中年指揮官と零細基地の日常   作:へなころ

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ちと頑張って書いてみた。
なんか、3話でおわんなかった。
おかしいな。

ナイルさんサブリナと二人で頑張るみたいですよ。


50.決死隊

鉄血のハイエンドの襲撃だと!?

『クソッ!どうする!?』

 

ふと、ヘリアントス上級代行官と助教の女上級指揮官に目をやるが、両名共にどこかに連絡をしているようで積極的にイニシアチブをとるつもりは無いらしい。

 

(上役といえども荒事、想定外には弱いか・・・まあ仕方ないだろうな・・・)

自分でやるしか無いか。まずは戦力の確保だ。

基地内で使用する業務連絡用のインカムを用いてサブリナを呼び出す。

 

『サブリナ。応答しろ。サブリナ』

 

「指揮官!?何があったのかな?急に非常灯に変わったけど。みんな混乱しているよ」

 

『緊急事態だ。装備をかき集めて待機中の全人形をつれてこっちにこい』

 

「ん!?分かった。すぐに連れて行くね」

 

端的に伝えると直ぐに伝わったらしく通信が切れる。流石サブリナだ。

後はこっちだが・・・俺がやるしかねえのか?やりたくねえけど。

PDAをいじりインカムを会議室のスピーカーに割り込ませると同時に息を吸い込みデカイ声を出す。

 

『お前ら!オタオタしてんじゃねえ!』

参加者の老若男女がナイルに注目する。

 

『なんとかするしかねーだろ?とりあえず人形は装備も含め全員ここへ呼んだ』

『ヘリアントス上級代行官、救援などの手は無いのですか?』

とりあえず、会の幹事にリカバリープランの有無を聞いとく。

 

「うむ。本社に連絡は着いた。救援部隊が30〜40分で到着するとの事だ」

 

『他は?』

 

「いや・・・それしかない・・・」それだけかよ?と言外に言われて苦い顔をするヘリアントス。

 

『分かりました。30〜40分とか弛んだ事言ってないで、20分で来いと怒鳴っといてくださいよ』

10分の誤差とか舐めてんのかよ。こっちは死にそうなんだよ!

 

『みんな。救援が来るなら生き残れば勝ちだ。死ぬ気で乗り切るぞ』

 

そう言葉に出すが、俺には絶望感が溢れている。

何故かって?鉄血のハイエンドはそんなに甘くないからさ。

アイツらは定石通り対応していたら必ず負ける。そう言う勝負を仕掛けてくる連中なんだ。

うちの基地が襲われた時、本当に偶然が重なってギリギリ勝つことができた。

偶々先に索敵できてジャミング前に救援を呼べたこと。偶々スカウト達のデュオの訓練をしていたこと。偶々二人が見つからず潜入出来たこと。偶々ハイエンドが近接戦闘が不得手だったこと。これらのラッキーが重なって偶然勝てただけだ。もうひと勝負していたら十中八九潰されている。

今回の襲撃だって救援を呼ばれるのは想定済み。恐らくそれを踏まえてすり潰す策を弄している。

絶対にね。

 

まずは生き残るための防衛線を考えないと・・・

『えーと・・・助教のTAC-50さん。施設のMAPをスクリーンに映してくれます?』

 

上級指揮官の戦術人形は分かりましたと言ってスクリーンに映す。

MAP全体を見回して少し考える。

うーん、偶然ではあるがこの会議室が守備をするには一番か・・・

『よし!ではこの会議室入り口で迎え撃つぞ』

 

「指揮官〜。お待たせ」

ちょうどそのタイミングで、サブリナたちが会議室に集まってきた。

 

ナイスタイミングだ。

『人形も他の指揮官も急いで装備を整えろ』

『ヘリアントス上級代行官、予備弾薬とかはありますか?』

 

「隣が倉庫になっている。弾薬もある筈だ」

 

なるほどなるほど。よし目についた端から適当に人員を見繕おう。

『その端から5名の人形で全部この部屋に運んでくれ。人手が足りなければ何人か適当に連れてってくれ』

 

・・・・

防衛準備は出来たけど、まだ足りない。

『ヘリアントス上級代行官、この建物は比較的新しいですが対人形防衛装備があったりしませんか?』

 

「うむ。この施設はカテゴリⅢの防御レベルで作られている。それがどうした?」

 

-----

対人形防衛装備。それは人形による攻撃を減衰させる防衛方法及び機器である。

戦術人形が生まれて以来、その戦闘力の高さから重宝されているが逆の防衛についても開発が進められている。

ある範囲の人形を稼働不能にするDS(Doll's Sealing)兵器などもあるが、自軍の人形は有効に使いたいため敵軍を弱体化させるだけの方法もある。それが対人形防衛装備である。

