中年指揮官と零細基地の日常   作:へなころ

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こんにちは。今回は久しぶりにS10基地からPx4さんに登場いただいております。
SPEC様著 『S10地区司令基地作戦記録』からの登場です。
SPEC様の作品はいいですぞ。この作品より圧倒的有名ですので紹介は烏滸がましいですが、読んでいない方はぜひ読んでみて欲しいですぞ。
私のお気に入りから飛べます。
SPEC様の作品を読んで執筆活動をやる気になりましたので、勝手に心の師匠にしています(笑)


30.嵐再び

サブリナと本社の第11中距離支援小隊だった3人、今は第三小隊の3人が司令室に来ていた。

「指揮官!映像通信使わせて〜」と4人で入ってきたのが始まりであった。

個人持ちのPDAでも可能だが他基地との勝手な通信は禁止にしたので司令室に来たのだ。

備え付けの大型モニターで指揮官の見ている前でやろうと言う事である。

 

『で?誰と通信する訳だ?』

 

「S10のPx4さんだよ〜。パーティー用のピザと飲み物を頼みたいんだよね。まずは見積貰うんだよ」

サブリナが明るく伝える。通信のアポ取りは済んでいるらしい。

 

『S10のPx4だと!?』オフホワイトだが俺の借金生活のスタートは奴からだ。この会議は席を外せない。

『俺も同席するわ』

 

「分かったよ〜でも指揮官は見てるだけだよ〜」一度やったから余裕のようだ。

 

テキパキと相手の連絡先を入力してコールをかける。

一見のほほんとしたウチのサブリナだが流石戦術人形、機器の取り扱いはお手の物だ。

数コールで相手が出た。

 

「こんにちは、R-15基地のサブリナさん」映像の向こうに紺のフード付きコートを羽織ったブロンドのショートカットの美人が映し出される。

(彼女がPx4・・・サブリナの記憶で見た人形だな)

 

「あら?今日はお客さんが多いわね。はじめまして。R-15基地のルース指揮官」そう言って俺の方を見て丁寧にお辞儀をする。

(コイツ・・・俺の事を知ってやがる・・・。どこまで知ってるか分からんが油断は出来ないな)

 

『ああ、はじめまして。S10のPx4さん。R-15基地指揮官をやっているナイル・ルースです』

『今度、S10の指揮官にもご挨拶させてもらいますよ。ウチのサブリナが()()()()()()()()()()()()()()ね』軽くプレッシャーを掛けとく。

 

「いえ、それにはおよびませんわ。これは個人事業ですから」

「ナイル指揮官も副業なさってましたよね。それと同じですよ」にっこりと伝えるPx4

 

『・・・・・』

(サラッと言うが、なぜお前が知っている??)

知らない者たちが見たらなんて事のない光景だが、互いに軽くジャブを交わす。

素性が丸裸にされている分、ナイルの方が押され気味ではあるが。

 

「ちょっと〜。指揮官は見てるだけだよ」サブリナがほっぺを膨らませてクレームをつける。

「Px4さん、こんにちは。今日はパーティー用のピザと飲み物を追加で頼みたいんだ」

「また大食い大会やるのと、人数が増えたので前回より多めかな。前回のあまりもあるから適当に見繕って欲しいかな」

サブリナがさらさらと要領よく伝えるのを見てナイルは驚く。

(サブリナも成長しているな)

 

「それならピザは100人前追加に飲み物は前回の消費から考えて、20人分ってところかしら」

「やはり大食い大会分、普通のパーティーより割高にはなっちゃうかな。30万円位は見て欲しいな」

Px4がサラサラっと暗算して概算回答する。

 

「基地の皆、約10人から参加費1.5万円集めて・・・」

「指揮官、15万円位出して欲しいかな。ダメかな??」

サブリナが申し訳無さそうに聞いてくる。

 

『パーティーで勝負しろと言ったのは俺だからな。それくらいなら出すよ。問題無い』

うん、料金も悪くないしね。正式見積は欲しい旨伝えとく。

 

『そうだPx4さん、こんな細々したやりとり毎回かったるいでしょ。仕入れ先教えてもらえれば今度から自分たちでやりますよ』と俺はダメ元で聞いてみる。

Px4は真顔になり溜息をついて答えるが、要約すると「商人が仕入れ先を教える訳ないでしょ。バカなの死ぬの?」って事だった。手間隙が掛かったとしても1ミリたりとも手の内は見せないタイプらしい。

 

そんなこんなしていると指揮官のPDAに呼び出しが掛かる。クリスティーナ指揮官の急ぎの相談らしい。

ナイルが後は任せたと退席する時にPx4が声を掛ける。

「ナイル指揮官お疲れ様です。ご覧の通り私の商会はフェアをモットーにしております。行き違いはあったかもしれませんが、ご入用の際は是非お声がけ下さい」と頭を下げる。

 

『・・・・そうだな、その時は頼む』少し考えて回答し退席した。

 

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ここからは雑談タイムだ。Px4にしても情報集めの大切な時間である。

『へ〜!ハイエンドを倒したんだ』

「そうそう、アストラちゃんとスカウトちゃんが二人で潜入して撃破してきたんだよ」

『相手はスケアクロウだったよね。物量で押し切る戦術が得意なのね。その代わり近接戦闘は不得手。か』

「そう。基地の中まで敵が入ってきてギリギリだったんだ。けど本社のネゲヴやR-13のカルカノ達が間に合ってなんとか押し返せたんだよ」

『ギリギリだけど頑張ったんだね』

『そうそう、もし敵のハイエンドで狩人(ハンター)ってヤツを見かけたら連絡欲しいな』『うちと因縁があるのよね。指揮官さんにも伝えといて』

「ハンターね。分かったよ〜」

 

