中年指揮官と零細基地の日常   作:へなころ

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もうちょっとかかりそうです。
1話で済まそうとしてたのが2話になってしまった。
副官のG36Cが暴走しているようです。


55.副官のご乱心

(しかし、今朝のバズーカは何だったんだろう)

 

あれから警備員や病院スタッフ、最後はグリフィンの関係者まできて色々調査していた。

そりゃ朝っぱらからひとんちの病院で空砲とはいえバズーカをブッパしたらそうもなろう。

俺と言えば聞き取りはあったけど、婦長以外には知らぬ存ぜぬで押し通したけどね。

まあ、婦長から聞いてるんだろうけどさ。

知らんもんは知らん!

 

・・・・・

午前の検査やリハビリがひと段落した頃に一人の来客、お見舞いが来た。

 

「指揮官様、お体の加減はいかがですか」

お辞儀をしながら挨拶をしたのはグレーに近い銀髪、ちょっとぼんやりした目つきの可愛らしい子、G36Cだった。

いつもの戦闘服ではないが、黒を基調とした可愛らしい服装である。もちろんミニスカートだ。

「指揮官様、お洋服の替えを持ってきましたわ」

 

『おおG36C、久しぶりだな。見舞いありがとう』

『替えの服も助かる。気がきくな』

 

G36Cが挨拶を終えて近づいてくると同時にカーテンをシャっと閉める。

G36Cと二人だけの簡単な密室が作られる。

そしてその足でベッドの縁に座り上半身を起こしたナイルにしなだれ掛かる。

(え?ちょ。いきなり近いよ)

 

「指揮官様、G36Cはお会い出来ず寂しかったのです」

そう言うとナイルの胸に顔を埋めて深呼吸をする。

(ああ・・・満たされますわ)

 

・・・・・・・

G36Cのメンタルには「指揮官様ポイント」もとい「ナイルポイント」のようなパラメータが生まれていたようだ。

ナイルのそばに居て数値が満たされていればナイルに対する愛が溢れるだけだが、ナイルのそばから離れると減少しある一定値を割り込むと精神が不安定になってしまう。

数値が減れば減るほどヤバくなるようだが詳細は不明だ。

(仕事など納得して離れる場合は大丈夫)

 

高いにしろ低いにしろ、数値がどうであれナイルにとってはしんどい思いをするだけなので、被害の種類と程度の違いだけではある。

・・・・・・・

 

今回の事件でナイルと離れ離れとなったG36Cは徐々に増える不安感に苛まれていた。

ナイルの部屋の掃除と称して忍び込んでは、残り香を吸ったりナイルのベッドに横になったりして紛らわしていたが、ついに限界に達してしまったようだ。

指揮官の励ましついで、いや指揮官に甘えついでに励ましを行う算段で来たのだった。

そんな事情など知るよしもないナイルは困惑するだけなのだが・・・

 

 

「指揮官様、今回は大変でしたね。私が残って身の回りのお世話をしますわ」

しなだれ掛かったまま、笑顔でささやき、そしてナイルの胸に当てた手をしたの方にゆっくりとスライドさせる。

 

「もちろん、()()()()()()やらせて頂きますわ」

 

いやいや、どちらの方だよ。

ナイルはあわてて掛け布団を手に取り、G36Cの手が到達するより早く下腹部から下を隠す。

(ヤバいだろこの状況、誰かなんとかしてくれ。)

そんな願いが通じたのか、援軍が来る。カーテンの外が俄かにさわがしくなっていた。

 

「ルースさん、お昼ご飯ですよ〜。・・・あれ?寝ちゃったかな」

と配膳係りのおばちゃんがナイルの昼飯を持ち帰ろうとしたタイミングでカーテンの中から声が掛かる。

『起きてます起きてます!食べます食べます!』

そんな焦った声から一呼吸置いてシャっとG36Cのにこやかな笑顔と共にカーテンが開けられる。

 

(あっぶねえ、ナイスタイミングだよ昼メシ)

 

・・・・・・

ナイルはベッドの上に渡した簡易テーブルの上に配膳された給食を食べ始める。

チラリと横を見るとベッド横に座ったG36Cが笑顔で見つめてくるが・・・大人しくなったかな?