端的に言えば、敵軍の無線や指示系統にジャミングや物理的な無線封鎖を行い、自軍系統は基地の通信施設や専用回線を用いて制限なく指揮を行う事で戦術的優位を取るシステムである。最近では重要設備にはほぼ採用されている。

鉄血がよく用いる可搬式ジャミング装置を使った戦術もこれに該当する。

-----

 

『だとすると、鉄血兵はこの建屋内で活動不能なはず・・・・いや・・・』

『上級指揮官!まさかイントゥルーダーは電子戦に強いとかありますか?』

 

問われた女性上級指揮官はスラスラと答える

「鉄血工造のSP914 Intruderは電子戦に特化したハイエンドモデルですね。電子戦の専門家と言えるでしょうね」

 

『クソッ。そう言うことか。この基地のコントロールはすでにイントゥルーダーに奪われている・・・』

コントロールが奪われていると言うことは、人形防衛装備は我々に向けられていると考えた方がいいだろう。

偶々短距離通信で繋げられからマイナスがないだけで、少々距離が離れると指示は不可能な可能性が高い。

しかし、ナイルはニヤリと笑う

 

『逆に言えば、コントロールを取り返せばそれだけで勝てるとも言える』

『TAC-50さん、コントロールルームはどこにありますか?』

 

投影されたMAPの一室が光る。

 

「コントロールルームの位置はMAP上に光点で示す部屋です」

TAC-50は淀み無く直ぐに答える。

 

(いい人形だな。爪の垢をうちの人形達に飲ませたいくらいだよ)

っと、余計なことを考えている時間は無い。

コントロールルームは決して近くは無いが、こちらの方が十分早く到着出来るだろう。

 

『サブリナ、俺たちはデュオでコントロールルームを奪取して人形防衛装備を稼働させるぞ。1分で準備しろ!』

 

「いつでも行けるけど、指揮官は危ないよ!」とサブリナ

「ルース指揮官。無茶だ。危険すぎる」とヘリアンさん

 

『人形だけだとアウトな可能性が高い。誰か行く必要がある。ハイエンドに勝つにはやるしか無い』

『であれば、言い出しっぺの俺ですよ』

話しながら準備は進める。

M4に予備弾は5マガジン150発、それにサイドアームはブローニングハイパワー

HEグレネードにフラッシュバンとスモークグレネード、簡易的な防弾ベスト。いつも通りの装備だ

 

行く前にあの馬鹿に一言言っとく。

『おいジャスティン!ここの防衛は任せるからな。口だけじゃなく働いてみせろよ』

 

「フン。貴様に言われるまでも無い。早く死んでこい。死に急ぎ野郎」

おーおー死地に向かう者に早く死ねと言うか?クソ野郎。

 

『俺らが出たら扉は封鎖しろ。行くぞサブリナ』『GO!』

掛け声と共にフル装備のサブリナと飛び出して行く。

 

「ま、待て。ルース指揮官」

後ろから引き止める声が聞こえる。

悪いけど待てませんよ。ヘリアントス上級代行官。

 

・・

・・・

・・・・

 

『ハアッ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・・』

(あれ?M4ってこんなに重かったっけ?今日は体調悪いのか?)

威勢よく飛び出してサブリナのスピードについて行くが、程なくして息が上がり足が動かなくなる。

入社して配属された頃のサブリナとの速度の違いに驚く。訓練の時に余裕でぶっちぎってたのが今は逆に余裕でぶっちぎられる。

あれ以来所属の戦術人形達は鍛錬を欠かさなかったのに対して、事務仕事や借金に掛かりきりで鍛錬を怠っていたナイルとの差がここで明確となっただけだ。

まあしかし指揮官の能力としては体力はさほど求められるものではない。グリフィンの指揮官という仕事に順応した。とも言える。

 

(くそっ。帰ったら毎日走り込みだ)

ナイルはそう決意するが、恐らく二度とサブリナに追いつくことは叶わないだろう。

身体能力で戦術人形について行くなど人間技ではないのだから。

 

 

「指揮官!大丈夫?速度落とす?」

と声を掛けるが、同時に焦りが湧いてくる。当初想定の速度が出せていないからだ。

このままだと敵が先に到着して防御を固めてしまう。

私一人で行く?ダメだ。防衛とハックの両方同時は無理だ。

 

『ハアッ・・・ハアッ・・・』

指揮官は完全に息が上がり酸欠のようだ。まもなく足が止まるだろう。

ダメだ。これは無理だ。サブリナがそう判断して指揮官をおんぶする。

 

