

 

そのまま正座したまま自己紹介をナイルは始める。

 

『初めましてだな。この度指揮官に任命されたナイル・ルースだ。新任だが君たちに苦労は掛けるつもりはない。これからはよろしく頼む』

もうすでに苦労を掛けられそうな気が満々のこの状況で、抜け抜けと挨拶する。

こういのは、ビビったら負けと昔から言われている。上司はピンチでも涼しい顔で言い放つ豪胆さが必要なのだ。と自分に言い聞かせる。

隙をついたところを畳み掛ける。

『君たちのことも知りたい。自己紹介してくれ。・・・じゃあ、そっちから』

 

急に振られて、一瞬戸惑うが、すぐに自己紹介を始める。

 

 

「私はPPS-43。お逢いできて光栄です。私は軽いのが取り柄であります」

ピンク色のショートヘアに編み込まれた長いポニーテール、黒を基調とした制服に、髪の色と同色のミニスカート。制帽の上のアクセサリはなんだ??

彼女は自分の半身であるサブマシンガンの特徴を交えて紹介した。しかし、その目は完全に見下すようなジト目である。先ほどから変わらないところを見ると、好感度は最悪なのだろう。

 

「初めまして指揮官。指揮官のご指示であれば、イングラムM10は喜んでお受けしますよ。」

黒色を基調としたヘソ出しのタンクトップにショートパンツ。黒髪おさげの少女だが、SMGのM10を持つ姿勢は見るからに悪い。

(指揮官の指示なら喜んで受ける?まさか変な意味で言ってないよね?)つい、ちらりと泣いている女の子を見てしまう。

口調は穏やかであるが、何か隠しているような雰囲気である。指揮官に興味深々な感じ。

 

「はじめまして、指揮官様。FF FNCです。チョコ食べます?」

チョコ棒をかじりながら紹介する少女。少女らしいスカートをはいた服装である。半身のアサルトライフルを持っていなかったらピクニックに行くと言っても疑わないだろう。

しかしなぜチョコ・・・本当にくれるようには思えないほど夢中に齧り付いている。指揮官よりチョコに興味深々な感じ。

 

「ニイハオ、指揮官。56式自動歩槍1型だよ。全ての敵を殲滅してあげるね!FNCちゃんとはおやつ仲間だよ」

黒髪のロングでおさげ。髪を結ぶゴムには大きな赤い星。中国銃をアピールしているが珍しと思う。

なるほどFNCとは仲良いのね。メモメモ。

好感度は良くも悪くも無さそう。

 

「わたくし、92式拳銃が着任しました。指揮官のもとに配属されて光栄であります」

黒のトップスに紫のミニスカート、そして若干紫がかったボブカットの髪。

HGを持つ彼女は真面目な雰囲気がある。指揮官を見る目はどこか冷たい。やはり言葉とは裏腹に好感度は最悪なのだろう。

 

「アストラです。よろしくお願いしますね。」

さっぱりした挨拶である。赤いツインテールに青いリボン。そして・・・海賊なようなデザインの洋服であるが、その大きな胸元をこれでもかと強調している。

しかし、外観からの雰囲気とは違い落ち着いた雰囲気を感じる。好感度は悪くない感じ?

 

「私はSPAS-12!指揮官の堅牢な盾となりましょう!」

SGを持った薄いブルーのツインテールの女の子である。柔かに話すその姿から指揮官の俺にに興味深々な様子。

しかし、しっかりとした肉付きであり女性アスリートのような雰囲気を出している。

アストラに負けない豊満なバストであるが、強調させない実務的な服装は対照的である。

「私のことはサブリナと呼んでください」

(自分から愛称を指定してくるとは珍しいが、問題なかろう)

『分かった。サブリナ、よろしく頼む』

色々話を聞くと、軍用ベースの義体であるとのこと。

(軍用?燃費悪いのかな。そんな訳ないか。)

 

「トレフォイル、確かにこの人なの?……トレフォイルに認められるなら、本当はまともな人なのでしょう・・・」

サラッとディスってきているのは、スカウトライフルである。トレフォイルとは、肩に乗せているペットの小鳥のアンドロイドらしい。

何?ペットじゃなく保護者?知るかバカタレ。

どうせなら、ペットじゃなく戦場で便利なドローンかなんかにしてくれよ。

好感度は悪そう。

 