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『それで、後ろの3人は?』紹介されていないので、こちらから催促しておく

「そうだね。紹介するね。本社から転属になったライフル人形たちです」

PSG-1、M21、OBRたちが自己紹介していく。

今回の歓迎会の主役だけどサブリナのお手伝いを買って出たらしい。

「M21ちゃんとOBRちゃんはハイエンドとの戦いで頑張ってたけど怪我しちゃったんだよ。大変だったんだ」

頑張ったんだけどね〜と明るく話すM21だったが、一方のOBRは急に泣き出す。

 

「え!?どうしたのOBRちゃん。どこか痛いの?」サブリナが慌て出す。

 

「体は痛くはないです。実は私の借金が・・・・」急に身の上話の相談を始めるOBR

 

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『なるほど、要約すると指揮官がなんとかしてくれると言った話を反故にしたと。そう言うわけね』

一瞬、Px4の目に鋭さが宿るが誰も気づかない。

『OBRさん、そのやりとりの映像はあるかしら。確認が必要だわ』

 

OBRが二つの映像を通信機器に送る。

 

一つ目はあのスケアクロウ攻防戦の時の映像であった。

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吹き飛ばされ重傷のOBRにウェルロッドが駆け寄り、すぐに修復装置へ送られる。

修復装置の前での指揮官とのやりとり。

借金を心配するOBRに"お前な。金なんて後で何とかなる"と言う指揮官。

"本当ですか指揮官。あたし、何でもやります!"と安心するOBR。

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二つ目はごく最近

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"指揮官、借金なんとかしてくれる件はどうなりましたか"

"へ?俺がなんとかする?・・・いや、知らんが。俺も大変なんだしお互い頑張ろっか!"

固まっているOBRを置いてスタスタ行ってしまう指揮官

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うーん、微妙な判定。と考え込む4人。

「Px4さん、指揮官もOBRちゃんも言い分はあると思います。丸く収める案は無いですかね」サブリナが相談を持ちかける。

 

ちょっと考えて妙案が浮かんだらしい。

『・・・・有るわね。恨みっこ無しのAI判定が』

『あれなら四角いものもまーるく収まるんじゃ無いかしら』

Px4が提案してきたのはグリフィンのAI判定システムだった。

人間と人形、どうしてもトラブルがゼロとはいかない。どうしても人間の方が権限が強いので人形が涙を飲む事が多いが、それだけでは人形の不満が溜まってしまう。それを解消するシステムがAI判定だ。社内で行われる簡易的な民事裁判のようなものである。

これで決まった事は社の正式決定になるので従う必要がある。結果については恨みっこ無しと決まっている。

 

「へ〜こんなシステムがあるんですね。OBRちゃん、やってみよっか」ね、と明るく話すサブリナ。

OBRも「これでダメなら諦めがつきます」と元気になる。

 

『じゃあ、AIの申請は明日提出してみてね』と伝えて見積出来たら連絡します。と通信を終える

 

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通信を終えたPx4は呆れ顔をしていた。

 

『まだ人形を泣かせてるのね・・・・』相変わらずだ、やはり人間は本質的に変わる事は出来ないのか。マスターの爪の垢でも飲ませてやりたい。

しかしかわいいサブリナの仲間を泣かせたままは我慢できない。見積外だが一肌脱ぐと決めた。

そうと決めたらすぐに映像通信を飛ばす。相手は本社の財務管理課だった。

 

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コール後にすぐに繋がる。相手への直接回線だから当たり前だが、それを持っている事から両者の親密さが見てとれる。

 

「S10のPx4さん、こんにちは」映像の向こうはP38課長代理だ。胸元には貴賓あるネックレスが見える。Px4が卸した品だった。

うん、商品も気に入ってくれているようで何より。

『こんにちはP38課長代理、本日はお友達の相談でお電話しました』

それを聞いた課長代理はくつくつと笑う。

「いつも他人からの相談なんですね。Px4さんの人柄が現れていますね」

悪党を自認しているPx4だし他人からも誤解されやすいが、本当は優しい人形である。それをストレートに告げられこそばゆくなる。

『いえいえ・・・本日はAI判定の使用のご相談なんです』『R-15の知人からでして・・・』

R-15と聞いて、目つきが変わる課長代理。それを見て(やはり目をつけられていたか)と認識するPx4。

『確証を送付しますね』と映像を送る

 

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「確かに微妙ですね」紅茶をひと口啜り端的に述べる課長代理

「これならAI判定の使用は特に問題はありません」

「ただし、AI判定の使用の最終承認は社長なので、そこは私にはどうにもできませんよ」と告げる課長代理。

 

『大丈夫です。社長から先は運を天に任せます』

(ふふふっ。私の情報から推察するに社長まで届けば十分。勝利確定よ)

 

『そうそう課長代理、新しい商品が入りましたわ。早速いくつか"サンプル"を送らせて頂きますね』

最後に二人にとって楽しい商談を進めるのだった。

 

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翌々日、社長の元にOBRのAI判定の稟議書が届く。

映像を見て即判定を下す。

 

「却下」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「社長講評」

AI判定を使うまでも無い。明らかな指揮官の約束が見て取れる

OBRの借金500万円はルース指揮官の支払いとする。以上。

 

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後日、この稟議の結果を一方的に届けられたナイルが発狂する様子をR-15基地で見られたと言う。

 




Px4さんが来てタダで済むわけ無いよね。と言うことでフラグ回収でした。
まあ、概算見積で安心して途中退席したナイルさんの落ち度でしょう(笑)
でも、一番の悪人は社長だと思っています。(笑)
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