『サブリナ・・・子供扱いするな・・・』

ナイルが背中で呟くが、ナイルをおぶってもサブリナは戦術人形のスペック通りの速度が出せている。明らかにこちらの方が早い。

 

「子供扱いじゃなくて、迷惑だからこうしてるの!」

「もう敵が先にポイントについていると思う。接敵予想ポイントの手前で下ろすからね」

 

廊下を駆け抜けて階段を駆け上がり、あとひとブロックで目的地、と言うところで廊下の前方に鉄血兵が見えた。

視認と同時にサブリナが偶々横にあった給湯室へ飛び込む。恐らくみつかってはいない。

 

「やはり先を越されちゃったね。指揮官どうする」

ナイルを下ろして、半身のSPASを準備しながら質問する。

排除か隠密行動か、二択だろう。

 

とりあえず呼吸は落ち着いてきた。

『ふ〜〜、しんど。極力バレないように近づいて一気に制圧しよう。一度バレたら足を止めずに行くぞ』

『サブリナが前で俺が後方警戒で行くぞ』

 

「オッケー!」

 

『GO!』

掛け声と共に飛び出す。目的地へ向けて進み・・・

曲がり角から先を覗くと鉄血兵が数名いる。

 

「ここから直線だけどアイツらは排除しないと行けないわね」

 

『フラッシュバン投擲後、ダッシュで距離を詰めるぞ。俺の速度を考えてくれよ』

 

「え〜〜。帰ったらみんなに言うからね。祝勝会で反省だよ!」

獲物を見る目で見つめてくるが勘弁だよ。ほんと。

 

『祝勝会やるためにも共に生きて帰るぞ』

そう言ってフラッシュバンを一つ投擲する。

 

シュバッという音と閃光が通路の向こうから見えた瞬間に二人とも飛び出して駆け出す。

一体だけ動くのが見えた。人形の影で効きが悪かったららしいが、関係なく駆け寄ったサブリナがセミオートで連続して数発撃つ。

 

轟音と共に絞り(チョーク)無しのシリンダーそのままの銃身からバックショットが放たれる。

狩猟用の大粒径の散弾が広角に放たれ、動きを止めた鉄血兵をめちゃくちゃに破壊する。

と同時に、ナイルのM4にて倒れた鉄血兵の頭を撃ち抜き始末する。

 

『GO!GO!GO!』

足を止めずに走る。

コントロールルームの扉が見えたところで、ガードとヴェスピドが飛び出してくる。

と同時に、背後からもリッパーとヴェスピドが出てくる。挟撃だ。

 

サブリナはシールドを展開して、バックショットを乱射するがガードの盾に阻まれて中々有効打が与えられないが、

「硬いやつにはこれだよね」と数発サボットスラグ弾を装填して射撃する。

SPASより放たれたサボットスラグ弾はガードの盾を破壊してそのまま頭部に着弾、電脳もろとも頭部を粉砕する。

3体のガードはあっさり沈み、そのまま散弾で盾を失ったヴェスピドを蹂躙して行く。

何発か銃撃のダメージを受けるが微々たるもので、問答無用で皆殺しにする。

 

一方、後方のナイルは苦戦していた。

適当なバーストで撃つが、曲がり角をうまく使う敵に命中させられない。

リロード前にHEグレネードを投げ込み敵を釣り出し、やっと二体始末する。

 

『くそっ。時間がねーな』

 

リロードと完了後に牽制射撃を加え、曲がり角の手前にスモークグレネードを投擲する。

スモークによる視界の遮蔽により、エラーを出させて時間稼ぎする。

 

『サブリナ、行くぞ』

 

「うん」

 

二人して走り、コントロールルームに飛び込む。

しかし、コントロールルームにも敵が3体ほどいた。

距離的には完全に近接戦闘(CQC)だ。

サブリナはシールドからバールを取り出して目の前のリッパーの頭部を粉砕する。と同時に左手で隣りのリッパの顔面を掴み握力を持って粉砕する。

レスラーのりんごを握り潰すパフォーマンスの如く、内部の液体を撒き散らして鉄血兵の頭部はクシャクシャに潰される。

 

「指揮官はやらせないよ・・・」

呟く言葉に優しさのかけらも無く、狂気に満ちた見開いた赤い瞳が怖い。

怖すぎるので何も見なかったことにしとく。

 

ナイルは近接したヴェスピドがライフルを向けてくるのを跳ね除けると同時にブルートから昔頂いたナイフをコアに突き立て、停止させる。

(あぶねー。ライフルじゃなくてパンチでこられてたら負けてたな)

 

『よし!サブリナ!コントローラにアクセスして奪い返すんだ』

 