(まあ、飯食うだけだから出る幕は無いだろう)

 

『っつう』

(やっぱりまだ右肩が自由にならないな。メシを食べるのもリハビリだな)

なんて考えていたら、右手に持っていたスプーンをひったくられる。

『え?』と間抜けな声を出して左方向に目を向けるとスプーンを奪った犯人のG36Cが相変わらずにこやかに見ている。

 

『G36C・・・何を?』要領を得ず問いかけてしまうが、その先のことを考えたくなかったのかもしれない。

 

「指揮官様、食べさせてあげますわ」そう言ってベッドに腰掛け左手で持ったスプーンで料理をナイルの口へと運ぶ。まるで幼児に料理を食べさせてあげる母親のように。

 

『ひっ・・・』

思わず悲鳴がでかかるが堪えて、G36Cから離れるように右手にずれて距離を置く。ナイルの本能がそうさせたのだろう。

 

「はい!あーん♪」しかしそう言ってG36Cはずいっとベッドの上をにじり寄ってくる。

 

『ま、待て・・・一人で食べられる』そう言ってもう一歩右手にずれるが、ベッドの柵に当たりこれ以上は先はない。

 

「あーん♪」G36Cも再度ずいっとにじり寄る。肉食獣のようにロックオンした獲物を逃がすつもりは無いらしい。

ベッドの上は丁度二人でシェアする形になっている。

妖艶な笑みを浮かべるG36Cであるが、これが真夜中の二人であれば大人の情事が想像されるだろう。しかし、日中の人が溢れる多人数部屋の病室である。そのような笑みをかけられる側は色んな意味で恐怖を感じるしか無いだろう。

 

逃げ場のなくなったナイルは多少の抵抗を見せるも無条件降伏に追い込まれ、差し出された料理を食べざるを得なかった。これ以上の抵抗はより悪い結果しか生まないだろう。これからの第二ラウンドでの巻き返しに全てを賭けるようだ。

 

・・・・・

「美味しいですか?指揮官様」

 

『あ、ああ・・・うん?』

 

「あら、指揮官様ごめんなさい。左手では慣れなくて・・・」

二、三口食べたところで、スプーンがほっぺに当たる。

 

『いや、いいよ。慣れない事なら大丈夫だ。スプーンを返してもらえるとありがたい』

降って沸いたチャンスに攻勢にでるが、無駄な抵抗であった。

 

「ふふふっ。汚れたほっぺを綺麗にしないと」

と言ってナイルの顔に自身の顔をゆっくり近づけて"ジュルリ"とナイルのほっぺに付いたソースを舐めとる。

「では、続きを食べましょうね。指揮官様♪」

 

『ひ、ひぃ』ナイルは愛情に振り切れたG36Cに恐怖していた。

(なんなんだよこれ。今まで以上にやばいぞ)

(頼む。誰でもいいからこの状況をなんとかしてくれ。頼む)

 

再びどうにもならない状況のなかで祈るナイルだが、奇跡などそう簡単に起こるわけがない。

起こるわけないのだが奇跡が起きた。主に悪い方にだが。

 

・・・・・・・

ドサリと音がして持っていた荷物が床に落ち、入っていたお菓子が床に転がる。

いつの間にかベッドの前に現れた少女が荷物を落とし、ベッドの上の二人を見据えながら口を開く。

 

「こんにちは、副官さん。指揮官と何をやっているのかな?・・・かな?」

 

立っていたのはサブリナだった。

ハイライトの消えた赤い瞳を見開き真っ赤に輝かせており、うっすらとした笑顔にも見えるが全く笑っていない。

ほんの少し首を傾げる少女は今まで見たことがないほどの怒りを内に秘めているようだった。

 

(ひいいいいい)

(この状況をなんとかしてくれとは願ったが、そっち方向はダメでしょ)

 

転がり続ける状況に頭を抱えるほかないナイルであった。




以前から使っていますが、「かな?かな?」はひぐらしのレナちゃんからオマージュ的な拝借ですね。
筆者はひぐらし好きでしたね。ゲームから入ったのでニワカですが。
レナちゃん推しでしたね。

さてさて、次はサブリナ vs G36Cですかね。
指揮官愛に溢れる二人がどうなるのか。
作者は書き切れるのか。
心配です。
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