中年指揮官と零細基地の日常   作:へなころ

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配属記念パーティ回です。
ナイル指揮官の知らぬところで進む陰謀
勘違いから始まる強烈な一撃。
君は生き残ることができるか??(初代ガンダム風)

お金の話が出てきますが、計算とか面倒くさいので以降含め現代の日本円で表記します。

今回から数話ですが、ゲストに出席いただいております。

SPEC様著の「S10地区司令基地作戦記録」より Px4 さんが参戦です。
調達屋を営まれている美人さんです。(笑)
SPEC様の作品を読まれるとより楽しめると思いますので、ぜひぜひ!


7.地獄行の配属記念パーティ

着任してからの戦術人形のスケジュールは概ね決まった。

まあ、本社基地での訓練と基本変わらない。むしろ、配属後を想定して組んでいたから当たり前なんだが。

朝のランニング、射撃訓練、戦闘訓練、自主訓練。これを小隊任務の合間にやる形になる。

まあ、特に悩みなくスケジュール立ては完了する。

 

引っ越しも荷物は少ないのですぐに終了。

しかし、戦術人形の宿舎を見たがありゃ酷いぞ。ダンボールや木箱とか・・・

思わず、多目的活動隊のクリスティーナ指揮官に苦情を言ったんだけど、

「それをなんとかするのが、前線基地指揮官の腕であり、甲斐性ですよ♪」

とにこやかに言われてしまった。

(マジか、そんなことまでやらせるのかよ。この会社は。)

宿舎の改良は後々考えていこうと思う。

 

ーー

ーーー

ーーーー

 

多少あったけど、今日が6日目。配属記念パーティーの日だ。

定時後に続々と会場のホールに人形が集まる。

うちの小隊の人形だけでなく、多目的活動隊の手隙メンバーとクリスティーナ指揮官も参加している。

よく見ると、グリフィン本社の広報部も数名来て忙しそうに準備しているようだ。

(うんうん。賑やかな方がいいぞ。でも本社広報部?生中継??たかがパーティーに大袈裟だな)

「指揮官様、本当に楽しみですね」と横のG36Cが微笑みかけてくる。

『そうだな。色々あったけどここがスタートラインだ。頑張っていこうな』と返す。

 

・・・・

「はーい、皆さん。ご参加ありがとうございます。R-15前線基地の配属記念パーティーを開催しまーす」

幹事のサブリナが開始の挨拶をすると、パチパチと拍手が鳴る。と同時に皆に乾杯の酒が回される。

 

「シャンパンは高額すぎて買えないので、美味しいスパークリングワインにしました。」サブリナの説明に笑いが起こる。

「はい、では乾杯の挨拶をお願いします。当基地のナイル・ルース指揮官です。」

『ーーー』

細かく書くと長くなるから要約すると、戦術人形のみんな研修期間ご苦労様、よくついてきてくれた。皆の成長が素晴らしい。これからが本番だから頑張ろう。多目的活動隊のクリスティーナ指揮官一同、ありがとうございました。ってところかな。

『では、R-15前線基地の将来を祈念して、乾杯!』今度は盛大な拍手が鳴った。

 

しばし歓談となったので、クリスティーナ指揮官と話す。

こんなに人形が明るい基地は久しぶりだ。とのこと。

「ナイル指揮官は人形達に愛されていますね」だって。いやいや、好感度低いっすよ。って言ったら

「ふふふっ。女心が分かっていませんね〜♪」だとよ。うっせーやい。どうせ女房に逃げられてますよ。だ。

 

「はい。では余興を始めまーす」

(お!サブリナがドヤ顔をしながら話し始めたって事は内容に自信があるんだな)

 

「本日の余興は、大食い大会でーす」ニコリと笑う。

 

『・・・・・・』

『・・・・え?』

『なんて?』

一瞬、聞き間違えかと思ったが、どうやら間違いではなかったらしい。

は?大食い大会??余興の域を超えてねえか?

 

・・

・・・

 

サブリナの合図と共に、家事用ロボがテーブル配置を変更する。

参加選手用に長机が横一列に並べられ、前方の机が片付けられる。

立食パーティーの会場の一角に、観戦しやすいようにオープンな空間が作られる。

「本日の食材は・・・ピザでーす。」ニコニコ顔でサブリナが伝える。

(イタリア出身だからな。自分の好みなんだろうな)

 

サブリナの発表に合わせて、場に不釣り合いな大型機械をフォークリフトが運び込む。

 

『・・・・・・』(なに?あれ??)

