二百九十八頁目
名残惜しいけれど日が落ちてきたこともあって、俺は有機ポリ……もとい可愛いペンギンちゃんばかりの夢のような島を後にした。
もう少し残って色々と堪能したかったけれど、余り遅くなってフローラを心配させるわけにもいかない。
何より真っ暗闇になってはペンギンの可愛い外見が見えなくなってしまう……その癖鳴き声で居場所はある程度分かるからそれこそ容赦なく手が伸びそうで……とにかく新素材もたくさん集まったことだしそろそろ帰ろう。
原油に真珠、そして有機ポリマー……たまたま事故死したペンギンの死体から剥いだものだ、うんあれは事故死……俺ワルクナイ。
などと湧き上がる罪悪感をごまかそうとするが、しかしあれだけ色んな生き物を生きるために殺しておいて今更何を考えているのだろうか。
見た目の可愛さでそんなことを思う自分は本当に仕方のない奴だと思うけれど、この手の感情は自然に湧き上がってしまうものだからどうしようも無いのも事実だ。
それは多分フローラも同じだろう……彼女にはこの有機ポリマーがペンギンから取れたことは伝えないでおこうと思う。
しかしそれはともかくとして、この豪雪地帯は環境が厳しいだけあってか目新しい素材から他の場所で希少な金属鉱石や水晶、黒曜石まで取れてしまう。
おまけに木々や果実に繊維もあることだし、取れない素材はキチンやケラチンぐらいなものだ……どうにかしてここに拠点を作れればかなり楽になりそうだと思う。
或いはここを本拠点にするのも悪くないかもしれない……まあこの新素材で作れるもの次第だけれども。
そんなことを考えながら、ぎりぎりで火が落ちる前に俺は山肌にある本拠地へ辿り着いた。
そして大声で帰宅を伝えて……だけど何の反応もなかった。
不思議に思いながら、拠点内に着陸して二階にある孵化部屋に入って……持っていた荷物を落としてしまう。
そこには卵を温めているタヴィちゃんしかいなかったのだ。
何度見回してもアルケン君も……フローラも……どこにもいない。
もう何もかも忘れて俺はあちこちを見て回るが、畑から一階の居住区まで探してもフローラは見当たらない。
もしかして俺の居ない間に恐竜に襲撃されたのかとも思い心臓が凍り付きそうな恐怖を覚えたが、あいにく拠点の壁からその内側に放っている動物たちの誰もが傷一つなく平然と餌を食べている辺りその可能性はないようだ。
少しだけ安堵したが、逆にこうなるとフローラがアルケン君に乗って出かけたとしか考えられない。
だけどあれだけ卵の孵化に全力を注いでいた彼女がそれを一時的にとは言え放棄してまで出かける用事など……本当に何が起きたのだろうか?
【今回名前が出た動物】
カイルクペンギン(ペンギンちゃん)
アルゲンタビス(タヴィちゃん・アルケン君)