ゆーるキャンレディ△   作:ドラ麦茶

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2・野クルとソロレディコマンダー

「それでは今回のバトルのルールを説明します。今回あなた方に行っていただくのは、敵陣に爆弾を設置し爆破する『アサルト』です」

 

 アリスが説明を始めると同時に、教室の教卓上にホログラムのような映像が浮かび上がった。棒人間がパイナップル型の爆弾を持って走った後しゃがみ、しばらくすると爆発して吹っ飛ぶ映像だ。

 

「制限時間十分の一本勝負。敵陣を爆破すればその時点で勝利となります。使用する爆弾は両チーム合わせてひとつだけ、バトル開始時、マップの中央に設置されるニュートラルボム方式です。爆弾の場所は、内蔵型ターミナル・アダプタ、通称TAによって、皆さんの視界に表示されます」

 

 アリスがそう説明すると、リンたちの視界に黄色い文字で『→23.84m』と表示された。その方向に首を向けると、矢印は上向きに回転し、前後に移動すると、1cm単位で数値が変化した。ちょうど、スマートグラスでナビ情報を確認しているような状態だ。

 

「現在爆弾は誰も所持していない状態です。この場合は、黄色で表示されます。味方チームの誰かが所持している場合は、表示が青に変わります。敵チームが爆弾を所持した場合は、赤でLOSTと表示され、方向や距離は表示されません。爆弾を所持している敵プレイヤーを目視で見つけた場合のみ、赤で方向と距離が表示されます」

 

 アリスが説明を続けると、それに合わせて表示されている情報が順に切り替わっていった。

 

「また、爆弾を所持したプレイヤーは、爆破ポイントの方向と距離が表示されます。爆弾を所持したプレイヤーは武器等を使用することができませんが、爆弾で殴ることは可能です。どんなに強く殴っても衝撃で爆発したり壊れたりすることはありませんから、いざというときは遠慮なくぶん殴ってください。もちろん、銃を持つ相手に正面から挑んでも簡単に撃ち殺さてしまいますが」

 

 なでしこと同じ顔なのに平然と物騒なことを言うよなこの()、と、リンは内心思った。

 

「爆弾を所持したプレイヤーが敵陣の爆破ポイントに入ると、起爆装置のタイマーが起動し、十秒後に爆発します。一本勝負なので爆破した時点で勝利が確定します。タイマー作動中に爆弾所持者が死亡すると、爆弾はその場に落ち、タイマーがリセットされますので注意してください」

 

 つまり、一人で爆弾を持って敵陣に侵入しても、敵に見つかればあっさりやられてしまうわけだ。バトルはチーム戦。チームワークがものをいうのだろう。

 

「続いて、対戦相手の情報です」

 

 アリスがそう続けると、教卓上のホログラム映像が切り替わり、四人の女の娘の姿が浮かび上がった。一人はアリスと同じようなSFアーマーにヘッドセットをした金髪の少女で、残り三人は学校の制服の上に黄色いジャケットを着た少女だ。

 

「今回あなた方が戦うのは『チームチャーリータンゴ』。変則的な戦いを得意とし、作戦が読みづらいチームです。コマンダーのシャーロットは基本的に司令室で指示を出すので、直接戦うのは残りの三人ということになります」

 

 黄色いジャケットの三人がアップになり、生島(いくしま)一華(いちか)・生島二葉(ふたば)雨宮(あまみや)三津恵(みつえ)と表示された。

 

「ちなみに、通常各チームには一体のコマンダーがついて作戦指示を出すのですが、あなた方はコマンダーのプラモデルを組み立てていないため、コマンダー無しの状態で戦っていただきます」

 

「え? アリスが指示を出してくれるんじゃないんですか?」と、リン。

 

「いいえ。今回あたしは、ただの案内人です。ルール説明が終われば退席させていただきます。作戦は、あなた方で立ててください。コマンダーがいない代わりに、あなた方は五人全員でバトルに参加しても構わないそうです」

 

「でも、初めてのバトルなのに銃もなければ作戦を考えてくれる人もいないなんて、いくら五人で出場してもめちゃくちゃ不利じゃないですか? せめて、今回の戦いだけでも助けてくれませんか?」

 

