中年指揮官と零細基地の日常   作:へなころ

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前話に続いて、SPEC様著の「S10地区司令基地作戦記録」のPx4さんにご出演頂いております。

きっちりナイル指揮官が下ごしらえされちゃう回です

なんか、出来損ないの半沢直樹みたくなってます(笑)
どうしてこうなった?俺の日常ってこんなのとは程遠いですがね。汗

P38の趣味はオリジナル設定です。


8.影で爽やかに吹く暴風1

サブリナとの通話を終えた翌日、Px4は朝からS10前線基地の地下の事務所に居た。

 

地下の事務所、それは副業を執行する彼女の城であった。

 

 

 

グリフィンの全社共通の始業時間から少し経ち業務が落ち着いたであろう頃、ある相手に映像通信を送っていた。

 

数コール程で相手が通信を取る。

 

「もしもし・・・おはようございます。S10のPx4さんから通話なんて珍しいですね」

 

モニタの向こうには、大人びて落ち着いているが可憐さを残した私服の女性が現れる。

 

 

 

電話の相手は、グリフィン本社の財務管理課のP38課長代理である。

 

彼女は低レアリティの戦術人形でありながら優秀な副官成績を収め、本社へ栄転した経歴をもつ。

 

戦闘用のコアを取り外し、事務方として働き始めてからもその能力を遺憾無く発揮し、メキメキと頭角を表した。

 

結果、人間の課長の補佐。という肩書きだがその実、現在の管理業務は全て彼女が取り仕切っている実質の財務管理課のトップである。

 

 

 

『こんにちは、P38課長代理。今日は少し相談と提案がありまして』Px4が会釈をする。

 

『会社の友人から稟議が通るか相談がありまして、見ていただけますか?』

 

サブリナに見せてもらった稟議書を共有する

 

「拝見します」と一言述べてP38が読み始める

 

 

 

・・・

 

「正直、難しいですね」と言うが、ハッキリ言って門前払いの扱いだろう。

 

「この稟議書は基地運営において、緊急時に指揮官の給与を担保に物資を購入する事を想定したものです。申請額はさておき今回は想定外に近い申請になりますからね…」

 

分かりきった回答を丁寧に当たり障りなく説明してくるP38は、やはり優秀なのだろう。

 

 

 

『そうですか。R-15前線基地の指揮官は、所属の人形に報いたい気持ちが強いようでしたのでね。出来ればと私も思いまして・・・』

 

「・・・・・」静かに目を瞑り紅茶を啜るP38。まあ、答えは変わらないのだろう。

 

 

 

・・・

 

(やはりね。一筋縄じゃいかないか)

 

そう思うPx4の机の上にはファイルが開かれている。そこにあるのはP38課長代理の個人情報だ。

 

彼女は元アイドル志望の人形。そして彼女の趣味は・・・・アンティークアクセサリの収集。

 

(けど、いつもの収集先は…アッパータウンの実力の無いボッタクリ業者と。フフッ)

 

 

 

『ところでP38課長代理、私が()()()を副業で営んでいるのはご存知と思いますが、最近面白いアンティークアクセサリが手に入りましてね』

 

雑談の内容を聞いた途端、一瞬ピクリと肩を震わし、目を薄っすらと開ける。続きを促しているようだ。

 

その反応を見てPx4はにこやかに微笑んで続ける。

 

『これが初めに言った提案の内容。第三次大戦前の1990年代、2000年代の正真正銘のブランド物ですわ』と伝えて商品情報を共有する。

 

それを見たP38は目を見開いて釘付けとなった。

 

 

 

・・・・

 

P38はS10前線基地所属のPx4が、よからぬ店を開いている情報を掴んでいた。

 

しかし、所詮前線基地の人形風情が開いている場末の店。本社の街の足元にも及ばないおママごと。そう思っていた。

 

ところが、彼女が見せた商品情報はその考えを粉々に打ち砕くものだった。

 

(こ、こんな上物は初めて見ましたわ・・・)ゴクリと唾液を飲み込む音が頭蓋骨格を通し耳の集音センサに届く。

 

P38はPx4が次に発する言葉を待っていた。自分が完全にイニシアチブをとられていることにすら気づけていなかった。

 

 

 

・・・・

 

P38が商品への興味を隠せなくなっている姿を見て、Px4は最後の仕上げに入る。

 

『詳細な商品リストと価格表を送りますわ。それと、()()()()()()を送らせていただきますね』

 

 

 

「商品サンプル?」想定外の言葉にP38が聞き返す。

 

 

 

『ええ。もちろんサンプルは本物のアクセサリですよ。写真だけでは不安ですよね。サンプルなので返却は必要ありません。不用でしたら処分頂いて結構ですよ。』

 

『P38さんはネックレスが似合いそうなのでいくつか見繕い送りますね。』

 

P38がアクセサリの中でも特にネックレスが好きなこともリサーチ済みである。

 

画面越しにP38の顔が緩むのを見てPx4も微笑んだ。

 

 

 

『ところで課長代理、お友達の稟議書、詳細確認頂きたいのですがいかがでしょうか。』

 

言われて、P38は改めて読み込む。少し考えて一つの答えを出す。

 

 

 

「・・・そうですね。体裁も整っていますし、指揮官の強い希望も承認の確証映像から分かります。決裁可能と考えます」

 

 

 

『本当ですか!それは良かった。友達は今日の夕方に稟議書を回すと言っていました』

 

 

 

「分かりました。私が直接受けるように準備しておきますね」

 

 

 

『助かりますわ。では、こちらもサンプルを本日中に発送しますね。明日には着くと思います』

 

その後いくつか事務的なやりとりをして、通信を終了する。

 

 

 

(さて、主食の下ごしらえは完了。それにP38課長代理は()()()のお得意様になってくれ切っても切れぬ縁が出来るだろう。フフッ、一石二鳥ね。)

 

『今日の準備は、明日の収穫のために。ってね』

 

 

 

・・

 

・・・

 

・・・・

 

(さて、予算の目処はついた事だし、商品の現物も用意しなきゃね)

 

サブリナの希望はピザの大食い大会だったので、業務用ピザ窯の用意を進める。

 

通常納期は半年。それを二週間弱で仕入れなければならない。

 

 

 

鼻歌を歌いながら、Px4はご機嫌に端末を操作する。

 

画面に現れているのは、先日S地区の比較的大きな街であった同時多発テロのニュースだった。

 

 

 

『こう言うのもなんだけど、良いタイミングだったよね』

 

 

 

陽気に端末をいじるその姿は、まるでデートの計画をたてる乙女の様であった。




あれれこんなに引っ張るつもりなかったんだけど。
もう1話Px4さんが続きます。
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