「初めまして、指揮官・・・いや、ほかの子は紹介しなくてもいい、私一人で十分よ。」

過激な自己紹介で始まったのはMGを持つLWMMGである。

なにやら、S地区の支部からの転属らしい。現地で一通り訓練は受けており、実戦も経験済み。ダミー人形も3体は動かせるとのこと。

なるほど強気な紹介も理解できる。まあ話した感じ、紹介のような自己中感は感じ無い。まとめ役としても十分だろう。

好感度は良くも悪くも無さそうだ。

 

『LWMMGか。呼びづらいのでニックネームをつけたい』

 

「・・・了解しました。お任せします」

 

『では・・・。 ライト でどうか』

ビクリと彼女の体が震え、間を置いて真顔で返してくる。

 

「その名称は受け入れられません」

 

(任せといて受け入れられないとかあるのかよ・・・)

『では、頭文字のLからとり エル ではどうか』

懇切丁寧に命名理由をつけて再度聞く。

 

「了解しました。今後エルとお呼びください」

 

エルの過去については・・・まあお察しください。

 

では最後の隊員

 

「62式正式に入隊!指揮官、初めまして!…ちょっと、何か言ってよ!?」

聞かない、見ない銃だな。形式から中国??とか思っていたら何か言えと催促された。

 

『62式とはあまり聞かない銃だ。生まれは中国か』

ふと興味から聞いたのが運の尽きだった。

すぐに56-1式からチャチャが入る

「指揮官やめてよ。中国はこんな欠陥銃を作らないわ」

「私は欠陥銃じゃない!私が使ってトラブルは起こしていない。指揮官!中国銃と同じだと思わないで。」62式が憤慨する。

「じゃあ、そのテープ止めはなによ」と56-1式が再度返す。

「これは・・・日本の伝統よ!」

「伝統?ふふっ」すかさず56-1式が煽りを込めて返す。

「うるさい!じゃあ、、、生活の知恵よ!」

その後も二人でギャーギャー騒いでいる。

(そうか日本の銃か。日本も年号を形式に入れることが多いんだったな)

(で、伝統?生活の知恵?)いやここはツッコむのは厳禁。流そう。

 

両名は今にもつかみかかりそうな状況である。

(あかん。触れてはいけないところに触れてしまった)

『すまない。出自を間違えた私が悪かった。56-1式にもすまなかった』

指揮官に謝られた二人は、なにか言いたげではあったが、とりあえず落ち着いた。

(いかんな・・・両名に仲直りの場を設けんと、あとあとまずくなるな。課題は山積みだな。)

 

あ、一人忘れていた。

『すまん。君の自己紹介も頼む』

横で泣いていた女性に声をかける。

 

「こんにちは指揮官様、G36式コンパクトです、拾って頂けてうれしいですわ。」

半身であるG36Cを持った彼女は俺の前に来て跪いて手を伸ばした。

(前の指揮官と何があったのかはわからない。後々ゆっくり話をしよう)

 

そう思いながら、手を取り立ち上がろうとしたその時。足がしびれて立てないことに気づいた。

『あ・・れ』

間抜けな声が出ただけでそのまま彼女に胸に倒れこんだ。顔から。

豊満な胸に体重を預けながら、考えた。

(やわらかいし、大きいし、下着も黒、じゃねえ!これはあかん。完全にセクハラ。完全にセクハラ。けど本当に事故だって)

部下の皆が見ている前である。対応を間違えるとえらいことになる。頭をフル回転である。

そっと、胸から顔を起こし、努めて冷静に謝る。

 

『正座で足がしびれていた。すまないことをした。』

(完璧だ。ファインプレーだ。勝った)

 

「指揮官様・・・。皆の前では恥ずかしいです。二人の時でよろしいですか。」

顔を赤くし、もじもじしながら話す。

(おい~。その発言や態度はアウトや)

効果は抜群だ。俺のファインプレーがなかったことになった。

周りを見渡せば、益々視線が厳しくなっている。指揮官の好感度は完全に地に落ちていた。

 

 

(どうしてこうなった・・・・)




LWMMGは別の作者様(SPEC様著 S10地区司令基地作戦記録)より設定拝借しました。
LWMMGは低レアで数多く手に入るので、副官殿の指導を受けて他地区に転属していくという勝手な設定で。
(LWMMGを出す予定なかったけど、上記作にハマってしまったので、採用させていただきました)
エルはS10地区の育成でLv70設定です。
G36Cはジャスティン指揮官が使っていたのでLv10。
その他の人形は新造なのでLv1です。

そんな設定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。