「それはできません。あたしにはあたしのチームがあって、かけもちはできないのです。それに、あたしたちコマンダーは、チームが優勝すると人間になれる、というご褒美のために戦っています。あなた方が勝ってもあたしには何の得もないので、助ける理由がありません」

 

「ずいぶん冷たいな、おい」

 

「続けます。バトルは通常、チャーリータンゴのメンバーが通う私立源女子学園を再現したパラレルワールドで行うのですが、それではマップを熟知したチャーリー側が有利なので、公平を期すため、今回は両チームとは無関係の学校を用意しました。ここは、H県堀北(ほりきた)市にある堀北中学校の新校舎を再現したものです。ここの一階と中庭を使用します」

 

 アリスの説明と同時に、ホログラムにマップが浮かび上がった。バスケットコートくらいの広さの中庭を四つの校舎が囲む形だ。マップの左上には図書室があり、そこがリンたちの陣地となっている。反対側の右下には美術室があり、そこが敵チームの陣地のようだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「戦闘前に作戦会議の時間を設けますので、そのときに実際に歩いてマップ内を探索しておくことをお勧めします。マップの把握は、勝利するうえで欠かせませんから。ただし、敵チームの陣地は、作戦会議中は進入禁止となっています。敵チームもこちらの陣地には入れませんので、作戦会議は陣地内で行ってください。また、校舎の外に出たり、二階より上の階に行くことはできないようになっていますが、バグがある可能性も否定はできないので注意してください。故意にバグを利用した場合は即失格となります。また、失格覚悟で外に出たとしても、校庭の北側にある旧校舎には絶対に近づかないでください。あそこは、多くの失踪者や自殺者が出ているとても危険な場所です。場合によっては関係者の記憶からも消えてしまいます。これは、運営の力とは全く異なる未知の力で、我々にもどうすることもできません。対抗できるのは、宮崎(みやざき)結衣(ゆい)さんだけです」

 

「はい?」

 

「いえ、こちらの話です」アリスはこほんと咳ばらいをした後、さらに続けた。「今回のガールガンファイトはエキシビションなので、バトルにはリスポーン制を採用しています」

 

「リスポーン制?」

 

「はい。各プレイヤーには生命力を数値化したもの、いわゆるHP(ヒットポイント)が設定されています。銃で撃たれたり殴られたりするとこの数値が減っていき、ゼロになると死亡します。通常のガールガンファイトは、死亡したプレイヤーはライフが一つ減ってゲームから退場となるデスマッチ制ですが、リスポーン制は、死んでも十秒後に復活し、ライフも減りません。つまり、何度死んでも復活できるのです。なので、死ぬのを恐れず、ガンガン突撃して死んでは復活しまた突撃して死ぬ、というのも、有効な作戦です」

 

 前言撤回。この娘がコマンダーでなくて良かった。あやうく屍の山を築かされるところだった。

 

「リスポーン時の復活場所は基本的にランダムですが、爆弾の半径二十メートル以内には復活できません。また、何度でも復活できるとはいえ、撃たれたら普通に痛いので注意してください」

 

「普通に痛い!?」千明が声を上げる。「痛いって、足や腕を撃たれた場合はどうなんですか」

 

「けっこう痛いです」

 

「肩やお腹を撃たれた場合は?」

 

「ものすごく痛いです」

 

「頭や心臓を撃たれた場合は!?」

 

「死ぬほど痛いです」

 

「いやそれ普通に死ぬだろ」と、リン。

 

「…………」

 

「…………」

 

「あと、チームチャーリータンゴの武器に対して、あなた方の持ち物は武器としてはあまりにもお粗末なので、ハンデとして、チャーリーメンバーのHPは通常の半分に設定されています。これは、平均的な女子高生がフライパンで頭を殴れば即死する程度のHPです」

 

「だからそれ普通に死ぬだろ」

 

「バトルは三十分後に開始します。それまでに準備を整えておいてください。細かいルールはTAを起動して確認できます。また、TAはボイスチャット機能も搭載していますので、バトル中有効にお使いください。では、三十分後に」

 

 説明を終えたアリスは、さっさと教室から出ていった。本当に仲間以外には冷たいヤツだな。五人は一斉にため息をついた。

 

 

 

 

 

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