ゆーるキャンレディ△   作:ドラ麦茶

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1・ようこそガールガンファイトへ!

 細かい経緯は省略して、志摩(しま)リンをはじめとするゆるキャンのメンバー五人は、ガールガンレディの世界に転送されていた。ガールガンレディとは、女子高生がガールガンと呼ばれる銃を使ってサバイバルゲームを行う特撮ドラマだ。ちなみにリンたちが住んでいる地域では放送されていないため、観るためにはネットの見逃し配信を利用しなければならない。

 

「――ガールガンファイトへようこそ。案内人を務めさせていただく、コマンダーのアリスです」

 

 突然見知らぬ学校の教室に転送され、状況がつかめずぽかんとする五人の前に立った少女が、静かな口調で言った。萌え系のSFアニメに出てくるような露出度の高いアーマーに身を包み、頭には大きなヘッドセットを付けている。その容姿は、髪と瞳が青い以外はなでしこそっくりだ。

 

「これからあなた方は、昨晩作った『ガールガン』を使い、他のチームとのバトルに挑んでもらいます。勝利すると、バトルの内容に応じた勝利ポイントを獲得することができ、年間の勝利ポイントが最も多いチームが優勝となります。ただし、バトル中死亡するごとにライフが一つ減っていき、ライフを三つ失うと、そのプレイヤーは世界から()()されます。ここまでで、何か質問は?」

 

「いやツッコミどころが多すぎて何からツッコんでいいかわからん」と、リンは冷静にツッコんだ。

 

 その後ろで、野外活動サークル略して野クルの部長・大垣(おおがき)千明(ちあき)が感心したように頷く。「ツッコミどころが判らないと言いつつキッチリツッコむあたりは、さすがリンだな」

 

「褒めても何も出んぞ」

 

「みなさん、どうか落ち着いてください」アリスと名乗った少女は、心配そうな口調で続ける。「混乱するのは判りますが、ガールガンファイトに拒否権はありません。抜け出す方法はひとつ、優勝することだけです。ガールガンを組み立てた以上、バトルをしてもらうしかないのです」

 

「そもそもあたし、ガールガンなんて組み立ててないんですけど」そう言った後、リンは他のメンバーを見た。「みんなは?」

 

 四人は一斉に首を振る。誰もガールガンなんて組み立てていないようだ。

 

「ガールガンを組み立てていない?」アリスは驚いた顔になった。「そんなはずはありません。昨日の下校時、怪しげな骨董品屋で怪しげな店長から怪しげなプラモデルを買って怪しげな銃を組み立てたでしょう?」

 

「そこまで怪しげなもの組み立てんわ」

 

「おかしいですね……ちょっと待ってください。運営に確認してみます」

 

 アリスはリンたちに背を向けると、ヘッドセットに向かって何か話し始めた。

 

「リン――」と、千明がリンの肩に手を置いた。「あたし、まったく状況がつかめてないんだけど、どういうこと?」

 

「いや、あたしも全然わからない」

 

「あのアリスって人の話から推理すると――」帰宅部の斉藤(さいとう)恵那(えな)があごに手を当てて考える。「ガールガンっていうプラモデルを買って組み立てると、ガールガンファイトっていう戦いに強制参加させられる、ってことじゃない?」

 

「三回死んだら消去、とか言うてたから、デスゲーム系ってヤツやな」と、野クルメンバーの犬山(いぬやま)あおいが、どこかのんきな関西弁で言った。

 

「デスゲームって……みんな死んじゃうの!? やだー!!」もう一人の野クルメンバー各務原(かがみはら)なでしこがムンクの叫びのようなポーズで叫ぶ。

 

「おいおいおい、冗談じゃないぞ」と、千明。

 

「でも、みんなプラモデルなんて組み立ててないんだよね?」恵那がみんなの顔を見回す。

 

「組み立ててない」「あたしもだ」「うちも」「あたしもー!!」と、みんな一斉に手を挙げた。

 