 

「今日の大会の為に買っちゃいました〜。可搬式業務用連続ピザ窯「ピザ屋さん」でーす。」

 

『ぶ〜〜〜』俺は盛大にビールを吹き出した。

一分間に三枚焼く能力があるとか、機械の仕様なんて聞いてねえ。

R15前線基地(うち)はピザ屋じゃねえ!

いくらしたんだよ。金は誰が出したんだよ。

 

『G36C・・・なんだか・・・分かるか?』混乱のあまり、無表情でうわ言のように要領の得ない問いかけをするナイル。

優秀な電脳を持つG36Cが聞かれたことを咀嚼して調べ出す。タブレットを取り出し素早く確認する。

「指揮官様、サブリナから本部へ稟議書が回されており、決裁が通っております」

なになに?なんの決裁?え?

 

()()()()()()()()()()()

 

いや、待ってくれ・・・当の本人はそんなお願いした記憶がないんだぜ。

「指揮官様の承認は口頭承認となっているようです。映像の確証が添付されております。開きますか?」

口頭?映像?添付ファイルを開いてみる。

 

ーーーーーーーーー

「幹事やりまーす」『いいぞ、任せた』

「指揮官、()()()()()()()()()」『おう!男に二言は無い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()もやっていいかな?」『おう!()()()()()()()()()()()()()()()()()

ーーーーーーーーー

(おい。あの時の口約束かよ)

 

『ちなみにいくら分の申請がされているのか』

 

「最大で年収1年分、新任指揮官の年収は約1000万円ですが、最大金額で申請されております」

(年収分?冗談・・・だよね。)突然の出来事でプルプル震えだす。

 

『てか、本社の財務管理課は何考えている。流石に通さねえだろ。こんな稟議書』

 

「しかし・・・体裁は整っているので、決済された今となっての文句は難しいです。指揮官様の承認があるので逆にR-15基地(こちら)側の管理責任を問われるかと・・・」

G36Cは苦しそうにナイルに伝える。

 

(で、いくら使ったんだ???なになに)

『よ、予算の執行状況は…998万円支払い済み!!!』

『ほぼ残ってない・・・・』

 

(いや、まだだ。まだ終わらんよ。今すぐ中止して返品すれば多少なり回収可能だ)

今すぐ中止だ。と口に出そうとして、俺は言葉を飲み込んだ。

 

(しまった。本社広報部と多目的活動隊のクリスティーナ指揮官がいる)

ここで止めたら組織的にまずい。一度自身が承認し本社の稟議が通った事を突然止めたパワハラ指揮官の烙印を押されてしまう。

(くそっ。本社広報は宇宙中継の生放送か!)

 

第三者からのそのLIVE情報は確実に本社に広まり、軽くは無い処分に至るだろう事は想像に難くない。

自分が身動きの取れない状況に置かれている事を認識するナイル。

(くそっ。こんな搦手をうちの人形が出来る訳ない)

(裏で絵を描きやがった奴は、どこのどいつだ!)

 

やり場の無い怒りを心の中で叫んでも、答えてくれる者も事態が好転することも無かった。

もはやナイルには川に落ちた木の葉のごとく、流れに身を任せる事しか出来なかった。

 

・・

・・・

・・・・

 

時を二週間ほど遡る

 

サブリナは困っていた。

イタリア生まれでパーティーが好きな性分もあり、配属記念パーティーの幹事を買って出たのはよかったものの、いいプランが決まらない。

仲間の多くは偶然食事好きが集まっていたので、仲間(大食い仲間)の賛成もあり早食いや大食いみたいな事が出来ればいいな。と思っていた。

しかし、その様な事を実現出来る伝手を持っておらず、ただの夢物語に過ぎなかった。

(ただ普通に立食パーティーをやってもつまらないよね)

(やっぱり、私たちならではの事をしたいよね。相談に乗ってくれる人、居ないかな)

 

宿舎で木箱に座っていると、エル隊長が目に入った。その時ふと閃いた。

(エル隊長、S地区からの転属だったよね。誰か知り合いいないかな。聞いてみよう)

 