「了解!」

答えると共に有線でコントローラにアクセスをかけると同時にネットワークの海に意識が沈んでいった。

 

・・・・・

「ここがネットワーク空間か・・・」

急ぎ鉄血の接続ポートを見つけ出し破壊する必要がある。

 

『サブリナ、急いでくれよ。長くは持たない』

どこか遠く、空の彼方から指揮官の声がする。恐らく義体に語りかけているのが私の意識にとどいているのだろう。

急がなければ。

 

駆け足で進むと、強度の高い攻性防壁により道が閉ざされている。恐らくこの先にポートがあるのだろう。

ギリギリなんとかなりそうなので、強引に突破を試みる。

 

・・・・

「くうっ・・・・」

ボロボロになりながらもなんとか敵を退け攻性防壁の突破が叶った。

"メンタルモデルに深刻なダメージがあります。至急修復装置でベリファイを行ってください"とのコーションが視覚モニターに投影されるが、相手をしている暇はない。とにかく前に進まないと。

 

ヨロヨロと進むと広い空間に出る。しかしポートらしきものは何処にも無かった。

「な、なんで?」

無いなら隠されているはずだ。

空間内のチェックを始めるがメンタルの損傷が大きくなかなか捗らない。

 

やばい、指揮官が!指揮官が死んじゃう・・・・どうしよう・・・・

私が最後に見つけるだけなのに。どうしてどこにも無いの?・・・

 

サブリナは不甲斐なさからポロポロと涙を流していた。

それでも現実は残酷だ。無いものは無いのだ。

 

『ぐうっ・・・サブリナ、まだか?』

ただならぬ指揮官の声が聞こえたが、サブリナはただ立ち尽くすしかなかった・・・

 

・・

・・・

・・・・

ネットワークに接続したためか、サブリナの義体が目を開いたまま動きを止める。

(よし入ったか。頼むぞ)

 

ナイルは自動ドアの制御盤を破壊してドアを開かなくする。

あまり効果は無いが、秒単位の時間は稼げる。

ドアの正面方向に遮蔽物を設けて侵入の阻止を試みる。

M4も予備はあと120発程度だ。どこまで持つか・・・・

 

そんな時に、開かないためドアが叩かれて破壊される。

と、同時にナイルは発砲してドアを破壊した2体の鉄血兵を蜂の巣にする。

それを見た他の鉄血人形はドア横の壁に隠れる。

何発か牽制射撃を加えてからサブリナに向かって叫ぶ。

 

『サブリナ、急いでくれよ。長くは持たない』

 

何発か互いに牽制しあったところで、ナイルはフラッシュバンをドアの向こうに投げ込み、続いてHEグレネードも投げ込む。

『最後のグレネードだくらいやがれ』

 

フラッシュバンにより身動きの取れなくなった鉄血兵がもろにHEグレネードを受けて、3体を稼働停止そして他数体に重軽傷を負わす。

続いてスモークグレネードを入り口に焚き、敵の侵入を阻止する。

 

(くそ。サブリナはまだか)

煙が晴れてきて、また銃撃が開始される。

もうM4の弾も無くなってきた。やばいな。

リロードをして身を乗り出して牽制しようとした時に、エネルギー弾がナイルの右肩を貫き、そのまま後方の壁まで吹き飛ばされる。

 

『ぐうっ・・・サブリナ、まだか?』

 

ナイルにとって運が良かったのはリッパーのサブマシンガンタイプの弾だったことだ。

これがヴェスピドやイェーガーのライフル銃だったら、普通に即死、良くて右腕の喪失だっただろう。

だがしかし、エネルギー弾は生体に対してのダメージが大きい。ナイルの右肩の肉や骨は焼かれており銃創以上のダメージをもたらしている。

 

すぐに落ちているM4にを拾い左手だけで乱射するが、全く真っ直ぐ飛ばない。

運良く鉄血兵一人を倒すことができたが、そこで弾切れ。

右腕が動かずリロード不可のため、サイドアームを抜き応戦する。

続いて突入してきたリッパーに9mmパラベラムをお見舞いするが左手での射撃のため急所を狙えず捗らない。

応射され遮蔽物ごと吹き飛ばされる。

 

『クソッ。最後の一瞬まで諦めねえぞ』

ブルートのナイフを取り出して立ちあがろうとした時に、複数の鉄血兵が銃を突きつけ見下ろしていた。

 

『ここまで・・・かよ・・・』

『サブリナ、最後まで諦めるなよ・・・・』

 

肩からの出血により意識が遠のいたところで、複数の射撃音が響いて事態は終わりを迎えたのだった・・・・




普段の倍くらいの長さになっちった。
ナイルさん、死んでもうたのか?
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