「あたしも組み立ててないし……どうなってるのかな?」

 

 恵那が視線をアリスに移すと、アリスは。

 

「……はい……はい。そうですか。判りました」そう言って、リンたちを振り返った。「今、確認が取れました。確かにあなた方は、ガールガンを組み立てていないようです。どうやら、なんらかの手違いでこの世界に転送させられてしまったみたいですね」

 

「手違い!?」千明がトレードマークである眼鏡をギラリと光らせた。「それは困ったね。そっちの手違いでこんなところまで呼び出されて、ホント迷惑だよ。これは、詫び石をたっぷり貰わないと納得できないなぁ」

 

「ソシャゲのクレーマーか」と、リン。

 

「本当に申し訳ありません」アリスは頭を下げる。「お詫びとして、あなた方は特別にガールガンなしでファイトに参加してもらって構わないとのことです」

 

「いやそうじゃないだろ。なんだそのズレまくった対応」

 

「ただ、正規の手続きを踏んでいないので、今回のバトルはエキシビション扱いになります。勝利しても勝利ポイントは得られませんが、なんらかのご褒美は考えるそうです。また、あなた方はガールガンを持っていないので、所持品をいくつか転送し、それらを使って戦っていただきます。それでよろしいでしょうか?」

 

「よろしくないわ。なんで条件悪くなってんだ」

 

「仕方ありません。そういう運営なのです」アリスはそう言ったあと、深くため息をついた。「あたしも逆らうことはできませんから、従ってもらうしかないのです」

 

「いやいやいやいや、おかしいおかしい」千明が顔の前でひらひらと手を振る。「デスゲームに強制参加ってだけでもだいぶ理不尽なのに、それがそっちの手違いで、その上武器も無しで戦わされ、死んだら消去なんて、納得できるわけないでしょ」

 

「その点は安心してください。今回はこちらの手違いで転送してしまったので、三回死亡で世界から消去のルールは免除するそうです」

 

「そっか。なら安心して戦えるな……ってなるか! そもそも戦うこと自体がおかしいの!」

 

 千明渾身のノリツッコミを華麗にスルーし、アリスは続ける。「ただし、この戦いに負けた場合、あなた方は一生キャンプ禁止となるそうです」

 

「キャンプ禁止!?」皆一斉に声を上げた。リンや野クルメンバーはもちろん、最近は恵那もキャンプにハマっている。キャンプだけを楽しみに生きていると言っても過言ではない。

 

「もちろんこれは、単なる約束事ではありません。ナイショでキャンプできないよう、運営の力を使って、絶対にキャンプができない身体にさせていただきます」

 

「そんなことできるわけがないだろ」リンが言った。

 

「運営ならできます。なにせ、三回死んだプレイヤーの存在を世界から消去し、関係者以外の記憶からも消すことができるんですから」

 

「なにそれこわい」

 

「そんな……そんな……」千明が両手の拳を握りしめてわなわなとふるえていた。「一生キャンプができないなんて……あたしたちにとっては死ぬより辛いことなんですよ!? そんな酷い罰、絶対に認められません!!」

 

「では、千明さんは消去ということで」

 

「あ、キャンプ禁止でいいですぅ」

 

「あっさり引き下がるな。もっと強気に交渉しろ」

 

「でもなぁ、リン。相手は存在や記憶を自由に操るヤツらだぞ? ヘタに逆らうと、もっとひどい目に遭わされる可能性だってあるんだし」

 

「そうかもしれないけど……」

 

「では、皆さん納得していただけたということでよろしいですね?」アリスは五人の顔をぐるりと見回し、満足げに頷いた。「それでは、これから細かいルールの説明をします。ルールを把握することは勝利する上で欠かせませんので、よく聞いておいてください」

 

 誰も何ひとつ納得していないが、問答無用で話は進んで行くのであった。

 

 

 

 

 

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