『エル隊長、相談があります』

ーーーー(かくかくしかじか)で、色々な物を調達できる伝手はないでしょうか」

 

「その伝手は・・・ない事は無いです」顔を顰めてネガティブな感情を込めて回答を返す。

 

訳ありそうなので聞くかどうかサブリナは迷ったが、思い切って聞いてみることにした。

 

『ぜひ紹介頂けますか?』

サブリナは強くエルに伝えた。

 

エルは迷っていたが、

「・・・分かりました。紹介しますが、正直あまり関わらない事をお勧めします」

「後で先方からサブリナに連絡入れるように伝えておきます」

 

・・

・・・

・・・・

 

その夜、サブリナの端末に見知らぬ番号から映像通信の着信があった。

エルとの話があったので、恐らくその紹介頂いた方だろうと急いで出て見ると、フードを目深に被った戦術人形が映し出される。

 

「こんばんは、サブリナさん。LWMMG(妹ちゃん)、ああ今はエルちゃんか。の紹介で連絡した、Px4ストームです」

 

『妹ちゃん?』聞き慣れない隊長の愛称に思わず聞き返す。

 

「ああ、昔のエルちゃんの愛称。そっちでは落ち着いて小隊長やってるって?信じられないよね。昔は色々あって大変だったんだよ」

「話が逸れちゃった。パーティーの相談がしたいって聞いているわ」

 

『ーーーー』

サブリナが経緯や希望を話す。

 

「なるほどね。事情は分かったわ」

「その規模で大会を開くと業務用調理器具が必要ね。その規模の物だと通常納期が半年、普通に手配して金額は200万円は必要ね」

 

『2・・200万円ですか・・・しかも半年・・・』

目を見開いて驚くサブリナは思わず呟いた。

『やっぱり、夢かなぁ・・・』

 

「納期は置いとくとして、予算はどうするつもりだったの?」

 

『実は、これを提出しようと・・・』指揮官年俸前借りの稟議書を共有する。

今度はPx4が目を見開き、頬をひくつかせる。

 

「流石にこれは・・・通らないと思うけど」

 

『通らないのは分かっているんです。でもそれで財務管理課の人と話が出来ますし、予算の相談もできるかなと・・・』

俯き加減で薄っすら目に涙を溜めているのが分かる。

 

「・・・分かったわ。通るの前提の見積もりと代案も考えておくわ」

「その稟議書はいつ出すの?」

 

『明日の夕方に出そうと思っています』

 

()()()()()ね。じゃあ、明後日以降には結果が分かりそうね。結果が出たら連絡下さいね。お客様。」

 

・・

・・・

・・・・

 

Px4は通信を切ると溜息をつく。モニタの向こうのサブリナが一瞬見せた悲しい表情を思い出す。

(本当に最低な男のようね・・・)

 

机の上にはファイルが開かれている。そのページにはナイルの個人情報が詳しくまとめられていた。

(ナイル・ルース 44歳 男 7年前に配偶者と別れる。 20歳前後の娘が2名・・・・)

そしてその下には、ナイルの入社後の素行が記載されていた。

 

曰く「先輩指揮官から気に入った戦術人形を力ずくで奪い取った」

曰く「その人形の胸を大勢の前で揉みしだき、辱めた」

曰く「業務時間中に2体の人形を自室に連れ込み、欲望のはけ口とした」しかも、その1体がエル(妹ちゃん)だという話だ。

自分の娘と同じくらいの年齢設定の人形に欲情するその男に吐き気すら覚える。

ふと元S地区支局長(あのクソ野郎)の顔が浮かぶ。二度と思い出したくもない自分を道具(使い捨て)として扱い身も心も弄び続けた男

メンタルモデルが軋むように痛む。

(二度とあんな思いをしたくない。そしてだれにもさせたくない。)

 

『ジュルッ』と音を立てて、唇を舌で潤す。

薄暗い部屋の中でプクリとした小ぶりな唇が光っており、艶かしさが殊更増している。

『フフッ。R-15基地の指揮官(ゲス男)さん。少しお仕置きが必要なようね・・・』

 

翌日から、ゲス男を地獄行きにする下ごしらえに動き出すのだった・・・




うむー

ちょっとPx4さんが悪女系になってしまいました。
サルベージで再投稿ですが、その折はSPEC様にご迷惑をお掛けしました。反省!
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